【2026年最新】雇用調整助成金とは?受給要件や上限額、申請方法をわかりやすく解説

雇用調整助成金とは従業員の雇用を守るための助成金制度


景気の悪化や急激な業績変動などにより、企業がやむを得ず人員削減を検討せざるを得ない場面は少なくありません。
しかし、従業員の解雇は企業にとっても大きな損失となり、将来的な事業継続にも影響を及ぼします。そこで活用したいのが「雇用調整助成金」です。
雇用調整助成金は、休業や教育訓練、出向などを通じて雇用維持に取り組む企業に対し、休業手当などの一部を国が助成する制度です。

本記事では、雇用調整助成金の基本的な仕組みをはじめ、受給要件や上限額、申請方法についてわかりやすく解説します。制度のポイントを押さえ、自社にとって最適な活用方法を検討していきましょう。

この記事の目次

雇用調整助成金とは?


雇用調整助成金とは、景気の変動や産業構造の変化など「経済上の理由」から、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対して、雇用の維持を目的とする助成金制度です。
2026年現在、長引く世界情勢の不安定化やエネルギーコストの変動に対し、企業の雇用維持能力を下支えする重要なセーフティネットとしての役割を担っています。

従業員の雇用を維持するための「休業手当」支援制度

雇用調整助成金の特徴として、従業員の解雇を避けつつ、従業員に支給した休業手当や教育訓練の負担額の一部を、国が助成する点が挙げられます。
本来、会社側の都合で従業員を休ませる場合、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。雇用調整助成金を活用すれば、その原資負担を大幅に軽減することが可能です。
2026年度は特に、単なる現状維持だけでなく、休業期間を活用した「スキルアップ(教育訓練)」との併用も強く推奨されています。

【2026年最新】緊急時のあり方が3つのパターンに「類型化」

2026年1月~3月に開催された職業安定分科会の中で、雇用調整助成金の支給要件緩和に関する効果の検証と、今後緊急時における雇用調整助成金のあり方について方向性がまとめられました。
その結果、緊急時のあり方については、危機の性質に応じて3つのパターンに類型化されます。

  • 経済変動類型:景気の動向や為替の影響、原材料価格の高騰など、一般的な経済活動に伴うリスクに対応する基本形です。
  • 自然災害類型:地震や台風などの激甚災害により、直接的・間接的に事業活動が制限された場合に適用される類型です。
  • 異例の緊急対応類型:かつてのコロナ禍のように、社会全体に甚大な影響を及ぼし、政府による強力な関与が必要な場合に発動される特例的な枠組みです。

イラン情勢などによる燃油高騰・供給制限は「経済変動」として適用可能

2026年において特に注目すべきは、中東を中心とする地政学リスクの影響です。
イラン情勢の緊迫化にともなう原油価格の高騰や、物流網の混乱(海上輸送の遅延など)により原材料が届かず、工場を稼働できないといった事態は「経済変動」による事業縮小として認められます。
単に「売上が下がった」というだけでなく、「供給制限によって働かせたくても働かせられない」という状況も正当な理由となり得るため、情勢変化に直面している企業は早めの検討が必要です。

雇用調整助成金の支給対象となる事業主・従業員の要件


雇用調整助成金を受給するためには、事業主に一定の要件が定められており、対象となる従業員の範囲も決められています。
制度の対象となるかどうかは申請可否に直結するため、事前に確認しておくことが重要です。ここで、主な要件と注意点について整理していきます。

対象となる事業主の条件:売上高(生産指標)10%減少の確認方法

雇用調整助成金の対象となる事業主は、以下の要件をすべて満たしている必要があります。

  • 雇用保険の適用事業所である
  • 事業活動の縮小に該当する生産量要件・雇用量要件を満たしている
  • 雇用保険被保険者に対して、計画的に休業・教育訓練・出向を実施している
  • 労使間で協定を締結し、計画届を事前に労働局へ提出している

