家族への役員報酬で節税できる?仕組みや注意点、適正額の決め方を解説

一定の条件を満たせば節税できるが注意も必要!

家族への役員報酬による節税について話し合う家族経営者のイメージ
家族を会社の役員にすると節税できる可能性があります。しかし、なぜ節税できるのか詳しく知らない人もいるでしょう。
仕組みを理解していなければ、節税につながらないだけではなく、リスクを負い後悔を招く可能性もあるため注意が必要です。

そこで今回は、家族への役員報酬で節税できる仕組みや節税するメリット、注意点などを解説していきます。
役員報酬額を決めるポイントについても紹介していくので、家族を役員に迎え入れようと検討している人や節税を目指している人は、ぜひ参考にしてみてください。

家族への役員報酬で節税できる仕組み

家族への役員報酬で所得を分散し法人利益を圧縮する節税の仕組み
まずは、なぜ家族を役員にすることで節税ができるのか、その理由を知るためにも節税の仕組みについて解説していきます。

所得を分散させて所得税・住民税を抑えられる仕組み

役員報酬を受け取ると、個人には給与所得として所得税と住民税が課されます。
日本の所得税は累進課税となっており、所得額が増えるにつれて、段階的に高い税率が適用される仕組みとなっています。
税率は最高で45%となっており、住民税を含めると約55%にもなります。
そのため、役員報酬を高額にし過ぎると個人の税負担が増えてしまうため、節税効果が薄れる危険性があります。

しかし、所得を分散することで節税につなげることが可能です。
ひとりに集中していた所得を家族に分散させることでひとりあたりの課税所得を低く抑えられるため、税負担を軽くすることができます。
所得分散の主な方法は以下の通りです。

・家族への給与支払い
個人事業主が家族に仕事を手伝ってもらうことで適正な給与支払いで所得を分散させられます。

・家族経営やパートナーとの共同事業
事業の利益を分けられるため、ひとりあたりの基礎控除や低い税率の枠を有効活用できます。

・法人化
自分で会社を設立し、家族を役員や従業員にして雇えば給与や役員報酬を分散できます。

法人税とのバランスで節税につながる仕組み

役員報酬は、一定の要件を満たせば法人の損金として全額を経費計上できます。
例えば、期末に1,000万円の利益が見込まれている場合、役員報酬を500万円家族に対して支給すると法人の課税所得を500万円に圧縮できます。
中小企業は、所得800万円以下だと15%、800万円を超えると23.2%の法人税率が適用されます。
そのため、800万円を超える部分を役員報酬として支給すれば、節税へとつながる仕組みです。

例えば、会社の利益が1,200万円だった場合、800万円までは法人税率15%の恩恵を受けられるため、超えている部分の400万円を役員報酬として家族に渡せば会社の利益を抑えながらも個人の税率も20%台に留めることができます。

節税になるケース・ならないケース

家族への役員報酬は、すべての法人で節税効果が得られるわけではありません。
例えば、会社に十分な利益があり、家族が実際に役員として経営や業務に携わっている場合は、所得を分散できるため所得税・住民税の負担軽減につながる可能性があります。

一方で、会社の利益が少ない場合や赤字の場合は、役員報酬を支給しても節税効果が小さいケースがあります。
また、勤務実態がない家族へ報酬を支給したり、不相当に高額な報酬を設定したりすると、経費として認められない可能性もあります。
家族への役員報酬は、法人税・所得税・社会保険料などを総合的に考慮した上で、自社の状況に合わせて適切に判断することが重要です。

家族への役員報酬における節税メリット

家族への役員報酬における節税メリットは主に以下の3点です。それぞれ解説していきます。

家族全体の手取りを増やしやすい

法人の代表者に支払う役員報酬を家族に分散すれば、所得税や住民税の減税効果が期待できます。
前述したように、所得税は累進課税となっているため所得が上がるにつれて高い税率が適用されるため、世帯ひとりあたりの所得を減らしたほうが節税を目指せます。

例えば、代表者に対して1,000万円の報酬を支払うよりも、自分と家族の2人に分けたほうが、それぞれの住民税と所得税の納税額を減らすことができます。
手取りを増やしやすいため、節税や手取り増を目指しているなら、家族を役員に迎え入れる事を検討してみてください。

