【2026年4月・10月】労働施策総合推進法が改正!主なポイントと企業が準備すべきことを解説

労働施策総合推進法が2026年4月・10月に段階的改正


労働施策総合推進法は、働き方改革の一環として2020年に施行された法律であり、労働者が生きがいをもって働ける社会の実現を目的としています。
労働施策総合推進法の中で特に注目されているのは、ハラスメントを防ぐ措置の義務づけです。大企業は2020年、中小企業は2022年から対応が求められてきました。
そのような労働施策総合推進法は、2025年6月に成立・交付され、2026年から施行されます。これまでと具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

そこで本記事では、労働施策総合推進法の改正ポイントと、改正に向けて企業が準備すべきことを解説していきます。

この記事の目次

労働施策総合推進法の改正とは?2026年に何が変わるのか


労働施策総合推進法は、主に「ハラスメント対策の強化」「女性活躍の推進」「治療と仕事の両立支援の推進」の3つのポイントを中心に改正が行われます。
まずは、改正の背景や段階施行される改正内容、対象企業と従業員数ごとの注意点について解説します。

改正の背景

労働施策総合推進法が改正される背景には、社会問題となっているカスタマーハラスメントの実情と、多様な労働者がより働きやすい環境への整備が挙げられます。

東京都産業労働局が実施した「カスタマーハラスメントに関する都民意識調査」では、就業中に自分がカスハラの被害に遭った、または見聞きしたことはあるかという質問に対し、「被害に遭った」が16.8%、「見聞きした」が36.3%、「両方ある」が6.5%という結果が出ています。
カスハラの被害にあった経験がある人と見聞きしたことがある人の割合が、約6割もあるということです。
カスハラは暴行・脅迫などがあれば刑法に該当しますが、刑法にならない迷惑な言動・過度な要求などに対して規制できる法律がありませんでした。
そのため、労働施策総合推進法の改正で対策の義務化を定めたのです。

また、2020年に施行された労働施策総合推進法ですが、それから5年以上が経過し、より職場環境が複雑化し、多様な労働者が働く中で新たなトラブルも出ています。
こうしたトラブルを回避し、多くの労働者にとって働きやすい職場環境となるように改正が行われます。

2026年4月・10月に段階施行される主な改正内容

2026年の改正は、一度にすべて施行されるのではなく、4月と10月の2段階で施行されます。
4月には治療と仕事の両立支援や情報公表に関する対応、10月にはカスタマーハラスメント対策や求職者へのセクハラ防止など、企業に求められる実務対応が広がる点を押さえておきましょう。

どの企業が対象?従業員数ごとの注意点

労働施策総合推進法は、基本的にすべての企業が対象となります。
特にカスタマーハラスメント対策の義務化や求職者などに対するセクハラ対策の義務化は、規模を問わず対策の強化が必要です。
ただし、女性活躍の推進に向けた改正内容における「情報公表の必須項目の拡大」は、これまで従業員数301人以上の企業を対象としてきました。
しかし、改正後は101人以上の企業に公表が義務づけられます。また、従業員数100人以下の企業も、努力義務の対象となります。
対象となる企業の従業員数に変更があるため、自社が当てはまるか必ず確認してください。

【2026年4月から】労働施策総合推進法の改正内容


上記でも紹介したように、労働施策総合推進法の改正は2026年4月と10月に段階的に施行されます。まずは4月に改正された内容について紹介します。

「治療と仕事の両立支援」の努力義務化

2026年4月1日から、企業の努力義務として「治療と仕事の両立支援」が位置づけられました。
「治療と仕事の両立支援」とは、病気を抱える従業員が治療と仕事を両立し、その人らしい働き方を続けられるよう支援することを指します。

元は自主的な取組みの促進を目的としており、推奨はするものの法的義務は設けられていませんでした。
しかし、今回の改正によって適切かつ有効な措置を図ることを目的とし、努力義務化されることになりました。

両立支援の対象となる特定の疾患はありません。病名は限定せずに、医師が反復・継続して治療が必要となる疾患が対象となります。
厚生労働省では具体例として、以下の疾患を挙げています。

