食品の消費税1%案とは?免税事業者への影響と今から準備しておきたいことを解説
食品を扱う事業者が知っておきたい「消費税1%への引き下げ案」

政府は、2027年4月1日から食品の消費税率を現行の8%から1%に引き下げることを検討しています。
政府は、2027年4月から食品の消費税率を現行の8%から1%へ引き下げる制度の導入を目指しています。
2026年6月には制度案の中間とりまとめ(案)が公表され、その後、高市総理は7月に法改正に向けた準備を進めるよう党幹部へ指示しました。今後、臨時国会への法案提出が予定されていますが、現時点ではまだ法案は成立していません。
もし食品の消費税率が8%から1%へ引き下げられた場合、食品を取り扱う事業者にはレジや会計処理の見直しなどさまざまな影響が想定されます。特に免税事業者やインボイス制度への対応を進めている事業者は、制度の変更内容を早めに把握しておくことが重要です。
本記事では、食品の消費税1%案の概要(2026年8月時点)や免税事業者への影響、今から準備しておきたいポイントをわかりやすく解説します。
この記事の目次
食料品の消費税1%案とは?免税事業者への影響が注目される理由

食料品の消費税1%案は、2025年10月の連立政権合意ですでに「2年間に限定し、飲食料品を消費税の対象としないことを視野に法制化を検討する」としており、その公約が実行されようとしています。
ここでは、免税事業者とは何か、またなぜ0%ではなく1%にしたのかを解説していきます。
そもそも免税事業者とは?
免税事業者とは、消費税を国に納める義務が免除されている事業者を指します。反対に、消費税を国に納めなくてはいけない事業者は「課税事業者」です。
事業で商品・サービスを提供し、その対価で売上げを得た場合でも、免税事業者であれば消費税の納税義務はありません。
また、消費税を申告する際には毎日の取引を税率ごとに区分し、仕入税額控除を計算する経理作業が必要となりますが、免税事業者なら複雑な計算や確定申告の手続きも不要です。
ただし、課税事業者が支払った消費税が、預かった消費税を上回った際に、その差額が国から事業者へ返金される「消費税の還付制度」は免税事業者だと受けられません。
0%ではなく1%にする理由
もともとは食料品の消費税を0%に減税することを計画されてきましたが、現在は1%を残した減税案が進められています。
0%ではなく1%にする理由として挙げられるのが、レジシステム・会計ソフトなどの改修に負担がかかる点です。
例えばPOSレジや販売管理システム、会計ソフトの中には、消費税率を0%と想定していないものもあります。
そのため、「0」と入力しても正しく反映されず、税率変更の対応が難しいケースもあるのです。
また、インボイス制度では的確請求書に各税率の対価や消費税額などを記載しますが、消費税率が0%になるとシステムによっては非課税扱いとなってしまい、適正なインボイスを発行できなくなる可能性があります。
他にも、0%にする場合システム改修には10カ月から1年程度かかる可能性が示唆されていること、国や地方自治体の税収減を抑えることも理由として考えられるでしょう。
消費税1%への引き下げで考えられる免税事業者への影響

消費者にとっては物価高の中で消費税の負担が減るのは嬉しいように感じられるかもしれませんが、事業者にとってはかえって負担が増えるのではないかと懸念の声が上がっています。
ここで、消費税率が1%に引き下げられた際に、免税事業者にはどのような影響が出るのか解説します。
利益の減少につながる
免税事業者は消費税の納税義務がないため、これまでは食料品を販売する際に受け取った8%分を実質的な収益の一部として事業に活用できるケースがありました。
しかし、税率が1%に引き下げられてしまうと、売上げに上乗せできる消費税額が減少してしまいます。
一方で、仕入れ時に支払う消費税は事業コストとして負担することになるため、仕入れ価格や流通段階の税率の扱いによっては、これまでと比べて利益が圧迫される可能性があります。
特に利益率が低い業種は収益への影響を受けやすいため、事前に利益がどれくらい下がる可能性があるのか、シミュレーションを行うことが重要です。
価格設定の見直しを迫られる可能性がある
税率が変更されることで利益率が変化した場合、販売価格の見直しを迫られる可能性があります。
例えば、これまでの利益を維持しようとした場合、価格を引き上げるという選択肢もありますが、消費者は「税率が下がったのに値段が上がった」と受け取る可能性があり、改定には慎重な判断が求められます。
一方で、価格をそのまま据え置く形を取れば、利益率が低下する可能性もあるため、仕入れコストや競合価格なども踏まえながら、適切な価格設定の検討が必要です。
税率変更をきっかけに、各商品の利益率と販売戦略を改めて見直す機会と捉えましょう。
価格表示や会計処理など実務面の負担が増える可能性もある
税率の変更によって、利益面だけではなく実務面でも対応が必要になります。
例えば、店頭の値札やメニュー、ホームページ、ECサイトなどの価格表示を修正する必要があるほか、レジや会計ソフトの税率設定も変更しなくてはなりません。
制度の詳細によって必要な対応は異なるものの、変更が正式に決定した際は、会計ソフトの設定や社内規定の見直し、従業員への周知を早めに進めることが大切です。
消費税1%引き下げの影響を特に受ける免税事業者

