賃金台帳とは?作成ルールや保存期間を守らないと罰則があるってホント?!

創業手帳

法律上の定義や台帳作成の基本ルール、作成する方法や注意点を解説


賃金台帳は社内で作成することが義務付けられた書類の一つです。
賃金台帳には法律で定められたルールがあり、作成する内容や保存期間などを誤ると罰則もあるため、作成や保管には注意が必要となります。
また、会社で従業員を雇用すれば、ほとんどのケースで賃金台帳を作らなければいけません。
そのため、会社設立を考えている場合には賃金台帳について理解しておきましょう。

賃金台帳とは何か、定義や作成のルールを解説します。
賃金台帳は自社内で作成するほか、テンプレや外部サービスを活用した方法もあるので、自社に適した方法で効率よく作成してください。

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賃金台帳とは


賃金台帳とは、労働基準法で定義された帳簿の一つであり、従業員の賃金に関連した内容を記してあります。
労働基準法で定められた賃金台帳のルールは厳しく、大変重要なため、他の書類では代用できません。

賃金台帳を作成する上でまず知っておきたい基本、賃金台帳の定義について解説します。ミスなく作成し、正しく扱うためにチェックしておきましょう。

労働基準法で定義

賃金台帳とは、労働基準法で定められた法定三帳簿の一つです。
法定三帳簿とは、労働基準法第107条に定められた、会社に設置義務のある帳簿のことを言います。
法定三帳簿は、作成し保存しておく義務があり、義務を怠った場合には罰則が適用されるかもしれません。

法定三帳簿の賃金台帳以外の2つは、労働者名簿と出勤簿です。
これら3種類の帳簿は、それぞれに保存期間のルールや記載が必要な従業員の条件などが少しずつ異なります。
そのため、それぞれの帳簿で誰が対象となり、いつまで保存すべきか、正確に知っておくことが大切です。

賃金台帳と給与明細の違い

賃金台帳は、従業員の賃金に関する情報を記載するものですが、それと同じようなものに給与明細があります。
給与明細は賃金台帳とは異なり、法律で作成が義務付けられている書類ではありません。
また、記載する内容も異なっており、賃金台帳のように詳細な内容を記載しなくても良いとされています。

そのため、給与明細は賃金台帳の代わりにはなりません
「給与明細を作っているから大丈夫」と賃金台帳を作成しないと、問題になるため注意しましょう。

賃金台帳のルール


賃金台帳は作成が義務付けられた帳簿の一つであり、他の書類で代用できません。そのため、ルールに沿って作成し、保存することが重要となります。

こちらでは、賃金台帳の作成ルールについて解説します。項目は労働基準法第108条で定められており、法律に従っての作成が必要です。

賃金台帳の項目

賃金台帳には、以下の8つの項目を記載することが義務付けられています。
細かい内容もありますが、一つでも不備があると賃金台帳として認められないため注意してください。

また、日雇い労働者や管理監督者など、立場によっては記載が必要な部分が異なる場合もあります。

記載項目 記載する内容
氏名 従業員の氏名
性別 氏名の隣などに忘れずに
賃金計算期間 いつの分の賃金なのか
労働日数 給与支払いの単位ごとに
労働時間数 正確な時間数を
時間外労働の時間数、休日労働の時間数、深夜労働の時間数 残業や割増料金などの計算に
基本給や手当などの金額 基本給と手当は分けて
税金などの控除の金額 保険や税金の控除金額
氏名・性別

氏名と性別は、個々の従業員の賃金台帳を作成するために必要な項目です。
賃金台帳は従業員一人ひとりのものを作成するため、誰の分かハッキリわかるようにしておく必要があります。
性別は忘れがちな項目ですが、記載は必須です。氏名の隣などの分かりやすい場所に欄を作成しておくと良いでしょう。

賃金計算期間

賃金の計算が正しくされているか判断するため、働いた期間の記載も必須です。
何月分の賃金なのか、分かるように記載します。パートやアルバイト従業員にも記載が必要となります。
ただし、日雇い(1カ月を超えて引き続き使用される者を除く)は記入する必要がありません。そもそも日雇いで期間の概念がないためです。

