賃金支払いにまつわるエトセトラ ~平均賃金、休業手当、解雇手当などのルール
有給休暇中の賃金の決め方、休業手当や 解雇手当の支払いが必要なルールとは?
「有給休暇」とはその名の通り、「給」与が「有」る「休暇」である。仕事はお休みだが、従業員に給与は支払われる。有給休暇は社員が自主的に取るものだが、会社の業績悪化などの理由で、しかたなく社員を休業させたり、最悪の場合は、解雇したりしなければならないかもしれない。そういう場合は、社員の生活保障という考えから、通常の社員の生活賃金に足りる金額を手当として支払われる。
では、これらの賃金や手当の金額は、どうやって決められているのだろうか? 基本的な手順としては、まず平均賃金を計算しておき、その平均賃金を基準にして、有給休暇中の賃金、休業手当や解雇手当の額を算出する。順に説明していこう。
この記事の目次
平均賃金の算出
労働基準法第12条では、平均賃金といわれる賃金が定められている。平均賃金は、次の手当や補償などの算定に使われる。
- 解雇予告手当(第20条)
- 休業手当(第26条)
- 年次有給休暇中の賃金(第39条)
- 業務上の災害に対する補償
- 減給の制裁時の制限額
平均賃金は、原則として「算定すべき事由が発生した日以前3か月間(算定期間)にその労働者に支払われた賃金総額をその期間の総日数で除した金額」で算出される。式にすると以下の通りだ。
ただし算定期間中に産前産後の休業期間がある場合などの例外については計算方法が異なる。また、賃金が日給、時間給、出来高給で決められている場合や、試用期間中も計算方法が異なるので注意が必要だ。必要があれば、詳細は社労士に確認してみよう。
有給休暇中の賃金はどうやって決めるの?
労働基準法第39条で、年次有給休暇中の賃金はまとめると次のように定められている。
- 「平均賃金」もしくは「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」
- 労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数を代表する者との書面による協定により「健康保険法による標準報酬日額に相当する金額」を選択した場合には、これによる。
ただし、有給休暇中のたびに計算するのは、事務処理も面倒だ。出来高払い等の請負制の場合を除き、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」、つまり、通常出勤をしたものとして取り扱えばラクである。
なお、有給休暇中の賃金について、支払いを違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる。
休業手当が発生するのはどんなとき?
労働基準法第26条では、社員の生活を保障するため「使用者(会社)の責めに帰すべき事由によって休業となった場合は、その期間中の平均賃金の60%の手当てを支払わなければならない」と定めている。
つまり、会社側に責任がある場合は、休業手当の支払いが必要になるのだ。
ここで、「使用者の責めに帰すべき事由」か否かについてが気になる。一般的に該当しないものは、「天災事変による休業」、「労働争議における工場閉鎖による休業」、「ストライキ不参加者である一部の者に休業を命じた場合」などである。
解雇手当の支払いルールは?
労働基準法第20条では「解雇するには解雇予告手当(30日以上分の平均賃金)を支払わなければならない」と定めている。
解雇予告と解雇予告手当を併用することもでき、1日分の平均賃金を支払った場合は、解雇予告の日数を1日短縮することができる。例えば、「18日前に解雇予告した上で、12日分の予告手当を支払う」といった具合である。
一方で、所轄労働基準監督署に認定を受けた場合には、解雇予告手当の支払いは不要となるケースがある。また、次の者は当然に解雇予告手当の適用除外者となるので押さえておくとよいだろう。
- 日々雇い入れられる者
- 2か月以内の期間を定めて使用される者
- 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
- 試みの使用期間中の者(ただし雇入れ後、暦日で14日を超えて引き続き使用される者を除く)
まとめ
平均賃金の計算や、有給休暇中の賃金、休業手当や解雇手当額の算出などは、細かい条件を考慮すると、大変複雑になる。よって、基本的なところを押さえておき、専門家である社労士などに随時相談するとよいだろう。
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