Cloudbase 岩佐 晃也|パブリッククラウド特化のセキュリティプラットフォームで日本の成長を後押しする

創業手帳
※このインタビュー内容は2024年09月に行われた取材時点のものです。

「Cloudbase」は隠れたリスクにも対応し、膨大なクラウド資産の全てを徹底的に監視する


クラウドシステムが主流となった現代では、いつでもどこからでもアクセスできるシステムが多く、どこにリスクが潜んでいるか見えづらくなっています。その一方で、企業が扱う情報量が増えていることもあり、セキュリティの重要性はますます高まっています。

AWS・Google Cloud・Microsoft Azure・Oracle Cloudなど様々なパブリッククラウド(以下、クラウド)に対応し、統合的に監視・管理できるセキュリティプラットフォーム「Cloudbase」を開発・提供する企業を創業したのが岩佐さんです。

今回の記事では岩佐さんが創業したきっかけや、クラウドに特化したセキュリティプラットフォーム事業を展開するまでの経緯を創業手帳の大久保が聞きました。

岩佐 晃也(いわさ こうや)
Cloudbase株式会社 代表取締役
1996年生まれ。10歳からプログラミングをはじめ、特にセキュリティ領域に関心を持つ。学生時代から様々なサービスを開発し、京都大学工学部情報学科在籍時にLevetty株式会社(現: Cloudbase株式会社)を創業。2年間で6回のピボットを経て、クラウドセキュリティ領域に至り、Cloudbase事業を始める。現在ではスズキをはじめとした大企業でのサービス導入を進め、累計約14億円の資金調達を実施。2023年には「Forbes 30 Under 30 Asia、Forbes 30 Under 30 Japan」に選出される。

インタビュアー 大久保幸世
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら

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2歳でゲームを始め、10歳からプログラミングをする少年だった

大久保:生い立ちから伺っていきたいのですが、小さい頃から起業に興味はあったのでしょうか?

岩佐:小学校の卒業文集で「1億円あったら何したい?」という質問に対して、「IT企業の社長になる」と答えていました。

小さい頃はゲームが好きで、家にある100本以上のゲーム全てを遊び尽くしているほどでした。親に聞くと、私は2歳の頃からゲームをしていたようです。

10歳くらいになると、ゲームと並行してプログラミングにハマっていきました。

将来は「ゲームを作るプログラマー」か「ゲーム会社の社長」を夢見るようになり、そこから「IT企業の社長」という夢に発展したのだと思います。

大久保:プログラミングに触れ始めたのがとても早いですね。その後はどのように進学していきましたか?

岩佐:そこから中学・高校と過ごし、大学は京都大学へ進学しました。

しかし、大学での活動にあまり熱心になれず、悶々とした日々を過ごしていました。

ある日それではダメだと思い、改めて自分がやりたいことを考えた結果、私は「ものづくりが好きだ」ということを思い出しました。

とはいえ京都には、今でいうスタートアップやベンチャー企業などエンジニアとして働ける場所がなく、アウトソーシングサービスでフリーランスとして仕事を受注するしかありませんでした。

もっと経験を積みたいと思い、関西のIT企業でエンジニア職を探すのですが全然見つからなかったです。大学の生協で3ヶ月に1回ほど未経験OKの職が張り出されるのですが、それもすぐ埋まってしまう状況でした。

そこで生協のサイトをチェックし、更新されたらLINEで通知が来るプログラムを書いたところ無事に応募・採用に至り、3〜4年ほど働くことにつながります。

大学4年時に現「Cloudbase」を創業

大久保:プログラミングで自分が抱える課題を解決したのですね。

岩佐:エンジニアとして働く中で、世の中にないものを作るのが好きだということに気がつくようになります。

さらに、小さい頃に使っていたツールは、日本で作られたエディターだったり、日本人によって開発されたiPhone用アプリだったりしたのが、今は海外製にどんどん置き換わっていることが悔しく思うようになりました。

そこから「偉大なサービスを作る」という漠然とした思いで、大学4年生の時にLevetty株式会社(現: Cloudbase株式会社)を立ち上げました。

そして、East Venturesの金子さんと知り合い「明日東京に来るなら1,000万円出資する」とご提案をいただきました。これに二つ返事で「行きます」と答えたことで、東京に引っ越して会社を本格的に始めることにつながりました。

サンクコストをかけないことが事業成功へのポイント

大久保:今のサービスに至るまでの経緯を教えていただけますか?

