知らないと損する事業者なら避けては通れない「商標」の話~商標課題の重要性と必要な知識~
商標は事業の命運を分ける?!いい商品やいいアイデアを守るためにやるべきこととやらなければならないこと
事業者であれば避けては通れない商標課題。商標登録で一切苦労をせずに成功している事業はないといっても過言ではありません。
どの有名企業、有名ブランドでも多くの商標の問題を乗り越えてきています。事業をする上で、商標課題への対応は不可欠です。
ここでは、商標の定義やその重要性、事業活動にもたらす影響などを、松下電器産業㈱/パナソニック㈱で、商標管理とブランドマネジメントを担当されていた西野氏に詳しく解説していただきます。
関西大学大学院法学研究科在学中に弁理士試験合格。
松下電器産業㈱/パナソニック㈱で、商標管理とブランドマネジメントを担当。
商標の調査・出願といった通常の弁理士業務のほか、商標管理とブランドマネジメントのコンサルティングを担当。個人ブログで情報発信(「Nishinyの商標・ブランド日記」、https://nishiny.hatenablog.com/)。商標管理やブランドマネジメントの考え方を判りやすく説明。専門家が少ない分野であり、伝道師として活動中。
得意分野は、商標業務一般の他、グローバルネーミング、商標・ブランド・社名の社内ルール、インナーコミュニケーション、社名変更・ブランド変更、子会社へのブランドライセンス契約、技術ブランディングなど。
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この記事の目次
商標って?商標登録は必要?何が難しいの?
商標は、すべての商品・サービスの名前であり、ブランドの法律用語と言えます。名前だけでなく、記号や図形も商標に含まれます。具体的にどのようなものがあるか見ていきましょう。
名前で有名な商標
例えば、時計の「ROLEX」、カバンの「LOUIS VUITTON」などは代表的な商標です。
日本の例では、自動車の「TOYOTA」、電機製品の「SONY」、真珠のアクセサリーの「MIKIMOTO」などもブランド価値の高い商標です。
「BEAMS」や「UNITED ARROWS」といったセレクトショップの名前、「McDonald’s」「ガスト 」のようなレストランの名前も有名な商標です。
ただし、商標はブランド価値の高いものだけに限定されません。自分の商品・サービスと他人の商品・サービスを区別するために使用されるものは、有名かどうか、ブランド価値が高いかどうかを問わず、すべての商品・サービスの「名前」が商標になります。
つまり、近所にある洋品店の名前、街の中華料理屋の名前、美容院の名前、クリニックの名前もすべて商標になります。
図形や記号で有名な商標
「名前」は商標の代表例ではありますが、商標は「名前」だけには限定されません。商標法では、「名前」だけでなく「図形や記号」も自他を区別する標識として商標とされています。
例えば、よく目にするものとして以下のような図形や記号があります。
これらも商標として登録されているものになります。
商標登録の重要性と難しい理由
画期的な製品や、商売のネタを考えついたとき、まず必要となるのがその商品やサービスの「名前」です。
製品の製造販売業なら会社の名前(事業ブランド、ハウスマーク)のほかに、その製品の名前が必要です。お店を出すにも店舗の名前が必要です。製品名や店舗名なしに商売はできません。
たかがネーミングですが、現実にはネーミングの良し悪しが事業の成功を左右するといっても過言ではありません。ネーミングは事業企画や商品企画の次にくる、重要な経営問題です。
しかし、良いネーミングなら、どんなネーミングでも使って良いかというとそうではありません。商標登録というハードルをクリアする必要があります。実際、良いネーミングには、その名前を使いたいという希望者が集中しますので、すでに先に誰かに商標登録されている場合が少なくありません。
同じ名前を複数の企業が使うと、市場でのバッティングが生じ(出所混同)、消費者が混乱します。一つの名前は一つの企業しか使えないようにしておかないといけません。
商品やサービスの出所の混同は、昔は地域性が高かったのですが、今の時代、どのような商品やサービスでも、すぐに全国展開できますし、また、東京で人気の商品・サービスの情報はあっという間に日本中に広がります(また逆に地方の情報も全国に伝わります)。
一つの商品・サービスには一つの名前という状態を全国的に確立し、出所混同を防止するために、商標登録の仕組みがあります。特許庁に商標を登録することで、全国的に有効な商標権が認められ、一つの商品・サービスに、一つの名前だけという独占排他権が生まれます。
商標登録7つのメリット
商標というものがわかってきたところで、商標登録することのメリットを見ていきます。
- ココ重要!
