アクティブアンド カンパニー ⼤野 順也|課題や問いに対する答えをあきらめず、少しでも前進しよう
社会的に意義がある奨学金返還事業で業界の立ち位置を確立

日本初の奨学金返還を支援するプラットフォームである「奨学金バンク」を手がけるアクティブアンド カンパニー。代表の大野氏は、組織・人事コンサルティングで起業し、組織の拡大に伴って組織・人事にまつわるサービスを拡充してきました。
今回は、創業期・拡大期に直面した課題や新サービスを始めるきっかけ、今後の展望などについてお聞きしました。
株式会社アクティブアンド カンパニー 代表取締役社⻑
1974年⽣まれ。兵庫県出⾝。株式会社パソナ(現パソナグループ)に新卒で⼊社。営業部を経て、営業推進室および営業企画部⾨を歴任。同社関連会社の⽴ち上げを⼿掛ける。その後、現在のデロイトトーマツ コンサルティング株式会社にて、組織・⼈事コンサルティングに従事。2006年、株式会社アクティブアンド カンパニーを創立・設⽴し、代表取締役に就任。2024年3月、日本初の奨学金返還支援プラットフォーム「奨学金バンク」をローンチし、奨学金の代理返還支援を通した持続可能な就学・就業サイクルの実現に取り組んでいる。
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人材の定着や戦力化に注目して起業
大野:評価制度の構築や教育研修といった人事制度設計の分野で創業し、組織の活性化をテーマに組織・⼈事のコンサルティング業を営んでいます。戦略⽴案から業務効率化までをワンストップで提供しており、グループ会社では給与計算のアウトソーシングも行っています。
それらに加えてクラウド型人事管理システム「サイレコ」や、奨学金返還支援サービス「奨学金バンク」なども展開しています。
大野:新卒で株式会社パソナ(現パソナグループ)に入社し、人材派遣業に携わりました。次第に派遣紹介のあとの定着や戦力化など、紹介後の課題が多いことに気づき、人材派遣そのものよりも、企業へのコンサルティングを通じて人材の戦力化に取り組みたいと思うようになったんです。
人事部門のコンサルティングで起業したいと考えた際、まずは外資系コンサルティングファームでの経験が必要だと感じたため、転職活動をしてトーマツコンサルティング株式会社(現デロイト・トーマツコンサルティング株式会社)へ入社しました。そこで経験を積み、その後に起業しました。
大野:創業当時は31歳か32歳と若かったので、「人事のコンサルティングをやります」と言ったところで「何ができるんですか?」という空気になりがちでした。提案の内容では勝てている自信があっても、経験や顔のしわの数で負けるという現実に何度か直面しました。
大野:人材選びで妥協しないことですね。事業について共感できる人、独立独歩で仕事ができて、同時に組織の一員としてもしっかり行動できる可能性のある人を採用することに対して、真摯に取り組んだ方がいいと思います。
大野:リファラルです。最初は知り合いに「一緒にやろうよ」と声をかけ、組織作りをしていきました。事業について理解があったり、近しい経験があったりすることに重点をおいて人材を選びました。
会社の存続に成長や変化は不可欠
大野:組織が拡大していく中で、会社の方向性に合わない人たちが離職する流れはどうしてもありますし、ある程度そこは明確にしたほうがいいと感じています。離職はあまり良くないことと思われがちですが、会社の方向性に合わない人たちがずっといると、そのこと自体が他の社員の離職を招く温床になることもあるからです。
例えば、残念なことですが長く会社に在籍しているうちに「もうこれ以上会社が成長しなくてもいい」と守りに入ってしまう人がいます。会社が成長するということは、自分も成長し続けなければいけないですよね。そこで会社も自分も成長しなくていいと思ってしまうと、成長しようとする人に対して出る杭を打つような行動をとってしまうんです。そうなると下にいる人たちがやる気を失ってしまうので、一枚岩の組織を作るという点でも、社員の方向性が揃っていることは重要です。合わない人には辞めてもらった方が健全な経営ができると感じています。また、これは持論ですが、もし社長が「自分の会社を成長させなくてもいい」と思ってしまったら、その瞬間に社長を退いた方がいいと思っています。
会社というのは、存続させていく上で成長や変化は絶対に必要です。必ずしも直線的な成長だけではなく、違う領域に進出していくことも含めて、成長や変化を嫌う姿勢は会社を衰退させてしまいます。そのためにも、社長としてできることは、会社が目指している姿や「なぜこの事業をやっているのか」というメッセージを、社員に伝え続けることが大切だと思っています。
大野:規模が拡大している時期は、経営者は組織や人事のマネジメントから資金調達、IPOをするならその準備まで、いろいろなことをやらなくてはいけません。そのせいで、自分の直下にいる人に渡す仕事の単位が大きくなってしまったことは反省しています。
すべての人がそれにうまく対応できるとは限らず、パンクしてしまう事態も高確率で起こるので、それを細分化や分業化、場合によっては外注したり一部は自分が担ったりしながら、段階的に実現していくのが理想的だと思います。
組織の課題や、やるべき事の解像度をどこまで上げられるかが非常に重要です。その粒度が荒いとうまくいかず、粒度が細かくなればなるほど分業や外注などの解決策が見えてくるので、「その粒度ってこれでいいんだっけ?」と常に問うことは必要だと思いますね。
奨学金の課題を改善しようと新サービスを開始
大野:ちょうど僕が45歳ぐらいの時に、35歳の方と話していたら、彼が「まだ奨学金を返してるんですよね」と言ったんです。僕は当時、まったく奨学金に対する知識がなかったので「早く全額返さないとダメじゃない」とつい返事をしてしまったのですが、「いや、今はみんな40歳ぐらいまで奨学金を返してますよ」と言われました。その答えが衝撃的で調べてみたら、このようなデータが出てきました。

