ネイルサロンの開業手帳

  • ここ最近若い人から年配層までネイルについての関心も高まってきており、ファッション感覚でする人も多くなっています。

    そのためネイル業界のマーケット市場に参入する業者も多くなり、街中や百貨店、さらにファッション街など女性がたくさん集う場所にネイルサロンの参入が増えています。

  • ネイルサロンの開業は行政庁の許認可なども必要なく誰でも簡単にオープン可能だが、固定客の獲得も難しく長続きしないケースが多くなっています。そのため美容室とネイルサービスを併用するなど、複合形態のショップも増加しています。ネイルサロン自体は都心部に多く、地方への出店が課題です。

1.開業に必要な手続き

ネイルサロンの開業時、特に行政庁の許認可などは必要ありません。
関連業界団体として「日本ネイリスト協会」が存しているが、こちらも特に加盟する必要はありません。

通常の開業は税務署への申請、またケースによって社会保険事務所や労働基準監督署へ申請します。詳しくは管轄の行政庁に問い合わせするのがよいでしょう。

2.開業にあたっての留意点・準備

1)ネイルサロン経営形態には次の3タイプに分類されます。

独立型
こちらは開業準備として資金や新規の顧客獲得が必要になります。また個人的な才能や技能が求められ、成功すれば高収益の可能性ある。

のれん分け型
最初大手のネイルサロンで下積し、のれん分けの形で出店します。顧客獲得がしやすいのが特徴です。

フランチャイズ型
ブランドイメージが強力であり、安定感も得られます。

2)立地別の経営形態について

都心型
都心のファッションビルや百貨店、またテナントビルなど出店する形態であり、サービスの質が求められます。

郊外型
駅前や郊外に位置する商店街に出店する形態です。こちらは中級路線が多くなっています。

3)店舗別の経営形態について

独立店型
百貨店や繁華街、またテナントビルなどに出店する形態であり、サービスの質が求められます。

テナント型
テナントビルやファッションビル、また百貨店のなかにテナントをだして営業する形態です。ビルに訪れた顧客をいかに獲得できるがポイントになり、人が多いところに店舗を構えることが多くなっています。全体的に顧客1人あたりに対してのサービスが求められます。

併設型
単独での出店ではなく、マッサージや美容院といった付加的メニューとしてサービスを行う形態です。

出張型
特に店舗を構えることなく、イベントや展示会などに出張してサービスを行う形態です。また個人宅へ訪問することもあります。

4)顧客を獲得するには

顧客を獲得するには口コミが大きな効果を生みます。その他にさまざまなコンテストでの受賞、またテレビや雑誌などで宣伝することも大切です。
ネイリストの技術をいかに披露できるがポイントになってきます。

5)保険について

ネイルサロン開業にあたって最低限必要な保険としては、お店の火災保険と賠償責任保険です。

お店の火災保険は、お店を借りる際に加入が必須となることがほとんどです。意外と見落としがちなのが賠償責任保険です。

賠償責任保険は、お客様の服や手荷物等に損害を与えてしまった場合や、施術ミスが原因でお客様にケガを負わせてしまった場合などの保険です。そこまで高額な保険ではないので、賠償責任保険も加入されることをお勧めします。

3.開業資金の考え方及び開業資金例

ネイルサロンを開業する際に必要な資金は大きく分けて以下の3種類に分類されます。

1)物件取得費用

物件取得費用とはネイルサロンを開く場所を借りるための資金です。具体的に言うと、敷金・保証金、礼金、仲介手数料等がこれに当たります。

敷金・保証金と礼金については、立地や物件オーナーの考え方によって大きく変わる部分となるのですが、一般的には敷金・保証金については家賃の3~10か月分、礼金については家賃の1ヶ月~3ヶ月分となることが多いです。

