半農半Xとは?メリットや注意点、活用できる補助金や実践事例を紹介

創業手帳

半農半Xで心豊かな生活を目指そう


新しいライフスタイルとして注目を集めているのが「半農半X」です。
しかし、半農半Xと聞いてもどういった働き方をするのか理解していない人もいるでしょう。

そこで今回は、半農半Xの概要を解説すると共に、専業農家や兼業農家との違い、半農半Xのメリットや注意点について解説していきます。
自治体が実施している支援策についても紹介していくので、半農半Xに興味のある人や心豊かな生活を目指している人は、ぜひ参考にしてみてください。

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注目を集める半農半Xとは?


まずは、半農半Xとはどういったスタイルを指しているのか解説していきます。

半農半X(はんのうはんえっくす)とは

生活する上で必要となる食材を自分で育て、残りの時間を好きな仕事や自分がやりたいことに費やす生き方を半農半X(はんのうはんえっくす)といいます。
1990年代に半農半X研究所の塩見直紀氏が提案してきたライフスタイルで、農業と別の何かを表す「X」を両立して生活をしていこうとする考え方です。
Xにあたる部分は人によって異なりますが、自分の好きなことを当てはめられるため、収入が減少しても心豊かな生活ができるとして幅広い世代の人が興味を示しています。

例えば、高齢化が進んでいる地域で農業をしながらヘルパーとして働けば、地域にとって必要な人材にもなります。考えられるXは、以下の通りです。

  • 保育士
  • 教師
  • 調理士
  • ライター
  • エンジニア
  • サラリーマン

ほかにも、様々な働き方をXに当てはめることが可能です。

半農半Xと専業農家・兼業農家の違い


農業といえば、専業農家や兼業農家を想像する人もいるかもしれません。半農半Xとそれぞれとの違いを解説していきます。

専業農家との違い

世帯員の中に兼業従事者がひとりもいない農家のことを専業農家といいます。
農業だけを営んで生計を立てている人を指し、農業以外に収入がある半農半Xとは大きな違いがあります。
農業にすべての労力や時間を注いでいるため、効率良く農業に取り組め、専門性が高い点が特徴です。

ただし、農業以外の収入源はありません。天候や市場価格の変動によって収入が変動するリスクがあるため、収入の不安定さがデメリットです。
また、天候に関係なく朝から農業に勤しむため、体力的な負担も大きくなります。

兼業農家との違い

世帯員の中にひとりでも兼業従事者がいれば兼業農家です。夫が農業を営み、妻が企業で働いている場合が当てはまります。
農業に割ける時間や労力は専業農家よりも限られていますが、農業以外の収入もあるため、世帯収入が安定化しやすいメリットがあります。

なお、半農半Xとの違いとしては目的が異なります。兼業農家は農業が収入源であり、米や野菜といった作物を販売目的で育てています。
一方の半農半Xは、自分たちが食べるための作物を育てていることが異なる部分です。

半農半Xのメリット


半農半Xをライフスタイルに取り入れれば、以下のような様々なメリットが得られます。具体的に解説していきます。

生活費の削減につながる

総務省統計局が実施した「2024年(令和6年)家計調査報告」によれば、2人以上の世帯の消費支出は1世帯あたり1カ月平均300,243円となっています。
そのうち食料支出は89,936円となり、多くの割合を占めていることがわかります。

半農半Xは食材の一部を自分で育てて補えるため、金銭的な余裕が生まれるでしょう。
食材高騰といった話題も多いですが、自給すれば自分で食材を生み出せるので心のゆとりにもつながるはずです。
また、薪ストーブや雨水の活用、太陽光発電の導入などで光熱費削減を目指せます。自然の恵みを活用すれば、工夫次第で生活コストの削減が可能です。

好きなことに挑戦でき、生活の質が上がる

好きなことや得意なことで生計を立てるのは難しいことです。生活できなければ夢を諦めなければなりません。
しかし、半農半Xは食料を自分で補うため、お金を稼ぐ仕事にかける労力を削減できます。

