気候変動がビジネスチャンスになる?注目の「気候テック」を解説

世界から注目を集める気候テックをビジネスチャンスに変えよう


地球温暖化の影響は年々深刻化しています。猛暑や豪雨、豪雪や暴風など、気候の不安定さは暮らしに様々な影響を与えています。
世界各国でサステナビリティへの関心が高まる中、新たなキーワードとして浮上しているのが「気候テック」です。
気候テックは新たなビジネスチャンスとして、国内でも取り組みが進んでいます。

この記事では、気候テックの基本的な概要を解説すると共に、注目されている背景や実際にビジネスチャンスを掴んだ企業の事例などを紹介していきます。
気候テックに興味のある人や新たなビジネスに関心を持っている人は、ぜひ参考にしてみてください。

気候テックとは?


気候テックとは、気候変動対策や環境問題の解決を目指すためのテクノロジーです。
気候変動の緩和や抑止を目的に、温暖化による様々な悪影響の対処を目指すためのソリューションを指します。
具体的には、二酸化炭素の削減や持続可能なエネルギーの開発などに関連するビジネスとなり、エネルギーや農業、製造業や輸送、建築など、当てはまる分野は幅広くあります。

グリーンテックとの違い

気候テックと混同されやすいものとしてグリーンテックが挙げられます。
グリーンテックは、持続可能な社会の実現を目指して活用される資源や環境に配慮した技術やサービスなどの総称です。
温室効果ガスの削減や資源の有効活用を通じ、環境への負荷を低減させることが目的です。
具体的には、リサイクル技術や水処理技術、エネルギー効率を高める技術などが当てはまります。

気候テックは、グリーンエネルギーよりも範囲が広く、気候変動に対応するためのテクノロジーも指します。
そのため、気候テックとグリーンテックの違いとしては、対象となる範囲の広さだと言えます。

GXとの違い

GXとはグリーントランスフォーメーションの略語です。
化石燃料からクリーンエネルギーへの転換を進めて経済や社会の仕組みそのものを持続可能なものへと変革していく取り組みを指します。
気候テックでも脱酸素は目的の1つでもありますが、違いとしては対象となる範囲と主体です。

GXは、国家や産業構造レベルの変革の取り組みそのものを指していますが、気候テックはその変革を実現するための技術やテクノロジーです。
そのため、気候テックはGXを達成するための強力なツールの1つと言えます。

気候テックがビジネスチャンスとして注目されている背景


なぜ、気候テックが世界中でビジネスチャンスとして注目されているのか、その理由となる背景を解説していきます。

気候変動問題が世界で取り組む課題となったから

気候変動は昔から世界的な課題として認識されていました。そんな中、2015年にパリ協定が採択されて以降、より強い関心を集めるようになったのです。

パリ協定は気候変動問題に関する国際的な枠組みで、歴史上はじめて先進国や途上国を含むすべての参加国が温室効果ガスの排出削減に取り組むルールとして合意されました。
世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保ち、かつ1.5度に抑える努力を追求することを世界共通の長期目標として定めています。

この協定に基づいて、多くの国が温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、規制や制度、国家戦略などの形で具体的な政策へと落とし込んでいます。
国家レベルでの後押しがあることで、気候テックがさらに注目を集めるようになったのです。

若い世代でもサステナビリティへの関心が高まっているから

1990年代半ばから2010年代初頭生まれの世代を指すZ世代は、情報発信力の高さから社会や経済における影響力が大きいと言われています。
ネットやスマートフォンを使いこなし、SNSを通じて情報を瞬時に共有する行動様式は、これまでのマーケティングでは捉えきれない新しい消費の形を誕生させています。

そんなZ世代ではサステナビリティへの関心も高いです。
サステナビリティとは「持続可能性」を意味する言葉で、地球環境や社会、経済のバランスを保って将来の世代が資源や自然を損なうことなく現在の豊かさを長く維持し続けていくための取り組みを指します。

2023年にマイナビにより発表された「サスティナビリティに関する意識調査」では、「サスティナブルアクションを通して社会に貢献していきたい」という質問に対し、Z世代の42.0%が「今まで以上に貢献したい」と回答しています。
これは、1954年~1964年生まれを指すベビーブーム世代よりも約10ポイント高い結果です。

Z世代は、幼い頃から環境問題についての教育を受ける機会が多く、加えてニュース番組でも多く取り上げられていたことから、興味や関心が生まれやすいのだと考えられます。
サステナブルな課題を自分ごととして捉える傾向が強いため、行動につながりやすいです。

企業の評価基準が変わり、ESG投資が拡大しているから

金融市場からの圧力も気候テックが注目される一因です。近年は、環境・社会・ガバナンスの要素を考慮するESG投資が世界的に拡大しています。
気候変動対策を直接的な事業とする気候テック企業に関しては、ESG評価のE(環境)に直結するため、機関投資家からの資金が集まりやすい構造です。

