会社設立時の住所の選び方とは?自宅・バーチャル・シェアオフィスなどを徹底比較!
会社設立時の住所は「コスト・信用・事業内容」で選ぶのが基本

会社設立において「住所」は、単なる登記上の情報ではなく、事業運営や信用力にも大きく影響する重要な要素です。
自宅住所での登録やレンタルオフィス、バーチャルオフィスなど選択肢は様々ですが、それぞれにメリット・デメリットがあり、安易に決めてしまうと後悔につながるケースも少なくありません。
会社設立時の住所は「コスト・信用・事業内容」という3つの視点から、バランスよく検討することが重要です。
本記事では、それぞれの観点から住所選びのポイントをわかりやすく解説していきます。これから会社設立を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
会社設立時の住所はどれを選ぶべき?まず押さえたい選び方のポイント

会社設立時の住所を選ぶ際に、単に「登記できるか」だけで決めないほうが良いでしょう。
会社設立における「本店所在地」とは、初期費用や信用度、法人口座開設・融資での審査、プライバシー、来客対応のしやすさなど、事業運営に幅広く影響してきます。
そのため、「できるだけコストを抑えて始めたい」「対外的な信用を重視したい」「実際に作業する場所も必要」など、自社の事業内容や今後の運営スタイルに合った住所を選ぶことが大切です。
ここでは、住所を選ぶ前に知っておきたい基本的な注意点と、目的別の選び方を整理していきます。
住所を選ぶ前に知っておきたい基本ルールと注意点
会社の本店所在地は、自宅や賃貸オフィス、レンタルオフィス、シェアオフィス、バーチャルオフィスなど、様々な選択肢から検討できます。
会社法上では比較的柔軟に設定できるものの、実務だと自由に選べるとは限らないため注意が必要です。
例えば、自宅や賃貸物件を使う場合は、賃貸借契約や管理規約で法人登記・事業利用が制限されているケースもあります。
事務所として利用可能な賃貸物件だったとしても、入居者以外の人が多く出入りをする事業の場合、許可が下りない可能性もあります。
また、同一住所・同一商号で登記を行うことはできません。業種によっては許認可の影響で、実態のある事務所が求められる場合もあります。
こうした理由から、登記の可否だけでなく契約条件や業種、審査なども含めて判断することが大切です。
初期費用を抑えたいなら「自宅」
会社設立のコストを少しでも軽減したい場合は、オフィスを別途用意するのではなく、自宅を本店所在地にする方法があります。
オフィスを借りる必要がないため、家賃や敷金・礼金、保証金などの初期費用を抑えやすくなります。
ただし、登記情報に自宅住所が登録されることになるため、プライバシー面に不安がある人は自宅を住所に設定しないほうが良いでしょう。
また、賃貸住宅だと管理規約などを確認し、事務所として利用できるかチェックする必要があります。
将来的な信用面と来客対応の有無なども考慮した上で判断するようにしてください。
信用感や来客対応を重視するなら「賃貸オフィス」
顧客や取引先、金融機関などからの信用感を重視したい場合は、賃貸オフィスを本店所在地に設定するのがおすすめです。
専用のオフィスを設けることによって、事業実態が明確になりやすく、住所としての信頼感も出やすくなります。
法人口座の開設や融資の審査でも説明しやすい傾向にあります。
信用感は得られるものの、家賃に加えて敷金や礼金、保証金、内装工事費、設備費など、固定費は高くなりやすいです。
創業直後からオフィスの家賃などが大きな負担になりかねないため、売上見込みや資金繰りなども踏まえて検討してください。
信用を優先するか、固定費を抑えるかが判断の分かれ目になります。
作業場所も必要なら「レンタルオフィス・シェアオフィス」
本店所在地だけでなく、実際に仕事をするスペースも用意したい場合は、レンタルオフィス・シェアオフィスなどが候補に挙がります。
賃貸オフィスに比べて初期費用も抑えやすく、施設によってはデスクや会議室、ネット環境などが整っているケースも少なくありません。
創業初期に必要な機能が、比較的コンパクトにそろっているのも魅力的です。
特に、外出先での仕事が多い人や、打ち合わせスペースが欲しい人、在宅勤務だけだと不便を感じる人にとっては使いやすい選択肢となります。
ただし、施設によっては法人登記の可否や郵便物の取り扱い、会議室利用の条件が異なるため、契約前の確認は必ず行ってください。
住所利用を低コストで始めたいなら「バーチャルオフィス」
作業場所は別で用意できているものの、会社の住所だけ必要という場合、バーチャルオフィスが1つの選択肢となります。
バーチャルオフィスを本店所在地にすることで、自宅の住所を公開せずに済み、賃貸オフィスやレンタルオフィス、シェアオフィスに比べて月額費用も抑えやすいです。
一方で、銀行や取引先の中には、バーチャルオフィスを設定していることに対して慎重に確認されるケースもあります。
バーチャルオフィスだからといって一律で不利になるわけではありませんが、事業内容やホームページ、契約書、請求書など、事業実態を示せる資料を準備しておくことが大切です。
【比較表】会社設立時に選べる住所の選択肢とメリット・デメリット

