理容室の開業手帳

  • 理容室は競合店も増えまた男性客も離れていっています。さらに美容室へのシフトも多くなり厳しい現状が続いています。
  • 理容業は今までは同業組合によって、地域に根差したサービスを提供していました。そのためサービスや料金も均等していたが、最近はサービスの内容も変わってきており、その多くは「低料金、短時間」が主となった理容室チェーンが増えています。
  • 他方で低価格チェーンとの差別化を図るため、お店独自のサービスを重視するところも増えています。

    例えばヘアケアサービスや、顔マッサージや顔剃りサービスなど、多くのサービスを提供することで特定客を確保している理容室もでてきています。

1.開業に必要な手続き

理容室を開業するためには、開業予定日の1週間前までに保健所への届出ることになります。店舗の構造設備についての詳細は都道府県条例で規定されており、また保健所にも相談できます。

1)必要書類・開設届について

・施設の平面図
・構造、設備の概要
・開設者が法人の場合は、会社の登記簿謄本
・有資格者の免許証(提示)
・従業員名簿
・従業員の健康診断書・店舗の図面(厨房配置入り平面図)2部

経営者が理容師の資格をもっているか、理容師資格のある従業員を雇用する必要があります。そして、常時2人以上の理容師がいる店舗では、「管理理容師」の資格をもっている者を雇用しなければなりません。

2)理容師資格について

理容師資格
厚生労働大臣指定の理容師養成施設において所定の学科を習得後、学科試験、実地試験に合格することが条件です。実地試験については、実地訓練期間終了後に受験します。

管理理容師資格
理容師で3年以上の実務を経験した後、各都道府県実施の講習を修了することで授与されます。

2.開業にあたっての留意点・準備

1)立地条件について

日本政策金融公庫 「消費者意識調査(H24.7.5)」の調査結果では、理容室利用者の約90%もの人が理容室を利用する際の重視点として「利用しやすい場所にある」ことをあげています。

利用する際の重視点

また、日本政策金融公庫「理容店に関する消費者意識と経営実態調査結果(2012)」の調査結果では、利用する際のきっかけとしても「自宅、職場、学校から近い」がもっとも多くなっています。

利用する際のきっかけ

お店のターゲットを選定し、そのターゲットが多くいると思われる地域へ出店することが望ましいと言えます。

2)技能を備えた理容師について

最近は自分自身のヘアスタイルにこだわっている人も多くなり、理容室と比べて流行のアスタイルを提供している美容院を選択するものが多くなっています。

そのため、次の取り組みも必要になってきます。

・店舗のイメージをあげる(店舗改築や、新しい服装など)
・魅力ある店舗づくり(スペースの充実性など)
・新しいサービスの提案(流行を取り入れたサービスなど)

3)販促活動について

理容室は口コミがとても効果的であるので、顧客紹介ができるしくみを造り上げていくことが大切です。

そうするためにはどうしても固定客を確保する必要があり、DMやポスティング、新聞の折り込みチラシなどさまざまな戦略を講じてみるのが望ましいと言えます。

その他の方法として、利用料金や利用料金に応じたポイント制度も効果があります。さらに平日料金の割引なども魅力的です。

4)保険について

理容室開業にあたって最低限必要な保険としては、お店の火災保険賠償責任保険です。

お店の火災保険は、お店を借りる際に加入が必須となることがほとんどです。意外と見落としがちなのが賠償責任保険です。

賠償責任保険は、カラー材等でお客様の服や手荷物等に損害を与えてしまった場合や、施術ミスが原因でお客様にケガを負わせてしまった場合などの保険です。そこまで高額な保険ではないので、賠償責任保険も加入されることをお勧めします。

3.必要資金例

理容室を開業する際に必要な資金は大きく分けて以下の3種類に分類されます。

1)物件取得費用

物件取得費用とは美容院を開く場所を借りるための資金です。

具体的に言うと、敷金・保証金、礼金、仲介手数料等がこれに当たります。

敷金・保証金と礼金については、立地や物件オーナーの考え方によって大きく変わる部分となるのですが、一般的には敷金・保証金については家賃の3~10か月分礼金については家賃の1ヶ月~3ヶ月分となることが多いです。

