筋肉質で無駄のない会社経営を ~業務仕分けとアウトソーシング活用術~

創業手帳

業務工数の見直し・最適化の方法とは?アウトソーシングを活用した組織改革

業務仕分けとアウトソーシング活用術
コロナで新しい生活様式が求められる中、会社組織も新しい働き方を求められる時代になりました。業務の効率化を組織に取り入れるにあたり、アウトソーシングを活用するという新たな選択肢が話題となっています。

今回は、アウトソーシング事業に携わる株式会社ニット 広報の小澤氏に、組織体制の変化とアウトソーシングの有効活用についてお話を聞きました。

ニット 小澤美佳

小澤 美佳(こざわ みか)株式会社ニット 広報
2008‌年‌に‌株‌式‌会‌社‌リクルートへ入‌社。‌10‌年‌間、‌HR‌一‌筋。‌中‌途‌採‌用‌領‌域‌の‌代‌理‌店‌営‌業、‌営‌業‌マ‌ネー‌ジャー‌を‌経て、リクナビ‌副‌編‌集‌長‌と‌し‌て‌数‌多くの‌大‌学‌で、‌キャ‌リ‌ア・‌就‌職‌支‌援‌の‌講‌演‌を‌実施。‌採‌用・評‌価・育‌成・組‌織‌風‌土‌醸‌成‌など、幅‌広‌く‌HR‌業‌務‌に‌従‌事。‌2018‌年‌ ‌中‌米‌ベリーズへ‌移‌住‌し、‌現‌地‌で‌観‌光‌業‌の‌会‌社‌を‌起‌業。‌2019‌年‌に‌ニットに‌入‌社‌し、‌営‌業・‌広‌報・‌人‌事‌を‌経‌験‌後、‌現‌在‌は‌オンライン‌ファ‌シリテーターとして活‌動‌中。オンラインで‌の‌セミナー講‌師‌や‌イベントの‌ファ‌シ‌リ‌テーターを‌多‌数‌実施。

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ここ30年で大幅に低下した日本の企業力

まずは、日本の企業力が「平成の30年間でどのように変化したのか」をご覧ください。

以下の表は、平成元年と平成31年の世界時価総額ランキングを比較したものです。

平成元年と平成31年の世界時価総額ランキング参照:STARTUP DB編集部

表の左側は、平成元年の世界時価総額ランキングです。平成元年時点ではNTTが群を抜いて首位であり、TOP5を日本企業が独占しています。さらに、上位50社中32社は日本企業がランクインしているのです。

また日本企業のうち、金融機関が17社もランクインしているのは驚くべき事実です。これは、バブル時代の日本の繁栄を象徴していると言えるでしょう。

次に、表の右側を見ると、2019年4月時点の世界時価総額ランキングがわかります。

上位は米国のGAFA(※)を含むIT企業と、中国のIT企業が大部分を占める結果になりました。日本企業は、50位以内にトヨタ1社のみランクインしている状況です。

(※)GAFAとは、Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字を集めた呼称のこと。

平成元年と平成31年の結果から、ここ30年で日本企業の「世界における立ち位置」の大きな変化が見てとれます。

また、30年前の1位であるNTTと比べて、直近の1位であるAppleの時価総額は6倍近くになっていることから、世界的には時価総額が大幅に成長していることもわかります。