-
- 積極的に商標を使うことができる
- 独占排他権が得られる
- 第三者の商標登録を阻止できる
- 外国商標出願の基礎になる
- ライセンスが可能になる
- 譲渡が可能になる
- 商標登録表示を付けることができる
(1)積極的に商標を使うことができる
商標登録を取得すると、権利者として商品・サービスにその商標を使うことができます。これが商標登録の第一のメリットです。
商標登録後は、他人の権利にバッティングするのではないか、警告を受けるのではないかと心配しながら商売をする必要はありません。
(2)独占排他権が得られる
商標登録を取得すると、その商標についての独占排他権を取得するというになり、他人は同一の商品・サービスに、同じ名前を使えません。あなただけがその名前を使用することができます。
もし、他人が勝手に使うようなことがあれば、差し止めをしたり損害賠償の請求が可能であり、刑事罰の対象でもありますので、警察や税関が模倣品の排除に協力してくれることもあります。
さらに、日本では登録商標の類似範囲まで、現実の出所混同に関係なく、他人の使用を排除できるとしています。
(3)第三者の商標登録を阻止できる
日本の場合は特許庁が商標出願を審査するので、第三者が同じ商標の登録を取得することを阻止できます。特許庁は、すでに登録されている商標と同一の商標のみならず、類似する範囲の商標の出願も拒絶します。
そのため、商標出願をする前に行う商標調査では、同じ商標があるかどうかのみならず、類似する商標があるかどうかまでチェックする必要があります。
(4)外国商標出願の基礎になる
以前は、外国で事業をするのは、自動車や電機メーカーがメインでしたが、今はアパレル、小売り、食品やレストランなど、多くの企業が海外に飛び出し事業を展開しています。
日本の商標登録は、外国で商標登録を取得するときの基礎になります。マドリッド協定議定書という、各国に商標の保護を求めることができる国際的な仕組みがあり、この制度を利用する場合は、母国の日本の商標が登録されている必要があります。
商標出願の審査は各国で行われますので、日本の商標登録を有しているからといって必ずしも海外で登録になるとは限りません。しかし、日本の商標登録があることが、有利になるケースもあります。海外での商標登録の取得にはかなりのコストがかかりますが、国内の商標登録の存在は海外での商標登録の取得においても役に立ちます。
(5)ライセンスが可能になる
事業でフランチャイズを考えているなら、商標登録が必要です。商標登録を取得することで、はじめて商標ライセンスが可能になります。
フランチャイズ以外でも、技術的なブランド(例えば、DVDのマークやドルビーのマーク)でも、ライセンスは活用されていますし、将来、子会社ができるとして、子会社にライセンスするにも商標登録の取得が前提となります。
商標ライセンスは、商標権者が事業から収益を上げるために、多くの企業で活用されています。
(6)譲渡が可能になる
事業譲渡の必要が生じた場合、商標登録が有効となります。事業と商標登録をセットで販売する場合は、単に事業だけを譲渡する場合よりも、譲渡の対価が高くなります。
(7)商標登録表示を付けることができる
商標登録をすることで、商標登録を持っていると主張することが可能になります。商標登録表示があると、商標登録を持っている「信用のできる企業」ということにもなります。
本来は、商標登録表示は、「商標登録第〇〇〇〇〇〇〇号」と書くのですが、「Ⓡ」で代用しても構いません。
商標登録するべき?タイミングは?
自社のオリジナル商品やサービスを守るとき、どのようなタイミングで商標登録の手続きを始めればいいのでしょうか?また、必ずしも商標出願は必要なのでしょうか?
