起業の準備資金はいくら必要?目安や内訳、調達方法までわかりやすく解説
起業する業種や規模などで必要な準備資金は異なる

起業を考える上で、多くの人が気になるのが「どれくらいの準備資金が必要なのか」という点です。
しかし、必要な資金は一律ではなく、選ぶ業種や事業の規模、ビジネスモデルによって大きく異なります。
例えば、店舗を構える場合と在宅で始める場合では、初期費用や運転資金に大きな差が生まれます。
そのため、一般的な相場だけを参考にするのではなく、自分が目指す事業に合わせて資金計画を立てることが重要です。
本記事では、起業に必要な準備資金の目安や内訳、資金を集める方法などをわかりやすく解説します。
この記事の目次
起業準備資金はいくら必要?

起業に必要な準備資金は、個人事業主と法人によっても大きく異なります。ここで、個人事業主として起業する場合と、法人として起業する場合の準備資金の目安を紹介します。
個人事業主として起業する場合の目安
個人事業主が起業する際に必要な準備資金は、業種によって異なりますが約500万円未満が一般的です。
日本政策金融公庫の「2025年度新規開業実態調査」によると、250万円未満で開業した人は20.1%、250万円~500万円未満で開業した人は21.7%であり、全体の4割以上を占めていることがわかっています。
なお、個人事業主の場合は事業規模が比較的小さく、数百万円も準備資金を用意しなくても起業できるケースは多いです。
従業員を雇わず自分1人で行うビジネスであれば、自宅に事務所を設けることによってさらに準備資金を抑えることが可能です。
法人として起業する場合の目安
法人として起業する場合は、300万円~500万円以上は想定しておく必要があります。
法人として起業する場合、法人設立に必要な手続きに対して「法定費用」の支払いが必要です。
法定費用には収入印紙代や認証手続きの手数料、定款の謄本を交付するための手数料、登録免許税などが含まれ、20万円以上必要です。
また、法人の実印作成や、発起人個人の印鑑登録証明書の取得で細かく費用がかかってきます。
さらに法人は資本金を準備する必要があり、資本金は1円以上で自由に設定できるものの、起業したばかりだと資本金=事業資金となり、取引先や金融機関からの信用度につながります。
中小企業の資本金額の平均は約500万円~1,000万円といわれており、起業したばかりでまだ規模が小さい場合でも300万円~500万円程度は準備しておくと安心です。
起業に必要な準備資金の主な内訳

起業に必要な準備資金は、大まかに「開業費」「運転・維持費」「生活費」の3つに分類できます。それぞれの内訳について解説します。
開業費
開業費は、起業するために必要な費用を指します。
例えば、店舗を開業する場合、店舗の開設費用や内装工事にかかる費用、広告費用、店舗や事務所で使用する設備・備品の費用などが当てはまります。
開業費は大きな金額になるものも多く、工夫をしないと予算を大幅に超えてしまうケースも少なくありません。
特に飲食業や建設業で起業する場合は必要な設備や車、器具なども多く、多額の開業費が必要です。
一方で、WebデザイナーやWebライターなどはPCとオンライン環境を整えれば事業を始められるので、開業費を数十万円程度に抑えられる場合もあります。
運転・維持費
運転・維持費は、事業を運営していく中で発生する費用です。
例えば、以下のものが挙げられます。
-
- 事務所・店舗の家賃や水道光熱費
- 通信費
- 従業員に支払う給料
- 商品の仕入れ代
- 広告費
- 出張のための旅費交通費など
また、法人税や法人住民税、所得税、法人事業税、消費税などの各種税金の支払いも必要になります。
起業したばかりの頃は事業が安定するまで時間がかかることもあるため、開業後約3~6カ月分の運転・維持費を目安に準備しておくと安心です。
生活費
生活費は、事業を開始した後の生活に必要な費用を指します。
事業や経営には関係ないものの、事業が軌道に乗るまで時間がかかった場合、運転・維持費と生活費を混在してしまう人もいます。
例えば、運転・維持費が不足したら生活費から補填したり、逆に生活費が不足すれば運転・維持費から賄ったりすることもあるかもしれません。
このような事態を避けるために、数カ月分の生活費も準備資金に加えておいてください。
業種別に見る起業準備資金の目安・内訳