会社設立時に選べる住所はそれぞれ特徴が異なり、向いている会社も違ってきます。ここでは、住所の選択肢とメリット・デメリットを一覧にまとめてみました。
| 住所の選択肢 | メリット | デメリット |
| 賃貸オフィス | ・対外的な信用を得やすい ・来客対応がしやすい ・ほかの社員が働くスペースを確保できる |
・初期費用や家賃が高い ・誰でも利用できるわけではない |
| 自宅 | ・初期費用が抑えられる ・通勤時間がない ・契約手続きが簡単 |
・住所が登記情報に公開される ・アパートやマンションだと事務所利用不可物件がある |
| レンタルオフィス | ・賃貸オフィスより費用を抑えられる ・最低限必要な設備が揃っている |
・オプションの追加で割高になる可能性もある ・会社が成長していくにつれてスペースが不足する |
| シェアオフィス | ・賃貸オフィスより費用を抑えられる ・ほかの利用者と交流しやすく、人脈を形成しやすい |
・情報漏洩のリスクがある ・利用したいのにスペースが満席で使えない場合もある |
| バーチャルオフィス | ・賃貸オフィスやレンタルオフィス、シェアオフィスより費用を抑えやすい ・郵便物・電話対応などのサービスも利用できる |
・本店所在地に設定しても高い信用を得られない可能性がある ・郵便物が到着するまで時間がかかる |
賃貸オフィスを本店所在地にする場合の特徴

賃貸オフィスは、賃貸借契約を締結することで借りられるオフィスを指します。
賃貸オフィスのメリット・デメリット
賃貸オフィスを利用するメリットに、対外的な信用を得やすい点が挙げられます。
オフィスを借りている事実によって「きちんと事業に取り組んでいる」ことが伝わり、取引先や金融機関からの信用力につながります。
また、仕事をするスペースを確保できるため、社員が増えたとしても対応でき、応接室や会議室を設けて来客対応がしやすい環境をつくることも可能です。
一方で、賃貸オフィスを借りようとすると初期費用や、高額な家賃が発生する場合があります。
また、不動産会社の審査に通過しないと借りられないため、誰でも自由に借りられるわけではありません。
賃貸オフィスが向いている会社
賃貸オフィスが向いている会社は、取引先・金融機関からの信用力を高めたい会社や、将来的な事業拡大が見込める会社などです。
また、オフィスの内装デザインを会社に合わせて変えたい場合も、賃貸オフィスの利用が向いています。
自宅を本店所在地にする場合の特徴

