【令和8年度版】働き方改革推進支援助成金を徹底解説|5つのコース・変更点・申請方法まとめ

中小企業や個人事業主の働き方改革を支援する助成金


「働き方改革関連法」により、長時間労働の是正や柔軟な働き方の実現に向けた対応が義務付けられています。

対応が遅れると法的ペナルティーのリスクはもちろん、経営環境の悪化は避けられません。「働き方改革推進支援助成金」を使えば、資金に余裕のない中小企業でも働き方改革を実行可能です。

令和8年度は予算が101億円(前年度92億円)に増額され、取引環境改善コースの新設や、割増賃金率引上げ加算など、活用の幅が大きく広がりました。

本記事では、2026年(令和8年)度に拡充された働き方改革推進支援助成金の5つのコースについて、制度の概要から申請手順まで解説します。予算に到達すればスケジュールよりも前に締め切られる可能性もありますので、早めにチェックをしておきましょう。

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この記事の目次

2026年度(令和8年度)の主な変更点


2026年度(令和8年度)の働き方改革推進支援助成金では、制度内容が大きく見直されました。特に、運送業界の2024年問題や人手不足への対応を背景として、対象業種や加算措置が拡充されています。

令和7年度からの主な変更点は、以下のとおりです。

  • 「取引環境改善コース」が新設
    荷待ち時間の削減や取引慣行の見直しなど、運送事業者と荷主が連携して労働環境改善に取り組む場合に活用できます。
  • 割増賃金率引上げ加算が新設
    時間外労働の割増賃金率を引き上げた場合、新たに加算措置が受けられるようになりました。
  • 情報通信業・宿泊業が対象業種に追加
    業種別課題対応コースの対象が拡大され、長時間労働や人手不足への対応が求められる業種でも活用しやすくなっています。
  • 「所定外労働時間の削減」が成果目標に追加
    36協定の見直しだけでなく、実際の残業時間削減実績も評価対象となりました。
  • 予算が92億円から101億円へ増額
    制度拡充にあわせて予算規模も拡大されており、働き方改革支援への注力度合いが高まっています。

令和8年度は、単なる労働時間の削減だけでなく、DX化・人手不足対策・取引環境改善まで含めた「生産性向上型」の支援制度へと強化されている点が特徴です。

そのため、自社の課題に合ったコースを選び、設備投資や制度整備と組み合わせて活用することが重要になります。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革の一端を担っているのが、国が提供する「働き方改革推進支援助成金」です。長時間労働の是正や賃金の見直しといった働き方改革に通じる取り組みに対し、費用の一部を助成します。

個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を選択できる、そんな職場環境を整備することは事業主の責務です。従業員の意欲向上や生産性アップにつなげるためにも、働き方改革に使える助成金の概要を理解しておきましょう。

5つのコースと支給要件


働き方改革推進支援助成金は、取り組み内容によって次の5つのコースが設けられています。

  • 業種別課題対応コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース
  • 団体推進コース
  • 取引環境改善コース(令和8年度新設)

それぞれ目的や活用シーンは異なりますが、基本的にはいずれのコースも「支給対象となる取組」と「成果目標」をそれぞれ1つ以上実施しなくてはなりません。

業種別課題対応コースと労働時間短縮・年休促進支援コースには、複数の成果目標が設定されており、自社の課題や方針に応じた選択が必要です。支給対象となる取組も各コース5〜10個の中から選択制で実施します。

自社に合うのはどのコース?企業タイプ別おすすめ一覧

働き方改革推進支援助成金には5つのコースがありますが、対象となる課題や活用目的はそれぞれ異なります。

「どのコースを選べばいいかわからない」という場合は、まずは自社の課題に近いものから確認していきましょう。

企業・事業者の課題 おすすめのコース 活用例
残業時間を削減したい 労働時間短縮・年休促進支援コース 勤怠管理システム導入、業務改善、年休制度整備
勤務間インターバル制度を導入したい 勤務間インターバル導入コース シフト管理改善、休息時間確保、長時間労働対策
建設業・運送業などの2024年問題に対応したい 業種別課題対応コース 時間外労働削減、週休2日制導入、労務管理改善
荷待ち・荷役時間を削減したい 取引環境改善コース 荷主と連携した取引環境改善、運送効率化
業界全体で働き方改革を進めたい 団体推進コース 共同設備導入、セミナー開催、業界ルール整備
DX化・業務効率化を進めたい 業種別課題対応コース
労働時間短縮・年休促進支援コース
労務管理ソフト、設備導入、自動化機器導入

