金融庁が地銀を一斉調査!創業融資や中小企業への影響はある?
金融庁が地方銀行約100行の経営状況を調査

報道によると、金融庁は全国の地方銀行・第二地方銀行、合わせておよそ100行を対象に、ALM(資産・負債の総合管理)の状況を一斉に検証しています。
地方銀行や第二地方銀行が金利上昇局面で預金の奪い合いや保有債券の含み損に対応できているかを検証し、課題があれば改善を求める方針です。
銀行経営の要であるALMについて全行を対象に調査するとの報道から、金融庁の危機感の強さがうかがえます。
ここでは、金融庁が地銀を一斉調査したことによる中小企業への影響をまとめています。
この記事の目次
なぜ今、地方銀行への調査が行われるのか
日銀は2026年6月の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%から1.00%へ引き上げました。1.00%は1995年以来、31年ぶりの水準です。
日銀の利上げ局面が続くなか、地方銀行の経営環境はこれまでにない速さで変化しています。預金獲得競争が激しくなっていることや、金利上昇に伴う保有債券の価格下落などが経営上の課題となっているためです。
預金金利の上昇や調達コストの増加により、地方銀行の収益構造にも影響が及び始めています。
保有する債券の含み損が膨らんでいる銀行もあり、金融庁は金利変動リスクへの耐性を注視しています。以下では詳しい内容を解説しました。
金融庁は以前から地域銀行のリスク管理を注視してきた
金融庁は2026年3月、地域銀行の「仕組貸出」に関するモニタリングレポートを公表するなど、リスク管理態勢の確認を継続しています。
過去のモニタリングでは、金利リスクの管理手段としてALM委員会への定期報告を求めるなど、個別行への監督を実施しました。
つまり、今回の一斉調査は突発的なものではありません。金融庁が継続的に進めてきた地域銀行監督の延長線上にある取り組みです。
全国にある地方銀行が連鎖的に不安定化するリスクを未然に防ぐため、今後も注視は継続されると考えられます。
金利上昇で銀行経営の環境が変化している
現在、日銀の利上げにより預金金利が上昇し、地方銀行は資金調達コストの増加という新たな課題に直面しています。
ネットバンクの台頭によって預金獲得競争が激しくなる中で預金金利の上昇などによって調達コストが増加し、収益を圧迫する要因となる可能性があります。
さらに、金利上昇局面では保有する国債などの債券価格が下落しやすいことも地銀にとっての向かい風です。
超低金利時代に多くの債券を保有してきたことで含み損を抱える地方銀行も出てきました。
一般的に金利が上がれば銀行にとって収益機会だといわれます。しかし、現状は金利上昇が資金調達と資金運用の両面で経営体力を削ってしまっているのです。
金融庁が重視する「ALM」とは
ALMとは資産(Asset)と負債(Liability)、管理(Management)の頭文字を取った言葉です。
資産・負債の総合管理を意味し、預金や融資、債券などを一体的に管理して経営リスクを抑える考え方を言います。
金融機関の資産は、その多くが市場価格、金利に影響されます。
そこで金利が変動しても経営が揺らがないよう、資産と負債のバランスを保つ手法として金融機関ではALMが重視されているのです。
報道によると、金融庁は今回、ALM体制が金利上昇局面でも機能しているかを全国規模で検証します。
銀行経営の要であるALMを調べることは、今後の金利環境に対応するための試金石と考えられています。
中小企業や創業予定者への影響は?