なお、ご自宅で開業される場合など物件取得費用が掛からない開業方法も多くなっています。

2)設備関係費用

設備関係費用とは、物件を借りた後にネイルサロンにするための内装工事や、UVライト、机・椅子、その他細かい什器などです。

どのような内装にするかで大きく変わる部分になります。必要な什器のみをそろえ、ほとんどお金をかけずに開業する場合もあります。

3)開業諸経費及び運転資金

開業諸経費とは、開業の際に必要な諸経費となります。人の募集費、研修費、チラシやDM等の広告宣伝費、店販の在庫やジェル、スカルプチュアなどの材料費等です。

また、これとは別に運転資金が必要になります。この運転資金はとても重要で、ネイルサロンを開業した場合、一般的にはすぐに黒字化することは難しいことから、黒字化するまでの資金を用意する必要があります。ここではこれを運転資金と言っております(通常の運転資金とは定義が異なります)。

この運転資金を出来るだけ確保することが、ネイルサロンを成功させる上でもとても大切な部分となります。最低でも毎月通常支払うお金の3ヶ月分、可能であれば6ヶ月分を運転資金として確保することをお勧めします。

4)開業資金例

2席とした場合で、オーナースタイリスト1名、ネイリスト1名、で開業する場合の資金例は以下と通りです。なお、コンセプトを含むビジネスモデル等により内訳は大きく変わることがございますので、ご留意ください。

※物件取得費用、設備関係費用は出店場所やオーナーの考え方でケースバイケースになります。
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4.ビジネスモデルの考え方及びビジネスモデル例

1)ビジネスモデルの考え方

ネイルサロンにあたってビジネスモデルを考えることはとても重要です。お店のコンセプトを考えそれを基に数値としてのビジネスモデルを考えていきます。

ここでは特に数値としてのビジネスモデルの考え方をご説明してきます。ビジネスモデルと言うと難しく考えてしまうと思いますが、意外と単純です。ビジネスモデルを考える際の手順としては以下の通りです。

(1)目標とする利益を決定する
(2)固定費(売上の増減にかかわらず必要な費用)を想定する
(3)原価率を設定する
(4)売上を設定する

この手順で、ビジネスモデルを考えていきます。

(1)の「目標とする利益」は個人事業として開業する場合には、「支払う税金+借入金の返済額の合計額+開業する方の給料」が利益となるように設定してください。

(2)の「固定費」は家賃や、人件費、毎月の広告宣伝費やその他の費用となります。

(3)の「原価率」は、ネイルサロンの場合には5%~10%になるのが一般的です。

(4)「売上」については、「お客様一人あたりの売上×お客様の人数」で考えて頂き、(1)の利益を達成するために必要な売り上げを設定していきます。

2)ビジネスモデル例

2席とした場合で、オーナーネイリスト1名、ネイリスト1名で開業する場合の一月単位のビジネスモデル例は以下と通りです。コンセプトを含むビジネスモデルや借入の有無により内訳は大きく変わることがございますので、ご留意ください。
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3)開業後の資金繰りを確認する

運転資金をスタートとして、月単位で黒字化するまでの資金繰り計画の作成をお勧めします。

素晴らしいビジネスモデルが出来たとしても、開業後1、2ヶ月で想定したビジネスモデル通りになることはほとんどありません。早くて1年、通常は3年程度で想定したビジネスモデルに近づけていくことになります。

開業後と想定したビジネスモデルとの大きな違いは売上です。開業後は売上が少ないため、手元のお金が減っていきます。そのため、仮に3年程度で想定したビジネスモデルに到達した場合、資金が途中で足りなくなることが無いかを確認することが必要です。

どのタイミングでネイリストを雇うか、軌道に乗るまでの開業者の給与はいくら出せるか等、税金や社会保険の支払いなども含めて出来るだけ精密に検討することが必要ですので、それなりの専門知識が必要となります。そのため、税理士等の専門家の力を借りながらシミュレーションすることをお勧めします。

5.必要になる契約書

準備中

(監修:「理・美容室の創業融資・開業支援に強い税理士事務所」
ライズサポート税理士事務所
武渕将弘 税理士)

美容室・サロンに関するお店ごとの開業手帳