開業や起業時の創業融資に通るために必要な4つの審査基準
創業融資の審査で重視される項目を知っていますか?
ほとんどの起業家にとって起業は初めての経験。創業融資の審査を受けるのもはじめてという人が大半でしょう。
重要なのは、何をもとに審査されるかの基準を知っておくことです。今回は、創業融資で重視される4つの審査基準について解説していきます。
冊子版の創業手帳(無料)では、創業融資を受けるのに必要な、事業計画書を簡単に作成できるサービスを紹介しています。このサービスを利用して希望していた資金調達に成功した起業家のインタビューや、専門家との無料面談も紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。
創業手帳オリジナル「融資ガイド」では、創業期に使いやすい融資を徹底解説!申請手順やタイミング、審査通過のポイントまで掲載しています。
さらに「公的融資チェックシート」では、初心者でも融資獲得しやすい公的融資にスポットをあて、公的融資の基本だけでなく、融資準備や面談のポイントなども紹介しています。ぜひあわせてご利用ください。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
起業時の融資で一番借りやすい創業融資とは
起業時は融資が受けやすいといわれています。実績がない状態のため融資が受けにくいと思われがちですが、起業後に損失が出ている企業に比べると、融資が受けやすい現状があるためです。
創業時は今後どうなるかわからない状態であり、創業融資はとりあえず借りておくのがいいでしょう。また、創業専門の融資もあるため、融資対象のうちに融資を検討しておいてください
そして、融資を受ける際に問題となるのが、借りやすさでしょう。起業時に利用できる創業融資の中でも、次の順番に借りやすいといわれています。
2・地方自治体の創業融資
3・民間金融機関の創業融資
下記では具体的にどのような融資なのかを解説していきます。
1.日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫は、民間金融機関の資金調達のサポートが目的のひとつであり、個人事業主や創業者など民間金融機関からの融資を受けにくい方への融資を積極的に行います。
また、創業者・個人事業主に対して金利を優遇して貸し出すため、低金利で長期の借入れができます。
一般的な借入れの返済期間は1~5年、設備資金の場合でも7年程度です。しかし日本政策金融公庫は、設備資金20年まで、運転資金7年で対応しています。
融資限度額は、創業融資3,000万円まで(運転資金は1,500万円まで)で、無担保・無保証で融資を受けられます。
審査も民間金融機関より柔軟で、できる限り創業者などへの融資をしたいという姿勢が特徴です。
日本政策金融公庫の創業者向け融資に「新創業融資制度」(2024年3月廃止)があり、無担保・無保証人での借入が可能です。融資対象は、新たに事業を始める方や事業開始後税務申告2期を終えていない方です。
ただし、新たに事業を始める方や事業開始後税務申告1期を終えていない方は、10分の1以上の自己資金が必要となります。融資限度額は3,000万円まで、運転資金は1,500万円までです。
原則、無担保無保証人の融資制度なので、事業の代表者個人が責任を負うことはありません。
これから始める事業に対し、適正な事業計画がありそれを遂行する能力が認められると融資を受けられます。
そのため、この制度の利用には創業計画書の提出などが必要です。具体的な事業計画なども準備しなければなりません。
また、日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」も金利の低さでおすすめです。日本政策金融公庫は借入金額が大きく審査は数週間程度と早いため、創業時の融資に向いています。融資限度額は7,200万円まで、運転資金は4,800万円までです。
2.地方自治体の創業融資
地方自治体は「制度融資」を行って、地域の中小企業の安定した経営や創業を応援し、地域活性化を目指しています。
制度融資のひとつに「創業融資」があります。地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して、創業を考える方へ融資を行うものです。
信用保証協会とは、簡単にいうと創業者の連帯保証をしてくれる公的機関です。
融資を希望する方が信用保証協会へ申し込むと、債務の保証を行ってくれるため資金調達がスムーズになります。
制度融資は創業者の信用を補うためのもので、ハードルは比較的低めです。
