自治体営業を成功させよう!8つのコツや営業方法を解説
自治体ならではの営業方法を理解することが重要
地方自治体が抱える課題を解決するためにも民間企業との連携が不可欠になっています。
しかし、自治体特有の複雑な行政組織や予算編成プロセス、担当者との関係構築など、営業には様々な問題点があります。
自治体営業に乗り出す企業は増えていますが、壁の高さによって挫折してしまう企業も多いため、適切な戦略を練って営業を行わなければいけません。
そこで今回は、自治体営業を成功させるための8つのコツを紹介していきます。具体的な方法を知り、自治体との関係構築につなげてみてください。
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この記事の目次
自治体営業とは
企業や団体が、市役所や区役所、都道府県庁などの自治体に対して自社の商品やサービスの提案をして導入を促すための営業活動を自治体営業といいます。
民間企業とのBtoB営業とは違い、透明性や公共性、公平性といった部分が重要視されている点が特徴で、営業プロセスにおいても独自のルールが設けられています。
政策目標や予算の制約などを踏まえた上で提案を実施し、契約に必要となる資格や手続き、意思決定の構造など、自治体ならではのあらゆる仕組みを理解しなければ成功を収められない営業です。
また、自治体営業の対象領域は幅広い特徴があります。住民の生活に関わる様々な分野があり、代表的な領域としては以下が当てはまります。
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- ICT・DX支援
- 教育・子育て支援
- 観光
- 高齢者支援
- 防災
自治体が抱えている課題に自社の技術をどう結び付けるかが重要なポイントです。
自治体営業を成功させる8つのコツ
ここからは、自治体営業を成功させるためのポイントを解説していきます。
具体的な課題や取り組みなど情報収集を徹底する
自治体営業を成功させるためにも、情報収集が大切です。自治体は、各地域の特性によって課題が異なります。
そのため、まずは人口や産業、財政状況などの概要を把握して自治体の課題を把握することからはじめてみてください。
具体的な課題については、自治体のホームページや広報誌、公開されている報告書や地方紙、ローカルニュースなどでそれぞれの地域の現状や施策を理解できます。
予算の配分状況でも優先順位を知るために役立つので、あらゆるもので課題や取り組みの調査を実施してください。
ニーズを理解する
各自治体によってニーズは異なります。ニーズは情報収集によって推測することができるので、正しく理解することが大切です。
また、自治体の予算には上限があります。財政状況が厳しい場合には、十分な予算を配分できない恐れもあるため、予算についても理解しておく必要があります。
予算編成に合わせて営業を行う
自治体営業では、予算編成のスケジュールに合わせた活動をすることも大切です。
予算編成のプロセスは年に一度実施され、それに合わせた営業活動が必要となります。4月を初めとして翌年の3月までが1回のサイクルです。
一般的なサイクルは下記の通りです。
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- 4~6月頃:自治体職員の情報収集
- 7~9月頃:各部における情報精査や計画
- 9~10月頃:予算編成方針の発表
- 10月:各部による予算要求
- 11月:財政部による査定や審査
- 12月:財政部による予算内示
- 1月:首長の査定や審査、内示
- 2~3月:議会審議、可決
営業活動は、遅くても来年度の予算についての検討が始まる4月~6月頃からスタートさせましょう。
導入事例を活用する
自治体営業では導入事例の提示が効果的だと考えられます。前例主義が強い自治体は多く、ほかの自治体での成功例は重要視されやすいです。
そのため、ほかの自治体で自社の商品やサービスを導入した実績があれば、その結果について具体的に説明することで興味を示してもらいやすくなります。
営業の際に事例を持ち込み紹介するのもひとつの手ですが、導入事例の拡散を行えば自治体のほうから声をかけてもらえる可能性もあります。
