【2025年最新版】DX推進におすすめの補助金・助成金|中小企業のデジタル化
DXにより、大企業に負けない競争力をつけましょう!設備投資等には国や自治体の補助金・助成金が使えます
中小企業がDXを推進し、競争力を高めるには今がチャンスです。総務省が2021年に実施した調査では、約6割の企業がDXを「実施していない、今後も予定なし」と答えました。
DXは昨今のトレンドではあるものの、実態としては着手していない企業が大半だということです。今率先してDXに取り組めば、競合に対して優位に立てる可能性が十分にあります。
以上を踏まえて今回は、中小企業のDXについて詳しく解説します。DXの定義やメリットから、DX推進に使える補助金・助成金まで、幅広く取り上げるので参考にしてください。
また、創業手帳では、「補助金ガイド」という補助金の基本や最新情報、申請のコツなどを分かりやすく解説したガイドブックを提供しています。ぜひあわせてご利用ください。
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この記事の目次
DXに使える補助金・助成金の一覧
これからDXを推進する中小企業は、以下の補助金・助成金を活用するのがおすすめです。それぞれ内容や要件、給付額などを紹介するので、使えそうなものをぜひ使ってみてください。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、DXやインボイスといった、中小企業や小規模事業者が直面している制度変更等を意識した補助金です。新たな商品やサービスの開発、生産プロセスの改善などのために行う設備投資等が支援されます。
支給を受けるための要件
ものづくり補助金の基本要件は、次の通りです。以下すべてを満たす3〜5年の事業計画を策定し、補助金の返還に関する事項に同意する必要があります。
- 給与支給総額を年率平均2.0%以上増やす
- 事業場内最低賃金を地域別最低金額+30円以上にする
- 事業者全体の付加価値額の年平均成長率を3.0%以上増やす
- (従業員数21名以上の場合)「次世代育成支援対策推進法第12条」に規定する一般事業主行動計画の策定・公表を行う
※いずれも事業計画期間において
申請した時点で、要件を満たす事業計画の策定をしておかなくてはなりません。交付後に策定していないことがわかった場合、補助金の返還を求められます。詳細をよく確認しておきましょう。
補助金額および補助率等
ものづくり補助金の補助金額や補助率等は以下の通りです。
申請枠 | 上限額※カッコ内は大幅賃上げを行う場合 | 補助率 |
---|---|---|
省力化(オーダーメイド)枠 | 5人以上 750万円(1,000万円) 6~20人 1,500万円(2,000万円) 21~50人 3,000万円(4,000万円) 51~99人 5,000万円(6,500万円) 100人以上 8,000万円(1億円) |
中小企業 1/2 小規模・再生 2/3 ※補助金額1,500万円までは1/2もしくは2/3、1,500万円を超える部分は1/3 |
製品・サービス高付加価値化枠 | 5人以下 750万円(850万円) 6~20人 1,000万円(1,250万円) 21~50人 1,500万円(2,500万円) 51人以上 2,500万円(3,500万円) |
中小企業 1/2 小規模・再生 2/3 |
グローバル枠 | 3,000万円 | 中小企業 1/2 小規模 2/3 |
DXに関する補助対象経費 | ||
機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、クラウドサービス利用費、外注費、知的財産権等関連経費
※グローバル枠のみ |
要件・補助額等の出典:「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(第 20 次公募)」
IT導入補助金
IT導入補助金は、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する中小企業・小規模事業者を支援する制度です。卸・小売業から介護業・医療、製造業、宿泊業まで、さまざまな業種・組織形態で利用できます。
会計ソフトや受発注ソフト、パソコンやタブレットといったIT関連の経費について、幅広く補助対象とする制度です。DX推進との相性がよく、システム化を進めるのにもってこいの補助金となります。
支給を受けるための要件
IT導入補助金の主な申請要件は以下の通りです。
- 交付申請の直近月において、事業場内の最低賃金が地域別最低賃金以上である
- gBizIDプライムを取得している(おおむね2週間でID発行可能、料金は無料)
- IPAの「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」または「★★ 二つ星」の宣言を行う
