【2025年4月より】出生後休業支援給付金の制度がスタート!子育てをする従業員をサポートしよう
育児休業給付金が手取り換算で100%相当に拡充
共働き世帯を経済的に支援するために、2025年4月より「出生後休業支援給付金」がスタートします。一時的に育児休業前後で手取り額が変わらないようにする制度であり、育児休業中の収入減をカバーする目的があります。
育児休業を取得中、あるいはこれから取得しようとしている従業員を雇用している事業主の方は、出生後休業支援給付金の申請方法を知っておくとよいでしょう。
今回は、新しく始まる出生後休業支援給付金の概要や申請方法などを解説します。
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この記事の目次
2025年4月より新設される出生後休業支援給付金とは
出生後休業支援給付金とは、子の出生直後の一定期間、両親ともに(配偶者が就労していない場合は本人のみ)14日以上の育児休業を取得した場合に支給される給付金です。
支給申請をするのは事業主ですが、実際の支給は育児休業をしている従業員に対して行われます。事業主の方は、育児休業給付金の申請とあわせて、出生後休業支援給付金を申請しましょう。
育児休業給付の支給率は最大で67%であり、出生後休業支援給付金はさらに13%が上乗せされます。あわせて支給率が最大で80%になることで、育児休業前と手取り額を維持する仕組みとなっています(育児休業前は税金や社会保険料などが約20%差し引かれているため)。
また、男性の育児休業の取得を促進することも、出生後休業支援給付金の目的です。夫婦のそれぞれが14日以上の育児休業を取得することが支給条件となっているため、男性の育児休業取得率を高めて、夫婦間で育児分担を促進する効果も期待できるでしょう。
新設される出生後休業支援給付金の概要
出生後休業支援給付金はどのような制度なのか、支給要件や支給額などを確認していきましょう。
支給要件
出生後休業支援給付金を受給するためには、従業員が以下の要件を満たしている必要があります。
- 対象期間※、同一の子について出生時育児休業給付金が支給される産後パパ育休または育児休業給付金が支給される育児休業を通算して14日以上取得したこと
- 配偶者が「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間に通算して14日以上の育児休業を取得したこと
※対象期間とは、従業員本人が産後休業をしていない場合(被保険者が父親または子が養子の場合)は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して8週間を経過する日の翌日」までの期間 。
従業員本人が産後休業をした場合は、「子の出生日または出産予定日のうち早い日」から「子の出生日または出産予定日のうち遅い日から起算して16週間を経過する日の翌日」までの期間。
大まかに、子どもが生まれてから8週間以内に、夫婦のそれぞれが14日以上の育児休業を取得している場合は、出生後休業支援給付金の支給対象になるイメージです。なお、出生時育児休業は2回まで分割して取得できます。
支給額
出生後休業支援給付金の支給額は「休業開始時賃金日額×休業期間の日数(28日が上限)×13%」です。
最大で28日間にわたって、休業開始時賃金日額の13%が、育児休業給付金の上乗せとして支給されます。育児休業給付金とあわせて、育児休業前の賃金の最大80%が支給されるため、休業する従業員にとってありがたい経済的援助といえるでしょう。
支給申請の流れと申請期間
出生後休業支援給付金の支給申請は、原則として育児休業給付金とあわせて、同一の支給申請書を用いて行います。
育児休業給付金の支給申請期限は、支給対象期間の初日から起算して4カ月を経過する日の属する月の末日までです。
配偶者の育児休業を要件としない場合
出生後休業支援給付金は、両親がそれぞれ育児休業を取得したケースを想定しています。しかし、子の出生日の翌日において以下のいずれかに該当する場合は、配偶者が育児休業を取得していない場合でも、出生後休業支援給付金を受給できます。
- 配偶者がいない(配偶者が行方不明の場合も含む)
- 配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
