副業で月20万円稼いだら何が変わる?税金・開業届・法人化まで解説

副業収入月20万円から手取りを最大化するために必要な開業届・青色申告・確定申告の手続きを整理

副業で月20万円を稼いだ場合に検討する税金・開業届・法人化
副業で月20万円を稼げるようになると、年間の副収入は240万円に届きます。この段階になると、税金や社会保険などの影響が、収入が本業だけの頃とは変わります。

副業を軌道に乗せつつ手取り収入を増やすには、「稼いだ後の設計」を考えなければなりません。本記事では、税負担や青色申告特別控除の使い方、独立や法人化を考えるタイミングなどを整理します。

副業月20万円はどのくらいの収入?

月20万円という副業収入は、客観的に見てどの程度の水準なのでしょうか。給与所得者の平均年収や、副業実施者の平均月収と比較しながら、その立ち位置を確認します。

年間240万円は給与所得者の平均年収の半分相当

月20万円の副業収入は、単純に12か月分を足すと年間240万円です。国税庁の「令和6年分 民間給与実態統計調査」では、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は478万円でした。240万円は、その約半分に相当します。

本業の年収が400万〜500万円なら、副業と合わせた年間収入は640万〜740万円台です。昇給では何年もかかる収入の伸びを、副業だけで実現している状態です。

出典:国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」

副業としては高い収入水準

パーソル総合研究所の「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」(2025年)では、正社員の副業実施率が過去最高の11.0%でした。1か月あたりの副業活動時間は平均23.0時間、副業の時給は平均3,617円・中央値2,083円です。

平均値どうしを掛け合わせると、副業収入は月8万円程度にとどまります。Job総研が副業経験者140人に行った調査でも、実際の副業月収は平均5.4万円、中央値3.0万円でした。月20万円は、いずれの平均も上回る水準です。副業をしている人のなかでは上位に位置している、といえるでしょう。

出典:パーソル総合研究所「第四回 副業の実態・意識に関する定量調査」
出典:Job総研「2025年 副業・兼業の実態調査」

月20万円稼げるようになると選択肢が増える一方で負担も増える

副業収入が月20万円に達すると、働き方の自由度は大きく広がります。その反面、税負担の増加や確定申告の義務など、収入が本業だけだった頃にはなかった負担も生じる点を押さえておきましょう。

税負担が増える

副業の所得(事業所得または雑所得)は、本業の給与と合算したうえで所得税が計算されます。所得税は課税所得が増えるほど税率が上がる累進課税で、5%から45%までの7段階です。

課税される所得金額が330万円を超えて695万円以下なら、税率は20%です。住民税の10%を加えると、増えた所得のおよそ3割が税金に回ります。副業を加えた課税所得がこの範囲に収まるなら、240万円の副業所得に対する税負担は単純計算で年72万円ほどです。

このように、経費や控除を使えるかどうかで手取りは大きく変わります。

出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」

確定申告が必要になる

給与所得者でも、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると確定申告が必要です。月20万円の副業は、この基準を大幅に超えます。

基本的には確定申告は免れないため、税金に関する知識を身に付けたうえで「どのような節税方法があるのか」を検討しましょう。

出典:国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」

独立・法人化が現実的な経営判断になる

月20万円という副業収入は、地域や家族構成によっては生活費をまかなえる水準です。副業のまま続けるのか、独立するのか、法人化するのかという判断が現実味を帯びます。

つまり、働き方の選択肢が増え、キャリアの分岐点にいる状況です。「本業を続けながら副業を発展させる」「思い切って独立する」など、状況にあわせて判断できる立場になれます。

副業でも開業届は出した方がいい?

副業の継続性や事業性から開業届の提出を判断する流れ
副業のうちは開業届を出すべきか迷う方も多いでしょう。提出は義務ではないものの、青色申告をはじめとする節税手段の入口となる重要な手続きです。提出のメリットと、あわせて検討したい青色申告の申請について解説します。

開業届を提出するメリット

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の提出期限は、2026年(令和8年)1月1日以後の開業なら、事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までです。従来の「開業から1か月以内」より緩和されており、提出が遅れた場合の罰則もありません。

ただし、後回しは得策ではありません。青色申告の利用には開業届が実質的な前提となり、屋号名義の口座開設や小規模企業共済の加入でも開業を証明する書類を求められます。出さないメリットは実質的にないため、特段の事情がない限り、開業届を提出しておきましょう。

出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」

同時に青色申告の申請も検討を

青色申告特別控除は、正規の簿記(複式簿記)で記帳し、期限内にe-Taxで申告すると最高65万円を差し引ける制度です。所得税と住民税を合わせた税率が30%なら、控除だけで19万5,000円ほどの節税につながります。

