ものづくり補助金〔ビジネスモデル構築型〕の2次公募が1月15日より開始!
補助上限額は1億円!中小企業の課題解決につながる〔ビジネスモデル構築型〕とは
令和3年1月に、ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)の2次公募が開始されました。
自社の資金調達となる、ものづくり補助金(一般型・グローバル展開型)とは異なり、ビジネスモデル構築型には「地域や業界の枠を超えて中小企業の経営を底上げする、高い視座からの事業計画」が求められます。
この記事では、ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)の概要や、(一般型・グローバル展開型)との違い、申請方法や要件について詳しく解説します。
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この記事の目次
ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)とは
ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)とは、中小企業の革新的な事業計画策定を支援するものです。
複数の中小企業が革新的なビジネスモデルや事業計画を自力で作れるようになり、継続的に生産性を高めていくための「仕組みづくりに対する支援」といえます。
ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)の補助対象となるのは、複数の中小企業の課題解決につながるビジネスモデル構築に取り組む事業者です。
事業期間内に、30者以上の中小企業の付加価値や賃金を一定以上に押し上げることが補助要件とされています。
2次公募のスケジュール
申請受付開始から公募締切、以降のスケジュールに要する期間は、1次公募とほぼ同様の期間が設定されています。
【2次公募のスケジュール】
(ビジネスモデル構築型)と(一般型・グローバル展開型)の違い
ビジネスモデル構築型と一般型・グローバル展開型には、「補償対象」「補助金額上限と補助率」「補助対象経費」に違いがあります。以下でそれぞれの違いについて解説します。
補助対象の違い
ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)は、複数の中小企業が革新的なビジネスモデルや事業計画を自力で作れるようになり、継続的に生産性を高めていくための仕組みづくりに対する支援といえます。
- 公募要領では、以下のような表現が使われています。
-
- ビジネスモデル構築型・・・複数の中小企業を束ねて支援する「面」の支援
- 一般型・グローバル展開型・・・中小企業個社に対する「点」の支援
一般型・グローバル展開型が個々の中小企業に対する支援であるのに対し、ビジネスモデル構築型は、30者以上の中小企業を巻き込みます。
それぞれの中小企業が、それまでになかった新しい取り組みを始めるのに役立つサービスや、ビジネスインフラとなるプログラムを作る法人に対して、補助金を支払うというものです。
つまり、一般型・グローバル展開型は「点」(個々の中小企業)を支援するための補助金であり、ビジネスモデル構築型は「面」(最終的に30者以上の中小企業)の支援を行う事業者(法人)に対する補助金になります。
ビジネスモデル構築型の補助対象となるのは、任意団体や地方公共団体、個人事業主を除く法人です。補助対象には、大企業や財団・社団法人なども含まれます。
一般型・グローバル展開型の補助対象は、中小企業基本法に定義される中小企業と組合等で、みなし大企業(大企業と一定の資本関係がある等)は除外されます。
補助金額上限と補助率の違い
ビジネスモデル構築型と一般型・グローバル展開型の「補助金額と補助率」は、以下のとおりです。
ビジネスモデル構築型 | 一般型 | グローバル展開型 | |
---|---|---|---|
補助金額 | 100万円~1億円 | 100万円~1,000万円 | 1,000万円~3,000万円 |
補助率 | 大企業1/2 それ以外の法人2/3 |
〔通常枠〕中小企業者 1/2 小規模企業者・小規模事業者2/3 |
