2025年上半期の企業倒産5,000件超えに。今、経営者が取るべき“資金繰りとコスト対策”とは

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倒産動向を把握することの重要性


日本企業の倒産件数は増加傾向にあります。
帝国データバンクの集計によると、2025年度上半期の倒産件数は5146件(前年同期4990件、3.1%増)に達し、上半期としては2013年度(5,320件)以来となる12年ぶりに5,000件を上回りました。
倒産が増えた背景には複数の経済的要因が関係しています。具体的には、人件費や原材料費の高騰、支援策の終了、金利上昇などが重なって倒産に至っていると考えられます。

中小企業の資金繰り環境は一段と厳しさを増す中、多くの経営者が対策を迫られているのです。
今こそ倒産動向を正しく把握し、足元の資金繰りとコスト対策をしっかり考えていってください。

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倒産件数は8期連続増 小規模企業・個人事業主を中心に厳しさ続く


日本企業の倒産件数増加は8半期連続となり、これは2000年度以降最長です。
倒産の内容を見ていくと、負債額1億円未満の小規模倒産が全体の約7割を占め、特に個人事業主の倒産が目立っています。

倒産の原因としては、最も多いのが販売不振でした。また、売掛金回収難や不良債権の累積といった不況型倒産も8半期連続で増加しています。
物価高倒産は488件判明し過去最多を記録しました。仕入れ価格や人件費を価格に転嫁できず、利益率が低下した企業が資金繰りに行き詰まる事例が多いと考えられます。
以下では、要素別に倒産数の分析をまとめました。

業種別の倒産数

倒産件数を業種別にみると、7業種のうち4業種で前年を上回っています。
中でも多いのがサービス業で、2000年以降最多の倒産件数です。次いで小売業、建設業、不動産業と続いています。
より詳細に分析すると、サービス業の中でも教育や娯楽業が倒産件数を押し上げています。

学習塾の倒産件数が過去最多ペースで推移していて、少子化によって競争が激化していることがわかります。さらに職業訓練校やフィットネスクラブの倒産も目立ちました。

地域別の倒産数

倒産件数を地域別にみると、9地域ある中で8地域の倒産件数が前年を上回っています。

もっとも倒産が多いのが、関東でした。最も増加率が多かったのが北陸で全権が前年を上回っています。
都道府県別にみると29道府県が前年より倒産件数が多く、全国的に倒産件数が増えているようです。

倒産の主な原因とは


倒産と一言でいっても、背後にある原因はそれぞれ違います。どういった原因で倒産しているのか調べました。

1. 販売不振による収益悪化

2024年の倒産状況によると、倒産の主因として販売不振と答えた企業が8割以上で最多で
す。これは今年度に限らず、過去から継続している傾向です。
販売不振は、単純に商品が売れていないだけでなく、戦略上のミスマッチや利益率の低下などが背景にあります。

近年の物価上昇は、家計にダメージを与えるだけでなく企業にも大きく影響を与えています。
売上が減少していなくても仕入れ値が増加して利益が減っている企業は多くあるのです。
物価上昇分を販売価格へ転嫁しても売上が確保できれば利益率も回復します。しかし、転嫁できなければ採算割れに陥ってしまうでしょう。

近年になってコロナ禍で打撃を受けた業種が回復傾向ではあります。
一方で、小売業や宿泊・飲食業では回復が遅れて、利益確保が困難な状況が継続している企業が多いことも倒産が増加している要因です。

2. 物価高倒産の増加

2025年度上半期の物価高倒産は369件で、統計開始以来の最多を更新しました。 多くの起業では、原材料やエネルギーコストの上昇を吸収できない状態です。
特に、製造・飲食業で業績悪化が顕著になっています。

これには、為替変動による輸入コスト増も影響しています。円安となり、エネルギーを含めた輸入品目で価格が上昇、建設や飲食店など内需産業への影響が深刻化しました。
価格転嫁が遅れると、手元資金が少なくなり資金繰りを圧迫します。過剰な債務を抱え資金調達が難しい中小企業は特に苦しい局面に立たされています。

