会社員が起業前にやるべき準備とは?辞める前のチェックリストと社会保険の注意点

起業準備は会社員のうちに始めておこう


独立や開業を目指して働いている会社員が起業する場合、会社員のうちから準備を進めるのがおすすめです。
収入のある状態から資金計画や手続きを進められるため、退職してから始めるよりもリスクを抑えられます。
また、退職後には社会保険や税金、雇用保険といった制度が一斉に変わるので、事前に精度の仕組みを理解しておくことも重要です。

そこで今回は、会社員のうちに起業準備を進めるべき理由を解説すると共に、退職前に確認したい起業準備チェックリストなどを紹介していきます。
退職後に必要な手続きや健康保険についても解説していくので、起業を検討している会社員は参考にしてください。

この記事の目次

会社員のうちに起業準備を始めるべき理由


会社員として働いている期間は、安定収入と社会保障を維持しながら起業準備を進められる貴重な期間です。
会社員のうちから起業準備を進めるべき理由を具体的に解説していきます。

収入があるうちのほうが資金計画を立てやすい

事業の成功を目指すためにも起業する際には資金計画を立てる必要があります。開業のための資金に加え、運転資金についても検討していきます。

会社員としての安定収入がある状態であれば生活費を確保しながら事業準備を進められるため、資金計画を立てやすいです。
また、創業準備では設備費や広告費などの初期費用が発生するため、給与収入がある状態で資金を積み立てたほうが有効だといえます。
生活費を給与で賄いながら準備を進めることで、開業直後の売上が不安定な時期の資金不足も防ぎやすくなります。

退職後に慌てると手続きや判断ミスが増える

退職後には健康保険や年金、住民税などの手続きが同時に発生します。自分で手続きをする必要があるため、準備不足になると判断ミスが起きやすいです。
制度の申請期限を過ぎると利用できなくなる制度もあるため、事前に確認しておくことが重要です。

会社員のうちに制度内容を整理しておくことで、退職後も落ち着いて起業準備を進められます。

「辞めてから考える」より「準備してから辞める」が安全

退職後に「何から始めよう」と考えれば、時間もお金も無駄になってしまいます。
しかし、会社員のうちから準備を進めれば、提供する商品やサービスの内容、ターゲット、集客方法などのビジネスモデルを情報収集しながら試行錯誤することが可能です。
加えて、事業計画や資金準備を整えてから退職することで、収入が途切れる期間を短くできます。

また、副業などで市場の反応を確認しておくと、独立後の事業リスクを下げられるメリットがあります。
退職をゴールにするのではなく、起業準備の完了を基準に独立時期を判断することが重要です。

会社員が退職前に確認したい起業準備チェックリスト


続いては、会社員が退職前に確認すべき起業のための起業準備項目です。主なチェックポイントは以下の通りです。










退職する前に何をすべきなのか理解するためにも参考にしてください。

1.事業アイデアとターゲットを整理する

起業する前に、どういった事業を行いたいのか、どのような事業で収益を上げたいのかを決めるほか、想定する顧客層や市場ニーズについても整理する必要があります。
ビジネスモデルを構成する要素として、「WHO」「WHAT」「HOW」「WHY」の4つの要素が挙げられます。

WHO 誰を顧客にして収益を得るか、年齢や性別、趣味などの顧客層を具体的に分析する
WHAT 提供する商品やサービスがどのような価値を生み出すのかを考える
HOW 実店舗やオンラインなど、商品やサービスを提供する方法を考える
WHY なぜ事業に取り組む必要があるのかストーリーを描く

ターゲットの課題や利用シーンを具体化することで、商品設計や価格設定の方向性が明確になります。
競合や市場規模を確認しながら事業アイデアを整理することで、事業の実現可能性を判断しやすくなるでしょう。

2.副業・兼業ルールを就業規則で確認する

起業準備を進める際には、現在勤めている会社の就業規則を必ずチェックしてください。企業によって副業の可否や申請方法が就業規則で定められているためです。

確認方法としては、就業規則を確認し、「副業・兼業」に関する項目がないか探してみてください。
記載されている場合は、禁止となっていないか、許可制や届出制となっていないか確認するほか、他社での就労や自営を禁じる規定となる服務規律や遵守事項がないかも確認します。

就業規則を見てもわからない、内容を理解できない場合には、人事や労務部門に問い合わせを行ってください。
もし、事前確認をしないで起業準備を進めた場合、大きな問題へと発展する可能性があります。
競業禁止や情報管理に関する規定に違反すれば懲戒処分の対象となる可能性もあるので注意してください。

また、副業申請制度がある場合は、会社の手続きに従って届け出を行います。申請書を用意している企業は多いため、漏れのないように記載をして提出してください。
もし、決まったフォーマットがなければ書類を自分で作成して提出します。

