宅建業許可を取得するために知っておきたい準備あれこれ

創業手帳

宅建業許可申請を多数手がけている専門家が解説します

(2018/12/14更新)

不動産の売買や仲介を行う際には、宅地建物取引業(宅建業)が必要になります。
ですが、いざ宅建業を取得するためには、様々な要件をクリアしないといけません。

そこで今回は、宅建業の許可申請を多く手がけている、行政書士 アイズ法務事務所の藤原 大輔氏に、宅建業を始めようと思っている方が申請の際に確認しておきたいことや申請方法について解説していただきました。

宅地建物取引業(宅建業)とは

宅地建物取引業(以下:宅建業)とは、不特定多数の人を相手方として宅地又は建物(以下:宅地建物)に関し、下に記載した1と2の行為を反復または継続して行い、社会通念上、事業の遂行と見ることができる程度の業を行う行為とされています。

  • 宅地建物の売買若しくは交換をする行為を業として行なうもの
  • 宅地建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為を業として行なうもの

また、「宅地建物取引業法」(以下:宅建業法)という法律の規定により業務を行う業種で、宅建業を営むには、国土交通大臣または都道府県知事から免許を交付される必要があります。

一般的に不動産屋さんをイメージされると思いますが、その中でも上記不動産取引業をされるという方には宅建業許可が必要です。不動産屋さんであっても、不動産賃貸・管理業(不動産賃貸業、貸家業、貸間業、不動産管理業など)は該当しません。

宅建業法の規制もあり、それに反して業務を行った場合、国土交通省または都道府県知事が業務改善を目的とする指示処分、業務停止処分、もしくは免許取消し処分などの行政処分をされてしまいます。そうなると、この後出てくる欠格要件にも該当してしまいますので、ご注意ください。

宅建業を始める前に確認しておきたいこと


それでは、宅建業の免許取得を検討する際に、事務所を借りたり、費用をかける前に確認しておきたい要件を見ていきましょう。

欠格事由に該当しないこと(宅建業法第5条第1項)

  • 免許申請書やその添付書類中に重要な事項についての虚偽の記載があり、重要な事実の記載が欠けている場合
  • 申請前5年以内に次のいずれかに該当した者
    ・免許不正取得、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い場合または業務停止処分違反に該当するとして免許を取り消された者
    ・前記のいずれかの事由に該当するとして、免許取消処分の聴聞の公示をされた後、相当の理由なく解散または廃業の届出を行った者
    ・前記の聴聞の公示をされた後、相当の理由なく合併により消滅した法人の役員であった者
    ・禁錮以上の刑に処せられた者
    ・宅建業法、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に違反し、又は刑法(傷害、脅迫等)、暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し、罰金刑に処せれた者
    ・宅地建物取引業に関し不正または著しく不当な行為をした者
    ・暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員又は暴力団員であった者
  • 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
  • 宅地建物取引業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者
  • 申請者の法定代理人、役員または政令使用人が上記2、3または4に該当する場合
  • 事務所に専任の取引士が設置されていない者

免許取得後も欠格事由に該当すると取り消しされることになりますので、ご注意ください。

事務所の形態

他の許可もそうですが、事務所の所在も重要な要素となっています。

事務所の範囲

  • 本店または支店として商業登記されたもの
  • 上記のほか、継続的に業務を行うことができる施設を有し、かつ、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人が置かれている場所

ちなみに、本店で宅建業を行わなくても、支店で宅建業を行っていれば本店も「事務所」となるので、本店には営業保証金の供託および専任の宅地建物取引士の設置が必要です。
本店となれば、そこで宅建業を行わなくても支店で行う宅建業について、なんらかの中枢管理的な統括機能を果たしているとみなされるからです。

逆に、支店の登記があってもその支店において宅建業を行わない場合は「事務所」として扱われません。その際は、「営業を行わない旨の誓約書」の提出が必要です。

支店については、会社法の規定により商業登記しなければならないこととなっていますので、従たる事務所の名称を「支店」として免許申請する場合は、商業登記が必要になります。従たる事務所の商業登記を行わない場合は、その他、営業所等の名称を用いて申請することとなります。

事務所要件の適格性

また、「物理的にも社会通念上も独立した業務(他の業務と混在しない)を行いうる機能を持っていると認識できる」と判断できる、以下のような事務所を備えていることが必要です。

  • テント張りやホテルの一室などは認められません。
  • 1つの部屋を他の者と共同で使用する場合も原則として認められません。ただし、一定の高さ(180cm程度以上)のある固定式のパーテーションなどにより仕切られ、他の事務所などの一部を通らずに、該当事務所に直接出入りができるときは、独立性が保たれていると認められる場合もあります。
  • マンションなど区分所有建物の一室を自宅と事務所として利用する場合には、その区分所有建物の管理規約上、事務所としての使用が認められており、かつ、住居部分と区別され独立性が保たれている必要があります。なので、管理規約上、事務所の使用が認められない場合や商号の提出が難しい場合など、お客様等が出入りする事務所として安定して使用することが困難と認められる場合は、事務所として使用することはできません。

