combo 中村洋基|日本にもっとユニコーン企業を!スタートアップに伴走
広告クリエイティブを始めとする多角的な支援でスタートアップを支援
さまざまな広告クリエイティブや世の中をあっと言わせるキャンペーンを手がけ、数々の賞を獲った広告クリエイター、中村さん。ニッポン放送や電通を経て2011年に独立し「PARTY」を創業、その後スタートアップの支援に特化した「combo」を設立しました。
なぜスタートアップ支援に取り組もうと思ったのか、今までのキャリアなどについて、創業手帳の大久保がお聞きしました。
創業手帳の冊子版(無料)では、様々な業界で活躍する起業のプロフェッショナルへのインタビューを掲載しています。こちらも参考にしてみてください。
combo代表取締役
栃木県出身。早稲田大学第一文学部、ニッポン放送、電通を経て、PARTYを共同創設。2022年にスタートアップスタジオ「combo」を設立・代表就任。また、顧問としてヤフーMS統括本部ECD、電通デジタル客員ECDを兼務している。人々のコミュニケーションを媒介にするキャンペーンを得意とし、プロダクト、テレビ番組づくりなど活動は多岐にわたる。最近の仕事に「SoftBank / 嵐:5Gバーチャル大合唱」、「警察庁 / TEHAI」「ジャンプフェスタ」「バビブべボディ」や、誰でも自分の価値を売買できるプラットフォーム「VALU」などがある。
(2023年5月8日まで!)起業に必要なノウハウを付与するプログラム「comboアントレプレナー」を募集開始!世の中に大きなインパクトをもたらすネクスト経営者人材を応援
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計100万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。
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この記事の目次
週3のアルバイトから結果を出して正社員に
大久保:電通に入られた経緯がちょっと変わっていますよね。
中村:大学在学中にフリーランスのWEBデザイナーとして仕事を始めたんです。ニッポン放送でBS放送の配信をやっていました。そうしているうちに電通さんに拾ってもらい、最初は週3のアルバイトで社員の方のプレゼン資料を作る補佐をやっていました。そのうちにバナー広告を作って欲しいと言われて作ったバナーがクリック率33%という結果を出し、さまざまなデザインの賞を獲得することができ、週3が週5になり、いつしか社員として働くようになりました。
大久保:クリック率33%はすごいですね。バナー広告のクリック率は通常0.1%ほどではなかったですか。
中村:バナーの中にゲームを埋め込んだんです。盗塁するゲームや、ピンボールゲームなど、簡単にできるカジュアルなゲームですが、バナーの容量が20KBしかなかったので、ゲームなんて作ろうとする人がいなかったのでウケたのでしょうね。他にも簡単なRPGゲームのようなものを埋め込んだりと、30個ほど作りました。
また、広告賞をいただいた仕事にもバナー広告が多いです。動きがあって触ることができるバナーや、広告枠をはみ出して画面全体で表現するものをリッチバナーというのですが、ほかにも例えばトップのバナーで運転手の目線でハンドル操作をすることができ、ドライブしていたら右下のバナーで電話がかかってくるんです。そこにマウスを持っていくと、事故にあったかのように突然画面全体が歪む、その後「運転中はよそ見してはいけません」というメッセージが流れるものを作成しました。
大久保:面白いですね。イメージしているバナーの域を超えています。カンヌのコンペティションなどにも出られていますが、いかがでしたか。
中村:2003年、2005年、2007年と3度にわたりカンヌ国際広告祭のヤングコンペティションのサイバー部門で日本代表として出場しました。その場でお題が出て、Macが1台ずつ与えられて、各国の代表が24時間以内に広告を作るんです。
1回目は箸にも棒にもかからずに「広告ってこんなに面白いんだ!」という衝撃と共に帰国しましたが、2回目と3回目は世界第2位という結果を出すことができました。2回ともブラジルに負けたんです。実は南米って、すごく広告が面白いし、技術レベルも高かったですね。
クリエイター集団で立ち上げた広告クリエイティブブティック「PARTY」
大久保:その後、起業されるわけですよね。
中村:そうですね。10年電通で働いたあと、広告業界でトップレベルのクリエイターと一斉に独立してPARTYという会社を立ち上げました。起業当時は先鋭的な広告キャンペーンを手がけることをメイン事業としてやっておりましたが、近年は広告キャンペーンだけではなくて、例えば成田空港の第3ターミナルの設計やUZABASE社の新社屋、デジタルインスタレーションなどを手がける空間の仕事も増えています。