また、主要国が2050年カーボンニュートラルにコミットする中で、炭素を多く排出する企業にはコスト負担や規制といったリスクが高まっています。
そのため、投資家は脱炭素化を目指す気候テック技術を持つ企業に資金をシフトさせることで、長期的なリスクヘッジと成長リターンを両立しようと考えています。

企業を評価する基準が、財務指標だけではなく気候変動にいかに対応し、持続的な成長を実現できる非財務情報へとシフトしていることで、気候テックがより注目を集めています。

気候テック市場の規模


気候テック市場は、近年飛躍的に拡大していますが、その規模は2026年時点で402億6,000万米ドル、日本円にすると約6兆億円規模と推測されています。
世界的な脱炭素化の加速、そして環境規制の強化を背景に、今後はCAGR(年平均成長率)24.8%という高い水準で拡大していき、2030年には約979億9,000万米ドルに達する見通しだと予測されています。

ビジネスで注目される気候テック分野


気候テックといっても、様々な分野があります。各分野の主な技術と目的は以下の通りです。

分野 主な技術 目的
再生可能エネルギー 太陽光や風力、水力などの再生エネルギー発電技術
供給網の構築
二酸化炭素を排出しない発電の拡大
蓄電池・エネルギー管理 スマートグリッド
分散型電源制御
AIによる需要予測
エネルギーの貯蔵
定置用蓄電池によるエネルギーの最適化と安定供給
エネルギー利用の普及や最適化
電力網の安定化
EV・次世代モビリティ 電気自動車
電動バイク
水素燃料
バイオ燃料
次世代航空機の開発
温室効果ガスの排出削減
カーボンアカウンティング IoT・スマートメーター
AI・自動認識技術
二酸化炭素見える化プラットフォーム
ブロックチェーン追跡
排出量の算定や報告
CO2吸収・除去 CCS
CCUS
カーボンリムーバル
フードテック・アグリテック スマート農業
土壌炭素クレジット
再生型農業
代替肉
培養肉
農業の脱酸素化
フードシステムの転換
金融業での省エネ技術 グリーンボンドの発行
カーボンクレジット
サステナブルローン
環境価値の証明
サステナブル技術に対する資金調達

再生可能エネルギー

気候テックの中でも主要な分野として挙げられるのが再生可能エネルギーです。太陽光や風力、水力など、自然の力を用いて作られるエネルギーで発電する技術を指します。
燃料の枯渇リスクがなく、二酸化炭素の排出量が少ないため、持続可能な社会の実現に欠かせない存在です。
再生可能エネルギーの導入によって、企業はエネルギーの自給率アップを図れ、二酸化炭素の排出削減も実現できます。

また、AIやIoTを活用した発電効率の最大化や次世代太陽電池の大型・軽量化、グリーン水素やアンモニア燃料の製造技術といった発電テクノロジーの高度化も含まれます。

蓄電池・エネルギー管理

再生可能エネルギーの普及や電力網の安定化を両立させる中核技術が蓄電池・エネルギー管理分野です。
太陽光や風量といったエネルギーは天候に左右される特徴があるため、発電量が不安定な点がデメリットです。
そのため、余剰電力を備えて必要な時に供給する蓄電池は気候テックに不可欠なインフラと言えます。
コストの削減や長寿命化、大容量かを目指す全個体電池やレドックスフロー電池などの開発が現在進められています。

また、IoTやAIを活用し、エネルギーの生成から消費までのデータを可視化・制御するエネルギー管理システムも重要です。
各家庭や工場に点在している太陽光発電や蓄電池などをIoTで束ねて1つの巨大な発電所のように制御するシステムのVPPやAIが気象データや電力需要を予測して電力価格が高い時間帯の消費を抑制したり、自家消費を促したりといった制御を行うスマートグリッド・デマンドレスポンスなどが主な技術として挙げられます。

EV・次世代モビリティ

現状のまま旅客や貨物の輸送が増えていけば、いくら温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みを行ったとしても、十分な効果は期待できません。
そのため、移動の脱炭素化や産業構造の再編が急速に進められています。

代表例としてバッテリーEVや次世代電池の開発が挙げられます。自動車が走行する際に排出する二酸化炭素ゼロを実現するカギとして、EVシフトは加速中です。
航続距離の延長や充電時間の短縮を目指して全固体電池といった次世代バッテリー技術の開発競争も近年では活発化しています。
輸送機関向け合成燃料に使用されるグリーン水素の開発も期待されている技術の1つです。

カーボンアカウンティング

企業や組織の事業活動に伴って排出される温室効果ガスを国際的な基準に則って算定し、可視化する取り組みをカーボンアカウンティングと言います。
投資家からのESG情報開示要請に対応するために不可欠な分野です。