相続税・贈与税対策につながる場合がある

贈与税や相続税も、所得税と同様に累進課税です。社長となる自分の財産が大きくなるにつれて、課税される割合も高まってしまいます。
そのため、自分ひとりの財産を家族へ贈与・相続させるよりも、生前に役員報酬として家族に支給したほうが節税につながる仕組みです。

退職金と組み合わせて節税効果を高められる

法人であれば役員退職金を支給できます。退職金は経費として計上できるため、退職所得控除によって減税できる仕組みです。

加えて、退職金は給与とは異なる扱いとなるため社会保険料の対象にもなりません。
効率的な資金移転手段となるため、節税効果を高めるためにも家族を役員として迎え入れることを検討してみてください。

家族に役員報酬を支給する際の注意点

家族への役員報酬で注意したい高額報酬・勤務実態・定期同額給与・社会保険料
家族を役員として迎え入れれば様々なメリットを受け取れます。しかし、注意すべき点も存在します。理解しておくことで後悔を防げるようになるでしょう。

役員報酬が経費と認められない場合がある

役員報酬が経費と認められないケースもあります。なぜ、経費とならないのか、その理由を解説していきます。

不当に高額な報酬

法人税法によって役員報酬が不当に高額だと判断されると、経費として認められないケースがあります。
その場合、超過分は損金とならない仕組みです。判断される基準は「形式基準」と「実質基準」の2つです。

定款の定めた株主総会の決議で決まった限度額を超えて支給されれば、超過分は経費とはなりません。
また、業務内容や収益状況、従業員の給与水準や同業者他の報酬水準などを総合的に判断し、高すぎると判断されれば経費として認められないため注意してください。

勤務実態のない役員への報酬

家族経営の会社でよくあるのが「名ばかりの役員」です。実際には働いていないにも関わらず、家族を役員において役員報酬を支払うケースです。
役員報酬は、あくまでも会社の役員の働きに応じて支払われる対価です。勤務実態のない人に報酬を支払っても経費としては認められないでしょう。

  • 会社の業務にまったく携わっていない
  • 出社していない
  • 株主総会に顔を出しているだけ
  • 別の場所で社員やパートとして働いている

上記のような役員は勤務実態がないと判断される具体例です。
これまで報酬を支払ってきた役員に勤務実態がないとわかれば、今まで計上してきた役員報酬が認められなくなります。
追加で税金を支払わなければいけない事態へと発展する可能性もあるので、注意してください。

定期同額給与などの要件を満たしていない

役員報酬を損金(経費)として計上するためには、税法で定められた要件を満たすことが必要です。
一般的には、毎月同じ金額を支給する「定期同額給与」として支払うことが求められます。

例えば、業績に応じて年度の途中で自由に役員報酬を増減した場合は、その増減分が損金として認められない可能性があります。
やむを得ない事情による変更を除き、役員報酬は事業年度開始後3カ月以内に決定し、その後は原則として同額で支給することが重要です。

家族への役員報酬も例外ではないため、節税を目的として安易に金額を変更するのではなく、税法上のルールに従って適切に設定・運用してください。

社会保険料の負担が増える

家族に報酬を支払うと、厚生年金や社会保険への加入が必要になります。その場合、保険料は会社と本人が折半して負担し、両者の負担額を合わせると報酬額のおよそ30%程度が保険料に充てられる仕組みです。

そのため、役員報酬を高額化してしまうと社会保険料の負担額も大きくなってしまうため注意してください。
例えば、年に600万円ほどの報酬を支給すると年間で180万円前後の保険料が発生します。
節税で浮いた法人税が社会保険料で相殺される可能性もあるため、報酬を設定する際には保険料とのバランスを考慮する必要があります。

法人の利益や融資審査へ影響することもある

役員報酬が経費として否認されれば、その分の会社の利益が含まれます。そのため、予期せぬ高額な法人税の追加納付が発生するため注意してください。

また、節税のために役員報酬を不自然に低く設定していると、実際の利益やキャッシュフローが正確に見えないため、銀行から返済能力を正しく評価されなくなってしまいます。
報酬が少な過ぎれば生活が成り立たないと判断されるため、融資審査でもマイナス評価を受けやすいです。融資が受けられなくなる心配もあるため注意してください。

