注目のスタートアップ

株式会社アナムネ 菅原康之|「オンライン病院」の開発・運営の事業展開で注目の企業

「オンライン病院」の開発・運営事業で注目なのが、菅原康之さんが2014年に創業した株式会社アナムネです。

現在、病院での診察に関する課題は多々あります。
例えば待ち時間の長さ問題。
病院での待ち時間の平均は、診察予約をした人でさえ30分以上という回答が過半数を占めており、大病院での診察になるほどその割合は高くなっています(厚生労働省調べ)。
それだけ長い時間待ったにもかかわらず、実際の診察時間はわずか3分程度で、ゆっくり医師と患者が向き合って相談・会話することはほぼないというのが実情です。

例えば診察時間の限定問題。
病院が閉まっている曜日や時間帯に体調不良が起きた場合、救急車を呼ぶほどではないけれど専門医に相談してなんとか体調を回復させたい、という思いを持ったことがある方も少なくはないと思います。

また例えば過疎地域などでは医療機関そのものが不足しており、必要な時に必要な医師の診察を受けることが出来ない、という根本的な課題も残されています。
あるいは都心部に居住していても、病院が空いている日中は仕事や家事に追われて病院にかかることが出来ない、という方もいらっしゃるでしょう。

逆に医師の側に立ってみた時にも課題は多く存在しています。
例えば一つの病院に勤務している医師の場合、サービス残業時間の長さや夜勤の多さ、緊急の呼び出しなどで心身ともに疲弊してしまい、家庭崩壊やうつ状態になり精神を病んでしまういう報告さえあります。
例えば、患者さんをサポートする医療関係者の間で情報共有がスムーズに行われず、患者さんの管理に手間取ったり必要な措置を取るまでに時間を要したりする、という場面もあります。
特に女性医師の場合、ライフステージの変化に伴う柔軟な働き方の選択がまだまだ難しい状況であり、結果、医師という仕事を辞めざるを得ないということも発生しています。

こうした状況を打破し、より良い診察環境を整える新たな取り組みに今注目が集まっています。

株式会社アナムネの事業の特徴は、24時間365日、様々な診療科をオンラインで受診することが可能、しかも医療相談から診察、薬の処方、健康管理までをワンストップで受けることが出来る、という点です。

株式会社アナムネの菅原康之さんに事業の特徴や今後の課題についてお話をお聞きしました。

・このプロダクトの特徴は何ですか?

アナムネが運営するオンライン病院は『オンライン医療相談』『オンライン診療』『ウェルネスマネジメント(健康管理)』がワンストップで利用出来るサービスです。24時間365日女性医師が対応しているので、病院が開いていない時間帯や休日など、気になった時にいつでも女性が安心して診察を受けたり、相談をすることができます。

『オンライン医療相談』では、病気や医療、健康に関して、実際の医師にスマホやPCからチャット形式で直接相談ができます。24時間365日相談対応しているので、病院が開いていない時間帯や土日であっても相談ができ、経験豊かな女性医師が対応できるのが特徴です。
 
『オンライン診療』では、ご自宅などのお好きな場所から、希望の時間に医師の診察を受けることができます。もちろん処方せんの発行も行います。全国約2300の薬局店舗とシステム連携をしているので、当日もしくは翌日午前中にお近くの薬局にてお薬の受取りが可能です。診療の待ち時間も他患者との接触もなく、忙しい方でも受診したい時に安心して診察を受けることができます。

所属する女性医師は100人を超え、診療科は婦人科・産婦人科・内科・皮膚科・小児科・心療内科など幅広く、オンラインでありながら中核総合病院の規模感となっています。現在は医療相談、医療メディア、在宅健康診断サービスなど複数のメディカルヘルスケアサービスを展開しています。

・どういう方にこのサービスを使ってほしいですか?

多忙で病院に行く時間がない方、小さなお子さんがいらっしゃる方、ウィルスへの感染リスクが心配で診療施設に行けない方に使用していただきたいです。
女性医師に対応してもらえるので、特に女性の患者さんに使って欲しいです。というのも現在ユーザーは9割女性なので、同性だからこそ具体的な体調を包み隠さず素直に話せる、という声も多く頂いています。
また、女性医師は男性医師よりも、隠れた「疾患」や「未病」を問診によって見つける確率が高いという研究結果もあるほどです。

・このサービスの解決する社会課題はなんですか?

