起業にいくら必要?最新調査でわかったリアルな開業資金|データを読むシリーズ

起業には数百万円必要とは限らない

最新調査をもとに起業に必要な開業資金を考えるイメージ
起業には多額の資金が必要だというイメージを持つ人は多いでしょう。しかし、実際には少額で始めている起業家も少なくありません。
日本政策金融公庫の「2025年度起業と起業意識に関する調査」によると、起業家の32.2%、パートタイム起業家の53.2%が費用はかからなかったと回答しています。
さらに50万円未満まで含めるとさらに多くの人が少額で起業しています。

本記事では実際の起業費用と資金調達方法を解説しました。起業費用について悩む人はぜひ参考にしてください。

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起業にいくら必要?最新調査でわかったリアルな開業資金|データを読むシリーズ

実際の起業費用はいくらだった?

起業家とパートタイム起業家の実際の起業費用を比較した調査結果
ここからは日本政策金融公庫が発表した「2025年度起業と起業意識に関する調査」を基にして、実際の起業費用をみていきます。
自分が持つイメージと実際の起業費用にどういった違いがあるか把握してください。

費用がかからなかった人が最も多い

起業費用について「費用はかからなかった」と回答した割合は、起業家で32.2%、パートタイム起業家で53.2%にのぼります。
しかし、起業すると聞くと数百万円は必要だとイメージする人もいるかもしれません。

起業費用がかからなかったという回答が一定数存在する背景には、起業形態自体の多様化があります。
パソコンやインターネット環境を活用して、店舗や大規模な設備を必要としない事業もあり、初期費用を抑えて始められる場合があります。

50万円未満で始めた人も多い

起業費用が「50万円未満」だった割合は、起業家で29.4%、パートタイム起業家で36.8%でした。
費用がかからなかった人と合わせると、50万円未満で起業した割合は起業家で61.6%、パートタイム起業家で90.0%に達します。

さらに「50万~100万円未満」を加えた100万円未満の割合は、起業家で67.5%、パートタイム起業家で92.6%。100万円未満で起業した人が、起業家では約7割、パートタイム起業家では9割を超えるという結果でした。
事業内容によっては少額からでも起業できる可能性があることがわかります。

高額な開業資金が必要になるケース

スモールスタートで起業する人についてみてきましたが、当然すべての起業が少額で始められるわけではありません。
業種によっては高額な開業資金が必要になるケースもある点に注意してください。

具体的には、飲食店や美容室のような店舗型の事業は、内装工事や厨房設備、什器の準備などに一定の初期費用が発生します。
また、製造業など大型の機械や設備投資が必要な事業も、開業時にまとまった資金が必要になる場合があります。
自分の起業アイデアがスモールスタートできるものなのか、それともある程度の資金を必要とするのか考えてみましょう。

起業費用が少なく済む事業にはどんな特徴がある?

起業費用が少なければリスクを抑えやすく、起業時の資金面でのハードルを下げやすくなります。
起業費用が少なく済む事業には共通点があり、ここでは代表的な3つのタイプを紹介します。

パソコン1台で始められる仕事

パソコン1台あれば、アイデアを形にして世界中に商品やサービスを届けられます。
Web制作やライター、コンサル、デザインなどはパソコン1台とインターネット環境があれば始められる仕事です。

こうした職種は店舗を借りる必要がなく設備投資もほとんど不要なため、開業費用を大きく抑えて起業できる点がメリットです。
これまでのスキルや経験を生かして個人で仕事を受注する働き方が中心となるためスモールスタートに適した起業方法です。

副業から始められるビジネス

スモールスタートで始められる仕事の多くは副業にも適しています。
ネット販売やコンテンツ販売、オンラインスクール、アフィリエイトなどは副業として小さく始めやすいビジネスです。

在庫や店舗を持たずに始められるものも多く、収入の状況を見ながら少しずつ事業規模を調整しやすい点が特徴です。
会社員として勤務を続けながら収入源を分散できるため、リスクを抑えて起業に挑戦したい人に適しています。

店舗や在庫を持たない事業

無店舗型のビジネスは事務所の家賃や内装費がかからないため、開業費用を大幅に抑えて事業を始めやすい形態です。
商材にはいろいろありますが、スキルを売りにする受託ビジネスは自分の技術や時間を提供する形態が中心となり、設備投資をほとんど必要としません。

オンラインサービスは物理的な店舗や在庫を持たずに運営できるため、固定費の負担を小さく抑えて起業できます。
こうしたスキルを持つ人とスキルを求める人をマッチングするサービスもあるので自分に適したものを探してみてください。