実際に食料品の消費税が1%に引き下げられた場合、どの業種の免税事業者が特に影響を受けてしまうのでしょう。ここで、影響を受けやすい免税事業者を紹介します。
食品を扱う小売業
まず大きな影響を受けるのが、食品を取り扱う小売業(スーパーなど)です。
特に食品を中心に販売しているスーパーは、ほぼすべての商品の価格設定を見直し、価格表示も変更しなくてはなりません。
実務面の負担が大きい一方で、出費を極力抑えたい消費者は食材やお弁当、お惣菜などをスーパーで購入するようになり、顧客数や売上げの増加が期待できます。
飲食店
店内飲食は食料品だけでなく、場所の提供も含むサービス業に該当します。
そのため、スーパーやお弁当、お惣菜、ファストフードなどのテイクアウトは1%減税されるものの、飲食店での店内飲食は10%のまま据え置きです。
消費者としては消費税10%の外食は高く見えてしまい、「それなら出費を抑えられるお弁当や総菜にしよう」と考え、外食が選択肢から外れてしまう可能性が高いです。
農家
農家も消費税の引き下げによって影響を受ける業種の1つです。
ただし、飲食店のように消費者の行動が変わる懸念ではなく、税込みの売上げが下がってしまう可能性がある点が問題となっています。
農家は農協特例などをクリアしていれば、インボイス登録をしていなくても取引上不利益を被りにくいという特徴があり、この背景から中小規模の農家は免税事業者のまま取引を続けている人が多く見られます。
しかし、免税事業者は消費税の申告によって受けられる控除・還付などを受けることができません。
例えば、農家は種苗や肥料、農機具、燃料などを仕入れるのに10%の消費税がかかっています。
売上側の消費税は1%に引き下がっているのに、仕入れや経費にかかる消費税は10%のままなので、利益が圧縮される可能性が高いです。
課税事業者になれば仕入れや経費にかかる消費税の控除・還付を受けられるものの、小規模な農家は課税事業者になることで事務負担が増えるなどの問題もあり、難しい選択が迫られます。
消費税1%の影響を受ける免税事業者が今からやっておきたいこと