令和8年度は、単なる労働時間削減だけではなく、人手不足対策やDX推進、生産性向上まで含めた支援制度として拡充されています。

そのため、「どの制度が使えるか」だけではなく、自社の経営課題をどのように改善したいかという視点でコースを選ぶことが大切です。

成果目標の評価ロジックと具体的な設定基準

働き方改革推進支援助成金では、コースや成果目標ごとにや取組が実際の成果として現れたかどうかを申請後に確認します。評価判断の基準は「交付申請時の現状」と「事業実施期間終了後の実績」の比較です。

例えば、時間外労働を削減する成果目標では、36協定の上限時間を見直し、所轄労働基準監督署へ届け出ることが求められます。一方で、所定外労働時間の削減を成果目標とする場合や、割増賃金率引上げ加算の一部要件では、実際の労働時間の削減実績が確認されます。

目標は数値で具体的に設定し、客観的な記録で実績を整理しておくことが大切です。

共通の要件がある3つのコース

働き方改革推進支援助成金の5つのコースのうち、下記3つのコースにはいくつかの共通点があります。

  • 業種別課題対応コース
  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 勤務間インターバル導入コース

共通の要件となるのは「支給対象となる取組」と「賃上げ時の加算額の範囲」です。
それぞれどのような要件が設定されているのか、以下にまとめました。

    支給対象となる取組

    1. 労務管理担当者に対する研修
    2. 労働者に対する研修、周知・啓発
    3. 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
    4. 就業規則・労使協定等の作成・変更
    5. 人材確保に向けた取組
    6. 労務管理用ソフトウェア・労務管理用機器・デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
    7. 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

    ※研修には、勤務間インターバル制度に関するものおよび業務研修も含みます。
    ※原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンの導入は対象となりません。

成果目標に賃上げを加えた場合の加算額

労働者数30人超の場合
賃上げの実施人数 3%以上の賃上げ 5%以上の賃上げ 7%以上の賃上げ
1~3人 6万円 24万円 36万円
4~6人 24万円 48万円 72万円
7~10人 50万円 80万円 120万円
11人~30人 1人あたり2万円
(上限60万円)
1人あたり8万円
(上限240万円)
1人あたり12万円
(上限360万円)
労働者数10人以上30人以下の場合
賃上げの実施人数 3%以上の賃上げ 5%以上の賃上げ 7%以上の賃上げ
1~3人 6万円 48万円 72万円
4~6人 12万円 96万円 144万円
7~10人 20万円 160万円 240万円
11人~30人 1人あたり2万円
(上限60万円)
1人あたり16万円
(上限480万円)
1人あたり24万円
(上限720万円)
労働者数10人未満の場合
賃上げの実施人数 3%以上の賃上げ 5%以上の賃上げ 7%以上の賃上げ
1~3人 6万円 60万円 90万円
4~6人 12万円 120万円 180万円
7~10人 20万円 200万円 300万円

3コースには、支給対象となる取組が7つ設けられており、1つ以上の選択が必要です。成果目標に賃上げを加えた場合、常時使用する労働者数によって設定が異なり、上限額に表の金額が加算されます。

【令和8年度新設】割増賃金率引上げ加算
令和8年度からは、成果目標に割増賃金率の引上げを加えた場合の加算措置も新設されました。引上げ内容は次のとおりです。

引上げ内容 加算額
月60時間以内の時間外労働に係る所定割増賃金率を5%以上引上げ 25万円
月45時間超60時間以内の時間外労働に係る所定割増賃金率を50%以上とし、かつ時間外労働を労働者1人あたり月10時間以上削減すること 75万円

賃上げ加算とは別の加算で、併用も可能です。

対象となる「中小企業者」の定義

働き方改革推進支援助成金の対象者は「中小企業者」です。中小企業者とは、資本金または労働者数が次のいずれかに該当する企業の事業主を指します。

業種 資本(出資額) 常時雇用する労働者
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
病院等 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

