オフィス移転で補助金・助成金を活用!その種類と申請時の注意点を解説
オフィス移転にかかる負担を補助金・助成金で軽減できる!
従業員の増加やオフィスの利便性、会議室の不足などを要因に、オフィスの移転を検討している企業もあるかもしれません。
オフィスを移転するとなると、新オフィスの施工費用や引っ越し費用など、かなりのコストがかかってくることになります。
少しでも負担を抑えたい場合には、補助金・助成金制度の活用がおすすめです。
そこで今回は、オフィス移転に使える補助金・助成金制度について解説します。実際に活用する際に注意すべきことも紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
オフィス移転に使える補助金・助成金制度6選
オフィス移転に使える補助金・助成金制度にも、様々な種類があります。全国的に利用できるのは、以下4つの制度です。
ものづくり補助金
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業や小規模事業者が革新的な製品やサービスの開発、生産性の向上に向けた設備投資などを支援するための制度です。
単にオフィス移転をするだけでは申請できないものの、オフィスを移転することによって生産性の向上が見込まれる場合には申請できます。
ただし、家賃や保証金、敷金などの費用は補助金の対象外となってしまうので注意してください。
補助金額は、下限100万円から従業員数によって上限が決まっています。
-
- 従業員数5人以下:750万円
- 従業員数6~20人:1,000万円
- 従業員数21~50人:1,500万円
- 従業員数51人以上:2,500万円
補助率は中小企業で1/2、小規模企業・小規模事業者および再生事業者は2/3になります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、新たな販路の開拓や生産性向上に向けた取組みを支援するための補助金制度です。
補助上限額は50万円になりますが、インボイス特例対象事業者はさらに50万円、賃金引上げ特例対象事業者は150万円が上乗せされます。
また、両方の特例対象事業者は200万円の上乗せが可能です。
小規模事業者持続化補助金の対象経費は、機械装置や広報、Webサイト関連など、様々な経費が対象となります。
委託・外注費など改装に使える費用も含まれるため、オフィス移転でも活用できる可能性があります。
事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継をきっかけに経営革新を図る中小企業や小規模事業者に対して、その取組みにかかる経費の一部や引継ぎで必要な経費の一部を支援する補助金制度です。
事業承継・引継ぎ補助金には3つの事業に分類できます。
オフィスを移転する目的が事業の転換または経営革新などの場合、「廃業・再チャレンジ枠」か「経営革新枠」から応募することが可能です。
それぞれの補助率・補助上限額は以下のようになります。
【廃業・再チャレンジ枠】
申請の種類 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
---|---|---|---|
再チャレンジ申請 | 2/3以内 | 50万円 | 150万円以内 |
併用申請 | 1/2または2/3以内 |
【経営革新枠】
条件 | 賃上げ | 補助上限額 | 補助率 | |
---|---|---|---|---|
・小規模企業者 ・営業利益率の低下 ・赤字 ・再生事業者など いずれかに該当 |
実施 | 800万円 | 600万円超~800万円相当部分 | 1/2以内 |
実施しない | 600万円 | ~600万円相当部分 | 2/3以内 | |
上記該当なし | 実施 | 800万円 | 1/2以内 | |
実施しない | 600万円 |
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者などを対象に、生産性の向上や業務効率化を目指すためにITツールの導入を支援する補助金制度です。
例えば、オフィスを移転する際に、新たに生産性向上・業務効率化を目的とするITツールを導入する場合に申請できます。
【通常枠】
補助率 | 補助額 |
---|---|
1/2以内、2/3以内 | 1プロセス以上:5万円以上 |
4プロセス以上:150万円以上450万円以下 |
【インボイス枠(インボイス対応類型)】
補助率 | 補助額 |
---|---|
3/4以内、4/5以内 | 50万円以下 |
2/3以内 | 50万円超~350万円以下 |
PC・ハードウェアなど
補助対象 | 補助率 | 補助額 |
---|---|---|
PC・タブレットなど | 1/2以内 | 10万円以下 |
レジ・券売機など | 20万円以下 |
【インボイス枠(電子取引類型)】
補助率 | 補助額 | |
---|---|---|
中小企業、小規模事業者 | 2/3以内 | 下限なし~350万円以下 |
その他の事業者など | 1/2以内 |
【セキュリティ対策推進枠】
補助率 | 補助額 |
---|---|
小規模事業者:2/3以内 中小企業:1/2以内 |
5万円~150万円 |