自己資金だけで起業した人が約7割

起業家とパートタイム起業家の自己資金100%と金融機関からの借入割合
日本政策金融公庫の「2025年度起業と起業意識に関する調査」では、起業費用だけでなく、その資金をどのように準備したかも調査されています。
調査によると自己資金だけで起業した人が多いことがわかりました。以下で詳しく説明します。

自己資金100%で起業した人が多数

調査によると、起業費用に占める自己資金の割合が「100%(自己資金だけで起業)」と回答した人は、起業家で69.3%に達し、パートタイム起業家では自己資金100%だった人の割合が75.4%にのぼります。
多くの起業家が金融機関からの借り入れに頼らず、自己資金の範囲内で開業資金を準備している実態がうかがえます。

金融機関から借りた人は意外と少ない

起業時に金融機関から「借り入れなし」で開業した割合が多い一方、「借り入れあり」の人も起業家で16.5%、パートタイム起業家で8.4%と一定割合存在しています。
少額から始められる業種が増えており、今後も自己資金だけで起業するケースは高い水準が続くと想定されます。

融資を使うべきケースもある

これまで少額で起業したケースを紹介してきましたが、自己資金だけで開業できる場合でも、事業内容によっては融資を活用したほうがよいケースがあるので注意してください。
店舗の内装や機械の購入など、まとまった設備投資が必要な場合は融資による資金調達が有力な選択肢です。

また、開業直後は認知度が低く売り上げが安定しにくいため、運転資金や開業初期の資金繰りに備えて融資を検討する価値があります。
具体的には、日本政策金融公庫の現行の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、設備資金・運転資金が対象で、設備資金は20年以内、運転資金は原則10年以内などの制度設計です。
地方銀行などでも起業者向けの融資制度を提供しているケースがあるので、チェックしてみてください。

起業資金を抑えるためにできる工夫

起業費用が少なければ、抱えるリスクも抑えやすくなります。ここでは、起業費用を抑えるための具体的な工夫を紹介します。

副業から始める

起業するにあたって、会社員としての安定収入を失うことには不安がある人も多いかもしれません。
会社員として収入を得ながら副業として起業すれば、生活費を確保しつつ小さな規模から事業を始めやすくなります。

勤務収入と事業収入の二つの収入源を持つことで、開業初期に売り上げが安定しなくても資金面、生活面でのリスクを抑えやすくなります。
スモールスタートなら事業の様子を見ながら本業にするかどうかを段階的に判断できるため、無理のないペースで起業に挑戦しやすくなります。

自宅・シェアオフィスを活用する

起業に当たって事務所や店舗を用意すれば、まとまった費用が発生します。
一方で自宅の一室を仕事場にすれば、事務所を借りる場合に比べて、家賃や敷金・礼金などの負担を抑えやすくなります。

自宅での仕事が難しい場合でもシェアオフィスやコワーキングスペースを利用すれば、必要な設備が整った環境を低コストで確保可能です。
固定の事務所を持たないことで、毎月の家賃負担を抑えながら柔軟に事業を運営できます。
事業を継続するうえでランニングコストをどのように抑えるかは事前に考えておいてください。

中古設備・リースを活用する

事業に当たって設備や機械が必要な場合でも費用を抑える工夫はできます。
パソコンや什器などの設備を中古品でそろえれば、新品を購入するよりも初期費用を大きく抑えて開業できます。

また、リースやレンタルを利用すれば、設備を購入せずに必要な機材を利用できる場合があり、市場調査として小規模でスタートするときにも便利です。
初期投資を抑えることで手元の資金に余裕が生まれ、開業後の資金繰りも安定させやすくなります。

補助金・助成金を活用する

自己資金だけで起業資金が不足する場合は、利用できる制度がないか調べてみましょう。
国や地方自治体が提供する補助金・助成金を活用すれば、開業費用の負担を軽減できる可能性があります。

制度によって対象となる経費や申請時期が異なります。
また、事業者が手出ししてから後で給付を受けられる補助金もあるので、事前に条件を確認したうえで計画的に準備を進めてください。

補助金は採択後も経費の適正使用や報告書提出など多くの義務が課されます。採択されてからもスケジュールや報告の管理は徹底してください。

クラウドファンディングを活用する

起業資金を集める方法としてクラウドファンディングも利用できます。
クラウドファンディングを活用すれば、金融機関からの借り入れに頼らずに、幅広い地域から支援を募ることができます。

クラウドファンディングを使うメリットは資金調達だけではありません。
支援者から資金を募る過程で商品やサービスを事前にPRできるため、開業前から顧客の反応を確かめられます。
ただし、リターン(返礼品)の準備や手数料の負担が発生するので、事前に仕組みや費用を確認しておくようにしてください。