いずれのコースで対象となる中小企業者も上記に当てはまる者となります。申請前に確認しておきましょう。

業種別課題対応コース

働き方改革推進支援助成金の「業種別課題対応コース」は、旧適用猶予業種等対応コースに相当します。

2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用された建設業運送業病院等砂糖製造業に加え、令和8年度からは情報通信業宿泊業も対象業種に加わりました。

時間外労働の削減、週休2日制の推進、勤務間インターバル制度の導入などの環境整備に取り組む企業を支援するための助成金です。

対象者

業種別課題対応コースの対象となるのは、次の要件を満たす中小企業事業主です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主であること
  • 交付申請時点で「成果目標」の設定に向けた条件を満たしていること
  • すべての対象事業場において、交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則等を整備していること
  • 労働者数が300人以下、もしくは資本金または出資額が3億円以下(病院等は5,000万円以下)の規模の中小企業事業主であり、業種が「建設業」「運送業」「病院等」「砂糖製造業」「情報通信業」「宿泊業」のいずれかであること

申請要件

申請要件は、3コース共通の「支給対象となる取組」の実施と、業種別課題対応コースに設定されている「成果目標」の達成です。それぞれ1つ以上の実施・達成が必要となります。

令和8年度からは成果目標に「所定外労働時間の削減」が新設されました。労働者1人あたりの削減した 所定外労働時間数 が5時間以上10時間未満で50万円、10時間以上で100万円の削減が対象です。

成果目標は「全業種」が選べるものと「建設業」「病院等」のみが選べるものがあり、全部で7つです。

全業種が選択可能な成果目標
1:月60時間を超える36協定の時間外・休日労働 時間数の削減

すべての対象事業場において、令和8年度内において有効な36協定について、時間外・休日労働時間数を短縮する。月60時間以下、または月60時間超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届出を行うこと

※成果目標(2)とは同時に選択不可

2:所定外労働時間の削減

すべての対象事業場において、交付申請後から事業実施予定期間の終期までの期間でいずれか1箇月における所定外労働時間数を、前年同月を基準として、労働者1人あたり5時間以上削減する

※成果目標(1)とは同時に選択不可

3:年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入

すべての対象事業場において、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること

4:時間単位の年次有給休暇制度と、交付要綱で 規定する特別休暇を1つ以上新規導入

すべての対象事業場において、時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上を新たに導入すること

5:勤務間インターバルの導入

すべての対象事業場において、9時間以上の勤務間インターバル制度の規定を新たに導入すること。ただし、運送業など及び指定病院などは10時間以上となる

建設業が選択可能な成果目標
6:すべての対象事業場において、4週5日以上に所定休日を増加させること
病院等が選択可能な成果目標
7:医師の働き方改革推進に関する取り組みとして以下を全て実施すること
・労務管理体制の構築等(労務管理責任者の設置、管理者層への研修の実施など)
・医師の労働時間の実態把握と管理

支給額

支給額は、以下のうちいずれか低い方です。

  • 成果目標ごとの上限額および賃金加算額・割増賃金率引上げ加算額の合計額
  • 対象経費の合計額×補助率3/4(常時使用する労働者数が30人以下かつ、労務管理用機器等の導入・更新事業を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合は4/5)

上限額は成果目標の達成状況ごとに異なるほか、休息時間数および業種によって以下のように変わります。

  • 成果目標1:最大250万円
  • 成果目標2:最大100万円
  • 成果目標3:25万円
  • 成果目標4:25万円
  • 成果目標5:60万円~170万円(業種により変動)
  • 成果目標6:4週あたりの休日数が1日増加ごとに25万円(最大で100万円まで)
  • 成果目標7:50万円

各出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)

労働時間短縮・年休促進支援コース

働き方改革推進支援助成金の「労働時間短縮・年休促進支援コース」では、働く時間や休暇の取り方を見直す施策に対して助成金が支給されます。

生産性を向上させ「時間外労働の削減」と「年次有給休暇・特別休暇の促進に向けた環境整備」に取り組む企業を支援するための助成金です。

対象者

労働時間短縮・年休促進支援コースの対象となるのは、次の要件を満たす中小企業事業主です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主であること
  • 交付申請時点で「成果目標」の設定に向けた条件を満たしていること
  • 交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けた就業規則等をすべての事業場で整備していること