  • がん
  • 脳卒中
  • 心疾患
  • 糖尿病
  • 肝炎
  • その他難病・メンタルヘルスの不調 など

男女間賃金差異・女性管理職比率の情報公表を義務化

女性の活躍に関する取組みの推進を図ることを目的に、男女間の賃金差異や女性管理職比率の公表義務の対象が拡大されました。
改正前だと企業規模が301人以上で、男女間賃金差異に加え、2項目以上の公表、101人~300人規模の企業は1項目以上を公表することが義務づけられていました。
しかし、改正後は301人以上の企業の場合、男女間賃金差異と女性管理職比率に加え、2項目以上の公表、101人~300人の企業は男女間賃金差異と女性管理職比率に加え、1項目以上の公表が義務づけられています。

初回は、施行後最初に終了する事業年度の実績を公表することになります。なお、次の事業年度の開始からおおむね3カ月以内に公表しなくてはなりません。
例えば、2027年3月末で事業年度が終了する企業の場合、2027年6月末までに公表する必要があります。
また、その後もおおむね1年に1回以上は、最新の数値を公表していかなくてはなりません。

【2026年10月から】労働施策総合推進法の改正内容


2026年10月からは、「カスタマーハラスメント対策の義務化」と「求職者などに対するセクハラ対策の義務化」が施行されます。
主にどのような内容となっているのか、事前に確認しておきましょう。

カスタマーハラスメント対策の義務化

事業主は雇用管理上の措置義務としてカスタマーハラスメント(カスハラ)対策を講じる必要があります。
この義務化に基づき、職場におけるカスハラがどういったものか定義されています。
主に、以下3つの要素をすべて満たすものが、「職場におけるカスハラ」として認められます。

  • 顧客などの言動であること
  • 雇用する労働者が従事する業務の性質やその他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えた言動であること
  • 労働者の就業環境が害されるもの

なお、対面での苦情だけでなく、電話やSNSなどインターネット上で行われるものも「職場におけるカスハラ」に該当する場合があります。

社会通念上許容される範囲を超える言動”とは?

上記の要件に「社会通念上許容される範囲を超えた言動」とありますが、主に言動の内容が契約内容的にも相当性を欠くものや、手段・態様が相当ではないものを指しています。

【言動の内容が社会通念上許容される範囲を超えているもの】
  • 要求に理由がない、または商品・サービスとまったく関係がない要求をしてくる
  • 契約などで想定しているサービスを著しく超える内容の要求
  • 対応が著しく困難、または対応が不可能な要求
  • 不当な損害賠償請求
【手段・態様が社会通念上許容される範囲を超えているもの】
  • 暴行・傷害などの身体的攻撃
  • 脅迫や中傷、名誉毀損、侮辱、暴言、土下座の強要などの精神的攻撃
  • 威圧的な言動
  • 継続的・執拗な言動
  • 不退去や居座り、監禁など拘束的な言動

社会通念上許容される範囲を超えているかどうかは、言動の目的や労働者の問題行動の有無、経緯や状況、業種・業態など、あらゆる要素を総合的に考慮する必要があります。

カスハラ防止に向けて取り組むべき措置

事業主は、カスハラ対策として以下の措置を講じる必要があります。

  • カスハラ対策に関する方針などの明確化やその周知・啓発
  • 相談体制の整備
  • 実際にカスハラ被害に遭った際の迅速かつ適切な対応
  • 対応の実効性を確保するのに必要なカスハラを抑止するための措置
  • その他、併せて講ずべき措置(プライバシーの保護など)

例えば、カスハラに対して毅然とした態度で対応し、労働者を保護する旨の方針を社内報やパンフレット、社内ホームページなどに掲載・配布をしたり、経営者のメッセージとして広く社内に発信したりする必要があります。
相談体制の整備については、カスハラについて相談できる窓口を設け、担当者がその相談に対して適切に対応できるようにすることが大切です。

