ココロドル 密本雄太|アメリカで学んだロジカル手法で映画予告編制作に挑む

※このインタビュー内容は2026年05月に行われた取材時点のものです。

自分がやりたいことにしっかり向き合い、長く続けることが一番大事

ココロドル密本雄太氏

街頭で目にした映画の予告編に心を動かされ「自分も映像で誰かの心を動かしたい」と決意した密本さん。アメリカに渡り、映画の予告編の制作について学んだ後に帰国。フリーランスを経て2016年に起業し、感情曲線を用いたマーケティング手法による予告編の制作を行っています。

世界上位0.1%の高IQを持つという密本さんに、起業した経緯やアメリカで学んだ考え方、起業初期のチームの作り方などについてお聞きしました。

ココロドル密本雄太氏

密本 雄太(みつもと ゆうた)
株式会社 ココロドル 代表取締役社長
デザイン・映像系専門学校の2校を卒業後、ロサンゼルスにて映画予告編の演出を経験。独学で始めたカメラでは多数のコンテストで入賞・金賞を受賞。映画予告編などのエンターテイメントを融合した企画を得意とし、企画、撮影・編集、グレーディングやWEB制作まで、クリエイティブに関わる全てのワークフローに精通し、各所から協力を要請される。各メディア、雑誌にも多数出演。テレビ、映画館、街頭ディスプレイ、駅、店舗サイネージ等の主要な広告媒体で配信される映像を多数制作。JAPAN MENSA(全人口の内上位2%の高IQ団体)会員、Triple Nine Society(世界人口上位0.1%の高IQ団体)会員でもある。

落ち込んでいる自分を元気づけてくれた予告編の制作を学ぶため渡米

ー改めて、ココロドルの事業内容について教えてください。

密本:「世界中の誰かへ、心躍る体験を。」をビジョンに掲げ、映画の予告編の制作をしています。また企業のブランディングや採用に関する動画、映画のキャスト紹介やPR動画なども制作しており、そちらについては撮影からワンストップで手がけています。

ー映画の予告編の制作に興味を持たれたきっかけはなんだったのでしょうか。

密本:私は、もともと自衛隊に入ってパイロットになるのが夢だったんです。ただ事情があってその夢が叶わないと知り、落ち込みながら歩いていたときにある映画の予告編が街頭ディスプレイで流れてきました。それを見ているうちに、たった数十秒で落ち込んだ気持ちが魔法のように消え、気分が高揚しました。それがきっかけとなり、当時の私のように、落ち込んでいる人を元気づけたいと、映画の予告編制作を学ぶ決意をしました。

ーそこからどのように映画の予告編の制作を学ばれたのですか。

密本:映像系の専門学校を卒業後、通っていた専門学校の友人の親戚がアメリカで映画の予告編の映像制作を行っているのを知り、願ってもない機会ということでお願いして、住み込みでアシスタントをさせてもらうことになりました。英語については、渡米時は「Be動詞って何?」という状態でしたが、親戚の方は日本人だったので日常生活や仕事については問題はなく、英語は渡米してから少しずつ覚えていったんです。結局3~4年ほどアメリカに滞在して映像制作について学び、帰国しました。

ー帰国後、起業に至った理由を教えてください。

密本:帰国後はフリーランスで映像制作の仕事を始めましたが、改めて日本の映画予告編の制作業界の参入障壁の高さを思い知らされました。また、仕事をする中で「法人としか取引しない」という方針の企業が多いことや、法人の方が信用されやすいということがわかってきて、取引先として信頼していただくために法人化を決めたんです。

「起業したい」「社長になりたい」と思ったことは人生で一度もありませんでしたが、自分がやりたい仕事をする上で有利と判断し、起業する決断をしました。

組織作りに注力しつつプロモーションで実績作り

ー参入障壁が高く、既存取引が固定化された映画業界の中で、ゼロから受注を獲得できた理由は何だったとお考えですか。

密本:アメリカから帰ってきたばかりで人脈も実績も資産もなかった自分には、閉鎖的な業界で最初の取引をするハードルは、かなり高いものでした。まずは映画の予告編にこだわらず、自分が持っているスキルで映像制作に取り組み、アルバイトや契約社員でもいいので人を増やすことに注力したんです。ひとりで出すアイディアには限界があるので、早い段階から役割を分けてチームを作り、チームで制作する体制を確立していきました。人数が少なくても、部署があるきちんとした組織として外から見えることも重要だと考えたからです。

組織作りに力を入れるのと並行して、映画に関連した動画を作りながら、映画の予告編を無料で制作し、採用していただけたら報酬をお支払いいただくというプロモーションを行って、ゼロから実績を作っていきました。

ー創業初期の資金面はどのように乗り切られましたか。

密本:アメリカ時代に貯めていたお金と、帰国後フリーランスで休みなく働いて稼いだお金で初期資金をまかないました。今、同じ条件で起業するならさまざまな補助金を利用すると思います。当時はほとんどなかったですが、今はとても充実していますよね。