専門メディアへの情報掲載やセミナーや展示会での紹介、DMなどを活用して事例の情報拡散を狙ってみてください。
担当者とのコミュニケーションが重要
自治体営業ではコミュニケーションの構築も欠かせないポイントです。例えば、担当者との関係構築です。
自治体営業におけるプロセスは、複雑で長時間かかる特徴があるので、担当者との長期的な関係構築が不可欠となっています。
的外れな提案をすれば信頼を獲得できなくなるため、コミュニケーションを十分に取って課題把握に役立ててください。
ただし、自治体の職員は人材育成方針によりジョブ・ローテーションを採用しています。そのため、3年程度のスパンで部署異動が行われる点に注意してください。
関係を構築した担当者が異動となる可能性は十分に考えられるため、その都度信頼関係を築く必要があります。
また、自治体営業における意識決定にはトップとなる首長や副首長からの理解を得る必要があります。キーパーソンと良好な関係性を構築することも重要です。
そして、地域住民との関係性も忘れてはいけません。
営業担当者も、地域のお祭りやイベントには積極的に足を運び、地域に溶け込む努力をすると、信頼関係の構築につながります。
自治体は、地域に住んでいる人々の税金によって運営されています。
地域住民の生活水準の構築が組織としての至上命題となるため、その部分を考えずにプレゼンを行ってしまえば失敗を招くかもしれません。
地域特有の文化や産業について学び、プレゼンにも盛り込むと効果的です。
専門用語を避けて営業を行う
民間企業への営業では専門用語を使用するケースも多いでしょう。しかし、自治体営業では専門用語の活用は避けたほうが成功率アップを目指せます。
民間企業とは異なり、自治体職員は専門用語に慣れていません。そのため、自分たちだけがわかるような業界で使用する用語を使っても理解してもらえません。
特にITや広告業界では英字やカタカナの業界用語を普段でも使用しているため、提案書やコミュニケーションの場でも自然と出てしまうことが多いです。
その点に注意をし、誰が聞いてもわかるよう、わかりやすい説明を心がけてください。
ただし、場合によっては専門用語を使用する場面も考えられます。その際には、用語解説の資料や文章を別に用意しておくと理解してもらいやすくなります。
コンプライアンスを遵守した営業を行う
自治体は住民からの信用に基づいて運営されています。そのため、コンプライアンスを遵守した営業が不可欠です。
公務員倫理規程には企業との癒着防止規定があり、利害関係のある人からの接待や贈り物などは禁止されています。
規定に抵触する行為があれば、担当者が免職や停職、減給といった処罰の対象となるので注意が必要です。コンプライアンスを意識した営業活動を実施してください。
導入後を見据えた提案を行う
自治体営業においては、商品やサービスを販売するだけではなく、導入後を見据えた提案が求められています。
例えば、導入するためにICTのスキルが必要だった場合、自治体の職員が使いこなせなければ意味がありません。解説策としては、職員研修の施策の盛り込みが効果的です。
大規模なシステムの導入や業務改革が必要なプロジェクトであれば、丁寧な運用サポートも必須です。
課題に応じた追加開発やきめ細かいサポート体制を用意すれば、より魅力を感じてもらいやすくなります。
導入して終わりではなく、導入後にも目を向けてプレゼンを行ってください。
自治体への営業方法
自治体に対する営業方法には様々な種類があります。それぞれに特徴があるので、解説していきます。
テレアポ
電話を使用して商談や訪問のアポイントメントを獲得する方法です。
初期接触のための基本的な手段として有効で、自治体の担当者に向けて直接電話をかけて商談の約束をとります。
飛び込み営業とは異なり、コストがかからない手法だといえますが、電話越しだと表情や身振りでのコミュニケーションが取れないので、話す内容や言葉遣いを意識する必要があります。
売り込みの姿勢だけでは失敗を招きやすいので、課題解決に貢献したい誠実な姿勢を見せることが大切です。