また、カスハラに関する相談があった場合、事業主は迅速かつ正確に事実関係を確認し、さらに適正な措置を行ったり、再発防止に向けた措置を講じたりする必要があります。

事業主・労働者それぞれの責務

カスハラ対策の強化において、事業主と労働者はそれぞれ以下の事項に努めることを責務としています。

【事業主の責務】
  • カスハラ問題に対して労働者の関心・理解を深める
  • 労働者が、ほかの事業主が雇用する労働者に対して言動に必要な注意を払うよう、研修の実施やその他必要な配慮をする
  • 事業主がカスハラ問題への関心と理解を深め、ほかの事業主が雇用する労働者に対し、言動に必要な注意を払う
【労働者の責務】
  • カスハラ問題に対する関心・理解を深め、ほかの事業主が雇用する労働者への言動に必要な注意を払う
  • 事業主が講ずる雇用管理上の措置に協力する

自社でカスハラ対策を強化しているにも関わらず、事業主や自社が雇用する労働者が、ほかの職場でカスハラにつながる言動を行うのはNGです。
事業主と労働者の責務として、カスハラ問題に関心・理解を深め、プライベートでカスハラにつながる言動をしないよう、注意する必要があります。

カスハラ防止に向けて望ましいとされる取組み

労働施策総合推進法の改正では、カスハラから労働者を守るために、事業主が取り組んだほうがいいとされる取組みも挙げられています。
例えば、カスハラの原因・背景となる要因を解消するための取組みです。対応力を向上させるための研修を実施し、自社の商品・サービスに対する理解度も深めていきます。

また、労働者や労働組合などから参画を得ながら、アンケート調査などを実施して運用状況の把握と必要な見直しを検討することも望ましいです。
さらに、同業種・業態などの複数の事業主が一体となってカスハラ対策に取り組んだり、被害の実態・業務の特性などを踏まえ、各状況に合わせて必要な取組みを進めたりすることも含まれます。

これらはあくまで努力義務とされていますが、カスハラによる被害を減らすためにも重要な取組みといえるでしょう。

求職者などに対するセクハラ対策の義務化

カスハラ対策と同じく、労働施策総合推進法の改正では、求職者などに対するセクハラ対策も義務化されます。
ここでいう「求職者など」とは、企業の求人に応募した人だけでなく、就職説明会やOB訪問、インターンシップ、教育実習・看護実習などを受けている人も対象です。
例えば、インターンシップに参加した際に、労働者が求職者に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行った結果、求職者は苦痛に感じて活動に手がつけられなくなったり、OB訪問の際に性的な関係を求められたりした場合、求職者などに対するセクハラに該当します。

求職者などに対するセクハラ防止に向けて取り組むべき措置

求職者などに対するセクハラを防ぐために、事業主は以下の措置を講じる必要があります。

  • 事業主の方針などの明確化やその周知・啓発
  • 相談体制の整備
  • セクハラ発生後の迅速かつ適切な対応
  • その他、併せて講ずべき措置(相談者のプライバシーの保護など)

ほかのハラスメント対策とは異なり、事業主は労働者だけでなく求職者に対しても周知・啓発を行っていく必要があります。
また、相談窓口なども求職者が利用できるものを用意し、あらかじめ周知させなくてはなりません。

事業主・労働者それぞれの責務

セクハラ対策についても、事業主だけでなく労働者にも責務がともないます。

【事業主の責務】
  • 求職者などのセクハラ問題に対して雇用する労働者の関心・理解を深める
  • 労働者が求職者に対する言動に注意を払えるよう、研修やその他配慮を実施する
  • 事業主自らもセクハラ問題に対する関心・理解を深め、ほかの事業主の労働者に対する言動にも注意する
【労働者の責務】
  • 求職者などのセクハラ問題に対する関心・理解を深め、言動に注意を払う
  • 事業主が実施する雇用管理上の措置に協力する

求職者などに対するセクハラ防止に向けて望ましいとされる取組み

求職者などに対するセクハラを防ぐために、望ましいとされる取組みとして、大学などのキャリアセンターから求職者へのセクハラに関する相談や情報提供があった際に、大学側と連携を取り、適切な対応を行うことが挙げられます。
また、求職者からインターンシップなどでセクハラの相談があった場合、相談内容を踏まえてセクハラの防止措置を参考にしながら、必要に応じて適切な対応を取ることも望ましいです。