商標出願をするか否かの判断基準や出願のタイミングを詳しく見ていきます。
商標出願をするかどうかの判断
1.商標かどうか
2.商標としての適格性があるかるどうか(識別性のチェック)
3.第三者の先行する商標登録との関係(同一・類似のチェック)
4.専門家の意見としての商標調査
商標出願をすべきかどうかの判断は、出願して商標登録が取得できるかどうかにかかっています。商標登録するためには、大きく次の条件を満たすことが必要です。
(1)商標かどうか
最近は、商標の対象が立体、動き、音、色まで広がっているので、幅広く標識一般と考えれば良いのですが、人間の五感のうち、「視覚」と「聴覚」で認識できるものに限られます。
すなわち、「味覚」「触覚」「臭覚(におい)」で認識できるものはまだ商標登録はできません(ちなみに、海外では「におい」が商標登録される国もあります)。
(2)商標としての適格性があるかるどうか(識別性のチェック)
商標は、自分の商品・サービスと他人の商品サービスを区別するために用いるもので、区別(識別)する力がない、またはその力が弱いものは、本来的に商標として機能しないものとして登録されません。
例えば、商標「Radio」を商品「ラジオ受信機」に使う場合は、商品の普通名称として登録できません。ただし、同じ商標「Radio」でも商品「菓子」に使う場合は、商品の普通名称ではないので識別性があるとなり、登録可能になります。
「商品の普通名称」の他にも、以下のものについては基本的には識別性がありません。
・「慣用商標」:清酒について「正宗」
・「記述的商標」:商品の産地や販売地、サービスの提供地、品質、効能など
・「簡単すぎる記号」:品番、型式記号等で使うものなど。具体的には、アルファベット1文字あるいは2文字、単なる〇や△など
(3)第三者の先行する商標登録との関係(同一・類似のチェック)
商標登録を取得すると、独占排他権となることの裏返しで、先行する第三者の商標登録と同一・類似する場合は、折角、商標出願したとしても、特許庁の審査で拒絶され、商標登録できません。
類似範囲は、「商標の類似」と「商品・サービスの類似」の組合せです。第三者の先行する商標登録との関係は、次の4つの場合になります。
商標同一、商品・サービス同一(同一)
商標同一、商品・サービス類似(類似範囲)
商標類似、商品・サービス同一(類似範囲)
商標類似、商品・サービス類似(類似範囲)
商標が「非類似」であったり、商品・サービスが「非類似」であれば、類似範囲には入りません。
(4)専門家の意見としての商標調査
特許庁における商標の審査は、識別性と、同一・類似商標のチェックを中心に行われます。この判断は難しいものであり、素人判断は危険です。商標を専門にしている、信頼できる弁理士に依頼するのがベストです。
思いついた商標を闇雲に商標出願すると、第三者の先行する商標登録とバッティングするものを商標出願してしまい、出願のコストが無駄になりかねません。
商標出願のタイミング
では、商標登録はどのタイミングでするのが良いのでしょうか。名前を思いついたらすぐに出願するのが良いのでしょうか。あるいは、先に事業で使い始めて使用実績ができ事業が軌道に乗ってからで十分なのでしょうか。
この点については、世界的には、商標を先に使っている人を優先するという考え方(先使用主義)と、先に特許庁に出願した人を優先するという制度(先願主義)とがあります。
この点、日本は、先願主義です。これは先使用日の証明が難しく、一方、特許庁への商標出願日という日付は明確であるということによります。そのため、一日でも早く出願することをお勧めします。
最近の例では、商標は出願してから登録になるまで、早くて半年、遅くて1年半程度の時間がかかります。日本の商標制度では、商標登録を取得後に使用開始することを推奨しているのですが、現実には商標出願後、商標登録取得前に見切り発車的に、使用を開始している会社が多いのが実情です。
もし、第三者が先に商標登録している商標を使ってしまうと、あなたが商標権侵害をしてしまうことになります。そのようなことを少しでも防止すために、商標出願前及び使用開始前に、商標調査をすることが強く推奨されています。
商標出願の注意点
物の「生産方法」の発明などは、技術情報が公開されるのを嫌い、特許出願をせずに、ノウハウ(企業秘密)として管理する方が得策という話があります。
しかし、商標出願の場合は、あまりこのタイプのデメリットはありません。ただし、注意すべき点がいくつかあります。
- ココ注意!