起業初期に多く見られるのが、自宅を本店所在地に設定するケースです。ここで、自宅を本店所在地にする場合のメリット・デメリットや向いている会社を紹介します。
自宅のメリット・デメリット
自宅を本店所在地にするメリットとして、オフィス費用がかからない点が挙げられます。
賃貸オフィスなどを契約する際には家賃などの費用を用意する必要がありますが、自宅なら新たに家賃が発生することもありません。
また、自宅が仕事をする場となるため通勤する必要がなく、通勤時間がかからない分、朝はゆっくりと過ごせます。
デメリットとしては、本店所在地が自宅だと登記情報に記載され、自宅の住所が広く知れ渡る可能性がある点です。
また、自宅がアパートやマンションの場合、規約に「事務所利用不可」と書かれていれば、本店所在地に設定できないので注意してください。
自宅住所が向いている会社
自宅を本店所在地にすることが向いているのは、1人で事業を始める場合やオンラインで完結するビジネス、小規模なスタートアップなどが挙げられます。
例えば、Web系の仕事はほとんどがオンライン上で完結するため、オフィス・店舗を借りなくても事業を行えます。
レンタルオフィスを本店所在地にする場合の特徴

レンタルオフィスは、サービス利用契約または施設利用契約などを結んで借りるオフィスを指します。
レンタルオフィスを本店所在地に設定した場合、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょう。
レンタルオフィスを本店所在地にするメリット・デメリット
レンタルオフィスのメリットとして、賃貸オフィスに比べて費用を抑えられる点が挙げられます。
レンタルオフィスだと保証金・敷金などの初期費用は少額に設定されている場合も多いです。
月額費用は賃貸オフィスより高めな傾向にありますが、この中に光熱費やインターネット代なども含まれます。
また、賃貸オフィスではデスクやイス、キャビネットなどの備品はすべて用意しなくてはいけません。
しかし、レンタルオフィスならすでにデスクやイスなどの設備に加え、ネット環境も整っている場合があるため、契約後すぐに利用することも可能です。
一方、レンタルオフィスで利便性を高めるためにオプションを追加することもできますが、その分どんどん割高になる可能性があります。
また、会社が成長していくにつれて社員の数も増えていくと、スペースがなくなってしまうおそれもあるため、注意してください。
レンタルオフィスが向いている会社
レンタルオフィスが向いているのは、小規模から事業をスタートさせたい場合や立地の良い場所にオフィスを設けたい場合などです。
アクセスがしやすい立地に賃貸オフィスを借りようとすると家賃が高額になりやすいですが、レンタルオフィスなら費用を抑えられます。
立地の良い場所にオフィスがあると、通勤や外回りの営業もしやすくなります。
シェアオフィスを本店所在地にする場合の特徴

シェアオフィスは、1つのオフィスを複数の企業・個人で共用しているオフィスを指します。
そのオフィスによって異なりますが、フリーアドレス制のオープンスペースになっている施設もあれば、パーテーションが設けられ半個室で利用できる施設などもあります。
シェアオフィスのメリット・デメリット
シェアオフィスを活用するメリットに、賃貸オフィスより費用を抑えられる点が挙げられます。
一般的な賃貸オフィスは契約時に保証金を預けることになりますが、この保証金が家賃6カ月~1年分が相場となっており、かなりのコストが必要となります。
シェアオフィスなら保証金が不要となり、費用を抑えやすいです。
また、1つのオフィスを複数の企業・個人が共有することになるため、ほかの企業や個人と交流する機会も増えます。
そこから新たなビジネスにつながる可能性もあるでしょう。
一方で、自社以外の人が多いことから、場合によっては会社の機密情報が漏洩するリスクがある点には注意が必要です。
また、利用したくても満席になってしまえば使うことができないため、シェアオフィスと別で作業スペースを確保しなくてはいけない場合もあります。
シェアオフィスが向いている会社
シェアオフィスが向いているのは、最低限仕事ができるスペースを確保したい企業や個人事業主などです。
シェアオフィスなら立地も良い傾向にあるため、初期費用を抑えた状態で好立地にオフィスを構えられます。
また、フリーアドレス制のオープンスペースだった場合、話し声などが気になる場合もありますが、話し声などが気にならず作業に集中できるという人にもおすすめです。
バーチャルオフィスを本店所在地にする場合の特徴