そのほか、各種書類の提出や必要事項の登録、確認事項への同意といった細かい要件が用意されています。枠ごとに必要な要件を理解した上で申請を進めましょう。
補助金額および補助率等
IT導入補助金の補助金額や補助率などは以下の通りです。
申請枠 | 上限額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 1~3プロセス:5万円以上150万円未満 4プロセス以上:150万円以上450万円以下 |
中小企業:1/2以内
最低賃⾦近傍の事業者(※):2/3以内 |
インボイス枠(インボイス対応類型) | インボイス制度対応のソフト: 補助率3/4、4/5以内 50万円以下 補助率2/3以内 50万円超~350万円以下 PC・ハードウェア: PC・タブレット等 10万円以下 レジ・券売機等 20万円以下 |
インボイス制度対応のソフト: 中小企業 3/4以内 小規模事業者 4/5以内 PC・ハードウェア: 1/2以内 |
インボイス枠(電子取引類型) | 350万円以下 | 中小企業:2/3以内 大企業:1/2以内 |
セキュリティ対策推進枠 | 5万円以上150万円以下 | 中小企業:1/2以内 小規模事業者:2/3以内 |
複数社連携IT導入枠 | 基盤導入経費: ・ソフトウェア 50万円以下×グループ構成員数 50万円超~350万円以下×グループ構成員数 ・ハードウェア PC・タブレット等 10万円×グループ構成員数 ・レジ・券売機等 20万円×グループ構成員数 消費動向等分析経費:50万円以下×グループ構成員数 ※基盤導入経費と消費動向等分析経費の合計額の上限は3,000万円 その他経費:200万円以下 |
基盤導入経費: ・ソフトウェア 50万円以下×グループ構成員数 3/4以内(小規模事業者は4/5以内) 50万円超~350万円以下×グループ構成員数 2/3以内(小規模事業者は4/5以内) ・ハードウェア 1/2以内 消費動向等分析経費:2/3以内 その他経費:2/3以内 |
DXに関する補助対象経費 | ||
ソフトウェア購入費(受発注ソフトなど)、クラウド利用料、導入関連費(オプション、導入コンサルティング、マニュアル作成、保守サポート、セキュリティなど)、ハードウェア購入費(PC・タブレット・プリンター・スキャナー及びそれらの複合機器、レジ・券売機等)、その他経費 |
要件・補助額等の出典:「IT導入補助金2025」
新事業進出補助金
新事業進出補助金は、中小企業や小規模事業者の成長につながる新事業の進出や事業転換を支援するための補助金制度です。事業再構築補助金の後継制度となっています。
新市場や高付加価値事業への進出を後押しし、生産性アップや収益向上を図り、従業員に対する賃上げにつなげることが目的です。
支給を受けるための要件
支給を受けるための基本要件は以下の7種類があります。
①新事業進出要件
新事業進出指針に定めている新事業進出の定義に該当する事業を実施している
②付加価値額要件
補助事業を終了した3~5年の事業計画期間に付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増える見込みのある事業計画を策定している
③賃上げ要件
補助事業終了後3~5年の事業計画期間で、「一人当たりの給与支給総額の年平均成長率が事業を実施する都道府県の最低賃金が直近5年間の年平均成長率以上増加させる」「給与支給総額の年平均成長率を2.5%以上増加させる」2種類いずれかの水準以上の賃上げを行うこと
④事業場内最賃水準要件
補助事業が終了した後、3~5年の事業計画期間で毎年事業所内最低賃金が補助事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金よりも30円以上高い水準になっている
⑤ワークライフバランス要件
次世代育成支援対策推進法にもとづく一般事業主行動計画を公表している
⑥金融機関要件
補助事業の実施にあたり、金融機関から資金提供を受ける場合には、資金提供元の金融機関から事業計画の確認を受ける
⑦賃上げ特例要件
補助事業実施期間内に「給与支給総額を年平均6.0%以上増やす」「事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げる」いずれも満たしている
補助金額および補助率等
補助金額および補助率等を表にまとめました。
従業員数 | 補助金額 |
---|---|
従業員数20人以下 | 2,500万円(3,000万円) |
従業員数21~50人 | 4,000万円(5,000万円) |
従業員数51~100人 | 5,500万円(7,000万円) |
従業員数101人以上 | 7,000万円(9,000万円) |
小規模事業者持続化補助金(一般型)