中小企業者1/2 小規模企業者・小規模事業者2/3 |
事業期間 | 交付決定日から10カ月 | 交付決定日から10カ月 採択発表日から12カ月後の日 |
交付決定日から12カ月 採択発表日から14カ月後の日 |
補助金額の規模の違いは、それぞれの支援の目的とそのためにどんな費用が補助対象となるのかに関わってきます。
またビジネスモデル構築型は大企業が補助対象に入ります。
補助の対象となる事業には、10カ月以内という事業期間が設定されており、この間にかかった費用が補助対象経費となります。
補助対象者が実績報告を行った後に事務局の確定検査が入り、補助金額が決定され、その後に補助金が支払われます。
補助対象経費の違い
ビジネスモデル構築型と一般型の補助対象経費は、一部共通するものがあります。
ビジネスモデル構築型 | 一般型 |
---|---|
人件費 | - |
旅費 | - |
会議費 | - |
消耗品費 | - |
広報費 | - |
機械装置・システム構築費 | 機械装置・システム構築費 |
謝金 | 専門家経費 |
運搬費 | 運搬費 |
クラウドサービス利用費 | クラウドサービス利用費 |
知的財産権関連経費 | 知的財産権関連経費 |
外注費 | 外注費 |
- | 技術導入費 |
- | 原材料費 |
補助対象となる経費で、ビジネスモデル構築型と一般型に共通するものは、ハード面の設備投資に加えて外部専門家によるコンサルティングや技術指導に支払う費用、知的財産権取得にかかる費用などです。
一般型は、自社で新商品・サービスの開発や新生産方式・新提供方式の導入を行う場合の補助対象なので原材料費が含まれます。技術導入費は、ライセンス生産等を行う場合の費用です。
ビジネスモデル構築型は、30者以上の中小企業に支援を行うことが目的となるため、PRのための広報費や講演会等を行う場合の会議費といった、人を集めるための費用が補助対象になっています。
また、一般型の新規事業は、本業の延長線上ととらえられることから人件費は含まれません。ビジネスモデル構築型では、30者以上に対応する事務局的な機能も求められることから、事業に専従する人員の人件費が補助対象となっています。
補助対象要件
事業計画の達成要件は、一般型と同じです。実施する事業計画(3年~5年)が以下の成果を達成することが求められます。
- 事業計画の達成要件
-
- 付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が年率3%以上増加すること
- 給与支給総額が年率1.5%以上増加すること
- 事業場内最低賃金が地域別最低賃金を30円以上、上回ること
上記に加えてビジネスモデル構築型では、
支援先企業の80%以上が事業計画を実行できるプログラム内容であること
という一文が加えられています。
80%という評価の具体的な内容は公募要領からはわかりませんが、補助金支給後の達成目標とされています。
申請方法と審査方法
申請は、補助金の電子申請システムjGrantsを使って行います。jGrantsにログインするためには、gBizIDプライムアカウントの取得が必要です。
gBizIDは、企業や個人事業主が行政サービスへの電子申請の際に使う認証システムで、gBizIDエントリー、gBizIDプライム、gBizIDメンバーの3種類があります。
当補助金の申請に必要となるのは、gBizIDプライムです。gBizIDプライムは法人代表者、個人事業主のためのアカウントになります。
アカウント取得には、印鑑証明書・印鑑登録証明書の郵送や、スマートフォンによるパスワードの受信などの手続きが必要です。
申請からアカウント登録まで2週間程度かかるので、事前に登録手続きを行ってください。
申請方法
ものづくり補助金(ビジネスモデル構築型)を申請する場合、電子申請システムのjGatansに以下の情報を入力します。
- 申請時の入力情報
-
- 1. 基本情報(会社名、所在地、連絡先等)
- 2. 提出資料
(1)事業計画書(プレゼンテーション資料) ※pdf形式、A4・20枚以内
① 事業タイトル(ビジョン・ミッション)
② ニーズ・解決したい課題
③ 支援ターゲットとなる中小企業とその数
④ 提供する支援プログラムの内容
