法人税が増加した時の資金繰り対策とは?原因と対処法を解説

法人利益が増加すれば法人税・資金繰り対策が必要になる


企業にとって利益が増えることは喜ばしいことですが、その一方で見落とされがちなのが法人税の負担です。
業績が好調で利益が大きくなるほど納める法人税額も増えるため、十分な資金を確保しておかないと納税時期に資金繰りが厳しくなる可能性があります。
特に、売上は伸びているのに手元資金が少ない「黒字倒産」のリスクは、多くの企業にとって現実的な課題です。

こうした事態を防ぐためには、法人税の仕組みを理解した上で、事前に資金繰り対策を講じておくことが重要です。
本記事では、法人税が増加した場合の資金繰り対策や納税スケジュール、注意点などを解説します。

利益が出ているのに資金繰りが苦しくなる理由


企業の業績が伸びて利益が増えることは、本来経営者にとって喜ばしいことです。
しかし、実際には「利益が出ているのに資金繰りが苦しい」という状況に陥る企業も少なくありません。

その大きな理由のひとつが、利益と現金の動きが必ずしも一致しない点になります。
企業の会計は取引きが発生した時点で費用と利益を計上する「発生主義」で計算されます。
売上が計上された時点で利益が発生しますが、実際に入金されるのは数週間から数カ月後になることも多いです。
一方で、法人税は決算で確定した利益をもとに計算されることから、手元の現金が十分に回収できていない状況でも納税額が大きくなる可能性があります。

さらに、利益が増えることで法人税だけでなく、事業税や法人住民税などの負担も増えることから、想定以上の資金流出が発生することがあります。
業績が伸びている企業ほど設備投資や人件費の増加、仕入れの拡大などで支出も増えやすく、資金が出入りするタイミングによっては、資金繰りの圧迫につながる可能性が高いです。

このように、会計上の利益と実際のキャッシュの流れに差があるため、利益が出ている企業でも資金繰りの管理を怠ると資金不足に陥るリスクがあります。
こうした状況を防ぐには、税負担を見据えた資金計画やキャッシュフローの管理を行い、納税に備えてあらかじめ資金を確保しておくことが重要です。

法人税増加による資金繰り対策(節税より先にやる実務)


法人税が増え、資金繰り対策が必要となった場合、どのような対策を講じれば良いのでしょうか。ここでは、節税よりも先にやるべき実務での対策を紹介します。

①納税額の概算を早めに出す(決算前から試算する)

まずは納税額がどれくらいになるのか、決算前に試算してみることが大切です。
前もってどれくらいの納税額になるか大まかに把握できると、ある程度資金を確保しておけます。
納税額の概算は、決算書の税引き前当期純利益をもとに税務上の加算項目と減算項目を考慮して出してください。

より大まかでも簡単に出したい場合は、利益と所得を同じものとみなし、事業税を差し引くことで所得額の概算を出せます。
この所得に法人税の実効税率をかけ、均等割を足すことによって、法人税の概算を出すことが可能です。

②納税資金を別管理で確保する(口座分け・積立)

大まかに納税額がわかったら、納税資金を準備します。納税資金は事業で使っている口座と分けて管理したほうが良いでしょう。
一部の金融機関には、「納税準備預金」という納税資金の積立が目的の場合に利用できる口座があります。
一般的な預金口座とは異なり、利息分が非課税になるため、別管理で確保する際には活用してみてください。

また、納税資金を管理する際に毎月積立を行っておくと、万が一法人税の負担が増えてしまった場合でも、資金ショートを防ぎやすくなります。

③資金繰り表で“いつ足りないか”を見える化する

資金繰り表とは、将来的なお金の入出金を予測し、計算した書類を指します。
資金の過不足を予測できるため、例えば資金繰り表から資金がいつ不足するかというタイミングを図ることも可能です。
できるだけ細かく把握するためにも、月次で更新するようにしてください。

資金繰り表を作成する際には、入金サイクルと支払いサイクルを正確に把握することが大切です。
例えば将来的に入金がある場合、「大体1カ月後に入る」と曖昧に記載するのではなく、「○月○日に100万円が入金される」と具体的に明記することで、より透明性の高い資金繰り表になります。

④入金を早め、支払いを整える(回収条件・支払い条件の調整)