大学に行く学生の約55%が奨学金を借りています。大学生になるのは毎年50万人ぐらいで、毎年約40万人が卒業します。その半数ですから、約20万人の人たちが奨学金を借りたまま社会に出ているんです。平均で300万円ぐらい借りていて、15年ぐらいかけて返しています。例えば奨学金をもらっている若い2人が結婚するとして、家も車もまだ買っていないのにいきなり600万円の借金を返すところから新婚生活が始まるんですよ。それは晩婚化もするし、少子化もするでしょうと思いました。もっと言えば、そんな社会人のスタートで、社会に対して明るい未来が見えるでしょうか。経済も活性化しないですし、これは問題だなと思いました。
それで文部科学省に「奨学金バンク」の原型となるビジネスモデルの話と、奨学金の返還支援を一緒にやってくれませんか?という話をしたんです。そうしたら「面白いですね、実現に向けて考えましょう」と言ってくれて、文部科学省の下にある独立行政法人日本学生支援機構(通称JASSO)というところと一緒にプロジェクトに取り組むことになりました。その後1年半ほどかけてご要望をいただき修正をして作ったのが、「奨学金バンク」というサービスです。
大野:メインは奨学金を借りている方に特化した職業紹介です。中途の場合は一人につき年収の35%、新卒の場合ですと一人につき90万円いただく紹介料の中から、36万円を拠出して三井住友信託銀行に預けます。ここから毎月1万円ずつ、残りの奨学金を日本学生支援機構に返していくという仕組みです。日本学生支援機構へ直接返還するため、本人の所得としてカウントされず、所得税の課税対象外となります。また社会保険の算定基礎金額も上がらないので、非常にメリットが大きい形で奨学金を返還できるというわけです。紹介した企業に勤めている限りは、最低3年間の返還支援を行うため、定着にも効果があります。

大野:新しいことを始める際には、もちろん「市場としての可能性があるのか」ということも考えますが、儲かる儲からないだけではなくて、社会的意義があるかどうか、これを始めることで市場に対する自分たちの立ち位置がどうなっていくのかを考えています。
奨学金バンクに関しては、社会的に価値があると思えましたし、これを始めることで人事や人材という領域の中で、弊社の立ち位置がさらに確立していくと思えたので迷いはありませんでした。実際に奨学金バンクを利用されている奨学金返済中の方や企業の皆様からも喜びの声を聞き、心からこのサービスを始めてよかったと思っています。
課題に対する答えは必ずある
大野:これから日本は労働人口が減っていき、ベーシックインカムの話が出たり、AIに仕事が取られるという話があったりと、働き方についても様々な変化が予想されます。その中で、「人はどうあるべきか」はずっと問われ続けるでしょうし、働くことに対する人間のあり方も変化していくと思いますが、そこに対する解決策を常に出していける会社でありたいと思っています。
大野:創業時からずっと大切にしていることのひとつに、「課題を見つけたらどうすれば解決できるのかを考えること」があります。必ず解決策を見つける。無理と言わない。どの職種、どの業界、どの局面においても、それが一番大事だと思っています。絶対に答えはあって、数字で言うとスタート地点がゼロとして、プラス1が理想の答えだとしたら、0.1でも0.3でも答えだと思うんです。少しでも前進する答えって絶対あると思っていて、「無理です」「不可能です」と答えた時点でその人の仕事における価値はないと思っています。
もちろん自分ひとりで解決できないこともあるので、迷ったら人に意見を聞くことも大事です。創業時は前職の仲間に相談したり、少し組織が大きくなってきたら経営者の友人に相談したりしていました。今は社内の人間にも意見を聞いたり、相談したりしています。小集団でのコミュニケーションを取ることは必要だと思っているので、社内でも意識してそのような機会を設けるように心がけています。
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(取材協力:
アクティブアンド カンパニー 代表取締役社⻑ ⼤野 順也)
(編集: 創業手帳編集部)