交付申請とは取り組み計画の承認をもらうための申請で、交付決定後に実際の取り組みをスタートします。

申請要件

労働時間短縮・年休促進支援コースにおいても、共通要件の「支給対象となる取組」の実施と、本コース固有の「成果目標」の達成が必要です。いずれも指定の内容から1つ以上選択し、すべての事業場において実施・達成しなくてはなりません。

成果目標
1:令和8年度内において有効な36協定で時間外・休日労働時間数を短縮する。月60時間以下、または月60時間超え月80時間以下に上限を設定し、所轄労働基準監督署長に届け出ること
2:年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入すること
3:時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入し、かつ、特別休暇(病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、不妊治療のための休暇、時間単位の特別休暇)の規定をいずれか1つ以上新たに導入すること

年次有給休暇の取得促進と就業規則改定の実務ステップ

休暇制度を新たに導入し助成を受けるには、まず全社的な取得状況を把握し、労使間で協議を行うことから始めます。形骸化を防ぐためには、以下のステップでの対応が推奨されます。

  • 現状把握:現在の年次有給休暇の取得状況を把握する
  • 協議:労働者の過半数代表者や労働組合と協議を行い、特別休暇や時間単位年休の運用ルールを決める
  • 就業規則改定・届出:決定した内容を就業規則に明文化し、常時10人以上の事業場は所轄の労働基準監督署へ届け出る
  • 周知・説明:従業員に対して制度内容を説明会などを開催し、取得しやすい環境作りを整える

支給額

支給額は、以下のうちいずれか低い方です。

  • 成果目標ごとの上限額および賃金加算額の合計額
  • 対象経費の合計額×補助率3/4(常時使用する労働者数が30人以下かつ、一部の改善事業を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合は4/5)

ただし、成果目標によって次の上限があり、一部は時間外労働の設定時間によって金額が変わります。

  • 成果目標1:50~150万円
  • 成果目標2:25万円
  • 成果目標3:25万円

各出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

勤務間インターバル導入コース

次に、「勤務間インターバル導入コース」について説明します。勤務間インターバル制度の導入に取り組む企業を支援するための助成金です。

勤務間インターバル制度は、勤務終了後から次の勤務開始までに、一定時間以上の休息時間を設ける制度です。過重労働を防止し、労働者の健康を守るために設けられました。

対象者

勤務間インターバル導入コースの対象となるのは、次の要件を満たす中小企業事業主です。2・3・4については、すべて対象事業場で条件を満たす必要があります。

  • 労働者災害補償保険の適用を受ける中小企業事業主であること
  • 36協定を締結しており、原則として、過去2年間において月45時間を超える時間外労働の実態があること(基本的には1か月45時間を超える時間外労働の実態があれば要件を満たす)
  • 年5日の年次有給休暇の取得に向けて、年休管理簿や就業規則等を整備していること
  • 以下のいずれかに該当する事業場を有すること
     ① 勤務間インターバルを導入していない事業場
     ② 既に休息時間数が9時間以上の勤務間インターバルを導入している事業場であって、対象となる労働者が当該事業場に所属する労働者の半数以下である事業場
     ③ 既に休息時間数が9時間未満の勤務間インターバルを導入している事業場

申請要件

共通要件の「支給対象となる取組」の実施と、勤務間インターバル導入コース固有の「成果目標」の達成が申請要件です。成果目標については、勤務間インターバル制度が適用される労働者の範囲を拡大したり、インターバルの時間を延長したりすることも対象になります。
「成果目標」を1つ以上選択の上、その達成を目指して「改善事業」を実施しましょう。

成果目標
1:新規導入【対象事業主4.①に該当する場合】

新規に所属労働者の1/4を超える労働者を対象とする勤務間インターバルを導入すること。
2:適用範囲の拡大【対象事業主4.②に該当する場合】

対象労働者の範囲を拡大し、所属労働者の1/4または半数を超える労働者を対象とすること。
3:時間延長【対象事業主4.③に該当する場合】

所属労働者の1/4または半数を超える労働者を対象として休息時間数を2時間以上延長して、9時間以上とすること。

など

支給額

勤務間インターバル導入コースにおける助成金の支給額は、以下のとおりです。

  • 対象経費の合計額×補助率3/4(常時使用する労働者数が30人以下かつ、一部の改善事業を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合は4/5)

