中小企業省力化投資補助金に「一般型」が新設!オーダーメイドの設備・システムを導入可能に
省力化投資補助金の利便性が向上!
2025(令和7)年から、中小企業の省力化投資を後押しする「中小企業省力化投資補助金」が、より使いやすくなります。
カタログに登録された製品の中から、自社に合った省力化製品を選ぶ「カタログ型」では、販売店の登録要件が緩和され利便性が向上します。また、「一般型」という型が新設され、オーダーメイドで省力化設備を導入できるようになる予定です。
今回は、省力化投資補助金「一般型」の概要や活用方法、補助額などを解説します。
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この記事の目次
省力化投資補助金とは
省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業や小規模事業者の設備投資を支援する補助金制度です。IoT機器やロボットなどの省力化製品を導入する際、その費用の一部が補助されます。
事業主からすると、生産性を高めたり省人化を促進するための設備投資を行ったとき、自己負担額を抑えられます。設備投資をする際には、活用を検討するとよいでしょう。
省力化のための投資を通じて、中小企業や小規模事業者の売上・生産性が向上すれば、経済全体によい影響が波及します。雇用の促進や賃上げなどにつながれば、企業・従業員にとってもメリットを感じられるでしょう。
省力化投資補助金の一般型とは
2025(令和7)年より、省力化投資補助金に「一般型」が設けられ、利便性が向上します。一般型の概要や対象者、申請方法などを見ていきましょう。
概要
省力化投資補助金の一般型は、中小企業や小規模事業者の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的としています。
売上拡大や生産性向上、人手不足を解消するためのIoT・ロボットなどのデジタル技術を活用した設備を導入したとき、導入経費の一部が補助されます。
対象者
補助金の対象となるのは「生産・業務プロセス、サービス提供方法の省力化を行う者」です。さらに、以下の基本要件に該当していなければ、補助金の対象とはなりません。
- 労働生産性の年平均成長率が4.0%以上増加している
- 1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上、または給与支給総額の年平均成長率が2.0%以上増加している
- 事業所内最低賃金が、事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準になっている
- 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表している(従業員21名以上の場合のみ)
※最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、 基本要件は1.2.4のみ
補助金を受給したあと、「基本要件2」が未達の場合、未達成率に応じて補助金を返還しなければなりません。また、「基本要件3」が未達の場合は「補助金額/計画年数」の補助金を返還する必要があります(いずれも免除規定あり)。
対象経費
対象経費となる設備投資は、以下のとおりです。
- 機械装置・システム構築費(※1)
- 技術導入費(※3)
- 専門家経費(※2)
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 知的財産権等関連経費(※3)
※1:50万円(税抜き)以上の設備投資を行うことが必須(借用に要する経費は含まない)
※2:上限額=補助対象経費総額(税抜)の2分の1
※3:上限額=補助対象経費総額(税抜)の3分の1
業務の効率化・生産性向上や省人化を進めるための設備投資が、幅広く対象になるといえるでしょう。
補助上限額・補助率
省力化投資補助金の一般型では、補助上限額と補助率が、以下のように定められています。
補助上限額※1 | 補助率 | ||
---|---|---|---|
補助金額が1,500万円まで | 1,500万円を超える部分 | ||
従業員数5人以下 | 750万円(1,000万円) | ▼中小企業 1/2(2/3) ※括弧内は最低賃金引き上げを行う場合 ▼小規模企業者・小規模事業者、再生事業者 |
▼中小企業、小規模企業者・小規模事業者、再生事業者 1/3 |
従業員数6~20人 | 1,500万円(2,000万円) | ||
従業員数21~50人 | 3,000万円(4,000万円) | ||