融資で金融機関と付き合いがある中小企業は多いでしょう。
今回の調査は銀行経営の健全性を確認するものであり、融資判断そのものを直ちに厳しくするような措置ではありません。
ただし、銀行ごとの経営体力の差は、今後の融資姿勢や金利設定に影響を及ぼす可能性があります。
創業予定者や中小企業にとっても、取引先となる銀行の経営状況を把握しておく重要性が増していると考えるべきです。
以下では、今回の調査による影響と、創業者・中小企業への影響について解説しています。
すぐに融資が受けにくくなるわけではない
今回の調査は経営の健全性を確認することが目的です。これから銀行が融資審査を直ちに厳格化するといった類のものではありません。
今後、今回の検証だけを理由に、全国一律で創業融資や中小企業向け融資が厳しくなると考える必要はありません。
現時点で創業融資の条件が全国一律で変わるとの発表もないので、過度に不安視する段階ではないでしょう。
ただし今後は銀行ごとの差が広がる可能性も
ALMの調査結果によって直ちに起業に影響することはなくても、銀行ごとの経営体力の差が今後表面化してくるかもしれません。
今後は、経営基盤が強い銀行と弱い銀行とで、融資姿勢や審査スピードに差が生じることも考えられます。
金利設定や融資条件についても、銀行ごとの違いがより明確になっていく可能性があります。そのため、将来の融資に備えて動向を見守ることが大切です。
地域金融機関との関係づくりはより重要になる
銀行ごとの経営方針に差が生まれる中、日頃から取引先銀行との関係構築は欠かせません。
経営状況や事業計画を早めに共有しておくことで、融資審査における信頼関係を築きやすくなります。
また、複数の地域金融機関と接点を持っておくことは、資金調達の選択肢を確保する上でも有効な手段です。
メインバンク一行に依存しているとその銀行の調達環境が資金繰りにダイレクトに影響を与えます。
経営の健全性や情報開示の透明性にも目を向けて資金調達チャネルを分散させることがリスク管理として求められます。
地方銀行は今後どのような対応を進めるのか
金融庁の調査を受け、地方銀行各行は複数の側面から経営基盤の立て直しを迫られています。リスク管理体制の強化に加え、専門人材の育成や資金調達手法の見直しも急務です。
経営体力の弱い銀行では、他行との統合・再編によって基盤強化を図る動きも広がります。地方銀行が今後どのように対応していくのかをまとめました。
リスク管理体制の強化
この金利上昇基調の中で金利変動の影響を的確に把握するため、地方銀行はリスク管理態勢の見直しを進めています。
保有する債券や貸出資産について、時価情報や金利リスク量を定期的に確認する体制が求められます。
さらに経営陣への報告体制を整備し、リスクの所在を早期に把握できる仕組みを構築する銀行も増加していると考えられます。
より厳しくリスクを管理することで、早めに対処できる仕組みは今後も求められるでしょう。
ALM専門人材の育成
ALMを適切に運用するには、金利リスクの分析や資金運用を適切に判断できる人材の確保も重要です。
特に金利環境が変化するなかでは、ALMを適切に運用できる専門性の確保が求められます。
金利リスクの分析や資金運用の判断ができる人材を内部育成や中途採用で確保する動きは進んでいるものの、専門人材の不足は地方銀行に共通する課題です。
業界全体での人材育成の取り組みも求められています。
資金調達方法の見直し
少子高齢化や人口減少によって預金獲得が難しくなる中で、地方銀行は資金調達手段を多様化する必要に迫られています。
そこで預金以外の資金調達手段を組み合わせることで、金利変動への耐性を高めようとする銀行も増えました。
預金だけに依存しない安定的な資金調達について検討することも、金利変動への対応策の一つです。
今後は資産と負債のバランスを保ちながら、安定した資金基盤を確保する取り組みが進められます。
経営統合・再編による基盤強化
金融庁は2025年12月に「地域金融力強化プラン」を公表し、地方銀行の経営基盤強化を後押ししています。
「地域金融力強化プラン」は、地域金融機関が資金供給をはじめとする多様な金融サービスを通じて、地域経済の発展を支える力を底上げするための取り組みです。
加えて、2026年には金融機能強化法等の改正により、地域金融機関の経営統合や共同システム整備などを支援する制度も拡充されています。
単独での経営体力確保が難しい銀行では、他行との統合によって基盤を強化する動きが今後広がる可能性もあります。
創業・中小企業が今から意識したいポイント

地方銀行の経営環境が変化する中で、創業予定者や中小企業も資金調達の備えを見直さなければいけません。
特定の銀行に依存せず、複数の選択肢を持っておくことがリスクを抑えることにつながります。
いざという時の資金調達をスムーズにするためには、日頃からの情報整理や相談の積み重ねが求められます。今から意識しておきたいポイントについてまとめました。
複数の金融機関と付き合う
特定の銀行のみに取引を集中させず、複数の金融機関と関係を持っておくことがリスク分散につながります。