電話対応では、公共性や社会貢献性を強調した自己紹介を短時間で行い、自治体の課題と自社商品やサービスの適合性を伝える必要があります。
日程調整に関しては、折り返しでの連絡は避けてその場で提案するようにしてください。
郵送DM
自治体に対して、商品やサービスに関する情報を郵便で送る手法が郵送DMです。ハガキや封筒、カタログやチラシといった形で送付します。
自治体には、毎日のようにたくさんの郵便物が届くので、開封してもらえるような工夫が必要です。
例えば、「○○市業務効率化事例」といった興味を引くようなフレーズが封筒に表記されていれば、優先的に開封される可能性がアップします。
確実に担当者の元に届けるためにも、部署名を細かく記載することも大切です。
また、電話やメールなど、返信方法を明示する必要もあります。QRコードで電子フォームへ誘導できれば負担も少ないでしょう。
送付後のフォローも重要です。
反応があった自治体に対して1週間以内に必ず電話連絡を実施し、反対に反応のない自治体には2週間後あたりにFAXDMでリマインダーを送るといった多角的なアプローチをしていくと効果的です。
FAXDM
FAXを使用してダイレクトメールを送る手法をFAXDMといいます。
郵送DMと比較すると費用を抑えられ、日常業務でFAXを使用するケースが多いことから、開封率が高い特徴もあります。
ただし、用紙1枚に情報を集約させる必要があるため、情報量が少なくなりやすい点に注意してください。
処分される前に読んでもらえるよう、紙面に工夫をこらすことも大切です。
課題解決のための具体的な方法、導入実績、問い合わせ方法の3点をまとめ、公共性をアピールしてください。効果を高めるための戦略としては以下が挙げられます。
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- 送付後3営業日以内に電話でのフォローを実施する
- 担当者負担軽減のためにも興味を示した場合だけ詳細資料を送付する
- 複数回に分けて送付する場合には、内容を段階的に深堀していく
展示会に出展
展示会に出展すれば、自治体の担当者と直接対話しながら営業を行えます。
公共サービス関連の展示会は、予算編成前の情報収集のために多くの職員が参加するため、自社商品やサービスを効果的にアピールできます。
ブースでは、来場者の動きを考慮した上で目立つ場所に商品を展示し、デモ機を使用して実演するのもおすすめです。製品を配布して実際に使用してもらう方法もあります。
また、担当者が庁内で共有しやすいよう、A4サイズの用紙に導入実績を具体的に示すのも効果的です。
出展するためには費用や時間がかかりますが、具体的なイメージを持ってもらいやすい魅力のある手法です。
オンラインセミナー
地域の課題を解決するためにも自治体の職員は様々な情報を必要としており、仕事の時間を活用して様々な種類の勉強会やセミナーに参加している担当者も多いです。
そのため、業界ごとに開催されるセミナーに参加をすれば、自社商品やサービスのアピールに役立ちます。
セミナーの内容は、30分程度の短い時間で構成し、資料は要点をわかりやすく整理して自治体の課題解決に役立つポイントを具体的に説明します。
セミナーが終わった後には参加者に対して1週間以内を目途に個別で連絡をし、導入相談につなげてください。
資料提供やアーカイブ配信による不参加者へのフォローも忘れないようにしましょう。
メディアへの掲載
自治体向けの情報誌や専門メディアへの広告掲載もおすすめです。記事型広告は、宣伝だけではなく具体的な事例や成功体験を紹介すれば信頼性アップに役立ちます。
また、掲載された記事は営業ツールとしても活用可能です。DMや商談資料に「○○誌で紹介された実績」と記載すれば説得力向上を目指せます。
まとめ・コツを理解して自治体営業を成功させよう
自治体営業は企業に対する営業とは異なり、成功させるためには戦略的なアプローチが欠かせません。
自治体の具体的な課題やニーズの理解、予算編成の流れなどを把握し、効果的な手法を活用して営業を実施してみてください。
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(編集:創業手帳編集部)