条件にある「生産量要件」と「雇用量要件」は以下のとおりです。

  • 生産量要件:売上高または生産量などの直近3カ月間の月平均値が、前年同期に比べて10%以上減少していること
  • 雇用量要件:雇用保険被保険者数および派遣労働者の直近3カ月間の月平均値が、前年同期と比べ、大企業は5%を超えてかつ6人以上、中小企業は10%を超えてかつ4人以上増加していないこと

生産量要件を満たしているか確認するには、直近3カ月間の売上高または生産量を集計し、前年同期の3カ月間の数値も算出します。
今年と前年の3カ月間の月平均値を算出したら、(前年同期-直近)÷前年同期×100の計算式に当てはめ、減少率を算出してください。

対象となる従業員の範囲:雇用保険被保険者とパート・アルバイトの扱い

雇用調整助成金の対象となる従業員は、原則として雇用調整(休業・教育訓練・出向)の対象となり得る雇用保険被保険者です。
一定の労働時間・日数を満たしており、雇用保険に加入している正社員・契約社員などが対象になります。

パート・アルバイトなどでも雇用保険に加入していれば、助成金の対象になる可能性があります。
ただし、短時間勤務のパートや学生アルバイトなどは、雇用保険の加入条件を満たしていないケースも多く、対象になるかどうかの確認が必要です。

【重要】支給対象外となるケースと欠格事由

雇用調整助成金には、支給対象外となるケースや欠格事由も明確に定められています。
これらに該当すると申請しても不支給、あるいは返還を求められる可能性があるため、注意が必要です。

  • 不正受給(虚偽申請や水増し請求など)があった場合
  • 労働保険料の滞納がある
  • 申請日前日から起算して過去1年以内に、労働関係法令違反で送検処分を受けている
  • 反社会的勢力に関与している
  • すでに倒産している
  • 休業計画を変更しているのに変更届を提出していない
  • 休業日に従業員が自主的に出社し、業務を行っている

支給対象となる期間と日数制限


雇用調整助成金は無制限に受給できる制度ではありません。支給対象となる期間と日数に上限が設けられています。
上限をあらかじめ理解していないと、途中で助成が打ち切られたり、想定より受給額が少なくなったりする可能性もあるため、注意が必要です。
ここでは、支給対象となる期間と日数制限の基本的な考え方を解説します。

対象期間(1年間)と判定基礎期間の考え方

雇用調整助成金の対象期間は、1年間の中で実施した雇用調整(休業・教育訓練・出向)の期間です。
休業または教育訓練は、事業主によって雇用調整の初日から1年間とするか、賃金締切日の翌日から1年間とするかなどを指定できます。
出向の場合は出向開始日から1年間が対象期間です。なお、休業・教育訓練と出向の両方を実施する場合、対象期間は初日・末日が同一の期間となります。

判定基礎期間とは、実際に休業などを行い、助成金を計算する単位期間です。原則として毎月の賃金締切日の翌日から、その次の締め切り日までの期間が判定基礎期間です。
ただし、毎月の賃金締切日が特定されない場合は暦月を判定基礎期間として設定します。
対象期間は1年間ですが、判定基礎期間は1カ月ごとに区切られ、その期間の休業日数や休業手当などをもとに支給額が算定されることになります。

支給限度日数(1年100日・3年150日のルール)

雇用調整助成金を受けようとした場合、1年間で最大100日分、3年間の通算で最大150日分が上限となります。
この日数は企業単位ではなく、対象の労働者ごとにカウントされるのが特徴です。

例えば、同じ企業でも従業員によって休業日数が異なれば、それぞれの累計日数を管理しておく必要があります。
特に長期化する地政学リスク(イラン情勢など)の影響で休業が長く続く場合、残日数管理に注意してください。

また、過去に雇用調整助成金を受給していた場合、その利用日数も通算に含まれるため、以前使った分がどれくらい残っているかも把握しておくことが重要です。

支給限度日数の計算方法(延べ日数と換算)

支給日数を計算する際は、単にカレンダー上で休業した日数を数えるのではなく、「延べ日数」の考え方で計算します。
例えば、対象の労働者が10人在籍する事業所で、7人が5日ずつ休業した場合、休業の延べ日数は7人×5日=35人日となり、対象労働者(10人)で割って35人日÷10人=3.5日が支給日数です。
この計算は判定基礎期間ごとに計算し、対象労働者数は判定基礎期間に属する暦月の末日現在の数を使って計算します。

