開業資金が足りない時はどうする?創業融資や費用を抑える方法を解説
創業融資を中心に、資金不足を補う方法と注意点をわかりやすく解説

開業に向けて準備を進めているものの、「想定より初期費用がかかる」「自己資金だけでは足りない」と悩んでいる人は少なくありません。
資金不足の状態で無理に開業すると、開業後の運転資金が不足し、事業継続が難しくなることもあります。
そのため、開業前の段階で資金調達の方法を把握し、自分に合った手段を選ぶことが大切です。
本記事では、開業資金が足りない場合に利用できる創業融資やその他の資金調達方法、さらに費用を抑える方法などもわかりやすく解説します。
開業資金の不安を解消し、安心して事業をスタートさせたい人はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
まずは開業資金の不足額を確認する

開業資金が足りないとわかった時、具体的にどれくらいの金額が不足しているのか把握してから対策を講じることが大切です。
設備資金と運転資金に分けて考える
開業資金は大きく「設備資金」と「運転資金」に分けられます。設備資金は店舗の内装や機械・設備、システムなど、事業を行うための設備に使用する資金です。
運転資金は家賃や人件費、リース料、仕入費、返済など、事業を運転していく中で必要となる資金になります。
開業資金を考える際に、設備資金と運転資金がどのくらい必要なのか予測しますが、それぞれのカテゴリに分けて考えることが大切です。
なぜなら、開業資金は設備資金と運転資金のバランスを取ることが重要となるためです。
開業時は「理想の環境を作りたい」、「最新設備を揃えたい」といった理由から、設備投資にお金を使う人も少なくありません。
しかし、過剰な設備投資によって経営が圧迫されてしまい、失敗に終わってしまう可能性があります。
開業時は必要以上に設備を導入するのではなく、運転資金を多めに確保したほうが安心です。
自己資金で用意すべき金額の目安を確認する
開業資金において、すべて融資などで賄うこともできますが、自己資金を用意することによって返済の負担を抑えながら開業することができます。
日本政策金融公庫総合研究所による「2025年度新規開業実態調査」を見ると、開業時の資金調達は平均1,219万円で、そのうち自己資金が平均279万円(22.9%)であることがわかっています。
あくまで目安となりますが、全体で必要な開業資金の2~3割程度は自己資金として準備しておくと安心です。
削れる初期費用がないか見直す
開業資金が足りないと感じた時、まずは資金を増やすよりも削れる初期費用がないか見直したほうが、早く開業資金不足の問題を解消できます。
初期費用の中でもチェックしたいのが、以下の費用です。
-
- 物件取得費
- 機器・設備費
- 宣伝・広告費
これらは初期費用の中でも削りやすい部分と言えます。
ただし、業種や事業内容によっては削りやすい費用は異なるため、「本当に削っても問題ないか」を確認しつつ初期費用を見直していきましょう。
最初に検討したいのは『創業融資』

