元フリーターが司法書士に。「司法書士業界を変える男」佐藤貴弘氏インタビュー

創業手帳
※このインタビュー内容は2016年03月に行われた取材時点のものです。

司法書士合格から1年での独立から学んだ、「運」を味方につける営業・人脈構築の方法

(2016/03/16更新)

元フリーターが一念発起し、勉強を始めた…。司法書士試験合格後わずか1年で独立し、面白い人がいればどこにでも会いに行く。その勢いがあるのは、「司法書士の存在を社会に届けること」を使命とし、営業活動に尽力しているから。そんな佐藤氏に、「運」を味方につける人脈構築の方法を伺いました。

フリーターが一念発起した理由とは?

ーフリーターをされていたということですが、どのような経緯で司法書士を目指すことになったのですか?

佐藤:中学校を卒業してから東京に出てアルバイトをしながら通信制の高校に通い、不安定な生活を送っていました。転期は19歳で起こした交通事故です。

交通事故の実況見分で、僕に8割過失があるという結果になり、悔しさから病床で本を読んで勉強してやろうと思ったのですが、19歳の僕は漢字が読めなかったんですよ。

さすがに19歳にもなって漢字が読めないのはまずいと思い、入院中に漢字ドリルで猛勉強をして本が読めるようになりました。

本が読めるようになると、自分の知らない世界に触れることが楽しくて、もっと知見を広げたい!と思い、21歳で大学に入りました。

当然、就職も不利だろうから、手に職をつけなければと思い、在学中に「宅建」と「行政書士」の資格を取得しました。

より難易度の高い「司法書士」の資格は、卒業してまた1年間フリーターをしながらようやく27歳で合格し、やっと念願の司法書士になることができました。

ー独立された経緯を教えてください。

佐藤:フリーター経験が長く、大きな組織に所属したことがなかったので、組織の中で自分の力を試したくて、大手司法書士事務所へ就職しました。

しかし、安定したお給料をもらえる生活や同様の業務を繰り返す日々を、徐々に物足りなく感じ、自分の世界観が狭く固定化してきていると感じるようになりました。

そんな中で、司法書士業界の問題に直面し、この業界にイノベーションを起こしたい!決められた業務の幅を超えて自由に戦略を立てて動きまわりたい!という思いが強くなりました。

そして、就職から1年後に、人生は1回しかないと思い、飛び出しました。

勤務の中で司法書士としての自信と、こうすれば上手くいくという確信を持てるようになったことが大きかったと思います。

ー司法書士になられて1年での独立に不安などはありましたか?

佐藤:顧客も、お金もない状況で独立したので不安はありました。

しかし、お金や人脈の準備ができてから始めようと言っていたらいつまでたっても始められないので、まずやってみようと思いました。

今は司法書士が2人、事務員が3名の計5名なので、開業して半年にしては順調なほうだと思います。お客様も0の状態からスタートでしたので…。

最初のご縁に恵まれまして、人格者の経営者やその業界ではトップにいるような方々を紹介していただきました。

相談をしていると、その方が別の方を紹介してくださり、紹介していただいた方にまた相談をするとその方もまた紹介してくださって…という形でご縁を繋いでいただきました。

「司法書士って何?」とは言わせない!

ーパートナーは実務を受け持ち、ご自身は営業に尽力されているということですが、それはどうしてですか?

佐藤:この業界に入って一番強く感じた事は、司法書士の認知度があまりにも低いことです。

自営業、不動産、金融機関などある特定の分野の方は司法書士のことをよく知っていますが、その分野以外の方とはほとんど接点がありません。

司法書士って行政書士とどう違うのか、何をやっている人なのかという質問が非常に多いです。

僕は、司法書士の仕事はペットボトルのジュースのようなものだと思っています。

中身は同じなのに、コンビニで買ったら150円、安いスーパーで買ったら80円。もちろん、より安い方を選ぶと思います。

しかし、業界が価格競争に巻き込まれていると、司法書士のモチベーションも下がってしまうし、士業の中での立場もどんどん弱くなっていく…。これでは悪循環です。

それを断ち切るためには、司法書士の存在自体を知ってもらうことが必要だと思い、営業活動に注力しています。

営業とは、「商品やサービスの本当の価値をお客様に伝える全ての活動」だと思っているので、司法書士の仕事に関係ない部分で、様々な業界の方にお会いして、司法書士の存在を知ってもらう。

営業力を通じて司法書士の存在を社会に届けるというのが僕の使命だと感じています。

価格競争に巻き込まれていた部分でも別の付加価値を提供して、値段以外の部分で勝負ができると思うのです。

「まず知ってもらう」ことは司法書士業界全体を活性化するだけでなく、業界の存続のための唯一の手段だと考えています。

司法書士の競合は、司法書士でなく、弁護士や行政書士で、他の士業との競争が年々激化しているからです。

ー知ってもらうためにはPRが不可欠だと思いますが、工夫されていますか?

佐藤:フェイスブック、ツイッター、ブログなどSNSでの情報発信と、交流会や経営者の集まりに積極的に顔を出しています。

例えば、名古屋で経営者が約400名集まった会があったのですが、そこで司法書士の存在を発信したり、交流会の場で時間をいただいてプレゼンをしたり、司法書士業務とは全く関係ないようなところでも講演やセミナーをさせていただいています。

あとは、もちろんホームページ、チラシなども活用しています。

「運」を味方につける人脈構築の方法

ー人脈を広げられたということですが、具体的なポイントや心がけていることはありますか?

佐藤:独立して最初にご縁のあった経営者の方に、「成功している人と成功していない人の決定的な違いは、『運』だ。」と言われました。

「『運』は訓読みでは“運ぶ”。つまり、『運』は人によって運ばれる。

成功する人の周りには、『運』を運んできてくれる人がたくさんいて、その『運』によって結果的に成功する。

だから『運』を運んできてくれる“人”をいっぱい作りなさい。」とアドバイスをいただきました。

また、「人は自分の測る物差しによって測られる。損得勘定で人を見たら、損得勘定で見返される。

だから、自分はどういう貢献ができるか、この人の成功のために自分は何がお手伝いできるだろうか?…そう思って、損得勘定を捨ててお付き合いをしなさい。」ともおっしゃっていて、僕は経営が全く分からないので忠実に実践しました。

その後、独立してから3、4か月はご縁をいただいた方々をマッチングすることでその方々の成功に貢献しようとしていました。

しかし、一向に司法書士の仕事としては実を結ばないので経営者の方に相談したところ、「トップになる人間は創業時にどれだけ苦労したかで、その組織の根っこの深さが決まるから、今は苦労しなさい。」と言われ、従いました。

現実は本当に厳しく、支払いが危うくなるような状況にまでなりましたね…。

しかし、苦しい中も続けていると、数か月前に貢献させていただいた方から、お仕事をいただけるようになりました。

独立して約半年経った頃から急に件数が増え、倍、倍、倍と増加してきました。

まずは自分が相手に尽くすことで、更に良いご縁をいただけて、やはりやってきたことは間違っていなかったと思っています。

ー今後の展望を教えてください。

佐藤:ここ3年の目標は、まずは、支店を出して、日本最大といわれる事務所の規模を目指しています。

次に、全国展開して、一般の方が「法律の問題が起きたらまずは司法書士に相談しよう」と思うくらい、司法書士自体の認知度を上げたいです。

司法書士業界の営業マンとして、目標が実現されるまで、ありとあらゆる業界の方にお会いしますし、面白いといわれれば北海道から沖縄まで伺いに行きます!

(取材協力:表参道司法書士事務所 佐藤貴弘 司法書士)
(編集:創業手帳編集部)

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