創業者借入れをしても問題ないことを地方自治体が確認し、金融機関へ紹介状を出します。
紹介状そのものに強制力はありませんが、金融機関に対してある程度の評価が期待できるでしょう。
そして、信用保証協会からの保証も受け金融機関による審査に合格すれば、低金利の長期融資を受けられます。
自治体によっては、金利・信用保証料の一部を、創業者に代わって負担してくれることもあります。
制度融資の創業融資を利用するには、地方自治体ごとに必要な手続きをとってください。
中小企業診断士との面談をする場合もあるため、融資がおりるまでにどうしても時間がかかります。創業の時期を計算して、早めに準備を進めましょう。
融資限度額や条件などは、各自治体でご確認ください。
3.民間金融機関の創業融資
民間金融機関で創業融資を扱うところからも、創業時に借入れする方法があります。
民間金融機関とは、都市銀行・地方銀行・信託銀行・信用組合・信用金庫・保険会社・証券会社・ノンバンクなど、民間の資本で運営する金融機関のことです。
銀行など民間の金融機関は一般の方も馴染みがあり、借入先としてイメージしやすいかもしれません。
しかし経営の実績がない創業時は、最も借入れが難しく、金融機関の中には融資条件に一定の経営年数をあげているところもあります。
大手銀行は創業融資を申し込んでも審査に通らない可能性が高いですが、地域に根差した運営を行う地方銀行や信用金庫などは狙い目です。
地方銀行・信用金庫は小口取引が多く、地域の発展を大切にするため、創業融資を受けられる可能性があります。
開業予定地にある地方銀行や信用金庫で、創業融資を相談してみましょう。
金利を比較すると大手銀行は低めで、かつ借入れができれば大きな信用も得られるメリットがあります。
一方、地方銀行や信用金庫の金利は、大手銀行より高めの傾向にあることを知っておきましょう。
創業融資を銀行で受けたいと考える方は、こちらの記事でも詳しく説明しているので、参考にしてください。
地方銀行や信用金庫からの借入れについても深掘りしています。
どの創業融資を利用する場合であっても、申し込みの前に確認したいことが幾つかあります。まずは審査基準を満たしているのか確認するようにしましょう。
起業時の創業融資で審査基準となる4つのポイント
創業融資で起業家が必ず覚えて置かなければならない「審査の基準となる4つのポイント」があります。すなわち、①自己資金、②経験・能力、③返済可能性、④資金使途です。
- 自己資金
- 経験・能力
- 返済可能性
- 資金使途
自己資金
自己資金割合を満たしていますか?
自己資金とは、起業家が借入以外に自分達で用意した資金です。創業資金(事業全体でかかるお金の総額)のうち、自己資金をどれだけ用意したかという自己資金割合を満たしているかどうかが重要な審査基準の1つ目です。
実は、この自己資金割合を満たせるかというのが創業融資の審査ではかなり重要な位置づけとなります。通常の企業経営における融資と創業融資との最大の違いがここにあると言っても過言ではありません。
自己資金の割合は、通常融資では売上げの3分の1程度と言われています。創業融資を受けたい場合は、借りたい額の半分から3分の1は自己資金で持っておいたほうが良いとされています。
預金通帳がチェックされる
起業家は自己資金でつまずくケースが非常に多いです。かなりのクセモノだということを知っておくべきでしょう。
具体的にいうと、過去1年分の社長個人の預金通帳の提出を求められます。そこで、自己資金として申告した金額が、正しいルートで蓄積されてきたものかをチェックされます。
正しいルートとは、例えば、給料が毎月入ってきて、それを貯金してきたという形跡が残っているかどうか。そうではなく、誰かからポーンと一括で振り込まれていた場合、それが借りたものかどうかが問われることになります。借りたものであった場合、それは「自己資金」ではないからです。
経験・能力
通常の経営における融資では、過去の決算書から業績などに基づいて審査が行われます。ところが創業融資では、過去の実績というものが存在しません。そこで代わりに会社員時代など過去の経験や行動に基づいて判断していきます。
起業家の経験
具体的にみていきましょう。まずは経験から。
起業して営んでいく予定のビジネスに関連する経験を、会社員時代に何年間経験してきたかということがチェックされます。逆に言うと、会社員時代と全然関係ないビジネスで起業しようとすると、著しく不利になるということです。
通常融資では過去の決算書などで判断できますが、創業時は過去の実績がないので、経験を見るしかありません。通常融資より創業融資が難しい点はここにもあるようです。
