税理士との二人三脚で伸び伸びと経営を
株式会社エルカミノ 村上 綾一社長インタビュー
(2019/05/27更新)
税務や経理はもちろん、創業時の資金調達など、起業家が税理士から支援を受けるメリットは多岐にわたります。ではそれが、国内最大級の税理士集団TKC全国会に所属する税理士だった場合はどうなるのでしょうか。TKC会員の支援によって会社の基盤を整え、小学生~高校生を対象とした進学塾を都内8箇所に運営する株式会社エルカミノの村上綾一社長に、税理士の存在について話を聞きました。
税務や経理を税理士にお願いしたことで本来の仕事に向き合う余裕ができた
ー進学塾エルカミノを立ち上げた経緯を教えてください。
村上:大手進学塾で講師を経験したのち、フリーランスとして教材や模試の作成を行うかたわら、知人のお子さんたちを教えるようになりました。
そのうち生徒が増えてきたので、エルカミノを立ち上げたのです。もともと私は数学と算数、副社長は物理と理科を専門にしていたこともあり、昨年までは「理数系専門塾」を看板に掲げて授業を行ってきました。
現在は受験に必要な4科目を総合的に教えながら、引き続き理数系の思考を持った生徒の育成を目指しています。
ー税務面は起業当時から税理士にお願いしていたのでしょうか。
村上:会社を設立して1年が経ち、生徒が50人近くになった頃に「会計面は税理士に相談すべき」と友人の社労士に助言を受けたことがきっかけで、その社労士の友人だった橋本真一先生を紹介してもらいました。当時は法人登記こそしていたものの、税務や経理においてはおざなりになっていたので、すべて橋本先生にお任せしました。
お願いしたことで、講師業や経営という本来の仕事に向き合う余裕ができました。
ー具体的にはどのような面で助けていただきましたか?
村上:お付き合いが始まった時から今に至るまで、毎月監査のために来社してその都度アドバイスをくださるので本当に助かっています。
例えば「人件費の比率を見直しましょう」「生徒の客単価を見直す時期にしましょう」「1年後、3年後を見据えて戦略をこう変えていきましょう」というように、毎月いろいろなご提案をいただいています。時には「黒字だけどさほど良くない」と言われることもありますし、「今月は赤字だけど通年で見れば黒字だからこのままでいい」と言われることもあります。
逆に私からよく相談することは「職員に賞与を何カ月分だったら出せそうか」ということ。その都度、今だったらどのぐらいの見込みで賞与を出せそうかということを計算していただいています。
また、塾の経営においては人件費が一番かかりますが、私は良い先生だと思うとすぐに採用したくなってしまう傾向があるため、橋本先生にストップをかけていただくことも多々あります。
先生方は個々の事情で辞めてしまうことも多く、以前は直近の授業のコマを埋めるために外注の人材派遣に頼っていました。それによって人件費が上がってしまっていたので、橋本先生に「講師に頼る体制よりも社員を増やしていくべき」とアドバイスいただき、社員を増やして意思統一できる状況を目指すようになりました。
経営者である自分は前に前に進み税理士が後ろを守ってくれている
ー資金面以外で転機となった出来事はありますか?
村上:メディアに取り上げられたことは会社の飛躍のきっかけになりました。7、8年前に本を書かないかというご提案が何件か続き、著書が出た頃にテレビの出演が1つ2つ来るようになりましたが、そうしてメディアに取り上げられた途端急に生徒が増えていったのです。今でも問い合わせの3分の1ぐらいは私の著書を読んだという方です。
ー生徒が増えたことによって事業も一気に拡大したのでしょうか
村上:それはありません。塾経営においては質が大切で、先生方を教育するには数年かかります。そこはしっかり確実にやるようにして、1年に1教室というペースで増やしていっています。
余裕が出てくると次の教室について考えるので、毎月橋本先生が電卓を叩き、ギリギリ行けるとなれば新たな教室を契約する。自分は前に前に進み、橋本先生が後ろを守ってくれているという感じです。
社長がやる経営的な戦略などの業務のうち、半分を橋本先生にお願いしているので、私は前に進めばいいだけでとても助かっています。
ー他にこれまで橋本先生に提案いただいたことで良かったことは?
村上:3、4年前に経理の簡略化をご提案いただきましたが、経理の人件費を1人分削減できるほどのものだったのでこれは非常に助かりました。会社の規模が大きくなったことで経費の整理が煩雑になっていたところ、FX4クラウドというTKCの会計ソフトを導入したことで、クレジットカードの明細や入金明細のデータを自動で仕訳入力できるようになりました。
それまでは仕訳表を見ながら入力したり、入金管理においては生徒ごとに目で確認しながら行っていましたが、データを取り込むだけでその作業が数分で終わるようになったのです。
5年前は500人未満、今は1,000人を超える生徒を抱えているので、以前は適切だった会計処理が通用しません。2,000人になった時には次の新たな提案をしてくださるでしょうし、規模に応じた提案をいただけるというのは安心です。採算管理についても、教室が5つぐらいになったタイミングで橋本先生にお願いして、TKCの会計ソフトを使って教室ごとに行うようになりました。
そのおかげで、「どの教室が赤字か」「どの教室が大幅黒字だから会社全体が黒字になっているのか」「どの教室の夏期講習の申込みが多いのか」といったことが分かる上、使っても良い経費の割り振りも可視化できるようになっています。
突き進むだけでは判断が外れてしまうから税理士に頼って伸び伸びと経営をして欲しい
ーTKC会員税理士ならではの支援で良かったことは?
村上:三菱UFJ銀行の「極め」という、TKC会員事務所の関与先企業限定の利率の安い融資を紹介していただけたことは本当に助かりました。
教室を新しく出すには、イニシャルコスト、設備投資、2年分の運転資金、広告費などで最低1,000万円ぐらいの資金が必要になります。そのため、弊社ではこれまで様々な銀行や信用組合などに融資をお願いしてきました。その中で「極め」が良かった点は、固定金利年率が0.4%と低かったところ、他と比べて融資の手続きをスムーズに進められたことです。
ー今後の展望についてもお聞かせください。
村上:10年後、50~60箇所に教室を出すという目標が1つの軸で、今はそこから逆算して考えています。それから、これは創業時から考ていることですが、会社を大きくしてぜひ上場まで持って行きたいです。
ただ、1人でやるには限界があるので、橋本先生をはじめいろいろな方を巻き込んでやっていきたいですね。
ー橋本先生から、税理士の立場でアドバイスをお願いします。
橋本:社長は前に行き、税理士がブレーキをかけたり話を聞いてあげるという組み合わせが最も伸びる関係性だと思っています。
ただ突き進むだけでは判断が外れてしまうので、ぜひ税理士に頼って伸び伸びと経営をしてください。
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(編集:創業手帳編集部)