バーチャルオフィスは実際にオフィススペースがあるわけではなく、仮想のオフィス空間を借りられるサービスです。
住所を貸すのが目的であり、実際にその場所で作業をすることはできません。
バーチャルオフィスのメリット・デメリット
バーチャルオフィスのメリットは、賃貸オフィスはもちろん、レンタルオフィスやシェアオフィスより費用を抑えやすい点です。
例えば、レンタルオフィスの場合、エリアによっても異なりますが、月額2万円~20万円が相場となります。
バーチャルオフィスなら月額数千円程度で利用することも可能です。
また、郵便物の受取・転送サービスや電話対応などのサービスも充実しています。
一方で、バーチャルオフィスを本店所在地に設定しても高い信用を得られない可能性がある点には注意が必要です。
たくさんの企業が1つの住所を使っていると、取引先や金融機関にバーチャルオフィスであることが判明してしまい、不信感につながる可能性があります。
また、郵便物を希望の場所に転送してもらうサービスもありますが、受け取りに時間がかかってしまうケースもあります。
バーチャルオフィスが向いている会社
バーチャルオフィスの利用が向いているのは、オフィスや店舗を持つ必要がないものの、プライバシーは守りたい場合や、本店所在地だけ用意しておきたい場合などです。
オフィスを別途用意しなくても事業を進められますが、自宅にすると登記情報で住所が公開されてしまいます。
このデメリットを解消するために、バーチャルオフィスの活用がおすすめです。
「レンタルオフィス・シェアオフィス・バーチャルオフィスは審査に落ちやすい」は本当?

「レンタルオフィスやシェアオフィス、バーチャルオフィスは申し込めば誰でも気軽に利用できる」というわけではありません。
レンタルオフィスなどを利用するためには、入居審査を通過する必要があります。
この審査について「落ちやすい」という声もありますが、審査に落ちてしまうのには何かしらの要因があるからだと考えられます。
例えば、審査担当者にどのようなビジネスをしているのか尋ねられても答えられなかったり、誤魔化そうとしたりすると、審査に通らない可能性が高いです。
また、事業経験やノウハウがなかったり、審査担当者に対する態度が悪かったりすると、審査に落ちてしまう可能性があります。
逆に、事業の実態がきちんと明確であり、丁寧に説明をすれば審査に通る可能性は十分にあるといえます。
業種によっては住所の選び方に注意が必要

会社設立時の住所は上記で紹介したように選択肢も幅広いですが、業種によっては選択肢が制限されてしまう場合もあります。
例えば、許認可が必要な事業だと、事務所の独立性や設備、営業実態などが確認されるケースもあります。
そのため、住所はコストや利便性だけで決めるのではなく、自社の業種でどのような住所・事務所形態が求められるのかも確認することが大切です。
許認可が必要な業種は実体のある事務所が求められることがある
建設業や士業、人材関連業、不動産業など、許認可や登録が必要な業種の場合、事業を行う事務所に対して一定の条件を設けている場合もあります。
例えば、建設業許可を取得するには営業所を設置している必要があり、この営業所は必須要件を満たしている必要があります。
-
- 契約締結などの実態的業務を行っている
- 独立した事務室が設定されている
- 経営業務の管理責任者等(常勤役員等)が常勤している
- 営業所技術者等が常勤している
- 電話や机、事務台帳、応接場所が備わっている など
このように、許認可が必要な業種では実体のある事務所を求められる場合があるため、事前の確認が必要です。
自宅やバーチャルオフィスが向きにくいケースもある
自宅やバーチャルオフィスは設立コストを抑えやすくなる点で魅力的ですが、すべての業種に向いているとはいえません。
例えば、自宅だと賃貸借契約や管理規約で事業利用を制限されている場合もあり、バーチャルオフィスは実体のある事務所として認められない場合があります。
特に、来客対応が多い事業や許認可で独立した事務所を求められる事業、対外的な信用を重視したい事業では、自宅やバーチャルオフィス以外の選択肢も含めて検討したほうが安心です。
まとめ・事業内容や将来性を考えて会社設立の住所を選択しよう
会社設立時の住所は賃貸オフィスや自宅、レンタルオフィスなど、様々な選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
向いている会社も異なるため、住所を選択する際には自分が手がける事業・業種に適した場所を選ぶことが大切です。
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(編集:創業手帳編集部)
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