事業保険とは

事業保険は法人や経営者(含む役員)・従業員などを対象にした保険です。
事業保険の利用目的はさまざまで、保険をかけておくことによってリスクを減らすことができるなど、様々なメリットがあります。

事業保険とは?


事業保険とは、リスク対策や節税などを目的としておもに法人が加入する保険のことです。
もちろん個人事業主も加入できますが、利用者の多くは法人なので事業保険のことを「法人保険」ともいいます。
事業保険は、法人が保険契約者となり保険料を納付し、経営者や役員・従業員などが被保険者となる仕組みです。

事業保険は利用の流れが変化しつつある

数多くの事業保険のうち、かつては「積立機能をもつ定期保険」が法人に人気のある時代が続いていました。
なぜなら、法人にとって大変うまみのある保険内容だったからです。

どんな保険内容だったのか?
    保険料の一部または全部を損金算入することができて、節税効果が高く、解約で積み立てた保険料の大半(80%~100%)が戻ってくるといった内容でした。

しかし、2019年の夏以降は国税庁がこの事業保険に関する保険料の損金算入ルール(※)を変更し、法人が保険加入で得られていたうまみが少なくなってしまったことから利用者も減ってしまいました。
さらに、保険会社側でも保険内容を大きく変更したり、返戻比率の高い保険そのものの取扱いをなくしたりする動きが加速しました。

そのため、現在では事業保険も節税を目的とした利用から、事業保険をかける本来の目的に沿ったものへと利用の流れが大きく変わりつつあります。

(※)事業保険の損金算入ルールの変更については、このあとの「事業保険のメリット」で詳しく解説します。

事業保険の役割

会社経営は、経営者や従業員、顧客、取引先を含む多くの関係者にメリットを多くもたらしますが、同時にリスクもはらんでいます。
そのリスクを最小限に抑えつつ事業を行うのが会社経営の基本。その経営リスクを抑える方法のひとつが事業保険なのです。

事業保険があれば、経営リスク(取引先の突然の倒産による資金繰り悪化)、労務リスク(経営者や会社キーマンの突然の死去)、災害リスク(風水害で商品在庫が使用不能、業務上で第三者から損害賠償請求)などにも備えられます。
事業保険は会社経営で発生する各種リスクを受け止めるクッションの役割を果たしてくれるのです。

事業保険の種類


事業保険の種類は大きく分けて「生命保険」と「損害保険」の2つのタイプに分かれます。
それぞれの保険の意義や特徴などについて詳しく解説していきます。

「生命保険」の対象者と種類は?

まずは、生命保険の受給対象者と保険の種類などについてご紹介します。

生命保険の受給対象者

事業保険のうち生命保険に関して、保険料を支払う契約者は法人ですが、被保険者は経営者や役員、従業員となります。
万が一のことが起こった場合、被保険者の遺族が受給対象者となり、保険金を受け取ることができます。

受給者が経営者や役員の場合、保険金はおもに死亡退職金・弔慰金、相続納税資金、事業承継対策資金などに活用できます。

また、受給者が従業員の場合、従業員が業務上の災害などで死亡したときにも、保険金は遺族への弔慰金、長期の生活保障資金として活用可能です。

税制改正後のおもな生保商品の種類と特徴

2019年6月~10月の税制改正後、事業保険にかかる保険料の損金算入ルールが大きく変わり、それに伴って保険会社が取り扱う保険商品の内容もかなり変更されました。
そこで、現在各社で取り扱われている生命保険商品の中から代表的な種類を3つご紹介します。

99歳満了定期保険
最長加入期間を100歳まで設定できる長期加入が前提の生命保険。満期保険金は満期終了でゼロになりますが、途中解約するとき、その解約返戻金を事業資金や経営者・従業員への各種保障として利用できます。一般的に解約返戻金のピークは下記の新逓増定期保険と比べてもずっと遅く、契約後20~30年後になります。
新逓増定期保険
“99歳満了定期保険と比べると、保険の加入期間が比較的短いタイプの保険。受け取れる保険金が段階的に大きくなり最大で基本保険金額の5倍程度受け取れます。解約返戻金のピークがくるのは比較的早いですが、契約してすぐに解約すると逆に損になる場合も。急に資金が必要となった場合でも解約を急ぐ必要はありません。積立金を担保とした低利の契約者貸付制度も使えるからです。
養老保険
保険の満期時には満期保険金として、加入者が途中で死亡したときには死亡保険金としても活用できる保険です。そのため「生死混合保険」とも呼ばれており、養老保険は従業員向けの退職金・死亡保険金として社員の福利厚生にも使えます。

「損害保険」の種類と特徴は?