地方自治体のオフィス移転に活用できる補助金・助成金制度
各自治体でも独自のオフィス移転に活用できる補助金・助成金制度を用意している場合があります。具体的にどのような制度があるのか、解説していきます。
【北海道】企業立地の促進を図るための助成
北海道では企業立地の促進を図るために、助成金制度が設けられています。
新たに工場の新設・増設を計画している場合、操業などに直接使用される建物や付属設備、構築物、機械・装置、ソフトウェアなど、資産計上した資産の取得価額を対象に助成金を受けることが可能です。
類型Ⅰと類型Ⅱに大きく分類され、そこから対象業種(事業)ごとに地域や補助要件、助成内容などが異なります。
その中でもオフィス移転に関連しているのが、類型Ⅰに分類される「本社機能移転事業」です。
本社機能移転事業は、設備投資と賃借の2つに分類されています。それぞれの補助要件や助成内容は以下のとおりです。
対象地域 | 補助要件 | 新設・増設 | 補助額 | 限度額 | |
---|---|---|---|---|---|
設備投資 | 全道(札幌市は除く) | 投資:1億円以上 雇用:20人以上 |
新設 | 投資額の10% | 1億円 |
賃借 | 全道 | (投資額要件なし) 雇用:20人以上(札幌市は30人以上) |
新設 | 年間賃料の1/2×3年間(札幌市は1年間) | 1,000万円/年 |
【福井県】福井県企業誘致補助金、サテライトオフィス誘致補助金
福井県では企業を県内へ誘致することを目的に、新たに工場を設立または増設する場合に使える「福井県企業誘致補助金」と、オフィスの開設・運営をする際に使える「サテライトオフィス誘致補助金」の2種類が用意されています。
いずれも福井県内で事業を開始してから10年以内の県外企業が対象になります。
福井県企業誘致補助金に関しては本社機能を県内に移転する場合、事業開始から10年以上経過している企業も対象に含まれます。それぞれの補助率と交付限度額は以下のとおりです。
【福井県企業誘致補助金】
区分 | 補助率 | 1事業あたりの交付限度額 |
---|---|---|
一般製造業 | 10% | 固定資産額5億円以上、新規雇用者10人以上:1億円 固定資産額10億円以上、新規雇用者30人以上:4億円 |
先端技術産業 | 20% | 新規雇用者5人以上:1億円 新規雇用者10人以上:3億円 新規雇用者20人以上:6億円 新規雇用者30人以上:10億円 |
物流関連産業 | 20% | 6億円 |
情報サービス業 | 20%(土地建物賃貸料のみ25%) | 2億円(土地建物賃貸料のみ年間2,000万円×3年) |
本社機能 | 25% | 3億円(土地建物賃貸料のみ年間2,000万円×3年) |
地域経済牽引事業枠 | 25% | 10億円 |
【サテライトオフィス誘致補助金】
対象経費 | 補助率 | 1事業あたりの交付限度額 |
---|---|---|
土地建物取得・改修費 土地建物賃貸料 事務機器等取得費 事務機器等リース費 |
50% | 1人以上(U・Iターン者のみ):750万円×3年間 3人以上:1,500万円×3年間 |
通信回線使用料 | 100% | |
U・Iターン者新規雇用 | 50万円/人 | 270万円 |
子育て世帯雇用(U・Iターン者新規雇用への上乗せ) | 最大50万円/世帯 | 450万円(1企業最大9世帯まで) |
住居賃借料 | 50% | 180万円 |
【長野県】本社等移転促進助成金
長野県では本社機能を移転した場合、本社等移転促進助成金を活用できます。
本社機能の移転は、本社以外にも研究所やサテライトオフィス、研修所などの新設も認められる場合があるでしょう。
また、上記施設で働く従業員のための育児支援施設を設立する際にも助成金を活用できます。
助成限度額 | 建物・設備などの取得費用 | 賃貸料 | 雇用にかかる経費 |
---|---|---|---|
3億円 | 最大12% | 50% | 80万円/1人(1年限定) |
【名古屋市】本社機能等立地促進補助金
東京23区内などの地域から名古屋市に本社機能を移転、または新設する場合、その事業にかかる経費の一部を補助する制度です。
すべての業種が対象となりますが、法人格を取得してから5年以上経過している必要があるので注意が必要です。
補助対象経費には建物賃借料(36カ月分)や建物の建設費または取得費(土地は除く)、機械設備や什器備品の購入費(取得価額50万円未満は除く)、移転にかかる運搬料なども含まれます。
補助率は10~50%で、最大10億円まで利用可能です。
なお、正規常時雇用者が異動する場合、1人あたり最大100万円、本店登記を移転する場合は最大500万円が加算されます。
【栃木市】栃木市オフィス移転等支援補助金
栃木市は、市内に本社を移転する、もしくはサテライトオフィスなどの事務所を新設した企業に対して、補助金を交付しています。
対象経費には設備購入費や改修費なども含まれるため、オフィスを移転する費用として賄うことが可能です。
補助率は1/2、上限額は300万円までとなりますが、対象事業者によって上限額は変動するので注意が必要です。
なお、申請する前に必ず栃木市の担当部署へ相談するようにしてください。
【長崎市】企業立地奨励金