果たして、日本はこのままで世界と戦っていけるのでしょうか。

人口減少・超高齢化が止まらない日本

今後、日本の人口は2018年を皮切りに言わずもがな減少するでしょう。

これまでの50年間は総人口1億人を突破していたのにも関わらず、40年後の2060年には約8600万人まで少なくなり、高齢化率は40%に到達するとされています。

そのため、このまま人口減少・超高齢化が止まらないと、2060年には「5人に2人は65歳以上になるだろう」というデータ上の懸念が叫ばれているのです。

参照:総務省ホームページ

また、厚生労働省が2020年9月に、2019年人口動態統計(確定数)の概況を公表しました。

これによると、出生数は前年(2018年)比で5万3,161人減の86万5,239人となり、1899年の調査開始以来、過去最少数を更新しています。

コロナの影響もあるとは思いますが、生まれてくる子どもが過去最少数というのは、将来的に不安が募ります。

また労働人口が減少する中で、効率的に成果を残せるような事業運営をしていかないと、日本経済は破滅の一途を辿ってしまう可能性があるでしょう。

変化が遅い時代は、経験を積んでいる人のほう方が有利ですが、変化が早い時代では、その変化についていける人が有利です。

そのため、労働力の確保&生産性の向上は、今後の日本経済にとっても重要なテーマだと思っています。

日本の企業が抱えている課題

画像:みずほ総合研究所「パーソル総合研究・中央大学「労働市場の未来推計2030」をもとに作成

2005年と比べると、日本の「生産性はマイナス成長」となっています。

また2013年に比べて、人手不足による倒産件数が3倍となっており、50年後の労働力人口は4割減になると推測されています。

企業を悩ます「深刻な人手不足」ですが、これはもはや不可逆的なことです。そのため、一人当たりの生産性の向上が急務であると言えます

「コスト削減=ダイエット」「コスト最適化=筋トレ」という考え方

当たり前ですが、会社がゲームオーバーになっては元も子もありません。したがって、未来を創る以前に、現在の会社組織において無駄な部分を削減しないといけないですよね。

そのため、多くの企業では、これから訪れるであろう不景気に備えるために、「コスト削減」に関心が集まっています。

しかし、これは厳密に言うと「業務改善からコスト最適化へ」という考え方こそ大事だと思っています。

なぜなら「コスト削減」をやりすぎると、必要な筋肉まで削ぎ落してしまい、逆に業務効率が下がったり、社員の士気が下がったり、離職続出という事態にもなりかねないからです。

「会社存続のために、とにかくコストを削減しよう!」だけではなく……

「効果的な組織構成や、最適な人員数と業務の割り振り、さらに必要な投資を考慮して、ぜい肉を削ぎ落とす!」という観点を持つことが重要です。

つまり、筋肉質な会社経営のためには、ダイエットと筋トレの両方が必要なのです。

日本の会社組織は多様化していく

画像出典元:株式会社ニット

雇用形態・時間・副業・職種・年齢……等々、今後は多様な人材が混在している組織が増えてくると思っています。例えば、下記のような状態です。

<会社組織の多様化の例>
  • 雇用契約を結んでいるのは、経営幹部だけ
  • PM(※1)は外部のその道のスペシャリスト
  • 1部署は全て外注スペシャリスト
  • 社員は全員副業を実施
  • アシスタントは全てアウトソーシング、あるいはRPA化(※2)

人口減少=労働力が減少する日本において、「どのような組織構造にしていくか」「組織デザインとそれに着手していくこと」が重要になるでしょう。

そのためには、既存の会社組織の在り方を見直して、労働リソースを最適化するという選択肢が必要になってきます。

(※1)プロジェクトマネジャー

(※2)RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーションのこと。事業のプロセスを自動化する技術のひとつ。

業績拡大のために労働リソースを最適化する

業績を拡大するためには、採用という形での投資は重要ですよね。

ただし、不景気になっていくと、そもそも人員計画の段階で、採用計画の見直しから採用数を削減させるという流れはよくあることです。

皆様の会社でも、コロナになって採用をストップ、またはシュリンクさせている状態かもしれません。

一方で、会社を発展させていくためには、業績を拡大しないといけません。このような状況において、採用以外の雇用パターンを分解したのが以下の図です。

画像出典元:株式会社ニット

人手不足の中で業績を改善するためには、各業務に適切な人材を配置して、社内・社外の人材の相互協力が必要です。

そして、アウトソーシングを上手く使い分けながら、外部の人へ任せていくことで、組織改革による業務改善へと繋がります。

大事なポイントは、「アウトソーシングは楽になるためのもの」ではなく、「労働リソースを最適化するためのもの」であることです。

つまり、「餅は餅屋に頼み、自分は自分にしかできない仕事に集中する」という体制になれば、生産性は飛躍的に上がっていきます。

業務の洗い出し・仕分けによって「コア業務」を見極める

高い生産性とは、最小の労力・時間・金額で、最大の成果を出すことです。

そんな生産性の向上に必要なソリューションとして、「今ある労働力をどう最大化させるか」と「雇用だけではない選択肢の対策」が必要です。以下、その具体的な流れです。

<業務の最適化フロー>
  • ①業務の洗い出し
  • ②業務の仕分け
    ・「コア業務」と「ノンコア業務(※)」に分ける
    ・「コア業務」を「オンライン」「オフライン」に分ける
    (※)ノンコア業務とは、必ずしも自分でやらなくてもいい業務のこと
  • ③ノンコア業務を「なくす」「減らす」「誰かに頼む」に分ける
  • ④:「誰かに頼む」の依頼先を検討する