ただし、休息時間や新規導入に該当する取り組みの有無によって、次の上限があります。

休息時間 新規導入:労働者の1/2超に適用 新規導入:労働者の1/4超1/2以下に適用
9時間以上11時間未満 100万円 50万円
11時間以上 150万円 75万円

各出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)

団体推進コース

団体推進コース」は、ほかのコースと異なり、個々の企業ではなく中小事業主の団体等が助成金の対象です。

団体推進コースは、傘下にある会社の労働条件の改善のために、時間外労働の削減や賃金引上げに向けた取り組みを行う事業主団体等が申請できます。

対象者

助成金の対象となるのは、次の要件を満たす事業主団体等です。

  • 法律で規定する団体等または一定の要件を満たした事業主団体等であり、かつ3事業主以上で構成され、1年以上の活動実績があること
  • 一定の要件を満たした共同事業主であり、かつ10事業主以上で構成され、1年以上の活動実績があること

法律で規定されている団体等には、事業協同組合、商工組合、企業組合などがあります。共同事業主における一定の要件については、労災保険の適用事業主であることや、各法律によるところの事業主に当てはまるどうかが問われるため、詳細を確認しておきましょう。

申請要件

団体推進コースの「支給対象となる取組」と「成果目標」の達成は、いずれも本コース固有の条件です。支給対象となる取組は1つ以上を選択し、成果目標の達成を目指します。

  • 市場調査
  • 新ビジネスモデル開発、実験
  • 材料費、水光熱費、在庫等の費用の低減実験(労働費用を除く)下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整
  • 下請取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整
  • 販路の拡大等の実現を図るための展示会開催及び出展
  • 好事例の収集、普及啓発
  • セミナーの開催等
  • 巡回指導、相談窓口設置等
  • 構成事業主が共同で利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新
  • 人材確保に向けた取り組み
成果目標
構成事業主の2分の1以上に対して、改善事業の取組または取組結果を活用すること

支給額

支給額は、次のいずれか低い方の額です。

  • 対象経費の合計額
  • 総事業費から収入額を控除した額(収入が発生した場合)
  • 助成上限額500万円

各出典:厚生労働省「働き方改革推進支援助成金(団体推進コース)

取引環境改善コース(令和8年度新設)

令和8年度に新設された「取引環境改善コース」は、トラック運送業における時間外労働の削減を目的としたコースです。荷主側の取引慣行を見直し、ドライバーの長時間労働を構造的に解消することを目的としています。

対象者

対象となるのは、荷主または倉庫事業者と、運送事業者を含む荷主集団等です。

代表事業主と構成員を合わせて3者以上で構成され、その中に少なくとも1以上の荷主または倉庫事業者、1以上の運送事業者が含まれていることが要件とされています。また、中小企業事業主の占める割合が、構成員たる運送事業者の 1/2を超えていることなどが必要です。

単に荷主側だけで構成された団体ではなく、運送事業者も含めて取引環境の改善に取り組む体制が必要です。

申請要件

支給対象となる取組と成果目標の達成が申請要件です。支給対象となる取組は1つ以上を選択し、成果目標の達成を目指します。

  • 取引適正化への理解促進等、労働時間等の設定の改善に向けた取引先等との調整
  • 好事例の収集、普及啓発
  • セミナーの開催等
  • 巡回指導、相談窓口設置等
  • 運送事業者等が利用する労働能率の増進に資する設備・機器の導入・更新
成果目標
荷主集団等が事業実施計画で定める改善事業を行い、 構成員である運送事業者の2分の1以上に対して荷待ち・荷役時間及び労働時間の短縮に効果を上げる。