小規模事業者持続化補助金は、これからさまざまな制度変更に直面する小規模事業者を支援するための補助金です。販路開拓や業務効率化を目指してDXを推進する際には、関連経費が補助されます。
なお、この補助金の対象となる小規模事業者の定義は次の通りです。
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
---|---|
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
支給を受けるための要件
小規模事業者持続化補助金の補助対象となるのは、以下3つをすべて満たす事業です。
- 「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取り組み、もしくはそれとあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取り組みである事業
- 商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業
- 補助事業実施期間内に終了する補助事業であること
事業の要件のほか、資本金の規模や過去の補助金の申請歴に関する事項など、補助対象者となる複数の要件も満たさなくてはなりません。詳細は申請予定の公募要領をチェックし、対象に入っているかを調べておきましょう。
補助金額および補助率等
小規模事業者持続化補助金の補助率および補助上限額は、以下のように定められています。いずれか1つの枠組みで申請することが可能です。
申請枠 | 上限額 | 補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 50万円 | 2/3
※賃金引上げ特例のうち赤字事業者については3/4 |
インボイス特例 | 50万円上乗せ | |
賃金引き上げ特例 | 150万円上乗せ | |
DXに関する補助対象経費 | ||
機械装置等費、広報費、ウェブサイト関連費、展示会等出展費(オンラインによる展示会・商談 会等を含む)、旅費、新商品開発費、借料、委託・外注費 |
要件・補助額等の出典:商工会議所地区 小規模事業者持続化補助金事務局「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第 17 回公募 公募要領」
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを後押しするための制度です。正社員化や賃上げなどの取り組みを実施した企業に対して助成がなされます。
DX推進のために人員体制を強化する、もしくはその他補助金の要件を満たすために賃上げを行うといった場合にご活用ください。
支給を受けるための要件
キャリアアップ補助金の支給対象となるには、以下の要件を満たす必要があります。(全コース共通)
- 事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いている
- キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長へ提出した事業主である
- 各コースの対象労働者に対する労働状況・勤務状況・賃金の支払い状況等を明らかにする書類により、賃金の算出方法を明示できる
- 本助成金の趣旨を十分理解し、趣旨に沿った取組を実施している事業主である
共通要件を満たしたら、各コースに明示されている助成対象の概要や対象者などを参照しておきましょう。コースによって助成を受けられるシーンが異なるので、DX推進の際は各趣旨に沿った施策を講じることがポイントです。
特に、2023年10月から新設された社会保険適用時処遇改善コースについては、コース内で複数のメニューが用意されています。メニューによって助成額ごとの細かな要件が異なるため、厚生労働省のホームページなどから入念に確認しておきましょう。
助成金額および加算額等
対象を中小企業とした場合のキャリアアップの助成金額は、コースごとに以下のように決まっています。正社員化コースおよび賃金規定等改定コースにおいては「加算額」が設けられており、講じた措置内容に応じて助成金が増えるのも特徴です。
申請枠 | 上限額 |
---|---|
正社員化コース | いずれかの雇用形態から正社員化し、12カ月雇用した場合: 有期雇用 80万円 無期雇用 40万円 (いずれも1人あたり) |
賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者等の基本給を3%以上増額・適用した場合: 3%以上4%未満 4万円 4%以上5%未満 5万円 5%以上6%未満 6万5,000円 6%以上 7万円 (いずれも1人あたり) |
賃金規定等共通化コース | 1事業所あたり 60万円 |
賞与・退職金制度導入コース | 賞与または退職金制度を導入した場合: どちらかのみ導入 40万円 どちらも導入 56万8,000円 (いずれも1事業所あたり) |