無料ツール・サービスを活用する

会計ソフトやオンライン会議ツールなど、無料または低価格で使えるツールやサービスは増えました。
デザインツールやショッピングカートがあるサービスなど業態に応じたものを選べるので積極的に活用してください。

無料のツールを活用し、紙の書類や名刺、印刷物を必要な範囲に絞ることで、細かな出費を抑えられます。
無料ツールでまず事業を始め、売り上げが安定してから有料プランへ切り替える進め方も選択肢のひとつです。

起業費用を見積もる際に気をつけたいポイント

起業費用を正確に見積もれないまま開業すると、後から資金不足に陥る恐れがあります。
起業後に安定して事業を進めるためにも、資金計画で見積もりの精度を高める工夫が欠かせません。
どういったポイントに気を付ければいいのかまとめました。

必要な項目を洗い出してリストアップする

起業費用を正確に見積もるためには、細かく費用を列挙しましょう。
事業に必要な設備やサービスを一つずつ洗い出し、リスト化することで費用の全体像を早い段階で把握しやすくなります。

内装や機材などの初期費用だけでなく、家賃や仕入れなど毎月かかる費用も漏れなく項目に含めなければいけません。
リストアップの段階で項目に抜け漏れがあると後から想定外の出費が発生してしまいます。漏れがないように実際に働く姿をイメージしながら慎重に洗い出すようにしてください。

複数の業者から相見積もりを取る

内装工事や設備の購入では、複数の業者から相見積もりを取り、金額やサービス内容を比較しましょう。
一社だけの見積もりで判断すると、相場より高い金額で契約してしまい開業費用が膨らむおそれがあります。

相見積もりは、交渉材料が得られ、コストを抑えながら必要な設備やサービスを確保しやすくなる点が利点です。
ただし、単純な値段だけで業者を決めるのは危険です。どうしてその価格になるのか、契約にすべての作業が含まれているかなども含めてよく確認してください。

予備費を確保しておく

見積もった費用に対して一定の予備費を確保しておくことで、開業後の想定外の出費にも落ち着いて対応しやすくなります。
開業直後は売り上げが計画どおりに伸びないことも多く、余裕を持った資金計画が事業を続けるうえでの支えになります。

予備費の目安がないまま資金計画を立てると、資金繰りが厳しくなった際に事業の継続が難しくなりかねません。
売上が計画どおりに伸びない期間も想定し、一定期間の運転資金を確保できるようシミュレーションしてください。

起業費用は「いくら必要か」より「何に使うか」が重要

起業費用は業種や事業の進め方によって大きく異なります。単純な金額ではなく、何に資金を使うのかを整理して考えてください。

業種によって必要な資金は大きく異なる

業種によって起業に必要な資金は大きく異なります。パソコン一台で始められる仕事と、店舗や設備が必要な事業とでは、必要な開業資金の水準が大きく変わってくるでしょう。
自分が始めたい事業に近い業種の開業費用の傾向を調べたうえで、必要な資金を具体的に見積もるようにしてください。

設備資金と運転資金を分けて考える

開業資金を検討する際は、店舗や設備にかかる「設備資金」と、開業後の運営に使う「運転資金」を分けて考えます。
設備資金は内装や機械、パソコンなど一度に大きな支出が発生しやすく、開業前にまとめて把握しておかなければいけません。

運転資金は仕入れや家賃、人件費など毎月継続的にかかる費用です。売り上げが安定するまでの期間分はあらかじめ資金計画で見込みを立てておくようにしてください。

創業計画書で資金の使いみちを整理する

創業計画書を作成し、資金の使いみちを整理しておくことで、必要な資金額や調達方法を具体的に把握しやすくなります。
創業計画書には設備資金と運転資金の内訳を具体的に記載して、資金計画の妥当性を客観的に確認してください。

金融機関に融資を申し込む際にも、創業計画書は事業内容や資金計画を伝える重要な資料となります。 早い段階から作成を進めておき、必要に応じて専門家の力も借りましょう。

まとめ|少額起業は増えているが、必要な資金は事業によって異なる

日本政策金融公庫の調査結果からも、費用をかけずに少額で始められる起業は確実に増えています。
一方で、飲食店や美容室、製造業のように設備投資が必要な業種では、相応の資金を十分に準備しなければいけません。
起業を検討する際は「いくら必要か」ではなく「自分の事業には何が必要か」を具体的に考えます。
資金の額に囚われることなく自分のビジネスに必要な資金をどのように調達するか戦略を立てるようにしてください。

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(編集:創業手帳編集部)