例えば、月末締めの場合であれば、期間は「2020年5月1日~2020年5月31日」です。

労働日数

賃金計算の対象となる期間に、その従業員が働いた日数を記載します。タイムカードや出勤簿と照らし合わせて作成すると間違いがありません。

労働時間数

賃金計算期間中に、その従業員が働いた時間数を記載します。
賃金計算する上で大切な項目で、タイムカードや出勤簿などから賃金計算期間に働いた時間数の合計を計算します。

時間外、休日労働時間数・深夜労働時間数

残業手当、休日出勤、深夜割増手当などの計算で使用するものです。
上記の労働時間と、時間外、休日労働時間数は、それぞれ個別に分けて計算し、記載しなければなりません。
労働監督署から厳しく見られる項目と言われています。

経営者などの管理監督者は、時間外労働時間や休日労働時間は記載する必要はありません。しかし、深夜労働時間数は記載が必要です。
これは、管理監督者も深夜労働に対してのみ、深夜労働手当を支払わなければならないためです。

基本給、手当・その他賃金

基本給と諸手当の金額をそれぞれ手当ごとに記載します。
給料の合計額だけを記すのでは不足で、項目をそれぞれ分けて記載しなければいけません。

また、現物給与など通貨以外のもので支払わる賃金がある場合には、その評価総額を記載する必要があります。
物品の無償支給のみならず、割引による販売や土地の無償貸付なども、その差額である利益を記載します。

控除

健康保険や雇用保険といった、法令及び労使協定に基づいて、賃金の一部を控除した場合には、その額を記載します。
また、それ以外にも会社独自で控除している親睦会費も記載してください。

賃金台帳の保存期間

賃金台帳のルールは、記載すべき項目だけでなく保存期間についても定められています。
賃金台帳の保存期間は、従業員の賃金について最後に記載した日から3年間
その期間が経過するまでは、その従業員の台帳を処分してはいけません。

法定三帳簿はどれも3年間保存することになっていますが、それぞれ起算日が異なっています。
労働者名簿の起算日は退職や解雇した日から3年、出勤簿は最後の出勤から3年です。
退職などで記載が止まった従業員の帳簿は、それぞれの帳簿ごとに必要な保存期間を経て処分します。

賃金台帳の対象者

賃金台帳は、従業員すべての分を作成するとは限りません。
ほとんどの従業員が対象ですが、中には対象外になる働き方もあります。

役員の賃金台帳も、社会保険の加入対象者であれば、全員作成が必要です。
ただし、管理監督者に該当する場合には、記載しなくてもいい項目があります。
「時間外、休日労働時間数・深夜労働時間数」で前述したとおり、必要な項目のみを忘れずに記載しましょう。

パートアルバイトの従業員についても賃金台帳の作成は必要です。日雇いの場合も記載の仕方は違うものの、作成義務はあります。

賃金台帳の罰則

賃金台帳の作成は労働基準法で定められた事業主の義務です。
賃金台帳の作成義務を怠った場合には、罰則の対象となるかもしれません。
賃金台帳の罰則は、30万円以下の罰金です。ただし、すぐに罰則が適用されることは少なく、よほど悪質だった場合のみ、可能性があります。

法で定めた基準に満たない、そもそも作成を怠った、といった場合には、労働基準監督署からの是正勧告が行われ、改善を求められ、それに従わなかった場合には、罰則を適用される可能性があります。
まずは、労働基準法で定めた内容を漏れなく記載した賃金台帳を作成し、指示があったら誠実に対応しておけば、罰則の対象にはならないでしょう。

賃金台帳の書き方


賃金台帳を記載する場合には、ルールに従って書くことが大切です。
しかし、賃金台帳の記載する内容については決められていますが、記載する様式は原則として自由とされています。
様式や作成方法については、それぞれの企業や担当者の使いやすい方法を選択しましょう。

