飲食開業手帳

ステーキハウス開業マニュアル|設備から集客までステーキハウスの開業手順徹底解説

ステーキハウスを開業するまでの法的準備と設備の準備を分かりやすく解説

ステーキハウスの開業
上質な肉を仕入れるルートさえあれば、「高い肉を超高級に販売する」「安く仕入れた肉を安価で販売する」といった、2つの経営戦略で戦うことができるのがステーキハウスです。

肉を焼く技術さえあれば、こだわった料理などを提供する必要がないので、利益率が高く比較的に初心者でも開業しやすいジャンルの1つです。

今回は、ステーキハウスを開業するための法的な準備から集客・資金繰りなど、開業までに必要な準備を徹底解説していきます。

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ステーキハウス開業に必要なこと


ステーキハウスを開業するために必要なことは、「肉を仕入れるルート」「高級な設備」「高級な酒類」と考えている人も多いでしょう。

確かに、これらについてもステーキハウスの開業に重要ですが、開業には次のような準備があります。

開業するための法的手続
  • 開業するための法的手続
  • 店舗等の設備面の準備
  • 仕入先の準備
  • 集客手段の確保
  • 人員採用の準備
  • 資金調達の準備

店舗をオープンするまでには、これらの準備を全て完了させなければなりません。ステーキハウスを開業するために必要な手続きを詳しく解説していきます。

ステーキハウス開業に必要な事務手続き


ステーキハウスを開業するためには、以下の法的手続が必要です。

届出先 届出 届け出る条件
保健所 営業許可申請書 飲食店はすべて対象
消防署 防火対象物使用開始届 飲食店は「延べ面積が 150 平方メートル以上のもの又は収容人員が 30 人以上のもの」に該当する場合のみ
警察署 深夜酒類提供飲食店営業開始届 飲食店はすべて対象
税務署 開業届
法人設立届出書
青色申告承認申請書
給与支払事務所等の開設届出書等
業種に関わらず個人事業主は届出が必要
労働基準監督署 労働保険保険関係成立届
労働保険概算保険料申告書
雇用保険適用事業所設置届
雇用保険被保険者資格取得届
許認可
従業員を雇用する場合

法的な届け出が非常に多いように感じますが、必ず出さなければならないのは営業許可申請書だけです。

その他は、店舗の面積や収容人数、従業員雇用の有無によって異なります。また、税務署や労働基準監督署に提出する書類は、開業後でも問題ありません。

まずは自分が開業しようとしている店舗では、どのような届け出が必要になるのかを確認しておきましょう。

ステーキハウス開業に必要な資格


ステーキハウス開業に必要な資格は、基本的に以下の2つだけです。

  • 食品衛生責任者(必ず)
  • 防火管理者(収容人数30人以上の場合は必ず)

飲食店は「調理師免許を持っていないと開業することができない」というイメージがありますが、実は調理師免許は必須条件ではありません。

飲食店開業に必要な資格は食品衛生責任者という資格です。食品衛生責任者の資格は、以下のいずれかの条件を満たせば誰でも簡単に取得できます。

  • 食品衛生責任者養成講習会を受講する
  • 栄養士、調理師、製菓衛生師などの資格を保有している

毎月定期的に保健所が開催している「食品衛生責任者養成講習会」を受講すれば誰でも取得できるので、まずは保健所へ連絡して食品衛生責任者養成講習会に参加しましょう。

また、飲食店で「収容人数30人以上の店舗」では、防火管理者の選任が義務付けられています。

店舗の規模によるものの、テーブル席がいくつもある規模の大きなステーキハウスを開業する場合は、防火管理者の選任が必要です。カウンターだけの店舗であれば、必要ありません。

防火管理者は、店舗の広さに応じて甲種(300㎡以上)と、乙種(300㎡未満)の2つの種類があります。

いずれも消防署で講習を受ける必要があり、甲種であれば2日間の講習、乙種であれば1日間の講習を受ければ取得可能です。まずは最寄りの消防署へ連絡しましょう。

なお、調理師免許は飲食店開業のための必須資格ではありません。しかし、国家資格である調理師免許を取得した人が飲食店にいる方が、店舗の信用度は高くなる傾向があります。

調理師免許の取得方法は、以下のいずれかの条件を満たすことです。

  • 2年以上の実務経験を積み、調理師試験に合格する
  • 調理師学校または養成施設を卒業する

飲食店を開業してから2年以上経過すれば、調理師試験を受験する資格を得ることができます。

店主に調理師免許があった方が、店舗の信用度が向上することは間違いありません。
開業前には条件を満たしていない人も、将来的には資格取得を視野に入れましょう。

ステーキハウスに最適な立地・物件・設備とは?