3.売上見込みと生活費を分けて資金計画を立てる

次に、資金計画を立てていきます。起業時の資金計画では事業資金と生活費を分けて考えることで、資金不足のリスクを把握しやすくなります。

また、創業初期は売上が安定しない可能性があるため、生活費を事前に確保しておくことが重要です。
場合によっては事業で利益を上げられない期間がある可能性もあり、その場合は収入がありません。

普段の生活にも影響を与える可能性があるため、生活費は最低でも6カ月分を目安に確保しておくことで、売上が少ない時期でも事業に集中しやすくなります。
不安がある人や子どもがいる場合には、6カ月以上の資金を確保しておくと安心感が強まります。

4.開業タイミングを決める

資金計画を立てたら、次に開業をするタイミングを決めます。
開業時期を決めておくことで、実際に行動を起こす後押しとなり、「いつまでに何をすれば良いのか」もはっきりするため、資金準備や営業活動などのスケジュールを計画的に進めることが可能です。

また、市場の需要や繁忙期を考慮して開業時期を設定すると、事業開始直後の売上確保につながります。
開業届の提出時期や税務処理にも関係するため、事業開始日を明確に設定しておくことが重要です。

5.失業保険と再就職手当の扱いを確認する

次に、失業保険や再就職手当の扱いを確認します。雇用保険の基本手当は求職活動を行う意思と能力がある場合に受給できる制度です。
支給を受けられる日数は、年齢や雇用保険の被保険者だった期間、離職の理由などによって90日から360日の間で決められます。
起業準備の内容によっては受給資格の扱いが変わる場合があるため、事前確認が必要です。

また、一定条件を満たす場合には起業でも再就職手当の対象となる可能性があります。
雇用保険や再就職手当の利用条件はハローワークが判断するため、退職前から相談しておくことが重要です。

6.健康保険の切り替えを比較する

会社を退職すると、健康保険の資格も喪失します。そのため、起業する場合には新たな保険制度を選択しなければいけません。
自分で切り替えの手続きをする必要があるため、必要事項や準備すべきものなどを事前にチェックし、漏れのないように申請を行ってください。

7.年金・配偶者の扶養の変化を確認する

会社員は厚生年金に加入していますが、退職後は国民年金への切り替え手続きが必要になります。
万が一手続きを行わないと未納期間が発生する可能性があるため注意が必要です。

また、配偶者が第3号被保険者の場合は扶養条件の変更が発生する可能性があります。
年金手続きは住んでいる市区町村で行うため、退職後の手続き方法を確認しておくとスムーズな切り替えが可能です。

8.住民税・税金の支払い時期を把握する

住民税や税金の支払い時期を把握することも重要です。
会社員時代は、給与から天引きで税金を納めていましたが、退職すれば普通徴収として自分で納付が必要になるケースが多いです。
忘れないように納付するためにも、支払い時期をチェックしておいてください。

また、住民税は前年所得を基準に課税されます。退職後も前年所得に応じた税額の支払いが続くため、納付額が高額になるケースもあります。
退職前に多くの給与を受け取っていた場合、退職後に収入が激減しても住民税は高額となるため、資金不足にならないよう、ある程度は資金に余裕を持たせることが大切です。

個人事業主として開業する場合は、所得税の確定申告も必要です。翌年3月の申告・納税時期も含めて資金計画に反映するようにしてください。

9.開業届・青色申告の準備をする

個人事業を開始する場合は、原則として開業日から1カ月以内に開業届を税務署へ提出する必要があります。
青色申告承認申請書を提出すると最大65万円の青色申告特別控除が適用されるケースもあります。

ただし、提出期限を過ぎると制度を利用できない可能性があるため注意が必要です。
帳簿作成や会計ソフトを準備しておくことで、開業後の税務管理をスムーズに進められます。

10.退職後すぐの固定費を見直す

起業直後は売上が不安定な可能性があるため、家賃や通信費などの固定費を見直すことが重要です。
固定費を減らすことができれば、資金が減少するスピードを抑えることができ、私生活の破綻や事業の生存率を高めるために役立ちます。

退職前に行うべき生活費の削減項目としては、通信費や保険料、サブスクや家賃、光熱費などが挙げられます。
固定費の削減は事業継続の安全性を高める基本的な資金対策です。 見直しによって削減できる部分があれば、削減をして起業準備を進めていきましょう。

会社員のうちに進めたい実践的な起業準備


起業準備では制度や資金の確認だけでなく、実際のビジネス活動を少しずつ始めておくことが重要です。ここでは会社員のうちに進めたい実践的な準備を整理していきます。

名刺・屋号・SNS・簡易LPを先に用意する

起業の際には、事前に屋号やブランド名を決めておくことで事業の認知を広げやすくなります。
屋号は、覚えやすい名称や検索がしやすい名称にするほか、何をしている会社なのか一目でわかる名称にするのがポイントです。
また、独自ドメインの取得が可能か確認するほか、他社の登録商標と重複していないかチェックすることも大切です。