ー創業期はどのようにチームを立ち上げていったのでしょうか。最初のメンバー選びで重視した点を教えてください。

密本:創業した時点では私ひとりで、そこから1年にひとりずつぐらいのペースで人を増やしていきました。「映画の予告編を作りたい」という志望動機だったら弊社でなくてもいいので、例えば「小さな会社で予告編の制作を学びたい」という理由や「私のバックボーンや制作物に共感を覚えた」という理由のように、弊社を志望する明確な理由があることを重視していましたね。

人はコストではなく資産と考え、失敗してもそれを成長につなげられるような環境、自分よりもいい意見が出たときにちゃんと採用できる環境を意識して作っていった結果、いいチームを作ることができました。私も以前から社長としての経験があったわけではないので、従業員に育てられた面もあり、一緒に成長してきたという実感があります。

ークリエイティブ領域において、スキルや感性の異なるメンバーをどのようにまとめてきましたか。

密本:創業当初から会社の理念をきちんと設計することが社内に対しても社外に対しても大切だと考えていました。「映像を通し、ココロオドル体験をお届けする」というビジョンや、感情曲線というテンプレートを初期の頃からしっかりと設定しているのは、企業として高いクオリティを保ち、属人的にならずに一貫性のあるものを制作できるようにという理由からです。

また「この人と一緒に仕事をしたい」と思ってもらうためには、どんなスキルよりも先にコミュニケーションが非常に大切です。社内でのコミュニケーションは意識的に重視しており、社員には社長と呼ばせず、名刺に社長と記載しないようにしていた時期もありました。

人数がまだ少ないころから、お花見やバーベキューなどのレクリエーションは社員全員参加で行っていました。仕事以外のコミュニケーションから生まれる信頼関係や、お互いを知ることによる仕事のしやすさなどは、そういった社内行事から得られるメリットです。

映画の予告編は「作品」ではなく「広告」

ココロドル密本雄太氏

ー御社の強みである「感情曲線」という手法は、どのような背景から生まれたのでしょうか。

成田:アメリカでは映画の予告編は「作品」ではなく「広告」と考えられています。予告編は見た人を感動させるための映像ではなく、それを見て映画館に足を運んでもらうための販促物のひとつですよね。広告ですから、予告編はさまざまなマーケティング手法のもとに制作されています。人間は感情を揺さぶられたものに興味を持つ習性があるため、そういったマーケティングの観点から「静かな立ち上がりから少しずつ緊張感を高め、一気に盛り上がる」という映像の盛り上がりを視覚化したグラフを作り、それを感情曲線と呼んでいます。我々はその感情曲線に沿って予告編を制作しているんです。

企業として一定のクオリティを保つために、感覚などの俗人的な要素に頼り過ぎず、感情曲線というテンプレートに沿って制作することが大切だと考えています。

私が学んだ心理学でも、音響心理学で「人間はこういう音を聞くとこういう感情になる」という傾向があることがわかっているので、特に音にはこだわっていますね。

ー実際にどのように映画の予告編の制作を行っているのでしょうか。

密本:予告編を作る映画は、最低3回は観ます。1回目は純粋に視聴者として観て、感想と宣伝の方向性とを照らし合わせながら2回目を観る。その後、感情曲線を考えながら予告編の台本を作り、その台本に沿ったシーンやセリフを抽出するために3回目を観て、最終的に使用するシーンを決定しています。

映像の仕事って感覚がすべてだと思われやすいんですが、私はそうではなく、感覚と論理のバランスが大事だと思っています。映像は感覚だけで制作できるものではないですが、逆に論理だけで制作しても安全なものしかできず面白みがない。だからこそ、最後にあえて常識を外したり、少し意味不明なぐらいの選択をしたりすることもあります。

また、すべての納品物は私がクオリティチェックをし、基準を満たしていなければ修正を行います。

ー最後に、これから挑戦する起業家にメッセージをお願いします。

密本:「起業とは特別なアイディアがないとできないもの」「起業するならブルーオーシャンを見つけないといけない」と思っている方も多いですよね。ただ私はそうではなく、重要なのは「自分のやりたいことにしっかり取り組む」ことだと思っています。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、意外と自分がやりたいことを分かっていない人も多いですし、分かっていてもリスクや周囲の目が気になって結局挑戦しない人もかなりいるんです。

極論、雇用されている側はいつでも辞めることができますが、起業した側はそうはいかないので、長く続けることが重要になってきます。その時に、自分がやりたいことで起業していないと、続けることが苦痛になってしまいますよね。

私も人脈も資金もない状態から始めましたが、自分のやりたいことがはっきりしていたから今も事業を続けられていると思っています。

その上で、周囲とのコミュニケーションを大切にし、人として信頼されるように考え、行動してもらえたらと思います。

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