- 被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
- 配偶者が無業者
- 配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
- 配偶者が産後休業中
配偶者が日々雇用される「日雇い労働者」で育児休業ができない場合や、育児休業給付の受給資格がなく、育児休業給付金が支給されない場合も該当します。
出生後休業支援給付金と他の育児休業給付金との違い
出生後休業支援給付金のほかにも、子が誕生した世帯を経済的に支援する制度があります。
給付金 | 申請対象期間 | 支給対象期間 | 給付内容 | 給付される制度 |
出産手当金 | 産前42日、産後56日 | 申請対象期間中、会社を休み給与の支払いがなかった期間 | 標準報酬日額の3分の2 | 健康保険(国民健康保険は対象外) |
出生時育児休業給付 | 産後8週間 | 最大28日間 | 標準報酬日額の67% | 雇用保険 |
育児休業給付金 | 最長で子どもが2歳になるまで(原則として1歳まで) | 原則、養育している子が1歳になった日の前日まで。ただし、子が1歳になる前に職場復帰した場合は、復帰日の前日まで(一定の要件を満たした場合は、最大で1歳6ヶ月または2歳となった日の前日まで) | 標準報酬日額の50%~67% | 雇用保険 |
出生後休業支援給付金 | 原則8週まで、産後休業をする場合は16週まで | 最大28日間 | 標準報酬日額の13% | 雇用保険 |
育児時短就業給付金 | 子どもが2歳になるまで | 育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月 | 育児時短就業中に支払われた賃金額の10% | 雇用保険 |
出生後休業支援給付金の導入前は、育児休業に突入すると手取り額が減ってしまい、生活にも影響が出る可能性がありました。
しかし、出生後休業支援給付金が新設されたことで、最大で28日間は育児休業前と同水準の手取り収入を維持できます。また、2025年4月1日より、時短勤務をしている従業員に対して「育児時短就業給付金」が支給されます。
政府としても、子育て世帯への支援を拡充して、安心して子育てができる環境整備を進めていることがわかるのではないでしょうか。
出生後休業支援給付金の受給額をシミュレーション
具体的に、出生後休業支援給付金の受給額を見てみましょう。受給要件を満たしており、育児休業をする人の休業開始時賃金日額が8,000円・10,000円・12,000円の場合でシミュレーションします(受給日数を28日として計算)。
休業開始時賃金日額 | 育児休業給付 | 出生後休業支援給付金 | 合計 |
8,000円 | 8,000円×67%×28=150,080円 | 8,000円×13%×28=29,120円 | 179,200円 |
10,000円 | 10,000円×67%×28=187,600円 | 10,000円×13%×28=36,400円 | 224,000円 |
12,000円 | 12,000円×67%×28=225,120円 | 12,000円×13%×28=43,680円 | 268,800円 |
休業開始時賃金日額によって異なるものの、総額で3万〜5万円程度の給付金となることがわかります。
ただし、原則として支給申請は事業主が2カ月に1回のペースで行います。従業員に対して、実際に入金されるのは2カ月に1回になることも、念のため伝えておくとよいでしょう。
出生後休業支援給付金の新設に伴って事業主が行うべきこと
出生後休業支援給付金の新設に伴って、今後は性別に関係なく、育児休業を取得する従業員が増えると想定されます。
事業主は、育児休業中の従業員と子の出生を控えている従業員のために、情報提供を行いましょう。
社内規程・就業規則の見直しと整備
出生後休業支援給付金制度の新設に伴って、社内規程や就業規則を見直す必要があります。給付金の要件や申請手続きの流れ、必要書類について、従業員がいつでも確認できるように整備しましょう。
また、「子どもが生まれたら、性別に関係なく育児休業を取得するのが当たり前」という空気を醸成することも大切です。
制度の情報提供を行う
出生後休業支援給付金を実際に受給するのは、育児休業を取得する従業員です。従業員が制度そのものを知らなければ、育児休業の取得にはつながりません。
