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教えて先生!Q&A2017年2月9日
ジェネラリストとスペシャリストの意味、違いは?
ジェネラリスト(ゼネラリスト)とは、広範囲にわたる能力を有し、幅広い知識やスキルを持つ人を意味するビジネス用語です。英語表記ではgeneralistです。
キャリア形成や採用を考える上で使用される機会が多い言葉で、一言で表すなら「万能型」の人材です。いわゆる総合職としてキャリアを築いてきた人は、ジェネラリストに属する傾向が強くなります。
対して、スペシャリストとは、特定分野における高度なスキルや知識を持つ人を意味します。英語表記ではspecialistです。
スペシャリストはジェネラリストの対義語にあたり、一言で述べると「専門家型」の人材と言えます。エンジニア、財務担当、法務担当、デザイナーなど専門性の高い分野で経験を積んできた人は、スペシャリストになる傾向が強いでしょう。
そして最近では、このジェネラリストとスペシャリストを基本として、さらに細かく人材のタイプを分類する手法もよく使われています。
まずは、T型と言われる人材です。
ジェネラリストの幅の広さを表した横棒「一」と、スペシャリストの知識の深さを表した縦棒「I」が組み合わさり、「T」字として表現されています。つまりT型人材とは、専門的な知識やスキルに加えて、広範囲な視野や知見も併せ持ったビジネスパーソンと言えます。
例えば、専門職としてキャリアを重ねた後に、独立開業して他業種とも協業しながら経営を成功させている場合などは、T型の経営者と言ってよいでしょう。専門性を活かしながらも、単なるスペシャリスト(I型)に留まらないことで、事業の幅を広げていくことが可能になります。
ちなみに、T型人材は「1つの専門分野を持つ」という意味で「シングルメジャー」と表現されることもあります。
次に、π型(パイ型)と呼ばれるタイプです。
こちらもT型と同様、ジェネラリストとスペシャリストの両方の要素を併せ持つ人物を意味しています。T型と異なるのは、縦棒が2本ある点です。すなわち、π型は2つの専門分野を持ちながら、その他の分野にも視野を広げられるビジネスパーソンという意味になります。
そして、π型は「2つの専門分野を持つ」という意味で「ダブルメジャー」とも言われています。
T型も十分に優秀と言えますが、π型はさらに高度な人材です。例えば、医療と福祉など親和性の高い分野を組み合わせて、より高度な専門家として活動する場合もあれば、アプリケーション開発と法律など、一見かけ離れた分野のπ型として活躍する人もいます。
その背景には、最近はどの分野のビジネスも技術進歩が速くなり、それに伴って商品やサービスの陳腐化が早くなっているという現状があります。そこで、π型が持つ2つの専門性の組み合わせで、ビジネスに付加価値を与えたり、他社との差別化を図ったりする戦略が活きてくるわけです。
したがって、π型は今後ますます活躍が期待されるタイプのビジネスパーソンと言えます。
なお、これらのT型やπ型に加えて、H型、△型(トリプルメジャー)なども新たな人材のタイプとして挙げられることがあります。
H型は専門性を持つ他者を繋げる架け橋のような人材、△型は専門性を3つ併せ持つ超高度な人材という意味で主に使われています。
さて、実際に起業家が人材を採用するにあたって、これらのタイプの分類をどう活かしていけばよいのでしょうか。
大企業の経営においては、ジェネラリスト型、もしくはジェネラリストに近いT型を中心としたマネジメント層と、各部門に配置されたスペシャリストという構造がよく見られます。
しかし、スタートアップやベンチャー企業では、必ずしもこの人員構成が最適とは限りません。エンジニアや職人出身のスペシャリストタイプの起業家が、ジェネラリスト型のメンバーや他分野のスペシャリストと共に事業を拡大し、成功している事例は多数あります。
大切なのは、自社の特徴や成長フェーズに合わせて必要な人材のタイプを見極め、ミスマッチを減らすことです。
シード、アーリー、ミドル以降のステージを含め、ベンチャー企業のどの成長段階でも、採用には大きな労力とコストがかかります。限られた人員でビジネスを成功に導くために、優秀な人材を確保したいと考えるのは当然ですが、ただ「優秀」という漠然としたイメージでは不十分でしょう。「今、自社が必要としているのは、幅広い業務を任せられるスタッフなのか?専門分野に特化したスタッフなのか?」という視点を持つことが大事です。
具体的なケースを考えてみましょう。例えば、新たに経理業務を任せられるバックオフィス系のスタッフを雇う計画があるとします。この時に、経理全体を一任できるようなスペシャリストを募集する方法もあれば、簡単な総務・人事・広報・秘書なども兼務してくれるジェネラリスト寄りのT型を募集する方法もあります。
どちらが最適かは、事業内容にもよりますが、経営者自身のタイプが影響してくる場合もあります。経営者が幅広い業務をこなせるジェネラリスト系であれば、専門性の高いスタッフを雇うことで自社の軸が強化される場合も多いでしょう。また、経営者がスペシャリスト寄りで、サービスや商品の開発に専念したいタイプであれば、守備範囲の広いジェネラリストのスタッフは大きな助けとなるはずです。
そして当然ながら、自社の事業ステージや組織としての成長ステージも採用に大きく影響します。創業前や創業直後に、専門性があって視野と知見も広いT型・π型のメンバーがいれば、ビジネスの可能性は広がります。さらに、その専門が経営者と違う分野であれば、より組織としてのバランスが取れて安定感が増すでしょう。後に事業が軌道に乗ってきて、特定の部門の強化が急務な状況になれば、その分野のスペシャリストを採用するのが近道です。
さらに、創業前後の企業の採用においてもう1つポイントとなるのは、大企業での採用以上にメンバーの視野の広さが大事であるという点です。
ここまでの説明で、スペシャリスト型の人材についても多く触れてきましたが、100%自分の専門分野でしか業務に取り組めない人材は、あまりスタートアップやベンチャー企業との相性が良いとは言えないので注意が必要です。スペシャリストと言っても、T型の横棒の部分を多少なりとも持ち合わせている人物が望ましいでしょう。
創業期は、事業そのものに未知数の部分が多く、業務内容が日々刻々と変わります。また、小規模な組織では定型の業務が少なく、1人が何役もこなさなければならない場面が多く発生します。自分の担当分野以外は対応する意思がない、興味がない人物は、周囲とミスマッチを起こす可能性が高くなります。
「100%スペシャリスト型の人材は、今後あまりビジネスで求められない」というのは、企業規模にかかわらず言われていることですが、ベンチャー企業などでは一層その傾向が強まると言えます。変化の激しい社会の中で、広い視点で事業を考えていけるチームを築くことが、成功の可能性を高めるカギになるでしょう。
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