掛取引きでは支払いが完了するまで数週間から数カ月も時間がかかってしまう場合があります。
一般的に月末締めの翌月末払い(30日)か、月末締めの翌々月末(60日)の2種類があります。
しかし、売掛金は回収することで初めて利益を確定できるため、入金を早めることが重要となります。

入金を早めるには売掛先と交渉し、回収条件や支払い条件の調整を行うことが大切です。
また、手形取引きを決済手段としている場合、現金よりも支払いまで時間がかかってしまうため、現金取引きに切り替えるのも良いでしょう。

⑤足りない時は「短期資金」の調達も選択肢に入れる

短期資金は、一時的な資金不足を補うための「つなぎ資金」として活用されるケースが多くみられます。
会社の経営悪化を防ぐと共に、資金繰りを安定させることを目的に短期資金を調達してください。

資金繰りがすでに悪化している状況で金融機関に相談しても、できることは限られてしまいます。
そのため、借入れがしやすいように早めに金融機関へ相談するのがおすすめです。

法人税の納税スケジュール


法人税は、前もっていつ納付するのかスケジュールを確認することも大切です。ここで、法人税の納税スケジュールを紹介します。

法人税の原則:申告・納付期限はいつ?

法人税の申告期限と納付期限は、事業年度が終了した日の翌日から2カ月以内としています。
例えば3月末に決算を迎える法人の場合、申告期限と納付期限は5月31日です。ただし、期限にあたる日が土日祝日の場合、その翌日が期限です。

なお、自然災害などのやむを得ない事情で、申告・納税が期限内に間に合わない場合、納税の猶予を利用して1年以内に納税を遅らせたり、分納できるようになったりします。

中間申告・中間納付があるケース

法人税の中間申告・中間納税は、事業年度の中間点で法人税の申告と納付手続きを行う制度を指します。
法人税は年間でまとめて納めようとすると、どうしても負担が大きくなってしまうものです。しかし、中間申告・中間納付をすることで資金繰りの負担を軽減できます。

中間申告・中間納付のスケジュールは、事業年度を開始した日以後6カ月を経過した日から2カ月以内です。
例えば3月末に決算を迎え、事業年度開始日が4月1日だったとすると、6カ月後は10月1日となるため、10月1日から12月31日までの2カ月間に納める必要があります。

延滞税などのリスク

法人税は、決算日または事業開始日から6カ月後の2カ月以内に納める必要がありますが、万が一納税をし忘れてしまうと「延滞税」がついてしまいます。
延滞税は、法定期限までに税金を納められなかった場合に課される税金であり、納付が完了するまで増え続けるので注意が必要です。

また、期限内に申告しなかった場合のペナルティとして、「無申告加算税」も課される可能性があります。
無申告加算税は、税務調査で指摘された場合には本来の税額の15~20%が課されることになります。
法人税が増えた中でさらにペナルティが課されると、資金繰りがますます大変になってしまうので、忘れずに申告・納付を行ってください。

法人税を抑える節税対策


法人税の増加を抑えるには、実務での資金繰り対策はもちろん、節税対策も講じることで負担軽減につながります。
ただし、節税対策はやり方を間違えると逆効果になってしまう場合や、違法行為に該当するおそれがあるため、慎重に行うことが大切です。

節税対策①:経費増加

経費を増やすことで利益が減り、節税対策につながりますが、事業を進める上で必要かつ合理的な支出を増やしていくことが重要となってきます。
例えば、以下の方法で経費を増やすことが可能です。

  • 福利厚生費の充実
  • 出張手当の損金計上
  • 広告宣伝の活用

福利厚生費を充実させることで従業員の満足度が高まり、離職率の低下にもつながります。
また、出張手当は全額損金として計上でき、所得として扱われないため所得税・社会保険料もかかりません。
利益が大きく出た場合は、広告宣伝費に使うことで節税対策につながる場合もあります。

