ailead 杉山 大幹|対話データとAIエージェントで組織の動き方を変える
商談・会議・面接のデータをもとに、AIが判断し業務を自動で実行

対話データを安全に統合・構造化し、AIエージェントが業務を自動で動かすエンタープライズ基盤、「ailead(エーアイリード)」。商談・会議・面接のすべての対話を自動で構造化し、AIエージェントが業務タスクを自動で実行。Salesforce・各種ATSとシームレスに連携するという特徴を持っています。エンタープライズ(※1)規模を中心に400社を超える企業に導入され、特に営業領域で顧客満足度No.1(※2)を獲得しています。
そんなaileadを提供する株式会社aileadの代表、杉山さんに、起業までの経緯やプロダクト開発の裏側、コロナ禍で直面した課題などについて伺いました。
※1 エンタープライズ:従業員数1,000人以上、売上高が数百億〜数兆円規模の大企業や官公庁のこと
※2 顧客満足度No.1:ITreviewカテゴリーレポート 「SFAツール(営業支援システム)」(2026 Spring)
株式会社ailead 代表取締役社長
大学在学中の2013年12月より、EastVenturesのアソシエイトとして勤務し、リサーチや投資先の支援を経験。その後メルカリ子会社のソウゾウにてプロダクト開発に携わる。2017年8月に創業。
この記事の目次
起業家との交流の機会が多かった学生時代
杉山:業務を自動化していくための対話データAIプラットフォーム「ailead」を提供しています。商談、会議、採用面接など、ビジネスに関わるあらゆる対話を自動で構造化し、AIエージェントが業務タスクを自動で実行することが可能です。例えば顧客情報の自動入力、商談後のフォローアップ、評価レポートの生成など、これまで人手で行っていた業務をAIが代行します。
杉山:大学生の時にEastVenturesというベンチャーでアソシエイトとして働いていた際、オフィスのワンフロアをさまざまなスタートアップがシェアしているような状況で、経営者の方と交流する機会が自然と多くありました。そういったスタートアップの新規事業や営業を手伝ったり、ホームページを作成したりしている中で、自分も社会的インパクトがあり、世の中をよくしていく事業を作るようなチャレンジがしたいという思いが芽生えてきたんです。
実際に起業をしている経営者の方が周囲にたくさんいて、例えばうまくいかないと言われていた事業が高く評価されて社会に大きなインパクトを与えるというケースを間近で見ていたことが、起業への興味を大きく後押ししてくれました。「世の中を変えている人は、こんなに身近にいるんだ」という衝撃がありましたね。
その後、2年ほどメルカリ子会社のソウゾウで新規事業の立ち上げやグロースに関わり、メルカリとEastVenturesの先輩方から出資していただき、起業に至りました。
コロナ禍で見えてきた企業に共通の「ある課題」
杉山:実は一度ピボットを経験していて、起業直後は海外向けのEコマースやマーケティングをAIで効率化していく事業を手がけていました。
しかし、コロナ禍になり、マーケットのニーズが激減。営業チームやマネジメントチームが突然リモート勤務になり、誰が何をやっているかの把握が難しかったり、当時入社した社員への最適の研修方法がわからなかったりという課題が生まれました。その時に、すべての社員の動きを可視化してトラッキングできるようにしたいと考えたのがスタートです。
その際、知り合いの経営者の方などにヒアリングを重ねていくと、皆さん同様の課題を抱えていることがわかりました。電話やメールも含めて、あらゆる対話やコミュニケーションの中で可視化されていないものが多く、適切に情報が伝わっていないという課題です。最初は営業領域の人材育成や、顧客情報管理の効率化から考えていきましたが、範囲を広げると、例えば上司と部下の1on1や採用面接でも同様のことが起こっているということに気づきました。
その課題を解決する手段として、AIが非常に相性がいいと判断しました。今のフロンティアモデル(※3)は、一部ではIQが200を超えているともいわれています。例えば質問に対する回答が期待外れなものだったら、それはAIの性能の問題ではなく、コンテキストとなるデータをAIに渡せていない可能性があります。