主な賃金台帳の作成方法について紹介します。

エクセルで作成

賃金台帳の様式は、特に定められていないため、事務で使いやすいExcelソフトでの作成も可能です。
シートをいくつも増やせて、タブで管理しやすいため、個別の台帳も使いやすくなります。
シートを分けて個人別に台帳を作成し、それぞれに年間の実績を集計できる計算式を入れると便利です。
一度テンプレートを作成しておくと、入社対応も楽になるかもしれません。

テンプレートを活用

もともと賃金台帳として体裁が整えられたテンプレートを活用すれば、自社で作成する手間が省けます。
また、さらに権威あるテンプレートであれば安心です。テンプレートを使いたい場合には、厚生労働省の公式サイトに掲載してあるものが良いです。
ダウンロードコーナーから無料で取得できます。

社会保険労務士に任せる

賃金台帳の作成に自信がない場合には、社会保険労務士に依頼して作成してもらうのも良い方法です。
労務のプロである社会保険労務士であれば、作成の代行や帳簿の調整、作成のアドバイスが得られるでしょう。
費用は掛かりますが、安心で手間がかからない方法です。

創業手帳では、会社を経営していく上で必要な専門家をアドバイザーがヒアリングし、ご紹介をしております。ご相談・ご紹介は無料です。

会計ソフトを使う

会計ソフトでも、賃金台帳を作成できるものはあります。
会社の経理には会計ソフトを使っているケースも多いため、違和感なく導入できます。
また、経理業務や労務まで、トータルで管理でき、事務の効率化を目指せるかもしれません。

賃金台帳に関する注意点


賃金台帳を作成するにあたっては、労働基準法で定められたルールを守ることが重要です。
また、保管義務についても定められた要件を満たさないといけません。

賃金台帳のルールや要件を満たすために注意したい点を解説します。
ミスやルール違反をできるだけ避けるために、慎重に作成にあたりましょう。

市販品を使う場合、基準を充たしていないことがある

賃金台帳を作成する際には、Excelでの自作やテンプレの使用も可能ですが、市販品の賃金台帳を使う場合もあり得ます。
市販の賃金台帳を使って作成する場合には、自身で「この賃金台帳は法の基準を満たしているか」を確認することが必要です。

市販の賃金台帳の中には、必要な項目を満たしていない製品も含まれています
ルールに則って作られた台帳もありますが、そうではない場合、作成した台帳が無駄になってしまうかもしれません。

市販品を使って賃金台帳を作成する際には、上記で解説した8つの項目がすべて含まれているか、確認してから作成してください。
使用する側も正しい知識を持っていることが求められます。

パソコン保存には条件がある

賃金台帳の保管、保存は、紙ベースの場合には場所も取り、管理も大変です。
そのため、パソコンでデータとして保存したいと思う事業者もいるでしょう。ペーパーレス化が進んでいる近年、賃金台帳のデータ保存も可能です。
ただし、データ保存するためには、定められた要件を満たす必要があります。

データ保存するための要件は以下の点です。

  • 法令で定められた要件を満たし、画面や印字などですぐに開示できる状態であること
  • 労働基準監督官の指示があった時に、すぐに必要事項を提出できるシステムであること
  • 間違って消去できないようになっていること
  • 長期保存ができるシステムであること

 

行政解釈(通達)によって認められているため、必要な要件を満たしていれば、データ保存も検討してみてください。

まとめ

賃金台帳は、労働基準法で定められた法定三帳簿の一つです。
作成が必要な従業員分の台帳を欠かさず作成し、保存することが求められます。
賃金台帳には厳しいルールがあり、法に基づいて正しい内容で作成し、定められた期間中は必ず保管しましょう。

賃金台帳の作成に不安がある、手間をかけたくないという場合には、プロに相談するのも良い方法の一つかもしれません。
保存、管理の方法は紙ベースだけでないので、自社で管理しやすい方法を選ぶことも大切です。

「プロに頼みたいけど、どこにお願いしたらいいのかわからない」「どのくらいの費用がかかるんだろう」など、専門家への依頼は迷う事が色々。

ご相談・ご紹介は無料です。

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(編集:創業手帳編集部)

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