成田空港の第3ターミナルはLCC(ローコストキャリア)専門のターミナルなので、第1・第2ターミナルからかなり距離があるんですね。しかし「動く歩道」を架設できないという課題があった。そこで発想したのが陸上トラックです。ゴムなら足が疲れませんし、空港は世界中の人が利用する場所ですが、陸上トラックなら世界共通の認識があると思いました。
ほかにもシャンプーのパンテーンでは「#この髪どうしてダメですか」というキャンペーンを展開しました。パンテーンの「自分らしい髪を応援する」ブランドに命を吹き込むために、生まれつき髪が茶色い中高生が「地毛証明書」というものを出さなければいけなかったり、出しても髪を黒く染めるように指導されることがあるという現状に対して問題提起をし、社会に訴え多くの賛同者を得ました。
このように、創業後から広告・ブランディング、デジタルという武器を中心に仕事をしていくうちに分野が多角化し、アート、サービスプロダクト、空間、番組などさまざまな事業を手がけるようになりました。
スタートアップ支援のcomboを立ち上げた理由
大久保:そこからなぜcomboをスピンアウトされたのでしょうか。
中村:仕事をしていると、少しずつスタートアップからも広告などの相談を受けることが増えてきました。ただ、大企業などと比べて予算感が違うため、最初は断っていたんです。
しかし自分の中でスタートアップを応援したい、グロースに寄与したいという思いがあり、予算に合わない部分は出資で相殺するという手法が双方にメリットがあることに行き着きました。
広告受託の仕事は一期一会のことが多く、クライアントのことを考え抜いて精魂込めて仕事をしても、一度の仕事で関係が終わってしまうのは寂しいと感じていました。
より中長期的に関わっていきたいと考えていたので、出資をしてお互いの関係を密にし、成長過程を共にできたらという思いがありました。
また、自分でも以前「VALU」というスタートアップを創業し、かなり盛り上がった後に大炎上事件などあってクローズしました。そのとき痛感したのは、事業の経営に求められるのはマーケ、ファイナンス、UI/UX、財務、法務などの総合的なスキルで、自分はマーケ・クリエイティブ・UI/UX・PRなど「攻め」の部分のプロフェッショナルです。自分たちの強みで、世の中のスタートアップの成功確率を高めることに寄与したいなと考えました。
大久保:comboでされているスタートアップ支援を具体的に教えていただけますか。
中村:大きく2種類の支援をしています。ひとつは「1→100」で、ある程度成長しているスタートアップのマーケティング戦略やクリエイティブ・CM制作。もうひとつは「0→1」で、事業を生み出す支援です。
以前、「rooftop」というアドバイザリー会で、多くのスタートアップ経営者にメンタリングさせていただきましたが、ほとんどの方がマーケティング・UI/UX・クリエイティブのいずれかに課題感を持っていました。VCや投資家は資金・人脈を提供するいっぽうで、そういった「攻め」の部分をハンズオンで伴走するニーズは多くあります。
しかし、さらに総合的に支援できるよう、PR、エンジニア、映像制作、メディア、ファイナンスなど各分野のプロフェッショナルとしてさまざまな企業にパートナーとして参画してもらい、経営に必要なすべての分野でお手伝いをしています。
「0→1」の事業で、いま一番力を入れているのが、「comboアントレプレナー制度」です。経営者になりたい人材をご招待して少人数だけで行う半年間のプログラムがあります。壁打ちと定期的なアイディアや知見の付与を通して、事業を一緒に作ります。Demo Dayイベントがないアクセラレーションプログラムといったところですね。第1期は8名が集まり、そこから2社が創業を予定しています。他のメンバーも起業への準備を継続しているところです。
また、「combo next」という制度もあります。アントレプレナーの対象者に、WIREDとUZABASEの編集者に参加していただき、経営者人材がやりたい方向性の事業領域でシリコンバレーとか諸外国だとどういうものが流行っているかをリサーチしアイディエーションする会です。
大久保:起業を目指している人には非常にありがたいプログラムですね。今後も募集はあるのでしょうか。
中村:ちょうど第2期の募集を2023年5月8日まで行っています。起業したいけれど不安がある、事業アイデアを深く掘り下げたいという方は、ぜひ応募してください。お待ちしています。
(取材協力:
株式会社コンボ 代表取締役 中村洋基)
(編集: 創業手帳編集部)