創立費とは?会社設立時に知っておきたい基礎知識と仕訳方法などを解説
会社設立にかかった費用は「創立費」として計上できる

会社設立するためには、多くの初期費用がかかります。その中でも会社を設立するためにかかった費用は創立費として計上が可能です。
創業当初は、事業が軌道に乗るまでは赤字経営が続くことが多いため、経費として計上できれば高い節税効果が期待できます。
当記事では、会社設立時にかかる創立費が具体的にどのようなものなのか、開業費との違いや経費として計上できる費用、会計処理・仕訳方法などを解説します。
創立費を計上する際に注意すべきことについても紹介しているので、会社設立前に知っておきたい人はぜひ参考にしてください。
この記事の目次
創立費とは会社設立に使った費用

創立費とは、会社を設立するためにかかる費用です。会社を創立し、事業活動を始めるためには多くの費用がかかります。
似たもので「開業費」がありますが、創立費は会社の設立までにかかるまでの費用を指し、設立後にかかるものではありません。
創立費としてかかる費用には、以下が挙げられます。
-
- 登録免許税
- 定款作成にかかる代行手数料
- 定款認証手数料
- 印鑑証明書発行手数料
- 認定手数料
- 設立登記時の印紙代
- 設立前の事務所貸借費用
- 銀行口座開設手数料
- 設立前の従業員の給与 など
ただし、設立前にかかる費用のため、設立前の従業員の給与は代表者が一度建て替えて支払う必要があります。
会社設立前でも経費として計上できる
会社を設立するためにかかる費用は、経費として計上することが可能です。創立費として計上できるのは、会社を設立するために特別に発生する費用が対象となります。
代表者が個人的に立て替えた支払いは、領収書を保管しておけば経費として計上することが可能です。
会計処理において、勘定科目の創立費は「繰延資産」として扱われ、60カ月同じ金額を償却する均等償却もしくは好きなタイミングで償却できる任意償却で償却できます。
創立費は会社の設立前に発生するため、創業初期は赤字になるケースが多いです。そのため、数年かけて少しずつ償却していくことになります。
開業費と創立費の違い
開業費は創立費と類似した言葉で、どちらも開業時にかかる費用です。しかし、発生するタイミングや償却方法などが異なります。主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 創立費 | 開業費 |
| 目的 | 会社設立のための手続き・準備活動 | 開業のために必要な手続き・事業を軌道に乗せるための活動 |
| 費用が発生するタイミング | 会社設立準備開始~会社設立まで | 会社設立~営業開始(開業)まで |
| 帳簿の記帳日付 | 会社設立日 | 取引発生日 |
| 該当する費用 | 登録免許税 定款作成費 定款認証手数料 設立前の事務所貸借費用 銀行口座開設手数料 司法書士・行政書士への報酬 従業員への給与 など |
広告宣伝費 ホームページ制作費 市場調査費用 名刺・チラシ・会社案内作成費用 事務用品代 備品代 開業にあたり接待交通費・交通費 など |
| 対象者 | 法人 | 法人及び個人事業主 |
| 会計処理方法(勘定科目) | 繰延資金 | 繰延資金 |
開業費は、会社設立日から実際に事業を開始するまで(営業開始日)にかかった費用を指します。上記のように、費用発生タイミングや記帳日付などの違いがあります。
創立費として経費にできるもの・できないもの

会社設立までにかかった費用でも、創立費の経費として計上できるものとできないものがあります。ここでは経費として計上できるもの・できないものについて解説します。
経費にできるもの
経費として計上できるのは、以下のとおりです。
-
- 登記費用:登録免許税、定款認証手数料、定款謄本手数料など
- 定款作成費用:公証人手数料、印紙税など
- 創立事務費:設立手続きに関わる事務費用
- 印鑑作成費:会社の実印・銀行印・角印などの作成費
- 設立前の事務所貸借費用:設立準備のためのオフィス貸借料
- 発起人会費用:発起人に対する報酬
- 司法書士・行政書士への報酬:専門家への相談・依頼費用
- 従業員の給与:設立に関連する業務に従事した従業員の給与
- 交通費:設立手続きのための交通費
- その他:金融機関の取引手数料、証券会社の取引手数料など
会社設立のために借りたオフィスや会議室、交通費、飲食費なども創立費として含めることが可能です。
費用が発生した場合は、それを証明できる領収書を保管しておく必要があります。なお、金額は設立する会社の種類や資本金などにより変動します。
会社設立の費用がいくらか気になる方はこちらもご覧ください。
>>【税理士監修】会社設立の費用はいくら?株式会社と合同会社を比較
経費にできないもの
会社設立前に発生した費用のうち、経費として計上できないものとして以下が挙げられます。
-
- 資本金:会社の元手となる資金
- 敷金・礼金:不動産の賃貸契約にかかる敷金・礼金・仲介手数料など
- 備品・資産:パソコンやコピー機など1台あたり10万円以上のもの
- 仕入れ商品:商品として販売するため在庫を確保したもの
- その他:設立に直接関係ない市場調査費用・広告宣伝費・研修費・コンサルタント費用など
このように、資本金や敷金・礼金、仕入れ商品などは、たとえ設立前に発生した費用であっても経費として計上できないものになります。
ただし、礼金や仲介手数料は20万円未満なら地代家賃、それ以上は繰延資金として処理可能で、10万円以上の備品・資産購入も固定資産として減価償却できます。
創立費としては計上できないものでも、勘定科目が異なるものもあるため、事前に確認が必要です。
創立費の会計処理・仕訳方法