ステーキハウスを開業するためには、必ず店舗を借りなければなりません。
物件選びのポイントは2つです。

  • 立地:都市部であれば駅前など飲酒をしてもすぐに電車に乗れる場所、地方であれば駐車場のある広いテナント・商業施設のテナント
  • 設備:できれば初期投資を抑えられる居抜き物件(設備の高級さも重要)

ステーキハウスの店舗選びや、必要な設備について詳しく解説していきます。

立地

ステーキハウスにとって最適な立地は、地域や店舗のコンセプトによってかなり異なります。

都市部であれば駅前の方が集客できますし、地方では少し郊外でも駐車場がある広い店舗、あるいは商業施設のテナントなどの来店しやすい場所がおすすめです。

高級志向のステーキハウスであれば、多少は立地が悪くても、味と雰囲気と接客が良ければ集客することはできるでしょう。

業種ごとに適した立地の選び方については、以下の記事で専門的に解説しています。

立地について考えよう!>>>
開業するにあたって立地条件は重要? 業種ごとに適した立地条件を解説

物件探しの手順

自分が開業したいエリアは決まっても、実際に店舗を探すための手順が分からないという人も多いのではないでしょうか?

物件探しは以下の順番で行うのがよいでしょう。

1.開業する店舗に最適な不動産の条件を検討する
2.不動産会社へ訪問するかネットで最適な条件の不動産を探す
3.不動産会社へ問い合わせて内見をする
4.申し込みを行う
5.入居審査を受ける

この中で最も重要な点は、「不動産の条件」です。

  • 都市部の飲食店→駅に近い
  • 地方の飲食店→郊外で駐車場が広い
  • お酒メインの飲食店→駅に近い
  • ファミリー層がターゲットの飲食店→郊外で駐車場が広い

など、自分の飲食店のカラーに最適な条件を検討し、それに見合った物件を探しましょう。

高級志向のステーキハウスの場合には、ある程度の高級感が必要ですので、少し郊外でも高級感がある物件を借りるのがおすすめです。

ファミリー向けの店舗であれば、元々ファミレスだったような店舗など、駐車場も広い物件を探すとよいでしょう。

なお、できる限り設備投資にお金をかけないためには、内装をそのまま使うことができる「居抜き物件」を探すのがおすすめです。

ステーキハウスは煙が出るため、店舗の排煙や換気設備が重要になります。

そのため、以前は焼肉店やステーキ店を経営していたような物件を探すと、排煙設備への投資をする必要がないので初期投資を抑えることができます。

設備(ハード面)

店舗の設備を具体的に検討する前に、まずは営業許可を取るための「店舗の条件」を確認しましょう。営業許可を得るための基準は地域で異なりますが、主に以下のような基準があります。

  • 扉付きの食器棚を設置すること
  • 厨房の床の水はけがよい
  • グリストラップがある
  • 厨房と客席が扉などで区分けされている
  • 厨房内に「2槽シンク」が設置されている
  • 厨房内とトイレにそれぞれ「手洗い場」が設置されている
  • 厨房内に冷蔵庫などの設備が収まっている
  • 冷蔵庫・冷凍庫に温度計が付いている
  • 虫やネズミの侵入を防ぐため窓に網戸が設置されている

保健所は開業する前に「事前相談」を受け付けています。事前相談において開業するための設備の条件を確認し、間違いのないように設備を揃えましょう。

設備を揃えた後に、保健所へ「営業許可申請」を提出すると、保健所の担当者が実際に店舗へ検査に訪れます。検査の結果、設備に問題がなければ晴れて営業許可を得ることができます。

上記の設備も含め、ステーキハウス開業に必要となる調理器具は、主に以下のようなものです。

  • ガスコンロ
  • 冷蔵庫
  • 冷凍庫
  • 作業台
  • 炊飯ジャー
  • 熟成機
  • 洗浄設備
  • ワインセラー

ステーキハウスは肉を仕入れた後、店舗で最良の状態まで熟成させるのが一般的です。そのため、大きな肉専用の冷蔵庫を買うか、熟成機が必要になります。

他の食材(野菜など)と肉を一緒に保管することは不衛生ですので、冷蔵設備にはお金をかける必要があるでしょう。

熟成機や肉専用の製造設備により、場合によっては200万円以上することもあります。また、ステーキハウスは高級なワインなども提供するので、業務用のワインセラーも必要です。

さらにカウンターで肉を焼く場合には、大型の鉄板も導入しなければなりません。厨房機器なども合わせて、すべて新品で買い揃えれば1,000万円以上かかってしまうこともあります。

厨房機器は中古でも状態の良いものが数多くあるので、開業費用をできる限り抑えたい方は、中古の厨房機器を探してみましょう。

設備(ソフト面)

厨房機器や食器以外に、ステーキハウス開業のために用意するものは以下のとおりです。

  • メニュー表
  • 割り箸等
  • 食器
  • おしぼり
  • 鉄板
  • お釣り・決済サービスの導入
  • 感染防止の設備

ステーキハウスは、ある程度は高級な食器を使う必要がありますし、ステーキ用の鉄板も必要です。また、ナプキンだけというわけにはいかないので、おしぼり業者とも契約します。