⑤ ビジネスモデルの特徴(革新性、拡張性、持続性)
⑥ 事業実施体制とスケジュール
⑦ プログラム実施後の中小企業の事業の自立を促すとともに、中小企業の資金需要をふまえた支援策の内容
(2) プレゼンテーション動画 ※10分以内、720p・300MB以下、mp4・mov形式
(3) 経費内訳
(4) 直近2年間の決算書等 ※未決算企業の場合は事業計画書及び収支予算書
なお、提出資料の内容が採択結果に直結します。
(1)事業計画書(プレゼンテーション資料)と(2)プレゼンテーション動画には、審査項目を意識した作り込みが求められます。
事業計画書とプレゼンテーション動画には、それぞれ文量やフォーマット、プレゼンターなどに規定があり、要件を満たさない場合は審査されないので注意が必要です。
審査項目
事業計画の評価のポイントは、面的な広がりという視点で「拡張性」「持続性」という項目が重視されます。これは、一般型・グローバル展開型の審査項目とは異なる部分です。
- 審査項目
-
- 1.革新性(中小企業の生産性向上を推進する観点から)
→ 新規性
→ 模倣困難性
→ 競合よりも優れたアプローチ - 2.拡張性(中小企業を相手にした民間サービスとして)
→ 地域・業種を超えた広がり
→ 生産性向上の効果が拡大
→ 中小企業の自立を促す資金配分 - 3.持続性(民間サービスの創出を後押しする観点から)
→ 資金・人員の適切さ、補助事業終了後に収益化・自立化することが可能
→ 中小企業が自立的にビジネスを継続できる - 4.政策的意義(補助金を活用して支援する観点から)
→ 技術開発・構造的課題解決に貢献
→ 日本経済・地域経済に波及
→ 中小企業支援に関する知見・データが得られる
- 1.革新性(中小企業の生産性向上を推進する観点から)
一般型・グローバル展開型では、「経営革新計画の承認」や「事業継続力強化計画の認定」など審査に加点される要件があり、申請時に添付書類として提出します。
一方で、ビジネスモデル構築型には、審査の加点項目となる添付書類等はありませんが、「パートナーシップ構築宣言(※)」を宣言・公表している事業者は加点されます。
(※)パートナーシップ構築宣言とは、サプライチェーンの中での取引相手に対し、下請け振興法の振興基準遵守と、取引適正化に取り組むことを宣言した事業者であることを証明するための登録制度です。
1次公募の採択案件の事例
ものづくり補助金総合サイトでは、採択された事業のプレゼンテーション資料が掲載されています。
それぞれの資料を閲覧することで、ビジネスモデル構築型の面的支援のイメージがつかめるでしょう。以下の表は、ビジネスモデル構築型の1次公募(2020年4月28日~6月12日)の採択者の一覧です。
商号又は名称 | 都道府県 | 事業計画名 |
---|---|---|
公益法人岩手県南技術研究センター | 岩手県 | ウルトラファインバブルによる中東北の地域活性化プログラムの構築 |
一般社団法人運輸デジタルビジネス協議会 | 東京都 | 物流現場のイノベーションを実現する、様々なデバイスに対応する位置情報プラットフォーム構築事業 |
一般社団法人ファクトリーサイエンティスト協会 | 東京都 | 向上のIoT化支援スモールビジネス |
アクセンチュア株式会社 | 東京都 | 会津コネクティッドインダストリーズ |
一般社団法人離島百貨店 | 東京都 | 「島シェア」による離島地域照射のネットワーク化 |
株式会社ロフトワーク | 東京都 | デザイン経営によるビジネスモデル構築支援事業 |
ヤマガタヤ産業株式会社 | 岐阜県 | オンライン上にモデルハウスがたくさん集まった「デジタル展示場」で、地域の人と森を守るプロジェクト(サスティナブルな森林と人の未来のために) |
株式会社テクノ二十一グループ | 愛知県 | 中小・中堅事業者のための拡張的ロボット工場受託プログラム |
公益財団法人大阪産業局 | 大阪府 | 中小企業のスマート化による生産性向上F/S支援事業 |
株式会社立花エレテック | 大阪府 | 革新的3Dモノづくりモデル構築事業 |
明日香村商工会 | 奈良県 | 古都未来イノベーション創出ネットワークによる支援ビジネスモデル構築事業 |
