経営力向上計画を作り、「ものづくり補助金」採択を有利に進めよう!
経営力向上計画の概要と取得のメリットとは?
(2016/10/28更新)
「経営力向上計画」をご存知ですか?今年の7月にスタートしたばかりなのでご存知ない方もおられるのではないかと思います。でも認定企業数は7月29日時点で47社だったものが8月24日時点では482社、9月28日時点では1,621社と、急拡大しています。
申請企業は何を狙いとしているのでしょう。主観が入りますが、それはものづくり補助金を念頭に置いているからだと思います。
今回は「経営力向上計画」がどういうものなのか?そしてどう活用したら良いのか、まとめてみました。
経営力向上計画の立ち位置
2015年10月6日の創業手帳WEB版に「経営革新計画にトライしてみよう」というコラムを書きましたが、この「経営革新計画(経営革新)」は「中小企業新事業活動促進法(活動促進法)」に基づくものでした。また同法には、「異分野連携新事業分野開拓計画(新連携)」という計画も定められておりました。今般、活動促進法が「中小企業等経営強化法」という名前に変り、新たに「経営力向上計画」が加わりました。
因みに第2章は創業についてですが、本コラムでは説明は省略します。
ここでは、経営革新、新連携もまだ制度として利用できるのだということを頭の片隅に入れておいていただければ大丈夫です。
経営力向上計画とは
経営力向上計画は中小企業の経営力強化(生産性向上)を目的としています。しかしどうすれば生産性が向上するのか、その手立てが分からない経営者の方もおられるかもしれません。そこで国が前もって生産性向上策について業種毎に事業分野別指針を作り、分かりやすく例示しています。中小企業は該当する指針を選択して経営力向上計画を策定します。
経営力向上計画の計画期間は3~5年で、経常利益率などの経営指標について定められた伸び率以上の数値目標を策定する必要があります。
申請先は国で、経営革新等支援機関から計画申請のサポートを受けることも可能です。
経営力向上計画取得のメリット
表を見る限り、経営力向上計画にはいろいろメリットがあるように見えます。ただ「それ程のメリットではない」というのが私の意見です。
例えば、固定資産税の減免ですが、10百万円の機械でみれば年7万円程度の減免です(3年間では初年度が半額なので17.5万円)。これが1億円、2億円の機械であれば70万円、140万円となるので、それなりに申請するメリットも出てくるでしょうが…。
中小企業投資育成会社の支援と言っても、「資本金が3億円を超えていても認定企業は投資育成会社の投資を受けられる」というもので、そもそもそのような中小企業は中小企業全体のごく僅かではないでしょうか。
経営力向上計画をどう活用するのか?
経営力向上計画の良いところは以下の3点と思います。
- 既存事業による生産性向上でも申請できる(例えば、経営革新は新事業活動が必須です)。
- 計画書のボリュームがA4二枚と少なく、且つフォーマットが分かりやすい。
- ものづくり補助金の加点対象になる。
個人的にはこの「ものづくり補助金の加点対象になる」が一番大きいのではないかと思います。
上記は前回のものづくり補助金申請書(事業計画書)の抜粋です。前回より経営革新計画に加えて、経営力向上計画のチェック欄が設けられました。尚ものづくり補助金は平成28年度の補正予算で近々公募が予定されています。
【ご参考(平成28年度補正予算PR資料より)】
⾰新的ものづくり・商業・サービス開発⽀援事業(ものづくり補助金)
- 中⼩企業IT経営⼒向上⽀援事業中⼩企業者等が第四次産業⾰命に向けて、IoT・ビッグデータ・AI・ロボットを活⽤する⾰ 新的ものづくり・商業・サービス開発を⽀援。 (補助上限:3000万円、補助率:2/3)
- ⼩企業者等のうち経営⼒向上に資する⾰新的ものづくり・商業・サービス開発を⽀援。 (補助上限:1000万円・500万円、補助率:2/3)
※雇⽤・賃⾦を増やす計画に基づく取組については、補助上限を倍増
※最低賃⾦引上げの影響を受ける場合は補助上限を更に1.5倍(上記と併せ補助上限は3倍)
今回のものづくり補助金にお取組みを考えられている方は、以下の3点をポイントとして下さい。
- 補助対象経費の確認…会社の資金使途が限定列挙されている補助対象経費に含まれるのか、前回ものづくり補助金公募要領などでご確認下さい。
- 経営力向上計画の策定…今回も加点対象となりますので、ものづくり補助金の公募前でも、まずは経営力向上計画に取り組まれることをお勧めします。
- 経営革新等認定支援機関の確保…今回も認定支援機関の確認書が必要になると思われます。
最後に
「経営革新計画にトライしてみよう」でも申し上げましたが、計画を策定し、実行し、計画と実績の差異を検証し、改善していくというPDCAサイクルを自社の経営に取り入れることはとても大事なことです。
その意味では、経営力向上計画はフォーマットが工夫されており、計画策定が苦手な経営者の方でも作り上げることができると思います。経営計画の入口と考えて一度取り組まれてみてはいかがでしょうか。
ただこれも前のコラムで申し上げたことですが、活用できる支援策があるのならば、効率良く組み合わせることも大事です。そういう意味から、「経営力向上計画」はものづくり補助金を念頭に策定されると良いのではないでしょうか。
(監修:城西コンサルタント グループ理事 小野 靖(おの やすし) )
(編集:創業手帳編集部)