支給対象になる措置


雇用調整助成金の支給対象になる措置は、主に休業・教育訓練・出向の3つに分類されます。

休業:一時的な操業停止やシフト削減による雇用維持

休業は、業績悪化などで通常どおりの営業が難しい場合、一時的に操業を停止したり、従業員の労働日数・時間を減らしたりする措置を指します。
具体的な例としては、以下のとおりです。

  • 工場や店舗の一時的な休業
  • 週5日勤務を週3日に減らすシフト調整
  • 1日の労働時間を短縮する時短勤務

事業主が自由に従業員の労働日数や時間を減らすことはできず、労使協定で定める範囲を超える休業は対象外です。
休業にする場合、事業主は休業手当(平均賃金の60%以上)を支払う必要があり、その一部が助成金として補填されます。

教育訓練:2026年に推奨されるリスキリングと加算措置の活用

休業中の時間を有効活用する手段として、教育訓練も支給対象になります。これは、従業員の職業能力の向上を目的とした研修・講座などが対象です。

2024年4月からの改正にともない、累計の支給日数が30日に達した判定基礎期間の次の判定基礎期間以降は、教育訓練加算額が最高1,800円となりました。これにより、事業主は休業よりも教育訓練での雇用調整を選択しやすくなります。

例えば、DX化やAI、GXなど新たな技術を業務へ活用するために実施する教育訓練や、グリーン化(省エネ)に関する教育訓練が加算措置の対象です。
なお、業務に関係のない知識・技術を習得するための訓練や、法令によって講習を受講することが義務づけられているもの、教育訓練の実施時間中に業務が行われるものなどは対象外となるため、注意してください。

出向:産業雇用安定助成金との連携によるスキルアップ型移籍

出向は、自社での雇用を維持したまま、ほかの企業で一定期間働いてもらう仕組みを指します。
雇用調整を目的として行われるものであり、出向元事業主と出向先事業主の間で締結された契約によるものとしています。
出向期間は原則3カ月以上1年以内であり、出向元事業所への復帰が必要です。

出向の場合、産業雇用安定助成金を受給することが可能です。
ただし、同時に受給することはできないため、まず労働者を一時的に休業させて雇用調整助成金を受給し、その後出向(在籍型出向)させて産業雇用安定助成金を受給することはできます。
在籍型出向では、他社での実践を通じて、ノウハウや技術、新たな視点・視野の習得が期待できます。
また、出向先企業も一時的な人材不足の解消や業務負担の軽減などが期待でき、双方にとってメリットがあるでしょう。

雇用調整助成金の助成率と上限額


雇用調整助成金の助成率は休業・教育訓練を実施した場合と、出向した場合で異なります。ここで、雇用調整助成金の助成率と受給額の上限を紹介します。

休業・教育訓練の場合

休業・教育訓練を実施した際の助成率は、中小企業で3分の2、大企業で2分の1となります。
休業手当または教育訓練を実施した際の賃金に相当する額に助成率を乗じることで、助成額を算出します。

なお、上限額は1人1日あたり雇用保険基本手当日額の最高額である8,870円までです。ただし、教育訓練を実施すると、1人1日あたり1,200円が加算されます。

出向の場合

出向をした場合、出向元事業主の出向した労働者の賃金に対する負担額(出向前の通常賃金のおおむね2分の1が上限)に、助成率を乗じて助成額を算出します。
助成率は中小企業で3分の2、大企業で2分の1です。
さらに、1人1日あたり雇用保険基本手当日額の最高額に、365分の330および支給対象期の日数を乗じて得た額が上限額となります。