開業資金の不足額を確認し、不足分を補う上で最初に検討したいのが「創業融資」です。
ここで、創業融資の種類や特徴、また創業融資を受ける際に見られやすいポイントを紹介します。
日本政策金融公庫の創業融資
まずチェックしたいのが、日本政策金融公庫の創業融資です。
日本政策金融公庫は、国が出資する政府系金融機関であり、事業資金の融資や国の教育ローン、経営サポートなどを手がけています。
日本政策金融公庫で利用できる創業融資は、以下の2種類です。
新規開業・スタートアップ支援資金
新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業をスタートさせる人、もしくは事業開始からおおむね7年以内の人が利用できる創業融資です。
融資限度額は7,200万円と高く、返済期間は設備資金だと20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金だと10年以内(うち据置期間5年以内)と長めに設定されています。
新規開業・スタートアップ支援資金では、新たに事業を始める人または事業開始後税務申告を2期終えていない人は原則無担保・無保証人で利用できます。
また、利率は状況によって異なるもののおおむね2.5~5%程度(2026年7月現在)で利用できたりするなど、様々なメリットを得られます。
女性、若者/シニア起業家支援資金
女性、若者/シニア起業家支援資金は、新たに事業をスタートさせる人、もしくは事業開始からおおむね7年以内に該当する人のうち、女性、または35歳未満か55歳以上が利用できる創業融資です。
融資限度額や返済期間は、上記の新規開業・スタートアップ支援資金と変わりませんが、利率は特別利率A(基準利率から0.4%引き下げ )で融資を受けることが可能です。
例えば税務申告を2期終えていない人が無担保で融資を利用したい場合、基準利率は3.45~5.15%ですが、特別利率Aだと3.05~4.75%で利用できます(2026年7月1日現在)。
自治体の制度融資
自治体の制度融資は、自治体・金融機関・信用保証協会が連携し、創業や事業拡大などを目指す人が利用できる制度です。
制度融資は一般的な融資に比べて金利が低く、年1~2%台から利用できる場合が多い傾向にあります。
また、融資を借りようとすると基本的には過去の実績などが考慮されるため、創業間もない企業や実績が少ない事業者は利用しにくいものです。
しかし、制度融資は事業計画の実現性や地域への貢献度などを軸に評価してもらえるため、創業時にも利用しやすい融資と言えます。
創業融資で見られやすいポイント
創業融資は誰でも受けられるわけではなく、審査に通過する必要があります。この審査時に見られやすいポイントは以下のとおりです。
自己資金を準備しているか
創業融資の審査でよく見られるポイントとして、自己資金の有無と割合が挙げられます。
自己資金は単に金額が多ければ返済リスクを抑えられるという点だけでなく、「開業に向けてここまで資金を貯められた」という計画性・継続力を示す証拠として見ています。
ただし、融資を利用したいからと言って知人や友人に頼み、一時的に口座残高を増やして「見せ金」を作るのはNGです。
審査では預金通帳などから貯蓄の経緯まで確認されるため、一時的にお金を借りて自己資金を用意しても、かえって印象が悪くなってしまいます。
創業計画書に具体性があるか
創業融資を受ける際に、創業計画書(事業計画書)の提出を必要とするケースが多いです。実績のない創業者にとっては、計画書の中で「将来返済できるのか」を示せます。
創業計画書の中でも特に重視したいのが、返済の可能性の高さです。
ビジネスモデルや市場の分析、収支計画などを踏まえた上で、返済できる可能性はどれくらい高いのかを具体的に示していきます。
また、資産状況や個人の借入状況、同居家族も含めて別の収入源はあるのか、なども含めて返済可能性の高さが判断されます。
資金の使い道が明確か
審査では「資金の使い道」も重視される傾向にあります。例えば1,000万円の融資を希望していた場合、この1,000万円を何に使用するのか具体的に示す必要があります。
使い道を明確にする方法としては、計画書の中で内訳と見積書などで根拠を示すことが大切です。
返済計画に無理がないか
早く借りた分を返そうとして無理な返済計画を立ててしまう人もいるかもしれません。
しかし、無理な返済計画は審査時にもチェックされやすいポイントで、マイナスな印象を持たれてしまう可能性があります。
無理のない返済計画を立てるには、まず月次キャッシュフローと損益を試算し、キャッシュ残高がどのように推移するか確認します。
さらに、営業利益と減価償却費を足して返済原資を試算し、月で割った月額返済余力を把握します。
この返済余力を50~70%程度に抑えると、無理のない返済になりやすいです。
融資以外の資金調達方法

創業融資は代表的な資金調達方法ですが、それ以外にも開業資金を確保する手段はあります。ここでは、融資以外で活用できる主な資金調達方法を紹介します。
補助金・助成金を活用する
補助金や助成金を活用すれば、返済不要の資金を受けられる場合があります。
例えば、創業支援を目的とした補助金や、設備投資・IT導入・雇用に関する助成金など、様々な制度が用意されています。
ただし、各制度によって申請期間や対象要件などが決まっており、融資と同様に審査も行われます。
また、補助金は事業実施後に支給されるケースが多く、一時的に自己資金を準備しなければならない点にも注意が必要です。
家族・親族から借りる
家族や親族などの身内から資金を借りる方法もあります。
金融機関の審査を受ける必要がなく、条件によっては低金利または無利息で借りられる場合もあるため、資金調達のハードルが低い点はメリットと言えます。
一方で、返済が滞ってしまった場合、人間関係に影響する可能性はあります。
トラブルを避けるためにも、借入額や返済期限、返済方法などを具体的に明記した借用書を作成し、金融機関から借入れた場合と同様に取り扱うことが大切です。
クラウドファンディングを活用する
クラウドファンディングは、インターネットを通じて支援者から資金を集める方法を指します。
例えばこれまでにない新しい商品やサービス、地域貢献性の高い事業など、共感を得られるプロジェクトなら、資金調達につながる可能性があります。
また、資金を集めるだけでなく、事業を開始する前から市場の反応をチェックしたり、ファンの獲得につながったりする点もメリットです。
ただし、目標金額に達成しなかった場合は資金を全額受け取れなくなる方式もあるため、魅力的なプロジェクトページを作成したり、積極的に情報を発信したりすることが大切です。
ビジネスローンを検討する
早めに資金を確保したい場合は、ビジネスローンを利用する方法もあります。
ビジネスローンは、主に金融機関やノンバンクが提供しており、創業融資に比べて審査が早く、短期間で資金を調達できるケースがあります。
ただし、ビジネスローンの利用条件によっては開業前の申し込みができなかったり、直近2期分の決算書を提出しなくてはいけなかったりするなど、開業前後で利用できない場合もあるため注意が必要です。
また、創業融資と比べて金利が高い傾向にあり、返済負担が大きくなる点にも気を付けてください。
出資を受ける方法もある
事業内容によっては、投資家やベンチャーキャピタル、エンジェル投資家などから出資を受ける方法も選択肢の1つです。
出資は借入れではないため返済義務がなく、大きな資金を調達できる可能性があります。
さらに、経営に関して豊富なノウハウを持つ投資家から出資を受けた場合、アドバイスも得られるケースもあるでしょう。
ただし、出資を受けるために株式を譲渡することになるため、経営に対する意思決定に影響を及ぼす可能性があります。
例えば、出資比率が3%を超えた株主は株主総会の招集を請求できたり、出資比率が3分の1以上を占める株主は単独で特別決議の可否を阻止したりできます。
出資を受けたい場合は、出資比率によってどのような権利・権限が株主に付与されるのか、事前に確認した上で交渉していきましょう。
開業費用を抑える方法