その結果、好きなことや挑戦したいことに勤しむ時間を作ることが可能です。
また、働く時間を自分でコントロールできるため、ワークライフバランスを実現できるメリットがあります。
例えば、朝の涼しい時間帯は農業、午後からは好きな仕事に取り組むといった時間の使い方ができます。

地域・社会貢献につながる

就農人口の減少は農業が抱える課題です。農業の担い手が不足すれば、食料自給率の低下や地域産業の衰退、耕作放棄地の増加といった問題が生じてしまいます。
しかし、半農半Xによって就農人口が増えれば、前述した課題解決を目指せるほか、地域コミュニティの活性化にもつながります。

また、生活費の高い都会での生活では、子どもを持つ余裕がないと考える人も多いです。
地方で半農半Xに取り組むことで時間や生活にも余裕が生まれれば、「子どもが欲しい」と考えが変わるかもしれません。
地域が抱える問題解決につながるため、半農半Xは国や自治体の多くで推進されている取組みです。

半農半Xの注意点


魅力高い半農半Xには注意点も存在します。注意点を知らないまま挑戦すれば失敗や後悔につながるため、以下の内容を把握してから始めることが大切です。

専業農家から信頼を得られにくい

半農半Xに挑戦する場合、地方に移住して勤しむことが多くあります。
農地を購入したり借りたりして技術を身に付ける必要があり、地域の人たちの理解や協力がなければ成立しません。
そのため、地域の同業者コミュニティに認めてもらう必要性があります。
しかし、半農半Xは農業以外のことにも就労しているため、片手間で農業をしていると見られがちで、専業農家を比較すると受け入れてもらうことが難しい点に注意が必要です。

積極的に地域の集まりやイベント、交流会に参加するなどして、学ぶ姿勢を見せることが大切です。

農業と両立できる事業と兼業する必要がある

農業では、畑を耕したり収穫したりするなど、すべての工程に時間や手間をかけなけらばなりません。
作業に慣れるまでには想定以上の時間がかかるほか、思うような収穫を得られない可能性もあります。
また、土日や平日など、毎日作業が必要になることも考えられるため、Xに当てはまる仕事に時間を避けないケースもあります。

さらに、自分以外に農作業に携わる人がいなければ、時間に融通の利く仕事と兼業しなければなりません。
そのため、農作業に慣れてから融通の利く仕事を始めることがおすすめです。段階的に実践することで、半農半Xのメリットを受けやすくなるでしょう。

収入が下がる可能性がある

すでに仕事を持っている場合、その仕事にプラスして農業に従事します。そのため、農業をする時間を捻出しなければいけません。
これまで行っていた仕事の時間が減るため、必然的に収入が減少してしまいます。
また、農業が初めての場合は、慣れないことで作業にも時間がかかるため、最初は低収入を覚悟の上で従事する必要があります。

ただし、作業に慣れて効率化した農作業を実施すれば、農業以外の仕事をする時間も確保しやすくなるでしょう。
収入が下がることを理解した上で半農半Xに挑戦してみてください。

自然災害の影響を受けやすい

農業は自然を相手にする仕事です。大雨や台風、干ばつや冷害などの影響を受けやすいほか、鳥獣被害や害虫被害にも注意しなければいけません。
これらの被害を受ければ、順調に育ててきた作物を計画通りに収穫できなくなり、食材を賄えない可能性もあります。

自然はコントロールできませんが、対策を講じれば被害を抑えることにつながります。
農地やハウスの点検、保守や補強などを入念に行い、災害対策を怠らないよう注意してください。

半農半Xに活用できる支援策


半農半Xは、地方活性化や農業活性化として注目されています。
自治体が実施する様々な支援を活用すれば、半農半Xに取組みやすくなります。ここからは、支援策の一例を紹介していきましょう。

島根県

島根県では2010年から半農半Xを推進しています。豊かな自然が魅力的な地域で、様々な野菜の生産に適したエリアです。
しかし、生産年齢人口は年々減少を辿っており、人口減少や高齢化が深刻化しています。