2)設備関係費用

設備関係費用とは、物件を借りた後に美容室にするための内装工事や、美容器具、その他細かい什器などです。

これらは、内装工事や、どのようなスタイリングチェア・シャンプチェアを使うか等で大きく変わる部分になります。

一般的には、一坪あたり30万~60万円になることが多いです。なお、中古のスタイリングチェア・シャンプチェアを使用するなど、初期の設備関係費用を抑えて出店する方も増えてきています。

3)開業諸経費及び運転資金

開業諸経費とは、開業の際に必要な諸経費となります。人の募集費、研修費、チラシやDM等の広告宣伝費、店販の在庫やシャンプー、カラー材などの材料費等です。

また、これとは別に運転資金が必要になります。この運転資金はとても重要で、美容院を開業した場合、一般的にはすぐに黒字化することは難しいことから、黒字化するまでの資金を用意する必要があります。

ここではこれを運転資金と言っております(通常の運転資金とは定義が異なります)。この運転資金を出来るだけ確保することが、理容室を成功させる上でもとても大切な部分となります。最低でも毎月通常支払うお金の3ヶ月分可能であれば6ヶ月分を運転資金として確保することをお勧めします。

4)開業資金例

セット面2台とした場合で、オーナースタイリスト1名、スタイリスト1名で開業する場合の資金例は以下と通りです。なお、コンセプトを含むビジネスモデル等により内訳は大きく変わることがございますので、ご留意ください。

※物件取得費用、設備関係費用は出店場所やオーナーの考え方でケースバイケースになります。

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4.ビジネスプラン策定例

1)ビジネスモデルの考え方

理容室開業にあたってビジネスモデルを考えることはとても重要です。お店のコンセプトを考えそれを基に数値としてのビジネスモデルを考えていきます。

ここでは特に数値としてのビジネスモデルの考え方をご説明してきます。ビジネスモデルと言うと難しく考えてしまうと思いますが、意外と単純です。ビジネスモデルを考える際の手順としては以下の通りです。

(1)目標とする利益を決定する
(2)固定費(売上の増減にかかわらず必要な費用)を想定する
(3)原価率を設定する
(4)売上を設定する

この手順で、ビジネスモデルを考えていきます。
(1)の「目標とする利益」は個人事業として開業する場合には、「支払う税金+借入金の返済額の合計額+開業する方の給料」が利益となるように設定してください。

(2)の「固定費」は家賃や、人件費、毎月の広告宣伝費やその他の費用となります。

(3)の「原価率」は、理容室の場合には5%~10%になるのが一般的です。

(4)「売上」については、「お客様一人あたりの売上×お客様の人数」で考えて頂き、(1)の利益を達成するために必要な売り上げを設定していきます。

2)ビジネスモデル例

セット面2台とした場合で、オーナースタイリスト1名、スタイリスト1名で開業する場合の一月単位のビジネスモデル例は以下と通りです。ビジネスモデルや借入の有無により内訳は大きく変わることがございますので、ご留意ください。

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3)開業後の資金繰りを確認する

運転資金をスタートとして、月単位で黒字化するまでの資金繰り計画の作成をお勧めします。素晴らしいビジネスモデルが出来たとしても、開業後1、2ヶ月で想定したビジネスモデル通りになることはほとんどありません。

早くて1年、通常は3年程度で想定したビジネスモデルに近づけていくことになります。開業後と想定したビジネスモデルとの大きな違いは売上です。開業後は売上が少ないため、手元のお金が減っていきます。

そのため、仮に3年程度で想定したビジネスモデルに到達した場合、資金が途中で足りなくなることが無いかを確認することが必要です。

どのタイミングでスタイリスト、アシスタントを雇うか、軌道に乗るまでの開業者の給与はいくら出せるか等、税金や社会保険の支払いなども含めて出来るだけ精密に検討することが必要ですので、それなりの専門知識が必要となります。

そのため、税理士等の専門家の力を借りながらシミュレーションすることをお勧めします。

5.必要になる契約書

準備中

(監修:「理・美容室の創業融資・開業支援に強い税理士事務所」
ライズサポート税理士事務所
武渕将弘 税理士)

美容室・サロンに関するお店ごとの開業手帳