3. 資金繰り難・ゼロゼロ融資の返済負担

ゼロゼロコロナ融資とは、コロナ対策として実施された実質無利子無担保融資です。この融資を受けた企業が経営不振となって返済できず倒産増加の要因となっています。

ゼロゼロ融資を受けてから近年になって返済が本格化したことでキャッシュフロー不足による倒産が増加しています。
その結果、3年連続して300件を超える倒産件数となりました。

支援策が終了してから、金融機関の新規融資姿勢が厳格化して、再借入れが難しい企業が増加しています。
返済原資を営業利益で確保できない企業を中心として、資金ショートに至るリスクが高まっているのです。

4. 人件費・金利上昇による経営圧迫

企業が経営するためにかかるコストは上昇していて、中でも人件費の上昇は大きく影響しています。
最低賃金は2025年10月から全国平均で1,050円となり、人件費負担の拡大に多くの企業が苦しむことになりました。
最低賃金の上昇で経営計画は大きく影響を受けます。商品の販売価格や業務効率、コスト構造など収支への影響をシミュレーションして置かなければいけません。

加えて、金利上昇により既存借入れの返済額が増え、財務体質の弱い企業ほど圧迫を受けるようになりました。
人材確保のための採用コストも上昇し、固定費の削減が困難な状況が続いています。

5. 経営体制の脆弱さ・後継者不在による事業継続の断絶

経営者の高齢化や後継者不在により、事業承継の見通しが立たず廃業・倒産に至るケースが増えているのです。
後継者難倒産は、267件で4年連続で250件を超えて推移しています。
特に中小企業では、経営ノウハウや取引先関係が個人依存していることが多く、引継ぎが困難になりやすい点が特徴です。

事業承継は、早期に計画を立てておかなければ、引継ぎがうまくいかずに事業継続が難しくなってしまいます。
外部人材の登用やM&Aも選択肢として検討することが事業継続の鍵です。

黒字倒産が増加傾向に。利益があっても資金ショートに注意


企業の決算上は利益を計上しているにもかかわらず、手元資金が不足して倒産に至る黒字倒産が増加しています。
帝国データバンクの調査でも、黒字倒産は2024年度から継続的に増加傾向です。つまり、事業成績や売上ではなく資金管理の巧拙が経営の生死を分けているといえます。
ここでは、黒字倒産の主な原因と回避策を整理します。

売掛金回収の遅れや貸倒れが原因となる

黒字倒産は、企業が利益を上げているにもかかわらず、資金不足によって支払いができずに倒産するケースです。
赤字倒産は経営不振で赤字が続いてから倒産に至りますが、どうして黒字なのに倒産するのかと感じる人もいるかもしれません。

黒字倒産する要因は、入出金のタイミングのずれです。取引先が支払い遅延や倒産すると売掛金が回収不能となり資金不足となります。
一方で、売上が増えれば仕入れや人件費が必要です。この入金に対して出金が多くなった状態が解消されないと資金繰りが破綻してしまいます。
特に、売掛債権の比率が高い企業はキャッシュフローが不安定になりやすく、黒字倒産のリスクに注意が必要です。

黒字倒産を避けるには、与信管理を徹底し、信用調査やファクタリングの活用で資金回収リスクを分散することが有効な方法になります。

在庫の増加や過剰仕入れによる資金拘束

過剰となった在庫も資金繰りを悪くする要因です。保管や人件費といった費用負担や在庫処分のための値引きが資金繰を悪化させています。
需要減少期に過剰に仕入れしてしまえば、在庫が資金を圧迫し、現金不足を招く要因となります。

在庫回転率を低下させると帳簿上の利益があっても現金化が遅れて、資金ショートが起きやすくなります。
過剰在庫の問題は、製造業や小売業で発生しやすい問題です。定期的に在庫評価を見直し、データに基づく発注管理を行うようにしてください。

過剰投資や借入返済負担によるキャッシュ不足

設備投資や店舗拡大など、利益計上前に支出が先行する投資が資金繰りを悪化させます。
特に金利上昇局面では、借入金の返済額が増えてしまい営業利益を圧迫しやすいことがあります。

適切な投資は長期的な事業成長に欠かせません。ただし、投資計画はキャッシュフローを基準に策定し、利益と現金残高を連動して管理するようにします。
特に大型の設備投資計画は 資金管理をどうするかよく考えて決断してください。