-
- 特許庁に新しい「商標」の情報が公開される
- 商標出願をしなくても良いケース
- 商標出願をしない方が良いケース
(1)特許庁に新しい「商標」の情報が公開される
商標出願をすると1月後ぐらいに、商標出願の情報が開示されます。最近は、商標ウォッチャーがいて、例えば、アップル社が次はこんな商品を出すということを、商標出願の情報を基に予想したりしています。
ただし、公開されるのは商標と商品・サービスと出願人名、という程度の情報ですので、それほど恐れるほどのものではないと思います。
(2)商標出願をしなくても良いケース
ケース1
商標は、商品・サービスに使用する名前や図形などの標識ですが、場合によっては「商号」だけで十分なケースもあります。
商号とは、株式会社でいうと「ABC株式会社」のようなもの、個人商店の場合は「XYZ商店」のようなものです。商号は、商号として使用する場合は、必ずしも商標出願する必要はありません。大きな会社でも「商号」だけで事業ができていることもあります。
ただし、商号を商標的に使用する場合、例えば、ABCの部分、XYZの部分だけを取り出して使用する場合や、商号の例えば「ABC株式会社」を、目立たせて商品の目立つところに表示すると商標的使用となりますので、商標出願をする方が良いでしょう。
ケース2
「商品の普通名称」「記述的表示」「品番(型式記号)」などは、識別性がなく、誰でも使用できる言葉などですので、商標出願は不要です。
ただし、識別性があるかどうかの判断は、商標や商品の類似の判断以上に難しいものですので、専門家の意見を確認しましょう。
(3)商標出願をしない方が良いケース
ケース1
他人の有名な商標をそのまま、あるいは少し変えただけで商標出願した商標は、「冒認(ぼうにん)出願」や「悪意の出願」と呼ばれます。有名な商標はすでに多くの商品・サービスで登録されていますが、たまたま登録がない部分を発見しても、その商標を出願しようなどと考えないことが賢明です。
有名な商標の場合、混同が生じるおそれがあるとして、登録の有無にかかわらず、特許庁は登録を認めません。仮に登録が認められても、結局、権利者からの異議申立を受け、無効審判を請求されてしまい、最終的に商標登録を取得することができません。
ケース2
例えば、あなたが外国の製品を輸入販売する会社を立ち上げるとします。輸入商品の商標が他人の商標権を侵害しないかどうか心配なので、商標調査をしてみると、どうやら先行する他人の商標登録がありません。
そこで、自身の事業の安全のために商標出願をしておこうとなりますが、その前に商標オーナーである製品を作った会社に確認が必要です。商標権は、製品を作った会社が取得すべきであり、あなたが商標権を取得するのは、その会社から契約で了解がある場合だけにしてください。
ケース3
他人の著作物を商標出願する場合も、その著作物の著作権者と合意をしておかないと、折角、商標登録が取得できたとしても、使えないということがあります。他人の著作物の場合は、契約で事前に了解を取っておくことが必要です。
商標登録の手続きの仕方と費用
実際に商標出願する場合、どのような過程で行うといいのでしょうか。費用面も併せてみていきましょう。
(1)商標調査
自分で調査をするなら、特許庁の外郭団体の工業所有権情報・研修館が提供している「J-PlatPat」を使ってみましょう。こちらは商標専門の弁理士も使っているサイトです。商品・サービス分類とか、類似群コードとか、少し専門的です。
特許情報プラットフォーム|J-PlatPat [JPP] (inpit.go.jp)
商標専門の弁理士に商標調査を依頼した場合、1商標1区分(分類)と仮定して、文字商標の場合、3万円ぐらいが商標調査時に必要なことが多いようです。
最近は、システムで先行商標調査が簡単にでき、商標出願まで代行するようなWeb上のサービスもあります。これらのサイトは、沢山ある商標候補の荒振いに使うといいでしょう。
人気のオンライン商標登録サービス|Cotobox(コトボックス)
簡単・オンライン商標登録サービス|Toreru(トレル)
オンラインネーミング支援サービス|nomyne(ノミネ)byGMO | ホーム
商標(商標出願・登録商標) 情報サービス | ブランドテラス
(2)商標出願
弁理士を通さなくても、商標出願することは可能です。工業所有権情報・研修館が次のパンフレットを出しています。
trademark.pdf (inpit.go.jp)
最も重要なのは、商品・サービスをどこまで記載(指定)するかという点です。現在の業務範囲のみならず、将来の商品やサービスのラインアップを考慮して、少し、広めに指定して商標出願したいものですが、使用する意思のない分野まで広げないようすることが肝要です。
一つの出願で出せる商品・役務の数(類似群の数)には制約があり、それを超えると「使用又は使用意思の証明書」の提出が必要になります。