多忙でなかなか病院に行けない30代〜50代のユーザーからは、まずスピーディな対応に評価をいただいてます。
オンライン医療相談の流れとしては、まずは当社のカウンセリングスタッフが初期対応をしたのちに簡易問診表を行い、相談内容に合わせて最適な女性医師に引き継ぐシステムを構築しているため、スムーズなオペレーションを実現しています。
また、医師からは現場を離れているからこそ心にゆとりがあり、より患者にじっくり丁寧に向き合える、というヒアリングもできました。

オンライン医療相談サービスをリリースした初期の頃、フィリピン在住の女性から相談がありました。メニエール病で国内の病院に運ばれた状況だったようで、入院中の処置について「この治療は正しいですか?」と入院中のベッドからのご相談でした。海外での病院診察は語学が堪能な駐在員でも、極度の不安にさらされるシーンなのだと感じました。
 
また、婦人科系の医療相談も反響を呼んでいます。
過去の事例には「生理の時は、会社を休んでしまうほど頭痛が酷い」という相談がありました。その女性の方は、偏頭痛と自身で判断し、頭痛薬のみ服用しながら長年過ごしてきたそうです。しかし弊社の医療相談サービスを利用して片頭痛は確定診断をしないと分からないことを初めて知り、先生からのアドバイスを受け、頭痛外来を受診し検査した結果、片頭痛ではなく、低用量ピルを服用することで体調がみるみる改善したという報告もあります。
女性はホルモンバランスの変化から、妊活出産のタイミング、更年期障害などライフステージが多様に変わり、それに伴う体調の悩みが多く大変なことを男性ながら強く実感しています。

・創業期に大変だったことは何でしょう?またどうやって乗り越えましたか?

私自身、この事業を立ち上げる前は、Web広告代理店にて新規事業開発や投資事業、IT事業をメインに活動していました。けれど長年その畑で働くほどに見えてきたのは、「一番身近な人の課題を助ける方が自分にとってもやりがいが持てる。」ということ。実は、「アナムネ」のサービスを立ち上げるきっかけになったのが、常にそばにいてくれる妻の「働き方」にある疑問を持ったからなんです。
 
妻は結婚前から救急救命医として多忙な生活を送っていました。ふと彼女の仕事内容を思い返してみると医師の「労働環境の過酷さ」を目の当たりにしたんです。まず普段から残業は当たり前、週末は待機勤務でプライベートの休みも満喫できず、さらに月に数回の当直勤務……などが必須。医師は、一般的に想像するよりも遥かに長時間労働者なんですよ。さらに女性医師は出産と育児のライフステージを選択すれば残業ができず、結果的に収入も激減。その結果、長年努力して手にした医師の道から退く女性も決して少なくないんです。
 
8年前に長男を出産したタイミングで、私の妻も勤務医を続けることが困難になっていました。そんな歯がゆい状況を黙って見過ごせず、どうにか妻であり、また出産や子育てで常勤を外れた女性医師の労働環境を整えたい、という強い想いから「アナムネ」の事業構想を始めたんです。
 
最初は苦労話しかありませんでしたね(笑)。周囲の医療関係の友人からは「ニーズがない」と反対の声が多く、「オンライン診療は日本では無理だ」という頑なな意見もありました。
 
そして何より大変だったのが、医療相談スタッフとして稼働できる登録女性医師集めです。というのも、当時はそんな労働形態などはほとんど無かったので、家庭を持つ女性医師の多くは外来のパート勤務などを掛け持ちする方が多く、なかなか弊社で稼働できる時間が取れないとの理由で断られることもありました。
なので当時は妻や、妻の友人の医師たちで少しずつ始めるところからのスタートでしたね。今では稼働スタッフも徐々に増え、弊社のオンラインでの医局プラットフォーム内で業務相談や医療知識の交換などが医師同士でできるなど、本物の病院の医局のような雰囲気も出てきました。

・どういう会社、サービスに今後していきたいですか?

今後数年以内に、日本一働く女性医師を抱えるオンライン病院を作り上げたいです。やはりライフステージによって現場を離れざるを得ない女性医師の課題を解決するために、オンライン上でこれまでの経験を活かせる仕組みをより大きく成長させたいです。
 
医師の雇用に関しては、オンラインの医局コミュニティーの強化や、また常勤、非常勤、フレックスなど女性医師のライフスタイルに合わせた勤務形態を用意し、活躍できる場や報酬も可能な限りサポートできる仕組みを引き続き作りたいと考えています。
 
今後のプロジェクトに関することでは、ユーザーには生命保険会社における付帯サービスやオンライン糖尿病外来やオンライン乳がん外来のサービス、またiosのヘルスケア/androidヘルスケアデータを共有管理しながら生活アドバイスを行うウェルネスマネジメントの提供を予定しています。

・今の課題はなんですか?