メニュー表などは、広告代理店等に頼むと10万円以上かかってしまうため、自分で作るか「ココナラ」などでデザイナーに直接依頼することで、本格的なメニュー表を格安料金で作成できます。

この他、清掃業者なども必要であれば事前に契約します。

ナプキンなどは、店名を入れたオリジナルを作成できます。ただし、オリジナル商品はコストが高くなるので、最初のうちはネットで安く大量に仕入れられるものを使用してもよいでしょう。

また、お釣り用の小銭やキャッシュレス決済サービスの導入なども忘れないように準備してください。この他、カウンターに飛沫防止パネルなども設置しましょう。

ステーキハウス開業前に見つけるべき仕入先


ステーキハウスを開業する前に、営業に必要な仕入先も確保しておきましょう。ステーキハウスに必要な仕入先として、以下のような業者が挙げられます。

  • 肉屋
  • 酒屋
  • 八百屋
  • 資材屋(割り箸等)
  • 米屋

ステーキハウスは、とにかく「肉」が重要です。

どこのブランド牛を仕入れるのかをしっかりと決めてから、こだわりの肉を仕入れられる肉屋と仕入れ契約を締結しましょう。

地元だけでなく、産地の肉屋から直送で仕入れることで店のブランド力が高まります。またステーキハウスは、ステーキに使用する野菜も重要です。

他店と差別化を図るために地元の野菜にこだわる必要があるので、農家との直接契約や契約栽培などでブランディングをしましょう。

この他、提供するワイン・スパークリングワイン・日本酒・焼酎・ウイスキーなどにもこだわるようにしましょう。

ステーキハウスなどの高級店は、全てにおいてこだわりと特別感が重要であり、ファミリー向けの店舗では、ハンバーグやポテトなどの子供が喜ぶメニューの仕入れも必要になります。

ステーキハウスの集客方法

開業したら地域にお店を知ってもらう必要があります。そのため、最初だけは次のような方法でステーキハウスの広告を出すことも検討しましょう。

  • 食べログやぐるなび
  • フリーペーパー
  • チラシ
  • 割引券の配布
  • Twitter、InstagramなどのSNS

美味しいステーキハウスは、遠くからでも顧客を集客することができます。そのため、店舗を知ってもらうために、最初はある程度の広告費をかけることも重要です。

開業からの数カ月間は、食べログやぐるなびなどに広告を出して、店舗の知名度を上げて新規顧客を誘引しましょう。

そして、一定の時間が経ったら広告費を落として、口コミやリピーターからの新規顧客の紹介で、顧客を確保していく方法を検討しましょう。

ステーキハウスの採用方法

オープニングスタッフを採用するかどうかは、店の規模に応じて決めましょう。

人件費は店舗経営における最も大きな固定費になるので、1人または家族で店舗が回るのなら、オープニングスタッフをあえて雇用する必要はありません。

特にステーキハウスは、オープン前にステーキを仕込んでしまうので、オープン後は肉を焼いたりお酒を提供したりするだけになります。

カウンター席だけの小さな店舗であれば、1人でも回すことができるでしょう。まずは「どうすれば人を雇わずに店を回すことができるか」を考えましょう。

一方で、ファミリー向けのステーキハウスでは、多くのアルバイト従業員が必要です。この場合は求人サイトを利用して、学生などのバイトを広く募集します。

ステーキハウスは規模や店舗のコンセプトにより、雇うべき人の数や専門性が異なるので、店舗に応じて最適な採用方法を選択しましょう。

ステーキハウスの資金繰り


ステーキハウスを開業する人の多くが銀行や日本政策金融公庫の開業資金融資を利用しています。飲食店の資金調達について、詳しくは以下のページに記載していますが、基本的に開業資金をフルローンで借りるのは難しいので、必要総額の3割程度の自己資金が貯まってから開業準備をしましょう。

飲食店に特化した最新の資金調達情報についてはこちら>>>
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各都道府県別 開業に関する補助金・助成金情報

また、飲食店は売上が即現金になる「現金商売」です。そのため、毎日の売上をしっかりと管理し、手元に現金があるからといって浪費しないことが最も重要になります。

ステーキハウスは売上が毎日コツコツ入り、月末に支払いがまとめて来るということをよくよく念頭に入れて、日々の資金繰り管理に努めましょう。

なお、最近ではキャッシュレス決済を導入している飲食店も増えています。

キャッシュレス決済では売上金の入金があるのは数日後から数週間後になり、仕入れ資金等が不足する可能性もあるため、一定の運転資金は常に手元に確保しておきましょう。

創業手帳の別冊版「資金調達手帳」では、融資・出資・クラウドファンディングのコツなど、さまざまな資金調達方法を解説しています。資金調達の最新情報を無料で掲載しておりますので、ぜひお問い合わせください。

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