経営者が今から取り組むべき6つの対策


経営者にとって、倒産件数の増加は決して他人事ではありません。今から取組むべき対策を6つ紹介します。

①資金繰りを「先読み」で管理する

倒産を防ぎ、事業の成長を持続させるためには、資金管理が大切です。毎月のキャッシュフロー表を作成し、3カ月先までの資金繰りを見える化するようにおすすめします。

資金繰り表は、入出金予定を確実に把握できキャッシュ残高を把握するために欠かせません。
融資交渉や支払い計画の根拠となる書類であり、突発的なリスクに対応するためにも役立ちます。
資金繰りの把握とともに、売掛金回収や在庫回転率の改善など、運転資金の効率化を同時に進めて健全な財務体質を目指してください。

②固定費の見直しと価格転嫁の両立

経費を抑えるためには、固定費を見直してください。電力会社、通信会社・リース契約の再交渉により、年間コストを削減できる場合があります。
さらに、業務効率化ツールの導入や外注コストの見直しにより、固定費の構造的削減を図ることも検討してください。

また、物価高への対応が多くの企業で課題となっています。原材料費の上昇分を取引先に説明し、価格転嫁を早期に実施することが安定した収益に必要です。

③公的支援制度の戦略的活用

すでに資金繰りが怪しい、人件費、物価上昇に対応できていないといった場合には、公的支援制度の活用も検討してください。
業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等を行うとともに、事業場内最低賃金をを一定以上引き上げた場合に一部を助成する制度です。

業務改善助成金を活用すれば、生産性向上と賃上げを両立でき、最大600万円の支援を受けられます。
中小企業省力化投資補助事業では、設備・ソフトウェア導入費が補助対象です。
融資を受けたい場合には、金融機関を通じた「伴走支援型特別保証制度」があります。
借入れコストをを軽減し資金繰りを安定化するために役立つ制度なので、取扱金融機関に問い合わせてみてください。

④取引先・金融機関との関係性を「平時」から強化する

資金繰りや事業の方向性に不安がある時には、外部の専門家の力を借りたほうが良いでしょう。
金融機関や取引先とは、資金繰りが厳しくなる前から情報共有をおこなって信頼関係を築いておくようにします。

また、金融機関に定期的に月次試算表や資金繰り表を提示することで、融資や支援策提案を受けやすくなります。
困った時に頼れるネットワークを整えておくことが、資金ショートの回避と事業継続力の向上につながるはずです。

⑤デジタル化・省人化で業務コストを恒常的に削減する

クラウド会計や在庫管理システムの導入により、ヒューマンエラーを減らしながら経理・物流コストを下げられます。

はじめに導入費用がかかりはしますが、中小企業省力化投資補助事業などの制度を活用すれば、AI・自動化ツールの導入費の補助が受けられます。
一時的な経費削減でなく、デジタル化を推進して構造的なコスト最適化を進めることで、長期的に会社の体制を整えてください。

⑥事業ポートフォリオを見直し、収益源を分散する

ポートフォリオと聞くと金融商品をイメージするかもしれません。しかし、事業内でのポートフォリオも考えるようにしてください。
主力事業だけに依存せず、関連サービスやサブスクリプションなど新たな収益モデルを育てることがリスク分散につながります。

社会の変化は早く、多くの企業が対応できずに業績が悪化しています。複数の収益柱を持つことで、外部環境変化に強い経営体質を築けます。
売上構成比は定期的に分析し、不採算事業の縮小や撤退を検討して、コスト削減と成長機会の獲得を目指すようにしてください。

まとめ:データを“警鐘”に終わらせず、行動へつなげよう

倒産件数の増加は、人件費や物価の上昇、販売不振といった多くの要因が原因と考えられます。
これは、それぞれの中小企業全体の経営基盤が試されているようになったとも見て取れます。
資金繰りとコストの管理を「後追い」ではなく「先読み」で行うことが生き残りに不可欠です。
公的支援や経営改善策を実践し、数字をもとに行動へ移すことが安定経営への最短ルートです。現状を把握してすぐに着手できる対策からはじめてください。

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(編集:創業手帳編集部)

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