さらに令和8年度税制改正により、令和9年分以後の所得税では控除額が引き上げられます。e-Taxでの申告に加えて優良な電子帳簿の保存などの要件を満たすと最高75万円、電子帳簿の要件を満たさずe-Taxで申告する場合は65万円という区分に変わります。

赤字を3年繰り越せる純損失の繰越控除や、青色事業専従者給与も青色申告者だけの特典です。青色申告承認申請書の期限は適用を受けたい年の3月15日まで、その年の1月16日以後の開業なら事業開始の日から2か月以内です。開業届と同時に出しておきましょう。

出典:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」
出典:国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」

副業でも確定申告は必要?

副業の20万円ルールを売上から経費を引いた所得で判定する図
月20万円の副業収入があれば、確定申告は原則として避けられません。ただし、所得の区分や必要経費の扱い、住民税の申告方法によって手取りは変わります。申告の要否だけでなく、手取りを左右するポイントを整理します。

副業収入が事業所得か雑所得かを確認する

副業の所得は、事業所得か業務に係る雑所得に区分されます。所得税基本通達では、事業所得と認められるかどうかを「社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか」で判定します。

同じ通達では、帳簿書類の保存がない場合は原則として業務に係る雑所得に当たると示されました。裏を返せば、帳簿を付けて保存していれば事業所得と扱われる可能性が高まります。事業所得なら青色申告特別控除を使えるため、区分は手取りを左右します。

出典:国税庁「法第35条(雑所得)関係」

なお、事業所得と雑所得の違いに関しては、こちらの記事でも解説しています。あわせて参考にしてみてください。

20万円ルールは「所得」で判断

確定申告が不要になる20万円の基準は、収入ではなく「所得」で判定します。所得とは収入から必要経費を差し引いた金額で、売上30万円でも経費が15万円なら所得は15万円です。

なお、医療費控除を受ける年や、ワンストップ特例を使わずに確定申告でふるさと納税の控除を受ける年は、20万円以下の副業所得であっても確定申告書に含めて申告が必要です。無申告のままでは、無申告加算税や延滞税の対象になりかねません。

必要経費を差し引くと課税所得は圧縮できる

必要経費になるのは、収入を得るために直接要した費用と、販売費・一般管理費などの業務上の費用です。パソコン代や通信費、書籍代、交通費が代表例です。

自宅で作業しているなら、家賃や電気代を家事按分できます。ただし対象は、業務遂行上直接必要だったと明らかに区分できる部分に限られます。作業スペースが床面積の25%なら家賃の25%というように、按分の根拠を記録しておきましょう。

出典:国税庁「No.2210 必要経費の知識」

住民税の納付にも注意が必要

所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に必要です。住民税には20万円ルールに当たる仕組みがなく、給与以外の収入があれば多い少ないにかかわらず市区町村への申告が必要です。

確定申告書の第二表では、住民税の徴収方法を選べます。「自分で納付」にすると、副業分の住民税は給与から天引きされず、納付書に基づいて自分自身で納税します。

出典:芦屋市「給与所得以外の所得が20万円以下の場合、住民税の申告は必要ですか。」

副業月20万円で社会保険は変わる?

副業収入が増えると、社会保険料も上がるのではと不安に感じるかもしれません。結論から言えば、副業の形態によって扱いは異なります。個人事業として行う場合と、雇用契約や法人化を伴う場合に分けて解説します。

個人事業の副業なら原則変わらない

会社員の社会保険料は、本業の給与で決まる標準報酬月額から計算されます。個人事業として副業を行う限り、月20万円を稼いでも保険料は本業の給与水準のままです。

例外は、副業先とも雇用契約を結ぶケースです。複数の適用事業所で被保険者になる場合は「所属選択・二以上事業所勤務届」を10日以内に提出します。保険料は両方の報酬を合算して計算するため、負担増につながります。

出典:日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」

法人化すると社会保険の扱いが変わる

法人を設立すると事情が変わります。常時従業員を使用する法人事業所は、事業主のみの場合を含めて社会保険への加入が義務です。一人だけの会社でも手続きが発生します。

会社員のまま自分の法人から役員報酬を受け取る場合も、二以上事業所勤務届が必要です。この届出をきっかけに、本業の勤務先へ副業が伝わる可能性は否定できません。

出典:日本年金機構「新規適用の手続き」

副業月20万円なら独立すべき?