起業の準備資金は業種ごとに異なります。ここでは、飲食業・美容業・小売業・IT業をピックアップし、起業準備資金の目安・内訳を紹介します。
| 業種 | 起業準備資金の目安 | 内訳 |
| 飲食業 | 500万円~1,000万円程度 | 店舗の取得費、内装・設備費、備品・消耗品費、広告費、申請・登記関連費など |
| 美容業 | 600万円~1,500万円程度 | 店舗の取得費、内外装工事費、設備費、備品・消耗品費、家電などの雑費、広告費など |
| 小売業 | 100万円~1,000万円程度 | 店舗の取得費、内外装工事費、設備費、什器・備品費、広告宣伝費、仕入れ代など ※ネットショップの場合は仕入れ代、プラットフォームの利用費、サイト・ロゴ制作費、決済手数料、広告費、梱包・発送費用など |
| IT業 | 数万円~500万円程度 | PC代、通信費、サーバー代、ソフトウェア代など |
起業の準備資金で自己資金はいくら必要?

起業のための準備資金は、業種や事業内容によって数百万円~1,000万円以上かかる場合もあります。
高額な費用は融資を活用して賄うことも可能であり、自己資金を用意していなくても起業できるケースはあります。
しかし、自己資金ゼロでの起業はデメリットもあるため、おすすめはできません。
例えば、自己資金がない状態で融資を受けようとした場合、自己資金の割合なども見られるため、審査に落ちてしまうことも考えられます。
また、融資審査に通過したとしても、自己資金がないことで希望する金額よりも少ない金額でしか融資を受けられなかったり、金利が高くなったり、返済までの期間が短かったりする可能性があります。
起業時に融資を受けやすくするためにも、ある程度の自己資金を用意することが大切です。
起業の準備資金を集める主な方法

起業の準備資金は、1つの手段だけに頼るのではなく、複数の方法を組み合わせて確保するのが一般的です。
それぞれに特徴やメリット・注意点があるため、自分の状況や事業内容に合った方法を選ぶことが重要です。ここでは、代表的な資金調達方法を解説します。
自己資金で賄う
自己資金は、起業における基本的な資金源です。返済の必要がなく、資金繰りの負担が少ない点が大きなメリットです。
また、自己資金が多いほど金融機関からの信用も高まり、融資を受けやすくなる傾向があります。
一方で、すべてを自己資金で賄おうとすると生活資金に影響が出る可能性もあるため、無理のない範囲で準備することが大切です。
日本政策金融公庫の創業融資
創業時の資金調達として多くの人が利用するのが、日本政策金融公庫の創業融資です。
民間の金融機関に比べて、創業者向けの制度が充実しており、実績がない段階でも利用しやすいのが特徴となります。
事業計画の内容が重視されるため、具体性のある計画書を用意することが重要です。また、比較的低金利で借りられる点も魅力といえます。
制度融資
制度融資とは、自治体・金融機関・信用保証協会が連携して行う融資制度です。
信用保証協会が保証人の役割を担うため、創業者でも金融機関から融資を受けやすくなります。
自治体ごとに条件や内容が異なり、利子補給や保証料の補助が受けられる場合もあります。
地域に密着した支援制度として、事業所在地の自治体情報を確認しておいてください。
銀行からの融資
銀行からの融資は、まとまった資金を調達できる点がメリットですが、創業間もない段階ではハードルが高い傾向にあります。
融資審査では実績や信用力が重視されるため、起業したばかりだと実績で評価されず、自己資金の割合や事業計画の信頼性が重要になります。
創業初期は難しくても、事業が安定してきたタイミングで追加融資を検討するケースも多いです。
補助金・助成金
補助金や助成金は、原則返済不要で資金を受け取れる点が大きな魅力です。創業支援や設備投資、雇用促進など、様々な目的に応じた制度があります。
ただし、申請には条件や審査があり、必ず採択されるとは限りません。
また、基本的に後払いのため、事前にまとまった資金を用意しておく必要があります。スケジュールや要件をしっかり確認して活用してください。
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める方法です。
商品やサービスに共感してもらうことで資金を調達できるため、資金調達と同時にPRやファン獲得にもつながります。
一方で、目標金額に達しなければ資金を受け取れない形式があったり、案件によって資金が集まらない場合も多かったりします。
基本的には、起業するための資金は自己資金や日本政策金融公庫の創業融資、制度融資を中心に準備しておくと良いでしょう。
起業資金を準備する際のポイント