開業資金が足りない場合は、資金調達だけでなく、初期費用そのものを見直すことも重要です。
必要以上に費用をかけず、小さく始めることで資金不足のリスクを軽減できます。
事業が軌道に乗ってから設備やサービスを拡充する考え方を取り入れることで、無理のないスタートを切りやすくなるでしょう。
店舗や事務所を借りずに始める
開業資金で特に大きな割合を占めているのが、店舗や事務所の賃料や保証金、内装工事費です。
逆に店舗や事務所を借りず、自宅を事務所として利用したり、レンタルオフィスやコワーキングスペースを活用したりすることで、初期費用を大幅に削減できます。
飲食店や小売店などで店舗を持ちたい場合でも、他の飲食店が営業していない時間帯を利用する「間借り営業」や、事務所の一画を借りる「間貸し」を活用する方法もあります。
そうすることで、自宅以外の場所で営業したい場合でも初期費用を抑えることが可能です。
なお、自宅兼事務所にする場合は、賃貸契約や管理規約などで事業利用できるか事前に確認する必要があります。
中古設備やリースを活用する
設備や備品などをすべて新品で揃えようとすると、多額の初期投資が必要です。
そのため、開業時は中古品を購入したり、リースやレンタル品を活用したりすることで、開業資金の負担を抑えやすくなります。
特に飲食店や美容室、製造業など設備投資が大きい業種は、初期費用の削減効果が期待できるでしょう。
一方で、中古設備は保証期間や故障のリスク、リースは契約期間や総支払額などを十分に比較することが大切です。
価格の安さだけで判断せず、長期的なコストも考慮して選んでください。
仕入れ・内装・広告費を小さく始める
開業当初は、売上げが安定するまで資金繰りに余裕がないケースが少なくありません。
そのため、在庫を必要以上に抱えないよう仕入量を調整したり、内装工事を最低限に抑えたりすることも有効です。
また、広告についても高額な広告媒体だけでなく、SNSや自社ホームページの作成、顧客に口コミ投稿を促すなど、比較的低コストから始められる集客方法を活用してみてください。
仕入れや内装、広告は、売上げが安定してから投資することで、資金不足のリスクを抑えつつ着実に事業を成長させられます。
開業資金が足りない時に避けたい行動

開業資金が不足した場合、何とか資金を確保しようと焦って判断することがあるかもしれません。
しかし、誤った判断は開業後の資金繰りを悪化させ、事業継続に影響を及ぼす可能性があります。ここでは、開業資金が足りない時に避けたい代表的な行動を紹介します。
生活費を削りすぎて開業する
開業資金を確保するために生活費を極端に切り詰めるのはNGです。
開業直後は売上げが安定するまで数カ月かかることも多く、その間は事業資金だけでなく生活費も必要となります。
生活費に余裕がない状態では、売上げが思うように伸びなかった場合に精神的な負担が大きくなり、冷静な経営判断をすることも難しくなる可能性もあります。
開業前には、事業資金とは別に数カ月分の生活費を確保しておくことが理想です。
返済計画なしに借入れを増やす
資金不足だからといって、返済計画を立てないまま複数の借入れを行うのは注意が必要です。
借入先が増えるほど毎月の返済額や返済日が複雑になり、資金繰りが悪化するリスクが高まります。
また、返済負担が重くなることで、新たな設備投資や事業拡大などに必要な資金を確保できなくなる可能性もあります。
借入れを行う際は、売上予測やキャッシュフローを踏まえ、「無理なく返済できる金額・期間か」を十分に検討することが大切です。
補助金ありきで開業準備を進める
補助金や助成金は魅力的な制度ですが、それを前提に開業計画を立てるのはおすすめできません。
補助金は申請すれば必ず採択されるわけではなく、審査の結果によっては受給できない場合があります。
さらに、多くの補助金は事業実施後に支給されるため、一時的に自己資金を用意しなくてはなりません。
補助金はあくまで資金調達の選択肢のひとつとして考え、自己資金に加え、創業融資なども含めた資金計画を立てることが重要です。
まとめ:開業資金は融資と費用見直しを中心に考えよう
開業資金が足りない場合でも、創業融資や補助金・助成金、クラウドファンディングなど、資金を確保する方法は複数あります。
ただし、資金調達だけに頼るのではなく、店舗や設備、広告費などの初期費用を見直し、「小さく始める」ことも重要な考え方です。
まずは必要な開業資金を整理し、創業融資の利用可否を確認しつつ、複数の資金調達方法を比較しながら自分の事業に最適な方法を検討してみましょう。
創業手帳(冊子版)では、創業時に役立つ融資や補助金・助成金などの情報を多数掲載しています。
また、費用を抑える方法なども併せて紹介しているので、ぜひ創業時にお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)
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