そのような中、島根県では半農半Xに取り組む人たちに向けて、様々な支援策を実施しています。そのひとつが「UIターンしまね産業体験事業」です。
島根県にUターン、Iターンし、農業を体験する場合に滞在に要する経費の一部を助成する制度です。
支給要件を満たせば、体験者助成金として月額12万円が支給される仕組みで、子連れ体験であれば1世帯あたり3万円が加算されます。

農業体験者による指導も実施されるので、知識や技術を1年間しっかりと学ぶことも可能です。

新潟県阿賀野市

新潟県下越地方にある阿賀野市も半農半Xに対する支援策を実施しています。
阿賀野市に移住をして笹神地区で農業をスタートさせる50歳未満の人を対象に、月125,000円が支給される支援策が行われています。
以下の人が対象となります。

  • 三親等以内に市内で農地を所有している、もしくは耕作している人がいない
  • 有機米や枝豆、トマト、柿、笹神なすの研修を実施して、収納後に生産をスタートする
  • 前年の世帯所得が600万円以下

研修が実施されるため、農業に未経験であっても必要な知識や技術を習得できます。

徳島県鳴門市

さつまいもやレンコン、大根や梨など、徳島県鳴門市では多くの野菜や果物が生産されています。しかし、人手不足や新たな担い手不足が問題視されています。
そのような中、鳴門市で実施されているのが半農半Xシェアハウス事業です。
地方に関心のある希望者を全国から募集し、農業アルバイトとシェアハウスでの生活を組み合わせた事業です。

参加者には約2週間半農半Xライフを過ごしてもらい、地方の魅力や将来について考えるきっかけ作りを提供しています。

このほかにおいても、創業手帳では登録いただいた都道府県などの自治体における支援策や補助金について、月2回メールでお送りする「補助金AI」を無料でご提供しています。ぜひあわせてご活用ください。


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半農半Xの実践事例


最後に、半農半Xに実際に取り組んでいる人の事例を紹介していきます。

半農半蔵人

まずは、島根県⾢南町で半農半Xに取り組んでいるNさんの事例です。
民間企業に勤務していたNさんは、東日本大震災をきっかけにして就農を決意し、島根県が実施している支援策を活用して半農半Xに取組みました。
島根県はUIターン就農を考えている人たちに向けて、「半農半蔵人」を募集しています。
県内にある酒造会社で冬の期間のみ蔵人として従事する人を募集し、就農前研修経費助成や定住定着助成などを実施しています。

Nさんは、夏場は45aの農地で酒米や野菜を栽培し、冬の時期には蔵人として勤務するなど、農閑期となる冬場でも安定した収入が確保できる点が大きな魅力です。

参考元:特集新型コロナウイルス感染症による影響と対応

半農半民宿

次に、徳島県勝浦町で半農半民宿を営んでいる夫婦の事例を紹介していきます。
もともと東京の民間企業に務めていましたが、移住相談会に参加をして後継ぎのいないミカン農家の事業継承の提案を受け、2016年に夫婦で移住して営農をスタートさせました。

農業次世代人材投資資金の交付を就農直後から受け、交付が終了した後には自宅を改修して民宿や古本屋の経営をスタートさせています。
その結果、農業以外で約100万円の収入を確保することに成功しています。

参考元:特集新型コロナウイルス感染症による影響と対応

まとめ・注意点や事例を参考に半農半Xを成功させよう

半農半Xは近年注目されているライフスタイルのことで、自分や家族が食べる食料を自給によって賄い、残りの時間を自分の好きなことや挑戦したいことに費やします。
例え収入が減ったとしても、心豊かな生活を目指せる点が魅力です。しかし、農業と両立できる事業の展開が必要で、自然災害の影響を受けやすい点にも注意が必要です。
今回紹介した記事を参考にして半農半Xの成功を目指してみてください。

創業手帳(冊子版)では、農業や移住に関する支援策について随時発信しています。半農半Xにも役立つ情報となっているので、ぜひご覧ください。

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(編集:創業手帳編集部)

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