温室効果ガスの排出量は、国際基準の「GHGプロトコル」に基づいて1つのスコープに分類して導きだされます。
算出は手作業では難しいため、多くの企業で専用のシステムが活用されています。
排出量の全体像を把握できれば、科学的根拠に基づいた削減目標を立てることに役立つでしょう。

CO2吸収・除去

待機中の温室効果ガスを直接回収して資源として再利用する、もしくは地下深くに貯蔵するといった分野です。
カーボンニュートラルの達成に欠かせない領域で、世界で開発や投資が進められています。

CCUSは、排出源から二酸化炭素を回収して有効活用や貯留する技術です。このプロセスによって回収された二酸化炭素が大気中に放出されることを防ぐ役割があります。

フードテック・アグリテック

食糧システムから排出される温室効果ガス削減を目指すために、様々な取り組みが開始されています。
植物由来の代替肉や代替乳製品、昆虫たんぱく質や培養肉、遺伝子編集などの分野も消費者ニーズが高まりつつあります。

また、食品を作るための土台でもあるアグリテックも今注目の分野です。
農業とテクノロジーを掛け合わせた造語で、AIやIoT、ロボットなどの先端技術を活用して、農業の効率化や生産性アップを目指す取り組みです。
農薬散布や生育状況のモニタリングで使える農業用ドローンや気象データや過去の栽培データを基にして病害虫の発生や収穫時期を予測できるAI・育成予測などが現在活用されています。

金融業での省エネ技術

脱炭素化を推進するための資金調達や環境リスクの評価、排出量の可視化などにおいて発展しているのが、気候テックと金融サービスの融合です。
環境問題の解決に貢献する事業に限定し、資金調達・融資をする金融商品のグリーンボンドやサステナブルローンをはじめ、気候テック関連のスタートアップや脱炭素技術の開発企業に特化したVCからの投資が活発に行われています。

気候テックでビジネスチャンスを掴んだ企業の事例


ここからは、実際に気候テックでビジネスチャンスを掴んだ企業の事例を紹介していきます。

Planet Savers

Planet Saversは、大気中から直接二酸化炭素を回収するDAC技術を開発する日本初のスタートアップ企業です。
2050年に年間1ギガトンの二酸化炭素を回収し、気候変動解決のフロンティアランナーとなるビジョンを掲げています。

ゼオライト吸着剤を用いて低コストかつ水や熱を必要としない電気のみで駆動するサステナブルな二酸化炭素回収システムを構築しています。
乾燥地帯や寒冷地帯など、これまでの方式が苦手とする環境下でも高いパフォーマンスを発揮する点がシステムの強みです。

Booost

Booostは、気候変動の解決や企業の脱炭素化を加速させる気候テックカンパニーです。
ESGデータの一元管理から経営意思決定までをワンプラットフォームで実現するサステナビリティERPを提供しています。

  • GHG排出量の管理
  • GHG排出量の削減
  • ISSBへの対応
  • ESG情報の管理
  • 財務的影響の可視化 など

企業が課題としていることや目標に合わせて活用できます。これまでに、世界95カ国以上、6,500社以上もの導入実績がある点が大きな強みです。

アスエネ

二酸化炭素排出量の可視化やESG評価などをワンストップで提供しているのがアスエネ株式会社です。
二酸化炭素の排出量や環境パフォーマンス指標など、環境データの一元管理によって工数削減が期待でき、GHGや水、廃棄物やエネルギーの算定データの分析やレポート化も行ってくれます。
国内だけで6,000社以上もの企業に導入されていることから実績も多く、業界をリードする気候テック企業として高い評価を受けています。

ティアフォー

自動運転のオープンソースOS「Autoware」を活用して、モビリティの脱炭素化や省エネ化を牽引している気候テックのスタートアップ企業です。
国や企業と連携し、自動運転の省電力化や電動車の普及を通じたカーボンニュートラル社会の実現に取り組んでいます。

特徴としては、世界中の企業が利用できるオープンソースプラットフォームでシステムを提供している点です。
これによって、世界中で多くの企業が自動運転開発に参画することができ、開発の重複によるエネルギーロスを防げるようになります。

世界的な気候変動の問題も気候テックでビジネスチャンスに

世界中で問題となっている気候変動ですが、発想を変えることでビジネスチャンスを掴むことも可能です。様々な分野があるため参画できる事業も多いです。
どういった分野でビジネスをスタートすべきか悩んだ時には、今回紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。

創業手帳(冊子版)では、ビジネスを成功に導くための情報が満載です。掴んだチャンスで日本だけではなく世界で注目される企業に成長できるよう、チェックして事業に役立ててみてください。

(編集:創業手帳編集部)