事務所の内外観など写真の添付が必要になりますので、申請の際に上記が守られていることを確認出来るようにする必要があります。

専任の取引士の設置

事務所等には一定数の専任の宅地建物取引士(以下:取引士)を置かなければなりません。満たさない場合には、事務所等を開設してはならないですし、免許後に既存の事務所等が満たさないときは、2週間以内に新たに補充をするなどしなければなりません。

取引士とは、宅地建物取引士資格試験に合格後に、取引士資格登録をし、取引証の交付を受けている方です。交付を受けていても取引士証の有効期限が切れている方(取引士証の有効期限は5年)や既に取引士証に勤務先名が登録されている方は認められません。

なぜ取引士が必要かというと、不動産の契約締結に重要事項説明(35条書面)を行う事となっています。これは取引士しか説明できない独占業務なので、必ずいなければならないのです。

また、重要事項の説明は、専任でない一般の宅地建物取引士でも行えますが、宅建業を営む場合は、必ず「専任」の取引士を事務所に常駐させなければなりません。

専任とは、その事務所に常勤すること(常勤性)と宅建業に専ら従事する状態にあること(専従性)の2つの要件を満たしていることです。

常勤性、専従性の意義は、時間的空間的概念に止まらず、業務に専心することとされており、原則として他に業務を持ちえないものであること、とされています。
つまり、パート・アルバイトや業務委託、兼業を持つ者や役員で常勤しているとしても宅建業者を監視・監督する監査役は、取引業務を行うために常勤しているわけではありませんので、専任とは認められない、ということです。

厳しい要件が課せられている理由

これまで解説してきた欠格要件が課されている背景としては、宅地や建物の取引は、一般的に、他の取引と比べ、金額的にも大きなものもあることが挙げられます。

不動産は人生の中で大事なものとなります。その取引を行う者には、その資格として申請者(役員)、政令使用人、専任の取引士等が宅建業法に規定する欠格要件に該当しないことや、事業を行うにあたり、営業保証金等を供託するなど、宅建業法を遵守する義務が課せられているのです。

宅地建物取引業免許の申請

さて、上記の要件を確認したら、いよいよ申請の手続きです。書類の作成や証明書などを集めていきます。

申請先・申請窓口

宅建業を営むための免許は、個人法人を問わず国土交通大臣または都道府県知事です。国土交通大臣、都道府県知事いずれから免許を交付されるかは、宅建事務所の設置状況によって決まります。個人・法人関係なく、どちらの免許も取得が可能です。

申請先は、以下のようになっています。

  • 2以上の都道府県に事務所を設置し、宅建業を営もうとする場合→国土交通大臣
  • 1の都道府県に事務所を設置し、宅建業を営もうとする場合→都道府県知事

申請の窓口は、本店事務所の所在地がある都道府県庁の宅地建物取引業担当課です。
都道府県知事免許・国土交通大臣免許どちらも窓口は同じですが、申請する際は郵送ではなく、必ず直接提出にいかなくてはなりません。

申請書類は都道府県庁やHPで入手しよう

提出書類の免許申請書などの様式等の法定書類については、都道府県庁やそのHPで入手して、必要事項を記入していきます。
また、商業登記簿謄本や身分証明書などの公的証明書を初めとした提出書類についても用意します。個人の証明書類に関しては、本籍で取らなくてはいけないものなどもありますので、早めに確認しておきましょう。前述したように事務所の外観や内部等の写真も必要です。

必要書類は正本と副本を作成しよう

必要書類が全て揃ったら、副本用として必要な部数のコピーをとって、書類を決められた順番に上から重ねて綴じます。コピーした書類を使い副本用も同様に綴じれば、提出用書類は出来上がります。申請時には、申請手数料も必要になりますので持参しましょう。

審査には4~6週間かかる

審査には4~6週間程度かかり、免許の通知後に営業保証金の供託を行い、供託物受け入れの記載がされた供託書の写しを添付して、免許を受けた国土交通大臣または都道府県知事に届出を行います。これで免許証の交付を受けることになり、やっと晴れて営業を開始することが出来ます。

営業保証金の手続きには2ヶ月程度かかる

ちなみに、営業保証金の供託について、宅地建物取引業保証協会(以下:保証協会)に加入する場合には、この手続きにも2ヶ月位かかることになります。申請後に直ちに保証協会加入の手続きを開始してとしても、トータルで2ヶ月以上要することになりますので、営業開始日が決まっていれば時期を逆算して進めていきましょう。

保証金に関しても、保証協会に加入する場合とそうでない場合で供託金額が変わります。一般的に保証協会に加入する方が安い為、加入される方がほとんどでないかと思います。

まとめ

免許取得までには、様々な要件を確認して営業開始となります。時間や費用もかかりますので、事前に事業計画を立て、早めの準備を心がけましょう。概要は共通ですが、細部などは事業者様で差異がありますので、必要書類や時期などを関係各所に確認しながら進めていってください。

また、営業開始からが本当のスタートになります。開始後スムーズに営業ができるように準備しておきましょう。

(監修:行政書士アイズ法務事務所 代表行政書士 藤原 大輔
(編集:創業手帳編集部)

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