社会保険適用時処遇改善コース | 手当等支給メニュー: 1、2年目 6カ月ごとに10万円×2回 3年目 6カ月で10万円 労働時間延長メニュー: 6カ月で30万円 (いずれも1人あたり) |
要件・助成金等の出典:厚生労働省「キャリアアップ助成金」
DXに使えるその他の補助金・助成金一覧
そのほか、行政組織や地方自治体が独自に実施している補助金・助成金もDX推進に役立てることができます。
- DX推進助成金
- 需給最適化に向けたエネルギーマネジメント推進事業(東京都)
- 成長型中小企業等研究開発支援事業
- 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業(東京都)
- 山形県中小企業まるっとサポート補助金(山形県)
全国各地には、DX推進に活用できるさまざまな施策があります。気になる方は、お住まいの自治体へお問い合わせください。
DX推進に使える税制度
補助金や助成金だけがDXに役立つ制度ではありません。クラウド化の投資にあたり、税額の控除を受けられる「デジタルトランスフォーメーション投資促進税制」があります。
本制度では、特定の設備投資に際する法人税にて、特別控除および特別償却が適用可能です。適用可能な設備投資とは、クラウド技術を用いたシステム移行の繰延資産や、ソフトウェアなどが該当します。
税額控除は内容に応じて3%〜5%、特別償却は30%で、設備投資総額の上限は300億円です。確定申告のおりに計算した金額を反映するほか、明細書等の添付も必要となります。
補助金・助成金を使ったDX推進の流れ
補助金・助成金を活用してDXを行う流れは、以下のようになることが多いです。
- 事業計画書等を作成して、補助金・助成金に応募する
- 審査後、採択となれば交付申請をする
- 補助対象事業(DX)に取り組む
- 事業終了後、実績報告書を提出
- 確定検査ののち、支給額が確定する
- 請求書等を提出し、支給額が振り込まれる
このように、DXの取り組みを始めるのは、補助金の交付が決定された後になるのが一般的です。決定前に着手された事業については、補助の対象にならない場合があるので気をつけましょう。
また支給を受けるには、事業終了後の検査に合格する必要があります。検査では、経費の用途および金額が、公募要領等に見合っているかが問われます。
DXに補助金・助成金を使う場合の注意点
DX推進に補助金・助成金を活用しようとお考えの方は、以下の内容に注意してください。
支給は原則「後払い」となる
補助金や助成金は、原則として「後払い」です。対象事業の終了後、検査や審査を経て、支給が行われます。
DXの取り組みを行うタイミングでお金がもらえるわけではないため、事業にかかる経費を一旦は自力で調達する必要があります。資金調達には融資を利用するのが一般的ですが、資金繰りに無理が出ないように気をつけなければなりません。
なお、融資を受けるには通常、3週間〜1ヶ月半程度の時間がかかるので、余裕を持って準備に取りかかるのがおすすめです。補助金を申請する期日に間に合わないと、事業を始められない場合もあるため気をつけましょう。
事務処理にかかるコストも加味しておくべき
補助金・助成金は、税金を財源としていることもあり、支給にいたるまでに多数の書類の提出を求められます。事務処理は比較的わずらわしいものになると予想されるので、十分な時間と労力を確保しておくことが必要です。
事務処理がずさんだと、支給が受けられない恐れもあるので気をつけてください。場合によっては、人員体制を改めたり、通常業務が落ち着くタイミングを見極めたりといった工夫をするのも良いでしょう。
補助金と助成金の違いを知って申請する
補助金と助成金には、支給の受けやすさに違いがあります。
補助金は採択件数や金額に上限があり、申請した企業すべてが採択されるわけではありません。ものづくり補助金(16次)の場合、全枠における採択者数は、5,608者中2,738者でした。採択されたのは、申請者のおよそ半分となっています。
助成金の場合、基本的に要件を満たしてさえいれば給付を受けられます。そのため、より確実に給付を受けたい場合には、助成金を選ぶのもおすすめです。
とはいえ、補助金と助成金の区別は、必ずしも明確ではありません。「補助金のような助成金」も存在するので、基本は補助金か助成金かにこだわらず、補助金額や要件を比較して選ぶのが良いでしょう。
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?中小企業における意義と背景
DXとは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略で、直訳すれば「デジタルな変革」です。要するに、デジタルな側面から会社を改革する取り組みのことを指します。
DXとは?