上記の流れは、生産性の高いテレワーク組織を作っていく上でも重要です。

この業務仕分けをしないままテレワークを実施すると、会社で行っていたことをそのまま家で行うという発想になり、非常に生産性が下がってしまいます。

なぜなら、「オフィスで顔を見ながら仕事する」場合は、やはりコミュニケーションがとりやすいので、ちょっとした相談や依頼がしやすい環境だからです。

一方で、テレワークになってそれが出来なくなり、メンバーが仕事している様子が見えなくなると、大量の業務報告をさせる文化ができてしまうなど、かえって非効率的な体制になってしまうこともあります。

つまり、テレワークを効果的に導入するためにも、まずは業務を仕分けすることこそ、もっとも重要なのです。

画像:経産省BPO(業務プロセスアウトソーシング)研究会報告書をもとに作成

なお、④の「誰かに頼む」という時点で、アウトソーシングを利用することが一つの選択肢になります。

じつはその際に、業務効率化・コスト削減を期待してアウトソーシングを検討したものの、導入までの一時的な負荷や、費用対効果・コスト削減のイメージがつきにくい企業様が多い印象を受けます。

そんなときは、業務の効率化・情報のデータ化のために、ITツールを駆使することも必要だと思います。

最近では、RPA(Robotic Process Automation)ツールもたくさんあり、必ずしも人ではなくてもいい業務も発生していますよね。

以上のことから、生産性向上のためにノンコア業務はアウトソーシングを利用するか、RPA化して効率的に対応するなど、新たな組織改革が求められているのです。

採用でナレッジを蓄積するためには

私自身、元々はリクルートでHR営業を担当していたので、営業シーンにおいて「採用して内製化して、社内にナレッジを蓄積していきましょう!」と提案していました。

しかし、これだけ転職が当たり前になったり、会社におんぶに抱っこで一生雇われ続けることが正ではないという世の中になったりすると、いつ何時、社員が離職してもおかしくありません。

実際に、社内メンバーだとナレッジが蓄積すると思いきや、退職するケースも多くありました。これらの課題は、アウトソーシングを活かして外部チームを持つことで解決できます。

チーム体制を導入する

画像出典元:株式会社ニット

オンラインでのアウトソーシングというと、「CtoC」や「BtoC」が多く、どうしてもナレッジが1人に集約しやすくなります。

また、マネジメント・コントロールが発生したり、業務ごとに人を探すことになったりなど、手間が多くなるのも事実です。だからこそ、チーム体制を組むことが重要になります。

アウトソーシングを活かしたチーム体制にすると、その中の1人(弊社であればディレクター)とコミュニケーションさえとれれば、あとのスタッフのマネジメントは必要ないというスタイルも選択肢のひとつになるのです。

ワークシェアリングで補完する

画像出典元:株式会社ニット

ワークシェアリングにより、タスク業務を分担しながら仕事を進めることで、スタッフが何らかの事情で業務の続行が難しくなった場合でも、補完し合える環境を構築できます。

また、情報の蓄積・一元管理・可視化のために、Chatworkやkintoneなどを利用して、必ず情報は業務遂行者以外でも入手できる状況にしましょう。

コロナ禍で変わるアウトソーシングの概念

事業存続のため、また事業スピードを加速度的に上げていくために、アウトソーシングを活用する事例が増えています。

以下は、アウトソーシングの概念図と、実際に活用した事例です。

画像出典元:株式会社ニット
<アウトソーシングの活用事例>

①事業オンライン化に伴った支援
例)アパレル会社:ECサイトを立ち上げるための支援
例)保険会社:営業組織のオンライン化に伴った動画・資料作成

②テレワーク化によって、派遣社員/事務社員をアウトソーシング化
例)建設会社:固定費のかかるフルタイム事務員を変動費化へ
例)コンサル会社:6月で派遣社員の業務を内製化→正社員が逼迫

③エリア企業のオンライン化
例)愛知の清掃会社:通える優秀な人がいない
例)愛媛の不動産会社:一人に頼むほどの業務があるわけではない
例)京都のクッキーの型製造会社:デザインセンスのある人がいない

このように、多種多様な企業でアウトソーシングを導入している事例があり、より集中して業務に取り組める環境づくりに貢献しています。

大切なものに集中して自分らしい生活を

これからは誰よりも早く帰って、誰よりも成績を出しているような飄々とした人が、正しく評価される時代の到来です。長時間労働なんて、カッコ悪い。

要らないものは削り、大事なものに集中して、成果を出す。そして、余った時間は家族との時間や学習・趣味など、別の時間に充てて人間らしい生活をする。

そんな働き方・生き方って、素晴らしいですよね。

生産性向上を目的とした業務の仕分けや、オンラインのアウトソーシングについて、この記事が皆様のヒントになれば嬉しいです。時代に合わせた新しい働き方を創っていきましょう!

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