※3 フロンティアモデル:性能の最前線にある最先端の大規模AI基盤モデル(GPT・Claude・Gemini等)
コンテキストというのは、個人や会社固有の文脈や記憶、個性のようなものです。ある会社の業務フローや求められているアウトプット、メールの書き方など、固有のコンテキストを大量に集めてAIに渡すと、それに基づいてAIが分析や回答をしてくれます。AIというのは、最初はIQ200だけど新入社員のようなイメージなんです。人間と一緒で、その会社独自の研修を受けないと、社風や文化は理解できないわけです。
つまり、会社の中でどのように適切なコンテキストを集めてAIに渡すのか、どういう業務プロセスの中でそのAIエージェントを作っていくのかという2点が非常に大切になってきます。aileadは大量の対話データを自動的に取り込むため手動でのインプットが不要で、それらの対話データを基に、企業に何が起こっているかを企業ごとに異なる方法で構造化(※4)します。
※4 構造化:テキスト、画像、PDFなどの非構造化データを、AIが理解・処理しやすい行と列のデータベース、JSON等の形式のデータへ自動変換する技術やプロセスのこと
杉山:aileadをローンチしてから4年経ちますが、まさに情報漏洩のリスクへの対応は、ずっと向き合い続けてきた課題でもあります。例えばトップクラスで情報漏洩に厳しい業界である、金融機関やインフラ企業、通信企業にもaileadを使っていただいていますし、Hakuhodo DY ONEの全選考プロセスのAI化もお手伝いさせていただいていますが、人事領域へのAI適応はセンシティブな部分なので非常に厳しいです。
組織として情報セキュリティに取り組んでいくのはもちろん、ISMS認証(ISO/IEC 27001:2022)(※5)を取得・維持するために情報セキュリティ委員会を設けて定期的に話したり、例えばパソコンを紛失したらロックがかけられるようにソフトウェアをアップデートしたり、権限管理やIPアドレス制限などの対策を取ったりということを地道に積み重ねています。
※5 ISMS認証:企業が情報セキュリティ管理体制(機密性・完全性・可用性)を国際規格に基づき適切に構築・運用していることを、第三者機関が認証する制度
さまざまなお客様とやりとりをしていく中で、例えば情報セキュリティチームからチェックシートの依頼が来て、その数百行に及ぶエクセルにひとつひとつ記入することもあります。それでも情報セキュリティの基準が理由で導入が難しい場合は、落としどころを探ることもありますし、あるいは我々がさらにプロダクトをアップデートして、また半年後に営業をさせてくださいという結論に至ることもあります。そういった信頼を得るための地道な積み重ねの結果、今があるという感じですね。
杉山:最も重視したのはユーザーへのヒアリングです。紹介なども含めて、見込みとなるような何十人もの経営者の方に会いにいき、感じている課題や、こういったプロダクトに期待するものについてお話を伺いました。また、PR TIMESなどにリリースを出し、それに対する反響や手応えを確認しながら開発を進めました。
ユーザーの課題や求めるものを見極め、希少価値が高いエンジニアのリソースを無駄にしないことも、常に心がけていた点です。解いたらユーザーのためになる課題を突き止め、それを開発するプロセスを繰り返す手法のことをアジャイル開発と言いますが、中でも仮説検証と実際の開発・リリースの2つの流れを同時並行で進めるデュアルトラックアジャイルという手法で、開発を行うチームを作りました。エンジニアも、言われたままにプロダクトを作るのではなく、自分でユーザーにインタビューしたり、商談に同席したりして、ユーザーが抱えている課題を特定してから開発することが重要で、そういった人材やチームを作っていくのが大切だと感じています。