現在、当社事業はフェムテックやヘルスケア、オンライン診療などいくつものトレンドが重なって、企業の引き合いもユーザー登録も増えており、まさに成長拡大期にあります。
成長拡大期のスタートアップには共通する課題だと思いますが、現在2つの課題があります。
1つ目は、人材採用の課題。
日々増加する需要や発生する課題を改善するためにCS、BizDev、エンジニア、デザイナー、コーポレートの部門で組織を拡大しております。そのため、必要な部門に優秀なメンバーを採用することが一番の課題です。
そして2つ目の課題が資金調達です。
成長する組織には支える資金が先行してより多く必要になります。今まさに資金調達活動を進めておりますが、この資金調達が想定通りに進むかどうかが大きな課題だと思います。

・読者にメッセージをお願いします。

創業手帳を読んでいる読者には起業準備中の方、起業したばかりの方が多いと聞いておりますので、その方々に対してメッセージを送りたいと思います。
実際に起業してみて仲間を集め事業成長ステージに至る中で、いろんな苦労もありましたが、全て含めてやってよかったと思えますし、後悔のない人生を過ごせているなと感じます。
「やらなかった後悔より、やった後悔」という言葉をよく聞きますが、実際にやったことそれ自体は、次の成功のための「うまく出来なかったやり方の事例」となってストックされ、よりよい未来を創るための肥しとなるので、「やって後悔すること」はないと思います。
今の時代は、本当にやりたいこと以外は長続きしにくい時代だとも思います。
安易に起業を進めることはしたくないですが、起業というのは、職業選択というより生き方の選択に近いと思います。今世の中にないものをゼロから産み出し、仲間と一緒に育てるという生き方を望むのであれば、やはり、迷わず起業するのがよいと思います。
ぜひ頑張ってください!私もあなたに負けないように頑張ります!

会社名 株式会社アナムネ
代表者名 菅原康之(すがわら やすし)
創業年 2014年
社員数 1名
資本金 165,900,000 円(資本準備金含む)
事業内容 「オンライン病院」の開発・運営
●「Anamne オンライン医療相談サービス」の開発・運営
●「Anamne オンライン診療プラットフォーム」の開発・運営
●オンライン患者会プラットフォーム「clila (クリラ)」の開発・運営
健康経営支援クラウドサービス「Bloom( ブルーム) 」の開発・運営
サービス名 「Anamne(アナムネ)」、「clila (クリラ)」、「Bloom( ブルーム) 」
所在地 東京都中央区日本橋1丁目13番1号 日鉄日本橋ビル3階 WAW日本橋
読んで頂きありがとうございます。より詳しい内容は今月の創業手帳冊子版が無料でもらえますので、合わせて読んでみてください。
カテゴリ 有望企業
関連タグ アナムネ 菅原康之
創業手帳
この記事を読んだ方が興味をもっている記事

有望企業の創業手帳ニュース

関連するタグのニュース

オンライン医療・ヘルスケア・健康管理サービスを提供する「アナムネ」が「東京電力フロンティアパートナーズ」「TEPCO i-フロンティアズ」と資本業務提携
2022年9月15日、株式会社アナムネは、東京電力フロンティアパートナーズ合同会社に対して第三者割当増資を実施し、TEPCO i-フロンティアズ株式会社を含めた3社での資本業務提携を行ったこと発表しま…

大久保の視点

国際団体エンデバージャパン「EndeavorJapanSummit 2024」を現地レポート!
パネルセッション例:中村幸一郎(Sozo Ventures ファウンダー・著名な投資家)、ヴァシリエフ・ソフィア市副市長(ブルガリアの首都) 「Endeav…
(2024/10/9)
「JX Live! 2024」JX Awards大賞はNYでイチゴが大ヒットの古賀大貴さん(Oishii Farm 代表)
2024年10月9日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて、「JX Live! 2024」が新経済連盟主催で行われました。 「JX Live!」は、「JX(Japan…
(2024/10/9)
「スタートアップワールドカップ2024」世界決勝を現地速報!優勝はEarthgrid(米代表・プラズマでトンネル掘削)
2024年10月4日、世界最大級のビジネスピッチコンテスト「スタートアップワールドカップ(SWC)2024」の世界決勝戦が、米国・シリコンバレーで開催されま…
(2024/10/5)
創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

注目のニュース

最新の創業手帳ニュース

創業時に役立つサービス特集