岩佐:起業当時の私は、ただの金髪の大学生エンジニアで、良いものを作れば売れると幻想を抱いていました。

そこから金子さんと出会い、AR領域のプロダクトを作ろうという話になり、AR技術でテーブルにおにぎりを100個出せるというものを作りました。

それ自体がすぐ成果に結びついたわけではないのですが、アイディアを気に入っていただけて、そこから別の案件につながり、初の売上獲得となります。

そこから方向性を変えて「社会課題を解決するサービス」を軸に開発を行い、初期段階である程度の売上にはつながりましたが、それと同時に限界を感じるようにもなりました。

ブレイクスルーのきっかけは先輩起業家からの学び

大久保:その後ブレイクスルーのきっかけがありましたか?

岩佐:とある企業のビジネスコンテストで優勝したことをきっかけに、開催元の会社で初めてのエンジニアインターン生として働くことになりました。

そこで申し込みのWebサイトを担当し、年間数億円のコスト削減に成功しました。それに合わせて大企業が大きく変わっていく様を目の当たりにしたことが、私の意識が変わる大きなきっかけとなりました。

しかし、エンジニアとしてだけでなく、起業家としても成果を出していく必要があり、先輩起業家の方に事業の作り方をレクチャーしていただきました。

まずはとにかくサンクコストをかけないことが大事だと学びました。時間やお金を使って開発してしまうと、作ったものを使う理由しか探せなくなってしまうからです。

次に、大きなお題を設定してリサーチを繰り返すことが大事で、わからないことが出てきたら専門家に聞くことを徹底することを学びました。

これらを元に、事業のアイディアを取捨選択していくと、次第に論理の飛躍になる部分が発生するので、そこが初めて仮説になります。

プロダクト開発前に20社からの問い合わせを獲得

大久保:この学びからどのように行動を変えていきましたか?

岩佐:思い返すと、これまでは思い立ったらすぐにプロダクトを作っていたので、まずはリサーチをすることにしました。

具体的には、セキュリティ分野で一番良い市場はどこだ?というお題を設定し、セキュリティ分野の執行役員を務めていた方などにヒアリングを重ね、クラウドサービスのセキュリティに辿り着きます。

トップダウン的な発想でその領域にたどり着いただけでなく、企業からもクラウドサービスのセキュリティ教育について相談をもらったりしていたため、これはいけると思いました。

そしてプロダクトを作る前に「1ヶ月後にプロダクトをリリースします」という発表を行いました。すると、20社ほどの問い合わせを獲得し、商談すると7〜8割ほどの企業から契約すると言われました。

そこからプロダクトを作り上げ、2022年3月にベータ版をリリースしました。

大久保:最初はサンクコストをかけないという点が、エンジニア社長にとって非常に良い気づきとなったようですね。

岩佐:今でも大切にしている考え方です。

新しい機能やサービスをプロダクトに実装するかどうかを決める前に、一定のお客様にテスト利用していただき、喜んでいただけた場合にのみ実装するようにしています。

最初の事業作りだけでなく、その後の事業をブラッシュアップする上でも重要な考え方だと思います。

大久保:先にニーズを確認して、プロダクト開発をするという順番に切り替えたとのことですが、その後は順調だったのでしょうか?