起業資金の準備は、単に必要額を集めるだけでなく、「不足しないこと」「無理のない運営ができること」を前提に計画することが重要です。
資金繰りに余裕がない状態でスタートすると、事業が軌道に乗る前に行き詰まるリスクも高まります。
ここでは、起業資金を準備する際に押さえておきたいポイントを解説します。
余裕を持った資金計画を立てる
起業時は、想定どおりに売上が上がらないケースも珍しくありません。そのため、初期費用だけでなく、数カ月~半年程度の運転資金も含めて計画することが大切です。
家賃や人件費、仕入れ費用などの固定費を踏まえ、「売上がゼロでもどれくらい持ち応えられるか」という視点で資金を確保しておくと安心です。
余裕を持った資金計画は、精神的な安定にもつながります。
融資は積極的に活用する
自己資金だけで起業しようとすると、事業の選択肢が狭まったり、資金不足に陥ったりする可能性があります。
そのため、日本政策金融公庫などの融資制度は積極的に検討してください。
日本政策金融公庫などの融資制度は過去に事業の実績がなくても、事業計画や将来の見込みをもとに審査されるため、創業前でも利用できるケースが多いのが特徴です。
しっかりとした計画書を用意することで、資金調達の可能性が高まります。
補助金・助成金は後払いになるのに注意
補助金や助成金は、資金負担を軽減できる有効な制度ですが、多くの場合「後払い」である点に注意が必要です。
つまり、一旦自己資金などで支払いを行った上で、後から一部が支給される仕組みになっています。
そのため、補助金を前提に資金計画を立てると、一時的な資金不足に陥るリスクがあります。あくまで余力資金として考えることが重要です。
準備が難しければ事業内容や規模の見直しを図る
必要な資金をどうしても準備できない場合は、無理にスタートするのではなく、事業内容や規模の見直しを検討することも大切です。
例えば、初期投資の少ないビジネスモデルに変更する、店舗型からオンライン中心に切り替える、段階的に事業を拡大するなどの方法があります。
現実的な範囲でスタートし、徐々に成長させていくことで、結果的に安定した経営につながります。
起業の準備資金が足りないなら「副業」から始めよう

起業を計画しているものの準備資金が不足している場合、いきなり起業しようとするのではなく、まずは副業から始めてみるのがおすすめです。
ここで、起業する前に副業から始めるメリットや、副業から法人化するタイミングについて解説します。
起業する前に副業から始めるメリット
副業から始めるメリットとして、本業以外で収入を得られる点が挙げられます。
起業の準備資金を確保するために、副業も始めることによって早く確保できるようになります。やり方次第では本業以上に稼げる場合もあるかもしれません。
また、低リスクで始められる点が挙げられます。本業を辞めてから起業した場合、万が一失敗してしまうと取り返しがつかない状態になることも考えられます。
しかし、副業という形で小規模からスタートすれば、失敗したとしても大きなリスクを被ることはありません。
副業から法人化するタイミング
副業を始めて事業が軌道に乗れば、本業を辞めて1本化させたり、事業規模を広げるために法人化したりすることが可能です。
副業から法人化を目指すなら、どのタイミングで法人化するべきか事前に把握しておいてください。法人化を検討するタイミングは以下のとおりです。
-
- 年間所得が900万円以上になった場合
- 課税売上高が1,000万円以上になった場合
- 社会的信用の獲得や事業拡大が必要になった場合
- 家族に給与を支払う場合
- 自分以外に代表取締役を任せる場合
まとめ・計画的に起業準備資金を確保してスムーズに開業しよう
起業をするためには、店舗・オフィスの取得や設備費用、広告費など、様々な費用がかかってきます。
業種によっても異なりますが、数百万円~1,000万円を超えるケースもあるでしょう。
しかし、起業の準備資金をしっかり確保しておけば、十分な運転・維持費や生活費なども確保できた状態で起業できます。
スムーズな開業を目指すためにも、まずは計画的に起業準備資金を用意するところから始めてください。
創業手帳(冊子版)は、起業に向けた準備や手続きなどのノウハウから、起業時に使える融資制度の情報まで幅広く紹介しています。起業を検討されている人は、ぜひ創業手帳をお役立てください。
(編集:創業手帳編集部)

創業手帳
飲食開業手帳
補助金ガイド
創業手帳カレンダー