事業保険には生命保険以外に「損害保険」もあります。
さらに、損害保険は賠償責任タイプと業務災害タイプの2つに分かれています。

賠償責任タイプ

賠償責任タイプの損害保険は、法人が顧客、取引先、第三者などに業務上で被害を及してしまったときのことを想定して、損害賠償請求に備えるための保険です。
対人・対物の賠償どちらにも使えます。
賠償金額が大きくなればなるほど会社経営は強く影響を受けるので、リスク回避のためにも損害保険に入っておく必要性は高いです。

業務災害タイプ

賠償責任タイプが社外に向けた保険だとすると、業務災害タイプの損害保険は社内向けの保険ともいえます。
業務災害が起こり、従業員が被害(負傷、疾病等)を受けてしまったときに備えるための保険です。

多くの法人がすでに労災保険に加入していて、業務災害にも対応できるようになっています。
しかし、労災保険は公的保険として支給額に上限があるため、追加で民間の事業保険に入っておく方が、業務災害が起こった場合に上乗せ保障ができて従業員の安心にもつながります。

事業保険の6つのメリット


つぎに、法人が事業保険に加入する6つのメリットを解説します。

1. 非常事態への備えができる

保険をかける一番の目的は、非常事態が起こったときへの備えです。
たとえば、天災で会社の資産に大きな被害があって事業運営に支障が出そうなときや、経営者が突然死亡してその不安から債権者が返済を求めて押し寄せてきそうなときなどに活用できます。
事業保険をかけておけばそんな非常事態にも備えられるので、いざというときにも頭を抱えることはありません。

2.経営者が退職金を受取ることができる

経営者は従業員と違い、将来の引退に備えて退職金は自ら準備しなければなりません。
事業保険の多くは解約返戻金がセットされているので、その資金を経営者の退職金に利用することが可能です。
経営者の豊かなセカンドライフのためにも、事業保険を活用できるのです。

3.資金繰りの悪化など緊急時の資金に活用できる

会社経営は本来不安定なものです。
取引先の突然の倒産で自社が資金繰りの悪化に見舞われる可能性もあります。
しかし、そんなときでも社員の給与や取引先・金融機関などへの支払いを遅らせることは、信用の悪化にもつながるため、できるだけ避けなければなりません。

ですが、事業保険さえかけておけば安心です。
なぜなら、事業保険は保険契約そのものが経営資金を一定額社外に積立していることを意味しているので、いざというときに保険に積み立てた資金を緊急用として使えるからです。

4.従業員への福利厚生として利用できる

法人として、会社で働く従業員の定着化や仕事へのモチベーションアップは達成すべき重要な経営課題です。
それらの課題が達成できれば、結果的に会社の売上げが上がり、利益も向上します。

その点、事業保険は従業員への福利厚生としても利用できるので便利です。
会社の福利厚生制度が充実していれば、優秀な社員を確保できるほか、仕事上の安心感から従業員のモチベーションアップが期待できます。

5.事業承継対策に使える

事業保険は「事業承継対策資金」としても利用可能です。
事業承継に関係する資金には、経営者の相続にかかる納税資金や法人の事業承継を円滑に進めるための自社株買取りの資金などがあります。

自社に 事業承継対策にすぐ使える資金がなかったとしても、事業保険で長期的に社外にお金を貯めておけば、いざ事業承継用の資金が必要になったときにも保険が利用できるので便利です。

6.節税対策や財務強化にも活用できる

法人が事業保険を契約すると、その保険料の一部または全部を損金計上できるため、課税所得を減らして法人税や所得税を少なくできるといった節税効果が期待できます。
また、納税額が減った結果、社内で使える資金が多く残るので財務体質も強化できます。

ただし、税制改正による注意点も!
ただし、このメリットには少し注意しなければならない点があります。2019年6月~10月にかけて行われた国税庁による税制改正です。
この改正で、それまで法人が事業保険契約で得られていた税制上のメリットがかなり失われました。
これまでは法人が契約した事業保険で払っていた保険料の全額が損金計上できた上に、契約途上で解約があっても支払い済みの保険料累積額の大半が解約返戻金として戻ってきたので、会社としても大きなメリットがありました。