岩佐:開発発表後の問い合わせは、さほど増えることはありませんでした。

理由としては、セキュリティの分野は自分から導入したいというモチベーションの方は決して多くはなく、「やらなければいけないもの」という意識の方が多いためです。

そこで日本で1番セキュリティに困っている企業はどこ?と社内で話し合ったところ、すぐに出てきたのが大企業でした。そこからすぐに大企業向けのサービスに方針を変えることになります。

大久保:法人営業という色の違うことをやらなければいけない大変さもあったのではないでしょうか?

岩佐共同創業者の1人が営業経験を持っていたため、チームとしてバランスの取れた動きができていたと思います。

大久保:自分のできないことができる人と一緒に取り組むことで上手くいったんですね。

クラウドサービスが主流になった今だからこそ「セキュリティの自動化サービス」が必要

大久保:Cloudbaseのサービスについて伺えますでしょうか?

岩佐:AWSやGoogle Cloud、Microsoft Azureなどのクラウドサービスをスキャンするプログラムを組んで、セキュリティリスクを可視化するサービスを提供しています。

クラウドシステムが主流となった今では、日々構成が変わったり、クラウドを使うユーザーが増えたりするため、システムを常にチェックしていく必要があります。ここに我々の自動化サービスを選んでいただくニーズが増えている理由があります。

大久保:セキュリティに関するコストを抑えられるだけでなく、監視する頻度を考えると、人の稼働も最小限に抑えられ、さらに取得できるデータの精度も向上するということですね。

岩佐:我々のサービスはクラウドのセキュリティ分野を狙って、事業を確立できました。

海外でも、類似のサービスを提供している企業はあります。

ただし国内にセキュリティリテラシーの高い人材はまだまだ少なく、海外製品を使用してできることは、言い換えればセキュリティの「健康(リスク)診断」のみであることが多いです。

「リスクを検知し、トリアージ(処置)して、改善する」というサイクルを回していかなければ、リスクが残り続けてしまい根本の解決には繋がりません。

そのため、どんな時も本質的に課題解決ができる存在でありたいと考えています。

今後はクラウドだけでなく、AIを中心としたさまざまな時代の波が発生すると思いますので、そういった時に本質的な課題解決をしていきたいと考えています。

そして時代の波が発生した時だけでなく、新しいサービスが世の中に浸透していく際にも課題は検出されるため、そういった時にも役に立つ存在として、問題を解決していきたいです。

大久保:名だたる大企業でもまだ手をつけていないところがたくさんありそうですよね。

岩佐:伸び代は大きいと思います。

これまでクラウドサービスに取り組んでいなかった企業がセキュリティ面を強化することで、便利なクラウドサービスを事業に活用できるようになります。

大久保:守りを固めると攻めに転じられるということですね。

セキュリティ分野から日本の企業や経済を後押ししたい

大久保:今後の展望を教えていただけますか?

岩佐:クラウドサービスのセキュリティが広まっていけば、それぞれの企業で新しい便利なツールを導入していくことができるので、その点をしっかりとサポートしていきたいです。

先進的な技術を用いる際には、個々の成長に合わせてセキュリティソリューションを展開していきたいと考えています。

最終的な夢は、日本の大企業から世界で使用される製品やサービスが生まれる時代にすることと、日本のスタートアップのエコシステムを強固なものにすることです。

弊社の成長によって知見が貯まり、資産を得て新たなスタートアップ企業に投資をしたり、社員の起業につなげていくことも将来の希望として抱いています。

大久保:読者へのメッセージをお願いします。

岩佐:会社をやり始めると、課題がたくさん出てくると思います。

一つ乗り越えても、また出てくるので終わりがありません。

その時に諦めてしまう人もいます。

そのため、改めて自分の胸に手を当てて、何のために会社を立ち上げたのか、人生で何を成し遂げたいのか、誰を幸せにしたいのか、思い返してみることが大切であると考えます。

それが、今日を頑張る理由になるからです。

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(取材協力: Cloudbase株式会社 代表取締役 岩佐晃也
(編集: 創業手帳編集部)



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