株式会社MOT総合研究所 | 山口県 | 地方スーパーのテナント店におけるDX導入支援計画、埋もれた顧客・販売データ等を活用し中小・零細小売店の再生を支援 |
株式会社シーアンドイー | 福岡県 | 越境クラウドファンディングを活用した日本食品のローカライズ海外展開支援 |
株式会社ワクフリ | 福岡県 | 中小企業のDXを支援するサポート組織の構築事業 |
富士ゼロックス福岡株式会社 | 福岡県 | シェアリング型マーケティングプラットフォームを活用した面的販売支援プログラム |
木村情報技術株式会社 | 佐賀県 | ニューノーマルの対応を目指す中小企業のための営業活動支援事業 |
このように、大手企業・公設の試験研究機関・業界団体や公益法人・中小企業など、さまざまな立ち位置の事業者が中小企業支援に取り組んでいます。
支援プログラムの事例
公募要領では、以下のような支援プログラムの例が示されています。
資料に記載があるとおり、事業計画の内容は上記の4つに限定されるものではありませんが、採択案件の内容として上記の例に当てはまるものを挙げてみます。
- A.面的デジタル化支援(中小企業のバックオフィス業務等のDXを支援する新規事業等)
-
- アクセンチュア株式会社 (東京都)
「会津コネクティッドインダストリーズ」
- アクセンチュア株式会社 (東京都)
- C. ロボット導入FS(ロボットや3Dプリンタ等を用いたビジネスモデル転換を試行等)
-
- 株式会社テクノ二十一グループ (愛知県)
「中小・中堅事業者のための拡張的ロボット工場受託プログラム」
- 株式会社テクノ二十一グループ (愛知県)
問い合わせ先
ものづくり補助金の応募申請書類お問合せ先は、以下のとおりです。
受付時間:10:00~17:00/月曜~金曜(土日祝日および12/29~1/3を除く)
電話番号:050-8880-4053
アイアンドアイ株式会社代表 中小企業診断士 早坂裕史氏のコメント
今回発表された「ものづくり補助金」について、アイアンドアイ株式会社の代表取締役であり、中小企業診断士の早坂裕史氏よりコメントをいただきました。
アイアンドアイ株式会社 代表取締役 早坂 裕史(はやさか ゆうじ)
中小企業診断士(10年)と行政書士(8年)を保有。趣味は車とシャンパーニュ。「歩く経営企画室」をキャッチコピーに、ものづくり補助金等の申請支援を中心に行う。代表取締役を務めるアイアンドアイ株式会社は認定支援機関でもあり、毎年の補助金採択金額は3億円以上、年間の支援企業は150社を超え、歯科業界やIT業界を中心に支援を行っている。
面的支援の意味合いと補助対象者の位置づけをわかりやすく解説いただけますか?
早坂:通常のものづくり補助金(以下、「一般型」と記載します)は「点」の支援とされていましたが、「面」の支援になると補助対象者以外にも支援先事業者を巻き込んだ取り組みが必要になります。いわば「縁の下の力持ち」という立ち位置になります。自社のサービスが他社(30者以上)を支援するような取り組みになっているかを確認してください。
早坂:1次公募で不採択だった事業者の再申請が加わりますので、一般的には申請事業者数は増え、採択率は下がります。採択者数は残りの予算次第かとは思いますが、1次公募と同数程度と思われます。
早坂:補助金の規模が大きく、また30者以上の支援先がいることが前提になりますので、必然的に製造業向けのサービスが多くなります。一方、「島シェア」「デジタル展示場」といったユニークな取り組みも見受けられました。共通しているのはITやIoTを駆使した取り組みになっている点です。30者以上に支援を行っていくことを鑑みると、この傾向も当然と言えます。
早坂:補助金額の大きさに捉われないことです。当然、実現可能性も審査されますので、必要以上に背伸びしたり、虚偽の申請内容(社内体制等)を記載したりすることは避けるべきです。本事業は採択されることよりも、採択された後に補助事業を推進していくことのほうが難しいです。経営計画や経営戦略に合致しているかどうか見極めた上で申請することが望ましいです。
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(監修:
アイアンドアイ株式会社/早坂裕史)
(編集: 創業手帳編集部)