商標登録をご自身で行うことは可能ですが、素人が携わると必要以上に時間を取られることを覚悟しましょう。実際、特許庁から拒絶理由通知書がくると、個人では対応が難しくなります。
このようなリスクを踏まえると、商標専門の弁理士の意見を聞くのが、最もコストパフォーマンスが良いのではないでしょうか。
しかし、コストの面で、どうしてもご自身で商標出願をすることを選択される方には、次の本をお薦めします。
・松野泰明著「ネーミング発想・商標出願‐かんたん教科書」中央経済社刊
半分はネーミングを扱った本ですが、後半に、特許庁のWebサイトを活用して、紙による商標出願を実際に行うまでのことが解説されています。
(3)出願後の手続き
商標登録出願をすると、書類の不備等の方式審査がされ、方式審査をパスすると実体審査に移ります。実体審査では、識別性と先行する同一・類似商標のチェックなどが行われます。
実体審査をパスすると、商標出願には登録査定が出て、登録料を納付すると商標登録になります。
出願から初回の審査の結果連絡までが、現在は、1年程度かかっているので、実際に商標登録になるのは更に数か月先になります。
実体審査で拒絶理由通知が出されることがありますが、この場合は、審査官への反論、書類の補正等、中間処理の対応が必要になります。不明なときは、特許庁に問い合わせることもできますが、信頼できる弁理士に相談するのがお薦めです。
(4)費用
商標出願の費用は、特許庁の印紙代と特許事務所の費用に分かれます。
<特許庁の印紙代>
1区分(分類) | 2区分 | 3区分 | |
---|---|---|---|
印紙代(出願) | 12,000円 | 20,600円 | 29,200円 |
印紙代(登録)(10年の通常納分) | 28,200円 | 56,400円 | 84,600円 |
合計 | 40,200円 | 77,000円 | 113,800円 |
<特許事務所の費用>
弁理士の費用は、各事務所が自由に費用を決めてよいことになっています。少し古い情報ですが、弁理士会の平成21年10月の調査では、1商標1区分(分類)を商標出願したときの特許事務所の出願時費用は、6万円以上~8万円未満というところが多いようです。
また、登録時には、登録料の納付手数料に1万円程度、成功謝金が4万円~5万円程度が必要とお考えください。なお、オンラインの出願代行サービスでは、各社のWebサイトによると1商標1分類で、出願時1万円、登録時1万円程度とあります。
自分で手続きを行うか、特許事務所に依頼するか、オンラインの出願代行サービスを使うかといった選択は、ご自身での判断となりますが、できるだけ商標専門家のいる特許事務所に依頼することをお薦めします。
商標の出願代理行為は、請負でも業務委託ではなく、委任となります。コストのこともありますが、依頼人と代理人との間には、委任契約による相互の信頼関係がないと、事業の将来展開の相談や係争の相談はできません。
(5)更新
商標は、登録後10年で期限となりますが、10年ごとの更新が可能です。更新できる回数に制約はありません。更新申請時の特許庁の印紙代は38,800円(1商標1区分)です。
信頼できる弁理士の見つけ方
残念ながら、弁理士紹介サービスというものはなく、弁理士を知っている人からの紹介が基本です。
地方であれば、検索エンジンで「商標 弁理士 地域名」をキーワード検索して各事務所のWebサイトを見たり、弁理士会のWebサイトで検索したりしても良いのではないかと思います。
一方、東京や大阪といった大都市では、弁理士も多いため、どの弁理士に依頼するか決めることが案外難しいと思います。その場合は、日本弁理士会や弁理士会の関東会等が行っている以下の窓口をお勧めします。
・特許庁の外郭団体の工業所有権情報・研修館の知財総合支援窓口での紹介
・東京都中小企業振興公社の東京都知的財産総合センターの弁理士マッチング活用
創業手帳でも、様々な専門家を紹介しています。創業手帳アドバイザーが話を聞いて適した専門家を紹介。是非ご活用ください。
商標登録を持つということ
商標登録はあくまでも事業のスタート地点です。何より商品・サービスの品質の向上が大切ですし、商標を有名にするためのプロモーション活動も必要です。
また、商標登録になってからが、商標管理のスタートであり、更新期限管理、商品の追加、新しい商標の考案、商標のリニューアル、外国での権利化、異議申立、ライセンス、模倣品対策など、やっていくことは沢山あります。
商売をしていく上で、商標登録は、管理も含めて長く付き合っていかないといけない問題です。是非、事業のパートナーとなるような信頼のおける商標専門の弁理士を見つけてください。
創業手帳冊子版(無料)には、起業家にとって必要となる情報が多数掲載されています。先輩起業家の実体験や専門家のアドバイスなど、企業フェーズに応じた課題解決のお役立てに、是非合わせてご利用ください。
(執筆:
Authense弁理士法人(旧はつな弁理士法人) / 弁理士 西野吉徳)
(編集: 創業手帳編集部)