経済産業省が用いるDXの定義は以下の通りです。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や
社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務その
ものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
出典:経済産業省「『DX推進指標』とそのガイダンス」
この定義のポイントは、「データとデジタル技術の活用」「製品やサービス、ビジネスモデルの変革」「競争上の優位性を確立」の3つです。
DXは、単にITシステムを導入することにとどまるものではありません。導入したITシステムによって、商品・サービスないしはビジネスモデル全体が改良され、企業の競争力が上がる。ここまで達成されてはじめてDXだといえます。
DX推進に必要な5つの要素
DX推進のガイドラインを含む経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」によると、DXには以下5つの要素が必要となります。
- ビジョン・ビジネスモデル
- 戦略
- 組織づくり・人材・企業文化に関する方策
- ITシステム・デジタル技術活用環境の整備に関する方策
- 成果と重要な成果指標
DXを推進するには、どのような機器・システムを導入するかを考える前に、ビジョンや戦略、方策などを決めることが重要です。また成果についての明確な指標を定め、DXが成功したことが客観的に確かめられるようにしておく必要もあります。
ちなみに上記の各要件で認定基準をクリアし、審査に合格すれば、「DX認定制度 認定事業者」となることが可能です。認定事業者は、情報処理推進機能(IPA)のホームページで公表され、DX認定制度のロゴマークが使えます。
DXの施策例
DX推進を目指す中小企業は、具体的にどのようなことをすべきなのか、過去の成功事例をもとに見てみましょう。
例えば、経済産業省が選定した「DXセレクション2025」でグランプリに輝いた株式会社後藤組の場合、以下のようなことに取り組んでいます。
- 社内情報のデジタル化
- 部、課、チーム単位で毎月1つのアプリ制作を義務付け
- 会議資料を作成するアプリの導入
- 作業工程表のアプリ化
- アプリを使った危険予知活動
- 生コン車トラッキングアプリ
- マニュアルやチェックリストなどのDX化
株式会社後藤組では、DXツールを使い、慣れるためにも毎月1つのアプリを制作することを義務化しました。
その後、年に1回DX大会を開催して、それぞれのチームが作成したアプリを紹介する機会を設け、投票したうえで最優秀チームを発表し、金一封を贈る取り組みを実施しています。
DXツールを使わざるを得ない仕組みづくりをした結果、DXツールに対する抵抗感をなくすことに成功しています。
DXツールに慣れた後には仕事を楽にするアプリの制作を従業員に対して求め、その結果現場から次々とアイデアが生まれ、様々な種類のアプリ制作に成功しました。
参考:経済産業省「DXセレクション2025」
このように、中長期的なビジョンを定めたうえで、作業の自動化やデータの蓄積などの戦略・方策を推進するのが、DXの典型です。
そのほか、同セレクションで準グランプリに選ばれた3社では、「AI(モデリングツール)を活用した早期賃貸付けプロジェクト」「取引オンライン化、協力会社とのクラウドによる共有」「CISO(情報セキュリティ管理責任者)の配置」などが行われています。
DXに中小企業が取り組むべき理由【DXのメリット】
中小企業にDX推進が求められるのは、第一としてDXにメリットが多いからです。DXを実現することで、中小企業は以下のようなメリットを得られます。
- 生産性が向上することで利益が上がる
- 効率化の実現によってコストを削減できる
- 新しい商材・サービス、ビジネスモデルを開発するきっかけになる
- テレワークや電子化などで働き方改革につながる
- DX推進事業者として企業の知名度が上がる