会社設立で創立費を会計処理する方法を紹介します。ここでは、創立費の仕訳例も解説していきます。
創立費の勘定科目は「繰延資産」
創立費は、会計処理では勘定科目で「繰延資産」として扱われます。
繰延資産は任意期間に経費として計上できるため、設立事業年度に経費として計上する必要はありません。
事業を開始して間もない頃は赤字になるケースも多いですが、創立費は経費として扱いたい事業年度に処理することが可能です。
償却方法としては、均等償却と任意償却があります。均等償却は60カ月(5年間)で均等に償却する方法で、100万円の支出なら20万円ずつ償却していく形です。
任意償却は償却期間や償却額を自由に決めることができ、利益が多い事業年度に合わせて償却できるというメリットがあります。
創立費の仕訳例
具体的な例を挙げて、実際に創立費を仕訳していきます。ここでは、会社設立時に登記費用30万円を現金で支払った場合で仕訳していきましょう。
この場合、創立費として繰延資金の勘定科目で計上し、借方では創立費30万円、貸方では現金30万円と記載してください。
均等償却の場合、決算時に創立費を償却します。5年で均等償却する初年度は、借方では創立費償却6万円、貸方では創立費6万円と記載し、毎年同額を償却します。
任意償却を選択した場合、経費として計上したい事業年度に創立費を償却可能です。
仮に決算時に創立費を15万円償却したい場合は、借方で創立費償却15万円、貸方で創立費15万円と記載します。
創立費の償却方法・ポイント

創立費の償却方法は、均等償却または任意償却の2種類から選択できます。ここでは、償却で有利になるタイミングも含め解説します。
創立費の償却方法は2種類から選べる
創立費を繰延資金として計上する場合、均等償却にするか任意償却にするかを選択できます。
均等償却は60カ月(5年)で毎年同額ずつを計上していく償却方法で、任意償却は償却のタイミングや金額を自由に決めて償却できる方法です。
均等償却では、取得価額÷償却期間(5年)で償却額が決定するため、毎年の費用計上が安定しやすい点が特徴です。
任意償却では、償却の期限や金額の上限・下限も定められていないため、黒字経営となった事業年度に償却し、費用として計上することもできます。
赤字となった年度は償却を0円として、繰越欠損金を温存できます。特に創業当初は目標売上に到達できずに赤字となってしまうケースが多いでしょう。
通常の経費は費用が発生した年に経費計上する必要がありますが、繰延資産である創立費は自由に決めることができるのです。
償却で有利になるタイミング
創立費の償却で有利になるのは、会社が黒字化して法人税などの負担が大きくなったタイミングです。
創立費を任意償却する場合は、いつでも好きなタイミングで全額もしくは一部を償却できます。
そのため、黒字が出て利益に税金がかかるようになった事業年度に、創立費をまとめて償却して損金経理をすれば、法人税を効果的に抑えることが可能です。
一方、事業開始から赤字が続いている場合は、創立費を償却しても税金を減らすことはできないため、節税効果が得られません。
赤字の状況で無理に創立費を償却すれば、所得金額が減少する可能性が高いでしょう。
創立費を償却する場合は、収益や黒字の状況をよく見たうえで適したタイミングを見極めることが大切です。
創立費を計上する際に気を付けたいこと