家族への役員報酬額を決めるポイント

家族への役員報酬の適正額を業務内容・他社水準・資金繰り・証拠書類から決める方法
節税につなげるため、経費として認められないリスクを防ぐためにも、家族への役員報酬額を決めるポイントを解説していきます。

担当業務・責任に見合った金額にする

報酬額が高すぎると税務署から不自然だとみなされるため、実際の業務や責任の重さに見合った金額にすることが求められます。

  • 仕事内容
  • 勤務時間
  • 業績への貢献度
  • 役割 など

これらを考慮して、適正な金額を定めることが大切です。

同業他社の役員報酬水準を参考にする

報酬額を決める際には、同業他社の役員報酬水準を参考にするのもポイントのひとつです。
例えば、売上げが数千万円規模で勤務実態が少ないにも関わらず、億単位の報酬を設定すれば、否認リスクが高まります。

売上規模や従業員数、事業内容などが似ている他社の役員報酬データを参考にすることで、不当に高額だとは判断されにくくなるでしょう。
国税庁の統計データや、民間調査機関のレポートなどを参考にするのもおすすめです。

会社の利益・資金繰りを考慮する

会社の利益や資金繰りを考慮するのも重要です。利益ギリギリとなる高額な報酬を設定すれば、納税や仕入れの資金が不足して資金繰りが悪化するリスクがあります。
役員報酬は原則として、一度決めれば期中に変更することは難しいため、万が一売上が低下しても、毎月支払いができる額を定めるようにしてください。

株主総会議事録など証拠を残す

家族へ役員報酬を支給する場合は、税務調査に備えて役員報酬を決定した根拠を書類として残しておくことが大切です。
役員報酬は、株主総会(または社員総会)の決議に基づいて決定し、その内容を議事録として保管しておいてください。

また、担当業務や責任範囲、勤務状況なども記録しておくことで、実際に会社の経営へ携わっていることを客観的に説明しやすくなります。
特に家族が役員である場合は、「節税目的だけではないか」と税務署に判断されないよう、役員就任の経緯や職務内容、報酬額の算定根拠を明確にしておくことが重要です。
適切な手続きを踏み、必要書類を整備しておくことで、税務上のリスクを軽減できます。

家族への役員報酬に関するよくある質問

最後に、家族への役員報酬に関する疑問を解決していきましょう。

家族なら誰でも役員報酬を支給できる?

家族が登記上の役員であれば支給することは可能です。しかし、実態に見合った報酬かがポイントです。
名目だけで実際には勤務をしていない場合や業務内容や責任の重さに比べて不自然に高額な報酬額だと、経費として認められない可能性があります。

  • 実際に職務にあたっている
  • 実際に会社の経営方針の決定に携わっている
  • 実際に重要事項の相談に加わっている

上記に当てはまっていると、認められやすいです。

専業主婦(主夫)でも役員になれる?

専業主婦(主夫)でも、会社の取締役や代表取締役といった役員になることは可能です。特別な資格は必要なく、職歴や勤務経験の有無なども必要ありません。
ただし、実態がともなわない「名目だけの役員」となれば、税務上のトラブルや責任問題に発展する可能性があるため注意してください。

家族への役員報酬はいくらまでなら適正?

家族への役員報酬の適正額は、法律上の固定上限がありません。役員報酬の決め方にも明確な基準はありませんが、「対価として認められる金額か」がポイントです。
定款や株主総会の決議で決める「形式基準」、職務内容や勤務実態などの「実質基準」この2つをもとにして報酬額が判断されます。

家族への給与と役員報酬ならどちらが節税になる?

所得を分散して累進課税の税率を下げるという点では、役員報酬も給与も同様の効果が期待できます。
経営に関与し、しっかりと責任を持つ立場であれば役員報酬として適切に分散することで節税につながります。
実際に事務を担当する場合や作業をこなす労働者であれば給与として処理するほうが自然で他の従業員にも認められやすいです。

まとめ・家族への役員報酬はルールを守り効果的な節税につなげよう

家族に役員報酬を支払い、適切に運用すれば節税効果を期待できます。
しかし、実際に業務を遂行している実態があり、報酬額に社会通念上の相当性が認められる、定期同額給与の遵守など、守るべきルールが存在します。
不適切な額を設定すれば、税務調査によって否認されるリスクがあり、ペナルティを受ける危険性もあります。適正な範囲内での活用が肝心です。

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(編集:創業手帳編集部)