長崎市では「企業立地奨励制度」を設け、建物の新設・増設・移転を支援しています。対象となる業種は以下のとおりです。
【対象業種】
①造船・自動車などの輸送用機械関連
②産業用機械、新エネルギー・環境関連
③情報通信関連
④食品関連
⑤医工連携関連
⑥陸上養殖業
⑦農業
⑧その他対象業種(製造業、道路貨物運送業、倉庫業、梱包業)
企業が受け取れる奨励金の種類は3つに分類されており、いずれも限度額は10億円までです。
【施設等整備奨励金】
操業前の投下固定資産総額の売買価格と、固定資産評価額いずれかが低い金額に次の割合を乗じた額が受け取れます。
①~⑦の業種:15%
⑧の業種:10%
なお、操業後の追加投資も補助対象に含まれます。
【建物等賃借奨励金】
建物等賃借費用(共益費や消費税は除く、月1万円/坪が上限)に次の割合を乗じた額が受け取れます。
①~⑦の業種:50%
⑧の業種:25%
【雇用奨励金】
長崎市民を雇用した場合、雇用形態によって以下の奨励金が受け取れます。
雇用形態 | 単価 | 障害者加算 |
---|---|---|
正規 | 50万円 | +50万円 |
非正規 | 30万円 | +30万円 |
短時間 | 15万円 | +20万円 |
オフィス移転で補助金・助成金を活用する際の注意点
オフィス移転で補助金・助成金を活用する際に注意すべきポイントを紹介します。
予算がなくなり次第終了してしまう可能性もある
枠が設けられた補助金・助成金制度には予算が設定されており、先着順で受け付けているケースも多いです。
先着順となると、予算がなくなり次第そこで終了してしまう可能性があり、せっかく応募をしたのに利用できなくなってしまう可能性もあります。
特に人気のある補助金・助成金は予定より早く終わってしまうことも考えられます。
まだ申請可能な期間だからといって準備をゆっくり進めていると、申請できなくなるかもしれないので注意が必要です。
申請・報告に手間がかかる
補助金・助成金制度には、公募要領などにシンプルな対象要件などしか記載されていない場合もありますが、大半は多くの条件や注意点などを公募要領から読み取る必要があります。
公募要領などを読み込んでおかないと、申請に不備が生じたり、注意点を把握しないまま申請してしまい後悔したりするリスクもあるでしょう。
このような事態を回避するためにも、申請前に資料をよく読んでおく必要があります。
また、補助金・助成金制度の中には補助金を受け取ってから、実績を報告しなくてはいけない制度もあります。
これらの申請や報告に手間がかかってしまえば、企業の軸となる事業にも影響を及ぼす可能性が高いです。
支払い後に支給されることが多い
補助金・助成金制度の多くは、オフィスを実際に移転してから申請する形となるため、一度全額を支払い、その後補助対象分の金額が支給されることになります。
オフィス移転にかかった費用を一度は全額支払う必要があるため、補助金額だけを見て申請してしまうとキャッシュフローが悪化し、倒産のリスクも高まります。
どれくらいで支給されるのか、今の経営状況でオフィス移転にかかる負担を一時的でも耐えられるのかなどを検討した上で、補助金・助成金制度を活用してください。
重複して受給できない場合もある
補助金・助成金制度をいくつか活用したいと考えている人もいるかもしれません。しかし、補助金・助成金制度には重複して受給できないものも存在します。
特に同じ事業を支援する補助金同士での併用はできない場合が多いです。
例えば、ものづくり補助金とIT導入補助金をオフィス移転で活用しようとしても、ものづくり補助金は同じ事業・同じ目的での重複受給ができないことになっています。
各制度の規約によって異なるため、申請前に重複受給が可能かどうかチェックしてみてください。
課税の対象になる場合がある
オフィス移転で補助金・助成金制度を活用した場合、受給した金額が課税対象になる可能性もあります。
各制度によって課税・非課税の区分が異なってくるため、事前に所得とみなされる補助金・助成金なのかチェックしておくと安心です。
また、仕訳の種類やタイミングなどにも注意が必要です。現在企業で採用している仕訳方式に従い、補助金・助成金を受給したら適切に計上してください。
内容に不備があると返還を求められる可能性がある
申請時に事業計画を提出する場合もありますが、その内容と異なる目的で補助金・助成金を活用していたり、補助金で取得した財産を承認なく第三者に譲渡・貸付をしたりする場合、補助金・助成金の返還を求められる可能性があります。
例えば、補助金を使って導入した機器を、一定期間内に解約してしまった場合などです。
また、申請内容に虚偽があり後から発覚した場合や、審査に通ってから要件を満たさなくなった場合なども返還を求められます。
返還時には年10.95%もの加算金を納付しなくてはならないので、返還を求められないように注意してください。
まとめ・オフィスを移転するなら補助金・助成金の活用も検討しよう
オフィスを移転するとなると高額な費用がかかってしまいますが、補助金・助成金をうまく活用することで負担を抑えられます。
国が運営する制度以外に、各地方自治体でもオフィス移転で使える補助金・助成金制度が設けられている場合もあるので、ぜひ自社に合った制度を探してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)