創立費を計上する際には、これから紹介する以下の点に注意してください。それぞれ詳しく解説します。
領収書・証憑は必ず保管しておく
創立費を経費として計上するには、領収書や請求書、レシート、出金伝票などが必要です。
近年は領収書が電子化されているケースも多いですが、その場合は電子帳簿保存法に則って保存しておき、経費として計上するための証拠を紛失しないようにしなければなりません。
領収書がない場合は、購入日・購入場所・購入品(サービス名)・金額が記載されていればレシートでも計上できます。
出金伝票を記録する際は、不備とされて架空計上を疑われる恐れもあるため、日付・出金先・勘定科目・摘要・金額を正確に記載する必要があります。
プライベートの支出と混同させない
会社設立前の支出であっても、プライベートと混同させないよう十分注意しなければなりません。
仮に事業に関連していると思って計上した場合でも、税務調査ではプライベートな支出と判断されるケースもあります。
中でも自宅兼事務所としている場合の家賃や、車両のガソリン代、保険料、携帯電話料金などは、業務利用と私的利用が混同しやすい費用です。
混同させないためには、合理的な按分を決め、利用履歴やプライベートと分ける仕組みの構築が不可欠です。
特に自宅兼事務所の場合は、床面積比での按分にしたり車両の場合は走行距離で按分したりと、ルールを明確にしなければなりません。
設立日とのタイミングに注意
創立費は、会社を設立するまでにかかった費用のことです。会社の設立日は、商業登記簿謄本に会社設立日として掲載される日のことを指します。
つまり、法務局で会社設立申請を提出した日が設立日として記載されることになります。
一方、事業開始日は会社として事業や営業を開始し、事業活動を開始した日を指します。
創立費は、事業開始日ではなく会社設立日以前に発生した費用のみが該当するため、会社設立日以降は開業費として経費計上しなければなりません。
経常的に発生する費用は創立費に当てはまらない
創立費は会社を設立するために必ず必要となる費用ですが、設立年月日までに発生したすべての費用が創立費としてみなされるわけではありません。
特に事務所の家賃や水道光熱費、従業員の給与など経常的に発生する費用は創立費となりません。
ただし、創立費としてではなく、費用として計上することは可能です。経常的に発生する上記の費用は、設立第1期事業年度の申告に費用として含めて計上できます。
創立費に関するよくある質問

ここからは、創立費に関するよくある質問を3つ挙げていきます。創立費に関する不明点はこちらを参考にしてください。
創立費としていくらまで計上できる?
創立費は、会社を設立するためにかかった費用であれば原則全額経費として計上することが可能です。設立準備段階で、登記が完了する前に支払った費用も同様です。
ただし、設立日を過ぎて発生した費用に関しては、創立費ではなく開業費とみなされるため、費用が発生したタイミングには十分注意しなければなりません。
また、設立日以前にかかった費用でも、すべてが創立費とみなされるわけではないため、創立費に該当するかどうかもよく確認しておく必要があります。
赤字決算でも創立費を償却しないといけない?
創立費の償却方法では、任意償却という方法を選択できます。
任意償却であれば、償却するタイミングや金額を自由に決められるため、赤字決算の事業年度なら無理に創立費を償却する必要はありません。
そのため、赤字となった事業年度は繰り越して黒字決算となったタイミングで創立費を償却するといった柔軟なコントロールをすることもできます。
創立費を即時償却することは可能?
会社設立初年度から大きな黒字が見込まれる場合は、創立費を即時償却することも可能です。
即時償却は、取得した事業年度に全額を経費として計上できる方法です。
創立費のような繰延資産では、税務上は償却期間の制限がないため、償却するタイミングを自由に選択できます。
しかし、黒字が見込めない場合は即時償却すると所得金額が少なく、事業活動に支障が出る恐れもあります。
設立初期の資金繰りや節税をコントロールするためにも、償却する際は適切なタイミングを見極めましょう。
創立費と開業費を間違えた場合どうすればいい?
創立費と開業費は混同されるケースも多いです。仮に開業費を創立費と計上を間違えてしまった場合、税務申告上は問題ありません。
創立費も開業費も繰延資産として処理されるため、たとえ間違って計上しても税務署から指摘される心配もありません。
間違えて計上した場合は、次回の決算時に正しいほうに仕訳を入力し直して償却処理を進めてください。
まとめ・創立費を正しく理解して設立後の経理をスムーズに進めよう
創立費は、会社を設立するまでにかかった費用のことです。開業費と混同されることも多いですが、費用が発生したタイミングや該当する費用に大きな違いがあります。
創立費は繰延資産として計上でき、任意償却を選択すれば会社の経営状況に合わせて無理なく償却することが可能なため、節税効果も期待できるでしょう。
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(編集:創業手帳編集部)
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