雇用調整助成金の申請手続き5ステップ


あらかじめ雇用調整助成金の申請の流れを把握することで、遅延を防ぐことも可能です。ここで、雇用調整助成金の申請手続きを5ステップに分けて紹介します。

1.労使協定の締結と実施計画を立てる

休業・教育訓練・出向を実施する前に、まずは労働組合や従業員代表と労使協定を結んでください。この協定書は申請時に確認書類として提出が求められます。

労使協定を締結したら、次に休業や教育訓練、出向を行うための実施計画を作成します。
休業を選択する際は事業計画から期間や部門、人数などを検討し、教育訓練の場合はカリキュラムの立案や対象の従業員、訓練を実施する目標などを立ててください。
出向の場合は対象となる従業員だけでなく、受け入れ先なども併せて選定し、それぞれが決定した時点で書類作成に移行します。

2.休業等実施計画届を作成・提出する

実施計画を立てたら、都道府県労働局またはハローワークに実施計画届を提出します。
計画届は支給対象期間ごとに提出する必要があり、休業などを開始する日の前日までが提出期限です。
ただし、初回の届け出に関しては休業などを開始する初日の2週間前を目安に提出するようにしてください。

なお、休業等実施計画届は「雇用関係助成金ポータル」からオンライン申請をすることも可能です。
オンライン申請ならわざわざ来所する必要がなく、また一度入力した情報の一部はほかの申請書でも自動的に反映されるため、負担軽減にもつながります。

3.休業の実施と「休業手当」の確実な支払い

計画届を提出したら、休業や教育訓練、出向などの雇用調整を実施します。
雇用調整を実施した際には、日数と支払った休業手当の金額などをしっかりと記録するようにしてください。

なお、休業手当が休業協定書どおりに支払われていなかった場合、支給申請期限までに追求したものだけが助成対象になります。
休業手当の支払いがきちんと休業協定書どおりの算定になっているか、確認することが大切です。

4.支給申請書の作成と必要書類の準備

雇用調整を実施したら、その内容に応じた支給申請書を作成し、必要書類を準備します。
支給申請に必要な書類は、休業・教育訓練を実施した場合と出向を実施した場合で少し異なるため、事前に確認しておいてください。

【休業・教育訓練を行った際に必要な書類】

  • 支給申請書
  • 助成額算定書
  • 休業・教育訓練実績一覧表および所定外労働等の実施状況に関する申出書
  • 支給要件確認申立書
  • 労働・休日および休業・教育訓練の実績に関する書類
  • 雇用調整助成金支給申請合意書(教育訓練)
  • 教育訓練の受講実績に関する書類(教育訓練)
【出向を行った際に必要な書類】
  • 支給申請書
  • 出向先事業所調書
  • 出向に関する確認書
  • 出向元事業所賃金補填額・負担額調書
  • 支給要件確認申立書
  • 出向の実績に関する書類

審査を早めるための「出勤簿」「賃金台帳」の整合性チェック

支給申請は届いた順から審査が行われますが、審査をスムーズに進められるようにするには、事前に出勤簿と賃金台帳の整合性をチェックすることが大切です。
例えば、休業を選択した場合、休業した日数と支払った休業手当の金額が一致していなければ、審査に通らない可能性があります。
そのため、事前に出勤簿と賃金台帳の整合性を確認しておき、金額が一致しているか確認することが大切です。

5.労働局の審査・助成金の振り込み

支給申請書や必要書類を提出し、受理されたら労働局で審査が行われます。特に不備や問題がなければ助成金が振り込まれる予定です。
ただし、審査から実際に入金されるまで、基本的に数週間~数カ月の期間を要します。
助成金が入金されるまでは自己資金で休業手当などを支払わないといけないため、入金されるまでの資金繰りについても事前に計画しておくことが重要です。

まとめ・雇用調整助成金への正しい理解と活用で、経営危機から雇用を守れる

雇用調整助成金は、売上減少時でも解雇に頼らず人材を維持できる重要な制度です。
受給要件や支給日数、対象措置を正しく理解し、休業・教育訓練・出向を状況に応じて組み合わせることで、負担を抑えながら事業の立て直しが図れます。
特にリスキリングや出向の活用は中長期の競争力強化にも有効です。制度を適切に運用し、経営と雇用の両立を実現しましょう。

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(編集:創業手帳編集部)