支給額

支給額は、次のいずれか低い方の額です。

  • 対象経費の合計額
  • 助成上限額100万円

各出典:厚生労働省「「働き方改革推進支援助成金(取引環境改善コース)」

働き方改革推進支援助成金のスケジュール・申請期限

申請スケジュールは、団体推進コースとそのほかのコースで以下のように異なります。支給申請後に審査があり、支給・不支給が決定する流れです。

コース名 申請受付期限 事業実施期限 支給申請期限
業種別課題対応コース 2026年4月13日(月)〜2026年11月30日(月)午後5時

(国の予算額に制約されるため、期限前に受付を締め切る場合があり)

交付決定の日から当該交付決定日の属する年度の1月31日(日)

※砂糖製造業の事業主の場合は3月14日(日)

以下のうち早い日

・事業実施予定期間終了日から30日後

・2027年2月5日(金)

※砂糖製造業の事業主の場合は3月19日(金)

労働時間短縮・年休促進支援コース 交付決定の日から当該交付決定日の属する年度の1月31日(日)
勤務間インターバル導入コース
団体推進コース 交付決定の日から当該交付決定日の属する年度の2月14日(日) 以下のうち早い日

・事業実施予定期間終了日から30日後

・2027年2月26日(金)

取引環境改善コース

働き方改革推進支援助成金の申請の流れ

働き方改革推進支援助成金を受け取るには、以下の流れに沿って手続きや取り組みを進めていきましょう。

  • 交付申請書・添付書類を提出する
  • 取り組み事業を実施する
  • 支給申請書を提出する

交付申請書によって交付が決定したのち、取り組み事業の内容が審査され、助成金を受給できるかどうかが決まる流れです。各流れを順に解説します。

1.交付申請書・添付書類を提出する

交付申請書と必要な添付書類を提出します。提出先は管轄の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)で、直接持ち込むか郵送しましょう。事業実施計画を変更したい場合の変更申請も、同様の場所に提出します。

助成金の申請は電子申請も可能です。「jGrants」からGビスIDを取得して利用します。

添付書類についてはコースによって異なりますが、事業実施計画書と、必要経費などがわかる見積書は全コース共通で必要です。そのほか詳細は添付書類については、各コースの申請マニュアルを参照しておきましょう。

2.取り組み事業を実施する

申請書を提出したら労働局で審査が行われます。審査期間は提出書類の内容や補正の有無によって異なりますが、一定の時間を要するため、余裕をもって申請準備を進めることが大切です。

交付が決定したら、提出した事業実施計画書に沿って取り組み事業を実施しましょう。

3.支給申請書を提出する

取り組み事業の終了後、期限内に支給申請書を提出します。要件などを満たしていることが認められれば支給決定が通知され、助成金を受け取ることが可能です。

働き方改革推進支援助成金で注意したい申請時のポイント

働き方改革推進支援助成金は、中小企業でも活用しやすい制度ですが、申請手続きや実施内容に不備があると、助成対象外となる場合があります。

特に、交付決定前の発注や、就業規則の整備不足などはよくある注意点です。スムーズに申請を進めるためにも、事前に確認しておきましょう。

  • 交付決定前に設備導入・発注をしない
    助成対象となるのは、原則として交付決定後に実施した取組です。交付決定前に機器購入や契約を行った場合、助成対象外になる可能性があります。
  • 36協定や就業規則を事前に整備する
    多くのコースでは、36協定の締結・届出や、年5日の年次有給休暇取得に向けた就業規則整備が要件となっています。不備があると申請できないケースもあります。
  • 見積書や証憑類を保管しておく
    支給申請時には、見積書・請求書・領収書・納品書などの提出が必要です。書類不足や記載不備によって差し戻しになるケースも少なくありません。
  • 成果目標は「実績」で判断される
    令和8年度からは、所定外労働時間削減など、実際の労働時間削減実績が確認される成果目標も追加されています。勤怠記録や労働時間管理を適切に行うことが重要です。
  • 予算上限による早期終了に注意する
    助成金は予算に達すると、受付期限前でも終了する場合があります。特に人気の高いコースは申請が集中しやすいため、早めの準備が大切です。