杉山:初期から現在まで、人材に関して求めることは特に変わっていないですね。専門性でいえば、AIに詳しいけれど、それぞれの領域がなるべく重ならないことは大切にしていました。またBtoBのサービスは通常、成果が出るまでに時間がかかる傾向があるため、こつこつ物事に取り組めるという部分は重視しています。BtoCですと、例えばゲーム業界のように「一夜にして成功」のような事業もあるかもしれませんが、BtoBは毎日ちゃんと朝起きて、営業や開発をして健康に働き続けることが成功において大切だと思っています。関わる人数が多いのでコミュニケーション能力があること、また変化が早い領域なので知的好奇心や学び続ける力も大切です。
組織作りの点でいうと、こういった人材が評価されるようなカルチャーを作り、維持することに意識して取り組んできました。
AIエージェントの普及はまだまだこれから
杉山:従来のSFAやCRMは、あくまでデータベースを貯める箱としての役割が大きいと思います。その箱からどういうデータを取りだして、どんなアクションをするのかということも、その箱にデータを入れるところも人の手に委ねられています。CRMへのデータの入力がおろそかになったり、ERPを使いこなすことが難しかったりする理由はここにあるんです。
aileadは、一次情報や社内外の対話などあらゆるデータを基に適切に構造化するため、データのインプットは全部自動です。手動でのインプットが省けるのが大きなメリットのひとつですね。もうひとつ大事なのはアウトプットの部分で、溜まったデータを基に何をしたいかということです。KPIを見たいのか、メール返信時の優先順位をつけてほしいのか、パイプラインの管理を高度化したいのかという部分はお客様によって違います。
我々が目指しているのは、インプットとアウトプットの部分をAIでできる限りクライアントごとに合わせた形で、本当の意味で自動化していくことです。例えばTOPPANホールディングスの営業チームでは、すべての商談をaileadで構造化し、AIがメンバーへのフィードバックを⾃動⽣成しています。マネージャーが⽉24時間かけていた育成⼯数が1時間に削減され、空いた時間をナレッジ共有やチーム全体の戦略⽴案に再投資できるようになりました。
今までは人が記入したデータベースを基にして示唆を得たり、決断をしたりというプロセスもすべて人次第だったのが、インプットとアウトプットが大幅に自動化されているという事例のひとつです。
杉山:現状、ほとんどのAIサービスは個人向けです。大企業で使用している例もありますが、毎日アクティブにAIを使用している人はまだその中の数パーセントに過ぎず、今のところ個人の生産性はAIによって上がっていても、組織の生産性はほぼ上がっていないというのが私の実感です。aileadがあれば、先ほどのHakuhodo DY ONEの事例のように組織のオペレーションを統一・スケールできるんですね。これはすごく大きなメリットだと感じています。
産業革命を振り返っても、例えば19世紀頃、工場の動力源が蒸気機関から電気に変わった時は、それによってすぐに生産量が増えたわけではありませんでした。しかし、電気という新しい動力源ができたことをきっかけに工場のレイアウトを変えたり、搬送の方法や物流のオペレーションを最適化していったりということを積み重ねて、最終的に生産性が蒸気機関の時代から劇的に上がるまで30年ほどかかっているんですね。
AIエージェントも同様に、現時点ではまだごく一部しか浸透しておらず、aileadはその中で最先端を走っている実感があります。組織レベルで課題を解決するためには、その会社の業務フローに合わせてインプット・アウトプットをカスタマイズしたり、大量のコンテキストをAIに渡したりすることが重要で、そこをしっかりと行えている会社はまだ少ないと感じています。
杉山:「チームや組織をAIの力で大きく変えることができる」という部分が、実際に使っていただいているお客様から一番評価していただいているポイントです。
お客様によって課題の深さや大きさが全く異なります。とあるエンタープライズ企業の営業チームでは、顧客情報の管理を自動化し、そのデータを基にAIにこういうことをして欲しいという要望がありました。また採用の例でいうと、大量のグループディスカッションを構造化してAIエージェントと人間とのハイブリッド評価にしていこうという企業もあります。大きな組織が抱えている共通の課題にフォーカスして我々を知っていただこうという努力を積み重ねた結果、少しずつ導入が広がっていきました。