取引銀行を分散させておけば、一行の融資姿勢が厳しくなった場合でも資金調達の選択肢を確保可能です。
また、選択肢には地方銀行だけでなく、信用金庫や信用組合などの金融機関も選択肢に加えておいてください。
日本政策金融公庫も選択肢に入れる
資金調達には民間銀行に加えて、政府系金融機関である日本政策金融公庫も創業融資の選択肢として検討をおすすめします。
日本政策金融公庫はこれから創業する人、創業して間もない人向けの支援資金制度を設けています。
民間と公的な資金調達先を組み合わせておくことで、資金繰りの安定性を高められます。
信用保証協会の保証制度を活用する
創業前や実績が少ない企業では、融資を受けること自体が困難なケースがあります。
信用保証協会の保証付き融資を利用することで、創業期など十分な実績や担保がない事業者でも、融資を受ける選択肢を広げられる場合があります。
保証協会が間に入ることで銀行側のリスクが軽減され、融資審査を通過しやすくなる効果が期待可能です。
各都道府県の信用保証協会には創業を考えている人向けの融資制度もあります。詳しい内容は最寄りの信用保証協会に問い合わせてみてください。
決算・資金繰りを早めに整理する
資金繰りやキャッシュフローは、高い精度で把握しておくことが求められます。決算書や試算表を日頃から整理しておくことで、融資審査の際にスムーズな対応が可能です。
具体的には資金繰り表を作成して、資金が不足する時期を事前に把握しておくことが安定経営には不可欠です。
経営状況を数字で説明できるように準備しておくことは、銀行との信頼関係の構築にも役立ちます。
資金調達は余裕を持って相談する
資金調達は資金が不足してから慌てて相談するような後手の対応は避けてください。余裕を持って早めに動き出すことが重要です。
融資の審査には一定の時間がかかるため、必要な時期から逆算して準備を進めなければいけません。
早めに相談しておくと銀行側も状況を把握しやすくなり、柔軟な提案を受けられる可能性が高まります。
補助金・助成金など多様な資金調達手段を検討する
融資以外にも、国や自治体が実施する補助金、助成金制度を資金調達の選択肢として検討してください。
補助金、助成金は多くが返済不要である一方、採択後の経費管理や報告義務など一定の条件が伴う点に注意が必要です。
融資と補助金を組み合わせることで、資金調達の手段を分散させ、経営の安定性を高められます。
金融庁の地銀一斉調査に関するよくある質問
今回の一斉調査について、創業予定者や中小企業から寄せられやすい疑問を以下でまとめました。調査の対象や目的、今後の公表予定など、報道内容をもとに整理しています。
不明な点は、取引を検討している金融機関に直接確認してください。
すでに融資を受けている場合、今回の調査で条件が変わることはある?
今回の調査は、健康診断のように銀行の経営全体の健全性を確認するものであり、個別の融資条件を直接見直す性質のものではありません。
ただし、調査を受けて銀行側が経営方針を見直した場合、結果的に融資姿勢に影響が及ぶ可能性は否定できません。
既存の融資条件に不安がある場合は、取引銀行の担当者に直接状況を確認するのが確実です。
地方銀行以外(メガバンク・信用金庫)も対象になっている?
報道によれば、今回の調査対象は全国の地方銀行・第二地方銀行合わせておよそ100行であり、メガバンクは含まれていません。
さらに、信用金庫や信用組合についても、今回のALM一斉調査の対象としては明示されていません。
今回の調査による対象範囲は地方銀行に限定されており、地域金融機関全般への調査ではない点に注意してください。
自分の取引銀行の経営状況はどこで確認できる?
地方銀行の経営状況は、各行が公表する決算資料やディスクロージャー誌で確認することができます。
金融庁も地域銀行の決算概要を定期的に公表しており、業界全体の傾向を把握する参考になるでしょう。
気になる点があれば、決算資料を確認したうえで、取引銀行の担当者に直接質問することも検討してください。
ALMの調査結果はいつ、どのように公表される?
現時点では、今回の調査結果を個別行ごとに公表するかどうかは明らかにされていません。
金融庁は課題が見つかった銀行に改善を求める方針を示していますが、公表時期や形式は未定です。
今後の公表状況については、金融庁の報道発表や各行のIR情報を随時確認するようにしてください。
まとめ|地銀の変化を見据え、資金調達の選択肢を広げておこう
金融庁による地方銀行約100行への一斉調査は、金利上昇局面での経営の健全性を確認するための取り組みです。
現時点で創業融資が一律に受けにくくなるわけではありません。しかし、銀行ごとの差は今後広がる可能性があります。
中小企業や創業予定者は複数の金融機関との関係を築き、余裕を持った資金調達を心掛けましょう。
広い視野で資金調達の選択肢を確保することが将来的な安定経営につながります。
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(編集:創業手帳編集部)
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