起業家の信用能力
次は能力。人の能力は、そう簡単に計れるものではありません。ただ、金融機関としては、最低でもお金にだらしない人かどうかだけはチェックしておきたいところです。その意味で、経営者個人の個人信用情報などが必ずチェックされるのです。
また、過去1年分の社長個人の預金通帳をチェックする際、税金、水道光熱費、携帯電話代などを延滞することなくキチンと支払っているかどうかもチェックされます。
資金調達に関する情報をまとめた資金調達手帳(無料)では、CIC(指定信用情報機関)に登録されている信用情報をチェックする方法を解説しています。簡単に確認できるので、自身の信用情報に不安がある場合、資金調達手帳を参考に信用情報を開示してみてください。(創業手帳編集部)
返済可能性
ざっくりわかる融資返済の可能性
金融機関は、起業家がこれから手掛けようとしているビジネスが、きちんと返済できるだけの利益を上げられるものかどうかを、厳しく審査をします。
起業家がどれだけ情熱をもっていても、そのビジネスがどれだけ社会に有益なビジネスだとしても、融資が返済できるだけの利益が上がるビジネスでないと貸せません。そういった視点で冷徹な審査がなされます。
返済の可能性があるかないかは、事業計画書上の利益の推移とその妥当性を審査していきます。ざっくりと捉えると
になっているかどうか、そして、そのことに説得力があるかどうかです。
赤字続きの事業計画書作成はご法度
よくある失敗例としては、このことを全く無視して、何年も赤字続きの事業計画書を作成してしまうケースです。金融機関としては、融資したくても貸せないということになってしまいます。
創業融資の財源は、元を辿っていけば、それは税金です。金融機関にとっては、大事な税金を起業家に貸すのと同じことであり、社会的にも確実に回収する責任があります。よって、金融機関にとっても、融資したいという想いだけでは融資はできません。
資金使途
お金の使い道は根拠を示す
創業融資を借りる際には、「資金使途 = お金の使い道」を全て証明する必要があります。
例えば、創業資金(事業全体でかかるお金)が1500万円だという事業計画書をもとに、自己資金500万円、借入希望額1000万円の申込みをするとします。事業全体でかかるというその1500万円の内訳を資金使途として示し、それぞれ、見積書などで根拠を示す必要があります。
具体的には、これから契約する予定の賃貸物件にかかる経費などは、物件のチラシなどを示します。
また、融資がおりた後に、使用用途が申請と合っているかを確認されます。申請した通りに融資金を使わないと、融資が打ち切られたり今後融資を受けられなくなったりすることもあります。
資金がかからないビジネスの注意点
コンサルタント業など、多額の資金がかからないビジネスで起業する場合、自己資金が500万円あれば、最大1000万円の借入枠が期待できるケースであっても総額1500万円の資金使途、見積書は示せないはずです。
よって、このような業態で起業する場合、資金使途が明確になっているお金以外は融資を受けられない場合があるので、注意が必要です。
まとめ・審査基準を知って早めの準備と対策を
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」。
経営は情報戦。創業融資にに関して言えば、重視される審査基準を知ることが、融資の勝敗を分けるといってもいいでしょう。失敗の許されない一発勝負の審査に臨むときには万全の体制で準備をしておくことが望ましいです。
今回紹介した、創業融資で重要となる4つの審査基準をクリアするためには、事前から準備や習慣を改める必要な場合もあるでしょう。いざ融資を受ける際にどうにもならない状況を避けるためにも、しっかり対策を練っておきましょう。
創業手帳では「融資ガイド」を提供しています。創業期に使いやすい融資を徹底解説!申請手順やタイミング、審査通過のポイントまで掲載しています。
初心者におすすめの「公的融資チェックシート」も無料提供中!詳しくは以下のバナーから!
資金調達手帳では、創業4カ月の会社が1,000万円の融資を受けられた事例など、融資を受ける際の参考になる記事を掲載しています。対策に役立ててください。(創業手帳編集部)
【関連カテゴリ】「資金調達」の記事一覧
【関連記事】新創業融資制度で資金調達するメリット・デメリット
【関連記事】起業の資金調達方法とそのメリット・デメリット
(監修:起業コンサルタント(R)・税理士・社労士・行政書士 中野裕哲
(まるごと起業支援.com|無料相談受付中)」)
(編集:創業手帳編集部)