節税対策②:給料増加

会社の利益が増えすぎた場合、社員や役員の給料に還元して、なおかつ節税対策を講じることも可能です。

  • 決算賞与の支給
  • 役員報酬の損金計上

決算賞与は、企業の事業年度末の業績に合わせて支給される賞与を指します。当期の損金としても計上できますが、そのためには以下の要件を満たさなくてはなりません。

  • 決算日までに対象者全員に対して支給額を通知
  • 決算翌日から1カ月以内に通知した金額を支給
  • 当期で損金として計上している

また、役員報酬も一定の要件を満たすことで損金計上ができるようになります。損金として扱うには、定額同額給与(毎月一定額を支給する)にする必要があります。

節税対策③:資産変動

日常的にはできないことを行い、資産を変動させることで節税対策可能です。

  • 設備投資
  • 不良在庫の処分
  • 固定資産の処分
  • 不動産投資

設備投資は減価償却となるため、初年度はほとんど節税対策につながらないものの、税制優遇制度を活用することで節税対策につながります。
また、不良在庫や固定資産を処分することで廃棄・売却にかかった費用を経費として計上可能です。
不動産投資も、社長が保有する不動産を法人に貸し付けることで、節税対策につながる場合もあります。

節税対策④:保険活用

保険を活用することで、万が一のリスクに備えつつ経費を増やして節税対策ができます。

  • 経営セーフティ共済に加入する
  • 団体定期保険の活用

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)は、取引先が倒産した場合、連鎖倒産や経営難に陥ることを防止するための制度です。
掛金を損金で計上できるため、加入することで取引先の倒産リスクを抑えつつ節税につながります。

団体定期保険は、法人が保険契約者となり、従業員が死亡または高度障害状態に陥った場合に、家族のために備えられる保険になります。
ただし、団体定期保険のような法人向けの保険は、全額損金算入できるものは限られているので注意が必要です。

法人税増加による資金繰り対策の注意点・ポイント


法人税が増加した際に資金繰り対策を講じる場合、いくつか押さえるべき注意点やポイントがあります。

不要なものの購入は避ける

節税を意識しすぎると、過剰に経費を使おうとして事業や経営に不要なものまで購入してしまう場合もあります。
しかし、不要な支出が多いと手元のキャッシュも少なくなり、資金繰りがうまくいかなくなる可能性があるため、注意が必要です。
資金繰り対策や節税対策を目的とする購入は、将来的な事業内容との整合性をチェックした上で、必要なものだけを購入するようにしてください。

段階的・計画的に節税をする

決算直前で慌てて資金繰り対策や節税対策をしようとすると、帳簿が不自然な内容になりやすく、税務調査が入るリスクが高まります。
直前だとできることも限られてくることから、年間のスケジュールを立て、段階的に計画を策定することが大切です。
また、利益を圧縮しすぎると、追加融資を受けづらくなる可能性もあるため、節税は中長期的に行うようにしてください。

脱税行為に注意して税務調査に備える

想定していたよりもかなり利益が増えたことで、法人税の負担はかなり大きくなってしまいますが、だからといって脱税行為に及ぶのはNGです。
例えば売上金を法人口座ではない口座に入金したり、今期の売上請求書を翌期に計上したりするなどです。これらはすべて脱税行為に該当してしまいます。

また、税務調査が入る場合は税理士と相談し、事前通知された事業年度の書類も準備しつつ冷静に対応することが大切です。

迷ったら税理士に早めに相談する

法人税の増加にともない、どのように資金繰り対策を講じるべきか迷ったら、税理士に早めに相談するようにしてください。
税理士であれば法人の状況に応じたアドバイスを送ってもらえます。
特に長期にわたって相談を受けてほしい場合は、顧問税理士をつけるなど、いつでも相談できる環境を整えてください。

まとめ・効果的な対策で節税を目指そう

法人税は企業の利益に応じて増えるため、業績が延びるほど納税額も大きくなります。
資金が準備できていないと資金繰りが厳しくなる可能性もあるため、事前の対策が欠かせません。
法人税の支払いは企業経営において大きな資金流出のひとつではありますが、計画的な資金管理と税務対策を行えば負担をコントロールできます。
専門家からのアドバイスを活用しつつ、自社の状況に合った対策を講じて安定した資金繰りと健全な経営を目指してください。

創業手帳(冊子版)は、法人税を含めた税務関連や資金繰り対策などの悩みにお答えしています。経営者や個人事業主で資金繰りなどに不安を持つ人は、ぜひお役立てください。

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(編集:創業手帳編集部)