月20万円という水準は、生活費をまかなえる可能性がある一方、独立を決断するには慎重な検討が求められます。収入の安定性や時間の制約といった判断材料に加え、独立後に失う会社員の保障やコストも踏まえて考えましょう。

収入が安定し、時間が足りなくなったら独立を検討

副業の事業を起点に、独立を判断する材料は次の4つです。

  • 副業収入だけで生活費をまかなえる
  • 受注が単発ではなく継続している
  • 時間が売上のボトルネックになっている
  • 生活費の半年から1年分の貯蓄がある

特に重要なのは3つ目です。本業の週40時間を事業へ振り向ければ、月20万円の売上が2〜3倍になる余地があります。案件が1社に依存している段階なら、取引先を増やしてからでも遅くはありません。

独立後の手取りまで試算して判断する

会社員の厚生年金保険料は、保険料率18.3%を会社と本人で折半しています。退職するとこの会社負担が消え、健康保険は国民健康保険か任意継続へ、厚生年金は国民年金へ切り替わります。国民年金保険料は令和8年度で月額1万7,920円です。

保険料負担だけでなく、退職金や有給休暇などの福利厚生がなくなる点も見落とせません。また、労災保険と雇用保険に原則として加入できず、リスクへの備えが薄くなる点にも留意すべきです。

社会的信用も変わります。クレジットカードや住宅ローンは、一般的に会社員のうちが通りやすいため、契約予定があれば独立前に済ませておきましょう。

出典:日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
出典:日本年金機構「国民年金保険料」

副業月20万円で法人化は必要?

副業が軌道に乗ると、法人化を検討し始める方もいます。ただし、法人化には税率面のメリットがある反面、設立費用や固定費といった負担も発生します。月20万円の段階で法人化すべきかどうか、判断の目安とコストを整理します。

月20万円なら法人化を急ぐ必要はない

月20万円の段階で、法人化を急ぐ必要はありません。設立費用や社会保険料などの固定費が発生し、年間240万円の利益では見合いにくいためです。

利益600〜800万円に達したら税理士に法人化の試算を依頼する

個人の所得税は最高45%まで上がる一方、法人税は資本金1億円以下の中小法人であれば、原則として年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%です。所得が大きいほど、税率面では法人が有利になります。

法人化の目安は、事業の利益が600万〜800万円に達したあたりです。この水準を超えたら、税理士に法人化のシミュレーションを依頼しましょう。役員報酬の設定で有利不利が変わるため、個別試算は欠かせません。

売上1,000万円超なら消費税・インボイスも法人化判断の材料になる

消費税は、基準期間(個人事業者は前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されます。売上が1,000万円を超えると、2年後に課税事業者となる流れです。ただし前年1月から6月までの課税売上高が1,000万円を超えた場合は、翌年から納税義務が生じます。

かつては資本金1,000万円未満で法人をつくり、最大2年間の免税期間を得る手法が知られていました。ただし適格請求書発行事業者(インボイス)の登録を受けていると、課税売上高が1,000万円以下でも免除されません。取引先が課税事業者中心なら適格請求書発行事業者登録は避けにくく、免税のメリットは薄れています。

出典:国税庁「No.6501 納税義務の免除」

法人化による税金以外のコストも比較

法人化の損得は税率だけでは決まりません。主なメリットは、次の4点です。

  • 役員報酬に給与所得控除を使える
  • 経費にできる範囲が広がる
  • 決算月を自由に決められる
  • 対外的な信用力が高まる

一方、設立時と設立後には次のコストがかかります。

項目 株式会社 合同会社
登録免許税 資本金の額の0.7%(15万円未満は15万円) 資本金の額の0.7%(6万円未満は6万円)
定款認証手数料 1万5,000円~5万円(資本金等の額と発起人の構成による) 不要
法人住民税の均等割 年7万円(資本金等の額1,000万円以下・従業者50人以下の場合)

定款認証手数料は、資本金100万円未満で発起人が3人以下の自然人のみといった要件を満たせば1万5,000円です。均等割は赤字でも課税され、株式会社・合同会社とも電子定款によらず紙の定款を作成する場合は収入印紙4万円もかかります。税理士報酬まで含めると、固定費は年間数十万円規模です。

出典:国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
出典:総務省「法人住民税」

まとめ

副業で月20万円を稼げるようになったら、まずは帳簿の整備と青色申告で足元を固めましょう。開業届の期限は緩和されましたが、青色申告承認申請の2か月以内という期限は残っています。令和9年分からは控除額が最高75万円へ上がるため、電子帳簿の準備も早めが安心です。

そのうえで、利益が600万〜800万円に近づいたら独立や法人化の試算へ進むのが現実的な順番です。創業手帳では、開業手続きや資金調達、法人化の判断に役立つ情報を提供しています。次の一手を検討する際に、ご活用ください。

(編集:創業手帳編集部)