働き方改革推進支援助成金は、単に申請書を提出するだけではなく、制度設計・労務管理・実績確認まで含めた継続的な運用が求められます。

不安がある場合は、社会保険労務士や中小企業診断士などの専門家へ相談しながら進めると安心です。

働き方改革推進支援助成金の活用事例


働き方改革推進支援助成金を活用し、労働状況の改善に成功した企業の事例を紹介します。

労働時間の適性把握に役立てた事例

株式会社寺田鉄工建設では、タイムカードとエクセルを使って労働時間を集計していました。打刻の印字が不鮮明である場合には適切な集計ができず、労働時間の正確な把握に支障をきたしていたそうです。

この課題を解決するため、顔認証システムと労務管理ソフトを導入し、導入費用の一部に働き方改革推進支援助成金を使用しています。

顔認証システムにより、本人が確実に労働時間を記録できるようになりました。また労働時間の推移が把握可能になったことで、時間外労働の削減意識が醸成されています。

生産性の向上に役立てた事例

有限会社中本農園では、土壌分析の業務で発生する作業の停滞期間や、無理のある作業工程が課題でした。働き方改革推進支援助成金を使って土壌分析装置を導入し、作業時間の短縮や工程の無駄を省くことに成功しています。

旧来の方法では検査待ちに2週間ほどかかり、その間は作業が停滞していましたが、装置のおかげで1時間あれば作業を終えられるようになりました。これまで無駄にしていた時間を別の作業に充てられるようになり、労働生産性の向上が見込まれています。

労働者のストレス軽減に役立てた事例

生産効率を高めることで、労働者の心身の負担を減らすことに成功したのが、株式会社森こんです。食品製造業を営む同社では、梱包時の破損や歪みが生じる悩みを抱えていました。

働き方改革推進支援助成金を活用し、作業工程を一元化できる機器の導入に踏み切っています。これによりロスやコストの削減、作業時間の短縮を実現しました。箱の損傷がなくなったことで余計な手間が減り、労働者のストレス負荷が少なくなったと評価しています。

各出典:厚生労働省 石川労働局 雇用環境・均等室「石川県内の働き方改革促進企業

設備投資・DXによる労働環境改善と生産性向上のポイント

生産性の向上は、単に作業をスピードアップすることではなく、付加価値の低い作業を自動化・デジタル化で減らしていくことからが始まりです。

例えば、AIを活用した需要予測や自動発注システムを導入すれば、在庫管理の手間が減り、従業員は接客や企画などの本来注力すべき業務に時間を使えるのです。

また、最新設備の導入は身体的な負担の軽減にも直結します。重労働を機械が補うことで、高齢者や女性を含めた幅広い世代や属性のな人材が活躍できる職場づくりにつながります。人手不足の解消と従業員満足度の向上を同時に実現できるのです。

中小企業による働き方改革への取り組み状況

働き方改革による国内企業の取り組みは、どのように進んでいるのでしょうか。具体的なデータから、取り組み状況を紐解いてみましょう。

コロナ禍からテレワークでの働き方改革が続いている

コロナ禍を機に急速に浸透したのがテレワークです。働き方改革とデジタル化を融合した働き方改革は、アフターコロナの現在も続いています。

2024年度の調査では、テレワークを導入している企業は47.3%でした。2022年の51.7%からわずかに減少したものの、約半数の企業がテレワークを活用しています。テレワーク・オンライン会議の利用状況は20〜30%の割合で利用者がおり、特に40歳代の利用率が高い結果になりました。

子育て中の親が多いと考えられる世代でのテレワーク率の増加は、時代に合った労働環境への見直しが徐々に広まっていることの現れといっていいでしょう。働き方改革推進支援助成金をデジタル化に活用し、社内の改革に役立ててください。

出典:総務省「令和7年版 情報通信白書

まとめ・働き方改革推進支援助成金は中小企業の取り組みをサポートしてくれる

中小企業が働き方改革に取り組むことには、大きな意義があります。従業員の働く意欲を高めたり、能力を発揮できる環境を整えたりすることで、生産性の向上が期待できるのです。

働き方改革に取り組む中小企業を支援する「働き方改革推進支援助成金」には、取り組み課題に応じて5つのコースが設けられています。令和8年度は予算が101億円に増額され、割増賃金率引上げ加算や賃上げ7%加算の新設など、活用のチャンスが広がりました。

自分の会社に合ったコースを選択して、企業の発展に活かしましょう。

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