名刺には、屋号や氏名、肩書きや電話番号、メールアドレスなどを記載します。
WebサイトのURLやSNSのアカウントも記載すると、受け取った側が情報収集をするために役立ちます。
SNSや簡易サイトを作成しておくと、事業開始前から情報発信や集客を始められるのでおすすめです。
営業機会を逃さず対応するためにも、名刺や基本的な営業ツールの準備は重要です。

見込み客・相談先・外注先を確保する

独立前から見込み客との関係を作っておくことで開業直後の売上につながる可能性があります。
SNSやブログなどを通じて情報発信をするほか、コンセプトや制作過程の発信などを地道に行っていけば、見込み客の確保につながります。
知人や友人に頼んで応援やPRを依頼するのもおすすめです。そのほかにも、プレオープンやモニターの実施といった方法もあります。

また、税理士といった専門家を相談先として確保しておくと経営判断の際に助言を得られます。
困った時の相談役としてサポートしてくれるので不安解消にも役立つでしょう。業務負担を分散できるため、外注先や協力パートナーを事前に確保しておくことも重要です。

開業後の営業・販促の行動計画を作る

開業直後は営業や販促活動を集中的に行う必要があるため、具体的な行動計画を事前に整理しておくことが重要です。
中小企業庁の創業支援でも、顧客獲得のための販売戦略や営業計画を事業計画に盛り込むことが重要とされています。
営業活動、情報発信、商品改善などの優先順位を決めておくことで、開業直後の行動を迷わず進められます。

退職後に必要になる主な手続き


退職後には公的手続きや税務手続きなど多くの事務作業が発生するため、必要書類や提出先を事前に把握しておくことが重要です。

会社から受け取る書類を確認する

退職後の各種手続きでは会社から受け取る書類が必要になるため、退職時に内容を確認しておくことが大切です。

例えば、離職票や源泉徴収票などは雇用保険や税務手続きで使用するために重要な書類となります。
紛失すると再発行が必要になるため、スムーズに手続きを行うためにも退職後の書類管理を徹底するようにしてください。

必要に応じてインボイスや許認可も確認する

事業所が消費税を正確に収めるために必要な制度がインボイス制度です。取引先が課税事業者の場合は、インボイス制度への登録が必要になるケースがあります。
業種によっては営業許可や登録などの行政手続きが必要となるため、注意してください。

事業開始前に必要な許認可を確認しておくことでトラブルを防止できます。

健康保険は「任意継続」と「国民健康保険」どちらがよい?


会社を退職すると健康保険の加入制度が変わるため、任意継続と国民健康保険のどちらを選ぶかを検討する必要があります。ここでは制度の基本的な特徴を整理していきます。

任意継続の特徴と向いている人

任意継続は退職前に加入していた健康保険を退職後も最長2年間継続できる制度です。
退職日の翌日から20日以内に申請が必要です。それまで扶養に入っていた家族も、引き続き扶養に入れるメリットがあります。

保険料は退職時の給料を基準にして決定します。2年間保険料が変わることはありませんが、会社による負担がなくなるので、全額自己負担となる点に注意してください。

組合健保の場合、福利厚生もそのまま利用できるため、健康診断や保養施設の利用といったサービスの利用を継続したい人は、任意継続が向いているといえます。

国民健康保険の特徴と向いている人

国民健康保険は市区町村が運営する制度で、前年所得などを基準に保険料が決定されます。
所得が低い場合は保険料が比較的低くなるため、起業後の収益が不安定で会社員時代の収入よりも低くなることも予想されるなら国民健康保険のほうが向いているといえます。

また、自治体ごとに保険料の計算方法が異なるため、事前に試算することが重要です。
住んでいる地域によっては国保のほうが有利となる可能性があるため、事前にチェックしておいてください。

扶養家族の有無で負担が変わりやすい

任意継続では扶養家族が増えても保険料は変わらない仕組みです。
一方、国民健康保険では加入人数が増えると保険料が増える仕組みになっています。そのため扶養家族が多いと、納める保険料が多くなってしまいます。
家族構成によって有利な制度が変わるため、退職前に比較することが重要です。

保険料は退職前に必ず試算して比較する

任意継続と国民健康保険では保険料の計算方法が異なります。
任意継続は加入先の健保に応じて計算される仕組みで、国民健康保険は前年度の所得などをもとに計算されます。
健康保険組合や自治体の試算制度を利用して比較することが重要です。

まとめ|会社員のうちに“辞める準備”まで含めて起業準備を進めよう

会社員が起業する場合、会社員のうちから資金準備や制度確認を進めておけば、退職後のリスクを大きく減らすことが可能です。
社会保険や税金などの制度を理解しておくことで、独立後の手続きをスムーズに進められます。起業は勢いではなく計画的な準備を整えてから実行することが重要です。

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(編集:創業手帳編集部)