DXでは、データやデジタル技術を活用することによって、業務の生産性アップや効率化がもたらされます。それが売り上げやコスト削減に好影響を与え、利益が向上するでしょう。
そもそもDXは、商品やサービス、ビジネスモデルの開発、競争力の強化を目的とするものなので、DXの推進はそれの実現も意味します。
さらに経済産業省の「DX認定制度」や「DX Selection」をはじめ、DXを推進する中小企業を公表・表彰する取り組みも多々あります。そのため、DXに成功した企業は、知名度の向上やイメージアップといった恩恵を受けることも可能です。
DXの必要性として「DXを推進しない企業は生き残れないかもしれない」ということもいえます。昨今は、データやデジタル技術を活用した革新的なビジネスがどんどん成功するようになっています。もはやアナログ業務やレガシーシステム(古いシステム)だけで競争するのは難しいといえるでしょう。
この先10年、20年を見据えて企業の生存率を高めるために、DXに取り組むのもおすすめです。
DXにかかる費用
DXにかかる費用としては、以下のようなものが挙げられます。
- ITツールの導入費用
- 新規プロジェクトの立ち上げ・運用にかかる諸経費
- IT人材の教育や採用にかかる人件費
- ITコンサルタント等の専門家を招聘するのにかかる経費
- DXに関する研究や市場調査にかかる経費
これらの総額がどれほどの金額になるかは、推進するDXの規模によって異なります。新しく業務システムを開発したり、ビジネスモデルを根本的に変えたりするのであれば、数百万円〜数千万円の規模になるでしょう。
一方、月額数千円で使えるクラウド型のITツールもあることから、限られた予算の範囲内で数万〜数十万の小規模なDXを目指すことも可能です。また費用負担は、後述の補助金・助成金をうまく活用することで、大きく軽減できます。
DXの費用相場と実際の費用負担
DX推進にかかる費用は、取り組み内容や企業の方針などによってさまざまです。
東京商工リサーチが2023年に行ったアンケート調査によると、DXに取り組んだ中小企業のうち、DX投資の予算は「500万円未満」が約4割となっています。また、今年度のDX投資の予算はいくらかという質問には「100万円未満」との回答が18.50%、「100万円以上500万円未満」が22.77%という結果です。
結果から、おおよそ500万円までをDX予算として見込んでいる中小企業が多いことがわかりました。
補助金や助成金を使った場合の実際の負担額は、制度ごとに設けられている上限額や割合によって異なります。給付金額の上限を超えた分は支給されませんし、補助率・助成率といった割合にも注意が必要です。
一般的な補助率・助成率を考慮すると、費用の半分ないし3分の2ほどが給付によってまかなわれるケースが多くなるでしょう。その場合、予算500万円であれば250万円〜300万円が給付額の目安となり、残りが自己負担額になります。
まとめ・補助金や助成金を活かして中小企業のDXを推進しよう
DXとは、データやデジタル技術の活用により、商品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争力を高めることです。推進すれば、生産性向上やコスト削減が見込まれるだけでなく、自社のイメージアップにもつながる可能性があります。
DXの推進には、ものづくり補助金やIT導入補助金、事業再構築補助金などを活用できます。DXにかかる経費の多くを国や自治体に負担してもらえるので、コストを抑えて会社を変革することが可能です。
DXを推進し、競合より優位に立つには、大半の企業がまだDXに踏み切っていない今がチャンスだといえます。これを機会にぜひ、補助金・助成金を活用したDXについて、前向きに検討してみてください
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(編集:創業手帳編集部)
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