食料品の消費税率が1%に引き下げられた場合、免税事業者は利益や価格設定、事務作業など幅広い面で影響を受ける可能性があります。
制度の内容が正式に決まってから対応を始めるのではなく、あらかじめ準備を進めておくことで、事業への影響を最小限に抑えやすくなります。
ここでは、今のうちから検討しておきたいポイントを紹介しましょう。
自社の影響額を試算する
まずは、税率変更によって自社の利益や資金繰りにどの程度影響があるのか試算してみましょう。
食料品の売上割合や仕入額、利益率などをもとにシミュレーションを行うことで、税率が変わってからの収益を具体的にイメージできます。
特に食料品の売上げが、事業全体に占める割合が高い事業者ほど受ける影響も大きくなる可能性があるため、複数のケースを想定して試算することが大切です。
また、事前に影響額を把握しておけば、価格改定やコスト削減など、必要な対策を早めに検討できるのもポイントです。
価格設定の見直しを検討する
利益率が変化する場合、販売価格を見直す必要があるか検討することも大切です。
ただし、単純に値上げを実施してしまうと顧客離れにつながる可能性があるため、競合他社の価格や市場動向も踏まえて判断する必要があります。
また、価格設定の見直しをする際には、商品の組み合わせやセット販売、高付加価値商品の提案など、価格以外で利益率を改善させる方法もあわせて検討するのがおすすめです。
税率変更を機に、各商品の採算性を見直すことで、安定した経営につながるでしょう。
課税事業者への転換を検討する
事業内容によっては、課税事業者への転換を検討することも選択肢の1つです。
課税事業者になると消費税の納税義務が生じますが、一定の要件を満たすことで仕入れ時に支払った消費税を仕入税額控除にできるため、事業の状況によっては有利になるケースがあります。
特に、設備投資や仕入れ額の割合が大きい事業者は、免税事業者のままでいるよりも負担が軽減される可能性があります。
どちらが有利かは売上げや経費の状況によって異なるため、税理士などの専門家にも相談しつつ慎重に判断してください。
飲食店はテイクアウト・デリバリー対応の強化を検討する
飲食店では、食料品に対する税率変更の影響を受ける可能性があるため、テイクアウトやデリバリーの販売体制を見直すことも有効です。
例えば同じ1,500円(税抜き)の商品でも、店内飲食だと1,650円かかるのに対し、テイクアウトで1%に減税されれば1,515円で、135円分お得になることがわかります。
こうしたお得感から、テイクアウトやデリバリー需要はさらに拡大する可能性が高いです。
飲食店がテイクアウトやデリバリーを強化することで、新たな販売機会の創出や売上拡大につながることも期待できます。
制度の内容を確認しながら、自社の販売方法を柔軟に見直していくことが重要です。
実務面でどのような対応・変更が必要か確認する
税率変更が実施される場合は、日々の業務にも様々な対応が必要となります。
レジや会計ソフトの税率設定に加え、請求書・レシートの表示方法、価格表やホームページの修正などが挙げられます。
これらの項目を事前に洗い出しておき、対応のし忘れを防ぐことが大切です。
また、従業員への周知やマニュアルの更新も行う必要があります。
制度が開始される直前になって慌てることがないように、計画的に準備を進めることがスムーズに対応できるポイントになります。
経費削減・業務効率化を進める
消費税率の引き下げに伴い、利益への影響が非常に大きい場合には、売上げを増やすだけでなく経費削減・業務効率化にも取り組むことが重要となってきます。
例えば、発注方法を見直して仕入れコストを抑えたり、在庫管理を効率化して食品ロスや廃棄コストを削減したりするなどです。
こうした経費削減・業務効率化を取り入れることで、利益率の改善が期待できます。
また、利用しているキャッシュレス決済サービスの手数料を比較し、より条件の良いサービスに切り替えることも有効な対策の1つです。
特に利益率が低い小売業・飲食業は、一つひとつのコスト削減額は小さくても、積み重ねることで収益の改善につながります。
税率変更への対応をきっかけに、仕入れや在庫管理、決済方法など日々の業務を見直し、無駄なコストがないか確認してみてください。
飲食店・農家に対する支援策はあるのか?

今回の税率変更に伴い、マイナスの影響を受けてしまう可能性が高いのは飲食店と農家です。
2026年6月24日に公表された中間とりまとめ(案)では、「農業従事者や外食産業への影響を見極めつつ、過去の支援策も参考にしながら資金繰り支援などの予算措置を検討する」としています。
必要な支援策を講じる考えは表明しているものの、まだ具体的な支援策については出ていない状況です。
今後、具体的な支援策が発表される可能性はあることから、特に飲食店や農家の免税事業者で、大きな影響を受ける可能性が高い場合は、早めに情報収集を行い、対策を検討することが大切です。
まとめ・消費税1%は免税事業者に影響をもたらす可能性も!最新情報に注目しよう
食料品の消費税率が1%に引き下げられた場合、免税事業者は利益率の低下や価格設定の見直し、実務負担などが生じる可能性があります。
2026年7月時点では制度内容が確定していないため、実際の影響は今後の制度設計によって変わる可能性がありますが、自社や店舗への影響をシミュレーションし、価格戦略やコスト削減、課税事業者への転換などを改めて検討することが大切です。
今後公表される政府の最新情報も確認しながら、早めに準備を進めていきましょう。
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(編集:創業手帳編集部)
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