従業員数51~100人 | 5,000万円(6,500万円) | ||
従業員数101人以上 | 8,000万円(1億円) |
※ 大幅な賃上げを行う場合、()内の値に補助上限額を引き上げ
大幅な賃上げに取り組む事業者は、補助上限額が引き上げられます。従業員のモチベーション向上や人材定着を促進するためにも、積極的な賃上げを検討するとよいでしょう。
なお、「大幅な賃上げ」とは、以下2つの要件を全て満たした場合です。
- 事業計画期間において給与支給総額を年平均成長率6.0%以上増加させる
- 事業計画期間内において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+50円以上とする
大幅な賃上げはあくまでも特例措置で、必須ではありません。ただし、長期的に考えると、賃上げを通じて自社の魅力を高めるメリットは大きいでしょう。
スケジュール
2025年度の第1回公募の申請様式やスケジュールが公表されており、2025年3月19日(水)に電子申請の受付が開始、3月31日(月)17時に申請が締め切られる予定です。
申請受付開始以降のスケジュールについては、順次独立行政法人中小企業基盤整備機構や全国中小企業団体中央会のホームページで公表される予定です。
なお、申請にあたっては「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。IDを取得するまでには時間がかかるため、早い段階でGビズIDプライムアカウントを取得しておきましょう。
申請フロー
実際に補助金の申請受付がスタートしたら、多くの企業から申請が行われると予測されます。スムーズに申請できるように、全体的なフローを把握しておきましょう。
- GビズIDを取得する
- 事業計画書を作成する
- 導入する機械装置やシステムなどを選定する
- 応募申請する
- 相見積もりをして見積書を取得する(2社以上)
- 交付申請する
補助事業実施期間は、交付決定日から18カ月以内です(ただし、補助金交付候補者の採択発表日から20カ月後の日まで)。補助事業実施期間内に、発注・納入・検収・支払など全ての手続きを完了し、実績報告書を提出しなければなりません。
省力化補助金の一般型はどんな時に使える?
2025年度から新設された中小企業省力化投資補助金の「一般型」では、カタログに登録されていない省力化設備を導入できます。オーダーメイド(セミオーダーメイド)の設備・システムなどを導入できるため、自社の状況に合ったピンポイントの事業投資が可能です。
例えば、通信販売事業者が自動梱包機や倉庫管理システムをオーダーメイドで開発・導入し、オンラインショッピングの顧客増加や購買量の拡大に対応するケースが考えられます。
自動車関連部品製造事業者が、微細な部品の検査を効率化するために、自社のニーズに合わせて最新のデジタルカメラやAI技術を搭載した自動外観検査装置をオーダーメイドで発注するときも、「一般型」の特性を活かせるでしょう。
実際に制度を活用するときは、自社が必要としている機器や課題を解決できる機器を導入しましょう。最新の省力化技術を導入することで、業務改善や労働負担の軽減を図れます。
省力化補助金「一般型」と「カタログ型」との違い
省力化投資補助金の「カタログ注文型」と「一般型」は補助率や公募方法などに違いがあるため、確認しておきましょう。
カタログ注文型 | 一般型 | |
補助対象 | カタログに登録されている製品の本体価格や導入経費 | オーダーメイドの設備や複数の汎用設備。機械装置・システム構築費・技術導入費・専門家経費・運搬費・クラウドサービス利用費・外注費・知的財産権等関連経費など |
補助上限額 | 1,500万円(従業員数に応じて設定) | 1億円(従業員数に応じて設定) |
補助率 | 1/2以下 | ・中小企業:1/2 ・小規模・再生事業者:2/3(補助金額が1,500万円を超える:1/3) |
公募方法 | 随時 | 公募回制 |
申請書類 | 販売事業者と共同で申請 | 省力化効果などを説明した事業計画など(カタログ注文型よりも詳細な申請書類が求められる) |
交付決定 | 申請から交付決定まで最短1カ月 | 3カ月程度の審査を経て交付決定となる |
導入できる機器の柔軟性は一般型のほうが優れていますが、手続きは煩雑になりやすい点に注意しましょう。
カタログ型は手続きの負担が軽く、交付決定までの期間が短いメリットがある一方で、自社に合った製品があるとは限りません。
ただし、2025年からカタログ型でも、販売店が招待不要で事務局ホームページから登録できるようになります(販売店の販売実績に基づいて補助上限額が登録される)。事業者にとって、取引のある販売店や地域の代理店から省力化製品を導入しやすくなり、利便性が向上する予定です。