しかし、税制改正以降は解約返戻率の高い事業保険の加入メリットが減らされたため、法人も本来の保険加入の目的に沿って事業保険を選ばざるを得なくなりました。

税制改正のポイントは以下の3つです。

税制改正のポイント!
  • 今後は保険料の損金算入割合を解約返戻金のピーク時の返戻率で決定していく
  • ピーク時の解約返戻率が50%を超えると保険料の全額損金算入が不可、一方50%以内なら全額損金算入が可能
  • 50%を越えてピーク時の解約返戻率が上がれば上がるほど、保険料の損金算入割合が下がっていく

このように、2019年10月以降、事業保険の加入メリットは少なくなりましたが、改正後も事業保険には節税効果が見込めます。
改正前のような高い節税効果はないので、法人としても今後は節税だけを目的とした事業保険の加入は避けて、どのような事業保険が自社に適切なのか、総合的に判断する必要があります。

(※)2019年夏に実施された法人向け事業保険の税制改正に関しては以下の国税庁サイトをご参照ください。
国税庁:10月8日以後の定期保険及び第三分野保険に係る取扱いに関するFAQ

事業保険の2つのデメリット

事業保険には多くのメリットがありますが、少なからずデメリットも存在します。
事業保険の2つのデメリットについて解説します。

1.保険料を現金で納めることにより資金繰り悪化も

事業保険の保険料は毎月払い、または年払いでかつ現金払いが原則です。
これは法人の資金が定期的に社外に出ることを意味するので、短期的には資金繰りの悪化要因になります。

もし、経営の判断ミスで自社体力に比べて過大な事業保険を契約してしまうと、継続的に大きな資金が社外に出てしまい、資金繰りが悪化して信用も落としてしまうので、取引先や銀行との取引条件にまで影響てしまいます。

そのような事態に陥らないよう、事業保険の加入はあくまで保険料の支払いが会社の資金繰りに負担にならない範囲で契約する必要があります。

2.意図せぬ解約を途中でした場合は損をすることも

事業保険は特性上、一般的に契約期間が長くなる傾向にあります。保険は契約期間が長くなると、期間の経過にあわせて解約返戻金も上がっていきます。

しかし、自社都合で契約後すぐに解約してしまうと、解約金の返戻比率が極端に悪くなるので、思いがけぬ損をしてしまうことも。

そのようなデメリットを受けないためにも、短期の急な解約に至らないようにするとともに、いざというときに頼れる契約者貸付制度が保険にあるかなど、契約内容も十分吟味しておかねばなりません。

事業保険を選ぶ際の3つのポイント

最後に、事業保険を選ぶ際のポイントを3つ解説します。
下記のような点に注意して保険をかけておけば、いざというときに安心して活用できるでしょう。

保険をかける目的を明確にしておく

ポイントの1つ目は、法人としてどのような目的で事業保険をかけるかを最初に明確にしておくことです。
目的が明確になれば、保険に必要な契約額や誰を被保険者とするかなども決まってきます。

その際に重要なことは、決して節税だけを目的に保険をかけないことです。これは先ほど解説したように、事業保険にかかる税制改正があったからですね。
さらに、保険をかける目的に応じて保険の種類を選ぶ判断ポイントも違ってくるので、事業保険の内容の複雑さを考えると、できるだけ専門家に事前相談しておくことをおすすめします。

経営者に対する保障を厚くしておく

ポイントの2つ目は、保険をかける際に経営者に対する保障を厚くしておくことです。

法人(中小企業)では、経営者の事業全体に与える影響力は大きなものがあります。貢献度の高い経営者が突然死んだり、不慮の事故で高度障害になり働けなくなったりすると、経営への打撃はかなりなものになります。

そのため、経営者を被保険者とした事業保険を厚くしておくことで、緊急事態が起こってもリスクを緩和することができます。
また、解約返戻金はほかの役員が会社を建て直すまでの資金面の助けにもなるので、経営者に対する保障を厚くしておくことはとても大事なのです。

自社に合った適切な保険を選ぶ

ポイントの3つ目は、自社に合った適切な保険を選ぶことです。

会社経営は終わりのない継続した活動です。事業活動継続するには、毎日の資金繰りが大切であることはいうまでもありません。

それだけに、保険料が安定して払えるよう、さらにその支払いが資金繰りに影響を与えないよう、きちんとした検討と計画のもとで自社に合った適切な事業保険を選ぶ必要があります。

読んで頂きありがとうございます。
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