そのため、従業員に対して、制度が新設された旨の情報提供を行うとよいでしょう。情報提供を行うことで、従業員が「制度を知らないため、活用できなかった」という事態を防げます。
また、育児休業を取得することで、復職後のキャリアパスに悪影響が出ないことも丁寧に説明しましょう。「人事評価にマイナスがあるのは避けたい」という従業員が育児休業の取得をためらう事態を防ぐためにも、丁寧な説明と情報提供は欠かせません。
特に、今後ライフイベントが起こると考えられる20代や30代の従業員にとって、出生後休業支援給付金が新設されたことによる影響は大きいと考えられます。
「手厚い給付を受けられるなら、育児休業を取得しようかな」と考える従業員がいる可能性が考えられるため、イントラネットや社内メールなどを活用して、情報提供を行いましょう。
男性従業員へ育児休業の取得を促進する
政府は、男性の育児休業取得率の目標を「2025年に50%」「2030年に85%」と定めています。国を挙げて男性の育児休業の取得を促進しているため、企業としても男性従業員に対して育児休業の取得を進めるとよいでしょう。
昨今は共働き世帯が増えているため、女性が家庭と仕事を両立するためには、男性の育児参加が欠かせません。従業員の家庭における満足度が高まれば、復職後の業務パフォーマンスも高まるメリットが期待できるため、長い目で見れば事業主にとってもプラスなのです。
また、事業主として性別に関係なく育児休業を取得しやすい環境を整備すれば、従業員の満足度や愛社意識が高まります。
これにより、優秀な従業員の離職を防ぐ効果も期待できるでしょう。「男性も育休を取得できる企業」という評判が浸透すると、採用を進めるうえでも有利になるため、人材確保と長期的な人材定着にもつながります。
復帰後のサポート体制を整備する
育児休業の取得を検討していても、「周りに迷惑がかかるから」「嫌な顔をされたらどうしよう」という不安から、なかなか取得に踏み切れない従業員もいるかもしれません。
安心して育児休業を取得できる空気を作るためにも、事業主として育児休業中や復帰後のサポート体制を整備することが求められます。
例えば、実際に育児休業を取得した従業員の体験談を共有したり、好事例を紹介する取り組みが考えられます。育児休業中は一時的に仕事から離れるため、つながりを維持する目的で、オンラインで同僚や上司とカジュアルに話す機会を設けることも効果的でしょう。
これらの施策を総合的に実施することで、性別を問わず全従業員が安心して育児休業を取得し、復帰後も活躍できる職場環境の構築が可能になります。
従業員としても、「気兼ねなく育児休業を取得できる」という安心感があれば、余計なストレスを感じることなく育児に注力できます。
家庭での満足度や幸福度を高められれば、ウェルビーイングの向上につながるはずです。周囲のサポートを受けられ、復帰後も働きやすい環境を整備して、組織全体で働きやすい環境を実現しましょう。
柔軟な働き方の導入
育児をしながら勤務する従業員にとって、家庭の都合に合わせて柔軟に働ける環境はありがたいものです。育児休業後に復帰をしたときも、育児と介護を両立できるように、時短勤務やテレワークの推進を進めるとよいでしょう。
小さい子どもがいる家庭では、子どもの体調不良で突発的な休みが発生しがちです。従業員本人の精神的な負担を和らげるためにも、柔軟に働ける環境の整備は有意義です。
あわせて、チーム全体で業務分担やバックアップ体制を決めておき、突発的な休みが発生しても組織全体に影響しないように工夫しましょう。
まとめ:出生後休業支援給付金を活用して男性の育児休業を促進しよう
育児休業中の従業員、これから育児休業を取得する予定の従業員がいる場合、出生後休業支援給付金を活用しましょう。通常の育児休業給付とあわせて申請すればよく、事業主に新しく発生する手間は多くありません。
公的な制度を活用しつつ、性別に関係なく育児休業の取得を促進すれば「働きやすい職場」「従業員を大切にしてくれる企業」という印象を与えられます。職場全体で育児休業中の業務をカバーする体制を構築すれば、生産性の向上にもつながるでしょう。
創業手帳では、補助金・助成金に関する最新情報をまとめた「補助金ガイド」を無料でお配りしています。補助金や助成金は事業主の方を経済的に助ける仕組みであるため、ぜひ活用できる制度を探してみてください。
(編集:創業手帳編集部)