ものづくり補助金との違い
中小企業や小規模事業者の事業投資を促進する補助金制度に、「ものづくり補助金」があります。
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者が行う革新的なサービス開発、生産プロセスの改善などの取り組みに必要な設備投資を支援する制度です。
ものづくり補助金と省力化補助金の一般型を比較すると、以下のような違いがあります。
ものづくり補助金 | 省力化補助金「一般型」 | |
目的 | 革新的なサービス開発や試作品の開発、生産プロセスの改善 | 既存事業の省力化、生産性向上を目的とした設備投資 |
補助上限額 | 最大4,000万円 | 最大1億円 |
補助率 | ・中小企業:1/2 ・小規模・再生事業者:2/3 |
・中小企業:1/2 ・小規模・再生事業者:2/3・補助金額が1,500万円を超える:1/3 |
基本要件 | 「付加価値額」の年平均成長率が3%以上増加 | 「労働生産性」の年平均成長率が4%以上増加 |
なお、過去3年間にものづくり補助金または中小企業等事業再構築促進補助金の交付決定を、合計で2回以上受けた事業主は注意が必要です。
この場合、省力化補助金の採択・交付決定後でも、採択を取り消されたり補助金の返還を求められることがあります。
省力化投資補助金 一般型についてよくある質問
カタログに掲載されている製品を一般型でも申請できますか。
カタログに掲載されている製品については、原則としてカタログ注文型で申請を行う必要があります。
ただし、カタログに掲載されている製品でも、以下に該当する場合は一般型の申請対象となります。
- 事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能などが変わる場合
- 省力化に資する汎用設備を複数組み合わせることで、より高い省力化効果や付加価値を生み出す場合
判断に迷う場合は、中小企業省力化投資補助事業コールセンター(ナビダイヤルは0570-099-660、IP電話からの問い合わせは03-4335-7595)で確認するとよいでしょう。
オーダーメイド設備とは何ですか。
ICT・IoT・AI・ロボット・センサーなどを活用し、単一もしくは複数の生産工程を自動化するための機器です。また、外部のシステムインテグレータ(SIer)との連携を通じて、事業者の個々の業務に応じて専用で設計された機械装置やシステムなどを指します。
なお、汎用設備でもオーダーメイド設備であるとみなされる場合があります。
事業者の導入環境に応じて周辺機器や構成する機器の数、搭載する機能などが変わる場合や汎用設備を組み合わせて高い省力化効果や付加価値を生み出す場合は一般型の対象となる可能性があるため、中小企業省力化投資補助事業コールセンターで確認するとよいでしょう。
「事業計画期間(3~5年)」は任意で決められますか。
任意で決められます。3年・4年・5年の事業計画を立てれば問題ありません。
1人当たり給与支給総額又は給与支給総額の目標を達成できなかった場合、どうなりますか。
達成率に応じて補助金の返還を求められます。
ただし、企業全体として事業計画期間の過半数が営業利益赤字の場合や天災など事業者の責めに負わない理由がある場合は、返還を求められません。
複数種類の導入設備の申請は可能ですか。
可能です。なお、補助対象経費の総額に補助率を乗じた額が補助上限額を上回る場合、補助上限額の範囲内で交付決定されます。
個人事業主は補助対象事業者で申請可能ですか。
可能です。
一般型とカタログ注文型の併用は可能ですか。
同じ補助対象に対しての併用は不可能ですが、別の補助対象に対してであれば可能です。
交付決定前に発生した費用は補助対象になりますか。
交付決定前に発生した費用は補助対象外です。
まとめ:中小企業省力化投資補助金の「一般型」を活用して事業投資を進めよう!
中小企業省力化投資補助金の「一般型」は、自社の実情や業務プロセスに合った省力化機器や省人化機器、生産性を向上するための機器を導入するときに有効活用できます。
補助対象となる経費は幅広く、さまざまな業種で活用できます。オーダーメイドで自社に必要な機器を導入できるため、申請スケジュールを確認したうえで申し込みを検討しましょう。
なお、補助金を受給するためには、労働生産性の成長や賃上げが求められます。具体的に「どのような設備投資をすれば、どのような成長や賃上げが実現できるのか」をシミュレーションしましょう。
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(編集:創業手帳編集部)