ビジネスの成功は、事業ドメインの明確化が不可欠!
「誰に」「何を」「どのように」提供するかを明確にしよう!
(2015/11/02更新)
大手有名不動産検索サイトに不満があって、それを上回るサービスを提供するために起業しました。畑違いの業種出身の2人で始めたビジネスでWebを活用したサービスの経験は無いし、知識もありません。
どのぐらいのイニシャルコストがかかるのか、どのぐらいのランニングコストがかかるのか全く分かりませんでした。
精通した人材もいない、お金もない、実績もないサービスに、お客様であるユーザーと取引先である不動産業者が、大手有名不動産検索サイトではなく、あえてこちらを利用するメリットは果たしてあるでしょうか?
ここまでの事例を踏まえて、あなたはこの事業が成功すると思いますか?
この記事の目次
的外れなビジネスを始めても意味がない!
具体的なことは伏せていますが、これは実話です。
結局世に出ることはなかったようですが、仮に無理やりローンチしたところで成功を収めるのは難しかったのではないかと思います。
今回、この事例をご紹介したのには理由があります。
あなたがこれから始めようとしているビジネスに、似たような落とし穴が潜んでいる可能性がないとも限らないのです。
創業するにあたっては事業ドメインの設定を行いますが、競合に敵わない、顧客に商品・サービスを提供する術がない、ニーズがない……等々、的確な事業ドメイン設定ができていないと事業の成功は難しいのは言うまでもありません。
少しかみ砕いて説明しますと、事業ドメインとは事業活動を行う領域のことで「誰に」「何を」「どのように」提供するかということです。それを設定するにあたり気を配るべきことはいくつもありますが、まずは以下の条件を満たしているかをチェックしてみてください。
- 自社の強みを生かせるか
- ニーズはあるか(あるいはウォンツを喚起できるか)
- やりたいことか
自社の強みを生かせるか
強みを形成する要因は能力や経験、人脈などの内外の経営資源によるものが大きいでしょう。事業を行い、収益の柱とするための経営資源がちゃんと存在しているでしょうか。
注意しなくてはいけないのは「強さ」というのは単独で存在しているのではなく、あくまでも競合と比較しての話だということです。つまり相対的なものです。自社も得意だけど、競合はもっとすごいとなると、それは強みにはなりえません。
理想は複数の経営資源が絡み合い、他社には容易に真似のできない独自性・差別化を生んでいるという状態です。複数の要素が絡み合うことで、強さの形成要因が他社から分かりづらくなり、模倣困難性が高まります。
模倣困難性が高くないと、より経営資源の豊富な競合に真似されてしまい、強みが強みでなくなる可能性があります。
ただでさえ大変な起業間もない時期に、経営資源が乏しい中で強みを生かさないでやっていくのは大変です。メインではなかなか独自性や差別化できるような強みを発揮できないというのであれば、目先を変えてサブ(補完する存在)になるもので強みは生かせないでしょうか?
ニーズはあるか(あるいはウォンツを喚起できるか)
どんな商品・サービスでも市場ニーズがないと意味がありません。市場ニーズがないと適正な価格を設定することができない、あるいはそもそも売れないかもしれません。
よくあることですが、ユニークな事業を先に思いつき、それを自分自身で気に入ってしまうと無理やりニーズがある事にしがちです。ニーズを正確に把握するのは難しく、ウォンツを把握することはもっと困難ですが、冷静に、客観的に考えるようにしてください。
やりたいことか
事業が軌道に乗るまではなかなか売上も上がりませんし、大変な時期をすごすことになるでしょう。そこで事業が自分のやりたいことでないと、その時期を乗り越えられなかったり、他に目移りしたりしかねません。
そもそも、やりたくないことのために勤めていた企業を辞めて独立するなんてリスクを負いたくなんかありませんよね。
注意しなくてはいけないのは、強みとニーズに関しては大きいことは良いことかもしれませんが、やりたいことであるかどうかだけは他とのバランスを考える必要があります。
夢や目標が大きいことは良いのですが、事業への思い入れがあるだけで、事業を行うのに必要な知識がない、あるいは市場ニーズもどれだけあるのか怪しいとなると、それは事業として成り立ちません。
以上、3つの要素が重なるところが事業ドメインとすべきところです。
3つの要素がバラバラだった例をご紹介します。
主婦をターゲットにした投資用商品の販売で、その投資対象が中古車だという事業をやろうとした企業があります。
「自社の強みを生かせるか」という点を考える
この事業に対して必要となる経営資源や要素はなんでしょうか?
まず投資をしたい主婦へのリーチ、投資対象となる中古車を豊富に用意(仲介)できること、好きなタイミングで売買を可能にするシステム等々、実際に運営するとなるとかなりの経営資源が必要になります。
この事業を企画した企業は中小企業でしたが、規模的に運用すら難しそうです。
「ニーズはあるか(あるいはウォンツを喚起できるか)」という点を考える
普通に考えて中古車は日に日に価値が目減りします。また保管にもコストがかかります。自分が投資用に保有している車を欲しいという人がいない限り売ることはできません。そういった商品が投資対象として魅力があるでしょうか。
なんでも車好きの主婦もいるからとのことでしたが、車が好きということと中古車に投資をしようというのはイコールではありませんね。
ましてや中古車の購入ならある程度まとまった資金が必要となりますが、好きなタイミングでまとまった金額を動かせる主婦がどれだけいるのでしょうか。
株や投資信託、金やプラチナなどの実物資産と比較して、中古車が投資の対象として勝っている点がありません。
つまり、市場のニーズもウォンツも期待できません。
「やりたいことか」という点を考える
これは条件を満たしていたと思われます。ですが、やりたい気持ちが先行して、それ以外の点を考慮していませんでした。
ドメインを設定したら、その後は売上の計画や実行計画の立案などを行うことになりますが、先ほどの例だとドメイン設定の時点で無理があるのはお分かりいただけるかと思います。そうなると、事業として行うべきではありません。
強みとニーズがないと成功は困難です。また、やりたいことでないと、可能性はあっても成功を掴むまで頑張れないかもしれません。リスクばかりを考えると何もできないかもしれませんが、成功の可能性がないのであれば、残りはリスクしかないことになります。
特に「○○が儲かるらしい」と聞いたので、それについて調べて事業として始めるという人が実際にいます。厳しい言い方になりますが、これで成功する訳がありません。
知識がないので泥縄で勉強、もちろん経験はゼロ、それで先行している人と勝負ができるでしょうか?
先行企業や、規模の大きな企業に対して真正面からぶつかっても勝てないのは言うまでもありません。
切り口で差別化できないか、目先を変えてエッジの立った部分を作れないか、エアポケットはないかなど、他社から見て明確に異なる点が認知されるようなドメイン設定をし、そこに経営資源を集中することをお勧めします。
起業するだけならいつでも可能です。やり始めてから成功の可能性を探るのではなく、実現可能性があるか、収益が上がるかどうか、成功の可能性を踏まえた事業ドメインをしっかりと設定しましょう。
(編集:創業手帳編集部)
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