なお、求職者などのハラスメント対策として、事業主はセクハラだけでなくパワハラ対策も実施すべきとしています。
さらに、求職者に対して顧客からカスハラを受ける可能性もあるため、セクハラ対策と併せて防止措置に取り組むべきでしょう。

労働施策総合推進法の改正に向けて企業が取り組むこと


労働施策総合推進法の改正により、4月からはすでに「治療と仕事の両立支援」の努力義務化や情報公表の義務化が始まっており、10月からカスハラ対策と求職者などに対するセクハラ対策が義務化されます。
こうした改正内容に合わせて、どのような取組みを行っていけば良いのか解説していきます。

企業としての方針・姿勢を定める

まず取り組むべきこととして、企業としての方針・指針を定めることが挙げられます。「ハラスメントは絶対に起こさせない、万が一起きた際には容認しない」など、姿勢を明確に打ち出し、社内外に向けて周知させることが重要です。
具体的な取組みとしては、例えば、ハラスメントに対する方針を就業規則・社内規定にも反映させたり、社員アンケートや相談・苦情対応の状況を踏まえてPDCAサイクルを回したりするなどです。

社内制度・採用プロセスを見直す

ハラスメント対策の義務化に向けて、社内制度や採用プロセスの現状を把握し、必要に応じて見直すことも大切です。
例えば、面接官が求職者へのハラスメントにつながりかねない質問をしないようガイドラインを策定したり、求職者向けの相談窓口を設置したりするなどが挙げられます。
こうした対策を講じることで、求職者などが安心して応募・参加できる環境を作っていきます。

マニュアルを作成する

万が一トラブルが発生した際にすぐ対応できるよう、事前にマニュアルを作成することも必要な取組みの1つです。
例えば、カスハラに対応するためのマニュアル作成時に、カスハラに当てはまるトラブルが発生した際は、管理監督者へ速やかに報告したり、顧客などに対して労働者1人だけで対応する状況を避けるようにしたり、暴行・傷害など犯罪行為といえる言動をされたら警察に連絡するなどを含めます。

ただし、それぞれの業種・職場によって状況は大きく異なるため、各業種・職場に合ったマニュアルを作成してください。

相談窓口を設置する

マニュアルを作成し、研修を実施して周知させればいいというわけではありません。例えば、カスハラを受けた場合、従業員への精神的なダメージは大きいです。
このような状況に陥らないためにも、従業員が気軽に利用できる相談窓口を設置してください。
また、顧客への対応を代わってあげられるスタッフの選任や、従業員を保護するための対策なども行うことで、従業員にとって不安の少ない環境を作れます。

社内周知を徹底する

いくら対策を講じても、実際に活用する従業員が認知・理解していなければ意味がありません。そのため、まずは社内通知を徹底することが重要です。
例えば、社内掲示板に文書を掲載したり、社員全員が使用するビジネスチャットに流したりするなどが挙げられます。
また、社内の情報やノウハウなどを共有できる「社内wiki」に掲載すれば、誰でもすぐに確認・活用ができるためおすすめです。

定期的な研修で意識を定着させる

企業文化として定着させるためには、定期的に研修を実施するのがおすすめです。
例えば、カスハラ対策の研修では、カスハラに該当する事例の紹介や適切に対処するための方法、相談窓口の紹介などを行います。
研修は1回限りではなく、行動・意識を定着させるために繰り返し行う必要があります。

まとめ・労働施策総合推進法の改正に合わせて、働きやすい環境づくりを目指そう

労働施策総合推進法の改正では、労働者にとってより働きやすい職場づくりが重要となってきます。
カスハラ対策と求職者などに対するセクハラ対策は10月からの施行となりますが、今のうちから社内制度の見直しやマニュアルの作成などに入ることで、10月からスムーズに移行できるでしょう。
すべての社員にとって働きやすい環境づくりができるよう、対策を進めていくことが大切です。

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(編集:創業手帳編集部)