杉山:業務上のツールは、会社のメンバーの目線でいうとある日突然上から言われて使うことになるというケースが多いですよね。自分も昔、そういった経緯で使うことになった経費精算のソフトウェアがどうも苦手で、あまり使いませんでした。
そういった経験があるので、導入の最初の一歩を非常に大切にしています。どういう目的でaileadを使っていただくのか、溜まってきたデータが会社にどう役立つのか、皆さんのキャリアにどう役立つのかという話を中心に、丁寧にキックオフや勉強会をさせていただいて、会社の意志決定者の方だけではなく、実際に使っていただく現場の方たちとの合意形成や目標設定を重視しています。
杉山:SB C&S株式会社は多くのAI関連サービスを配布し、全国約1万5,000社の販売ネットワークとDX支援の実績を持ち、企業のIT基盤構築を幅広く支援しています。
我々としてはaileadを知っていただくためにさまざまな企業にアプローチしていく必要があるので、ソフトバンクグループの持つネットワークを活用し、対話データのAI活用でより多くの企業の課題を解決できればと思い、資本業務提携に至りました。
難易度が高い課題を克服し、本当に役に立つプロダクトに

杉山:AIエージェントについて言うと、AIがどれだけ賢くなっても、正しいデータがなければ正しく動くことはできません。AIが業務タスクを正確に理解・遂行するために必要なコンテキストや背景の情報のことをコンテキストグラフやコンテキストレイヤーのような言い方をしますが、今後はこれらを適切にAIに渡していくことがより重視されるようになっていくと思います。
AIの前の時代は、ユーザーが触るアプリケーション、サーバーサイドのバックエンド、インフラやデータベースと、大まかに三階層の構造がありました。ところが今回で言うと、ユーザーが触っているアプリケーションのすぐ下にAIが動いていて、そのAIにコンテキストを渡していったりデータを整理したりするレイヤーがあり、その下にバックエンドやインフラがあるという感じで、今までとプロダクトの作られ方が変化しているんです。今後、この動きが拡大してくることは間違いないと思っています。
例えば、我々は動的な対話データに焦点を当てていますが、パワーポイントやワードといった静的なデータを適切にコンテキストとしてAIエージェントに渡していくというジャンルでは、既にアメリカにデカコーン企業(※6)が存在しています。対話データのAIエージェントについても、今後は同じぐらい大きくなっていくだろうと考えています。
※6 デカコーン企業:時価総額が100億ドル(約1.5兆円以上)を超える、非上場の巨大スタートアップ企業のこと
会社固有の対話データを安全に構造化していき、ガバナンスがある状態でAIを活用できる状態に整えていくのは非常に難易度が高いことです。例えばセキュリティの基盤を業界や仕事別にどう構造化していくかという問題や、それぞれの会社が使っている業務システムとどのようにインテグレーションするかという問題など、多くの難問があります。これらの問題を解決するために努力を積み重ねて本当に役に立つプロダクトへと進化していくのが、aileadが目指す未来だと思っています。
杉山:自分の志向や個性に合った事業を選ぶことが、組織を作る上で一番重要だと思っています。自分はテクノロジーやプロダクト作り、チームで何かを作るということが好きなので、BtoBで自分の作ったプロダクトをこつこつ売っていくという事業が性に合っていると感じています。
そこがずれていて、中長期で事業を続ける中でやりがいを感じられなくなったり、継続が難しくなったりというケースを多く見てきました。
自分の得意なこと、好きなことが何なのかわからないという人は、人から評価されることに注目してみるのもひとつの方法です。自分も起業前に働いていた時のことを振り返ると、好きな分野であるテクノロジーに関して海外の文献をリサーチして報告することが苦ではなかったですし、高い評価をいただいていました。そういったことをベースに、事業作りや組織作りを考えてみるといいかもしれません。
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