家族経営の成功法とは?メリット・デメリットを理解し、最大限活かす経営とは。

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小規模事業者の約90%以上が親族内承継である日本における、家族経営の在り方とは。

中小企業白書2022によれば、中小企業ではM&Aや従業員への承継が普及してきており、家族経営は徐々に減りつつあります。一方、小規模法人や個人事業者は親族内承継が多く、現在も家族経営が主流のようです

今回は、小規模法人や個人事業者における家族経営の現状、および家族経営を行う場合の注意点などを紹介します。

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家族経営とは

家族経営とは、特定の家族や親族が経営している会社組織のことです。株式会社の場合、創業者の一族がその企業の株式の過半数を所有していることもありますが、たとえ出資比率が低くても、特定の親族が実質的に支配していれば家族経営とみなされます。同族経営ファミリービジネスと呼ばれることもあります。

家族経営を行っている有名企業の例を挙げれば、トヨタ自動車、サンリオ、サントリー、竹中工務店、読売新聞、星野リゾートなどがあります。外国企業では、フォルクスワーゲン、ルイヴィトン、サムスン、ウォルマートなどがあります。このように、家族経営は決して珍しい経営手法ではないことが分かります。

以下では、特に小規模法人と個人事業者に焦点を当てて考えます。

家族経営はどのくらいの割合で行われている?

有名企業であれば、経営陣が同じ家族で占められていることがよく知られていることもあります。では、日本に300万以上あるとされる小規模法人と個人事業者では、家族経営がどのくらいの割合で行われているのでしょうか。それを知る手掛かりとなるデータが、「2017年版 小規模企業白書」の第2-2-8図です。

上記のグラフでは、小規模事業者 (小規模法人および個人事業者) が事業の承継をどのように考えているかを示しています。アンケートによれば、後継者が決まっている会社のうち小規模法人の90%以上個人事業者の実に95%以上が、親族内に後継者がいると回答しています。

事業を親族に承継させるということは、会社の経営を親族がよく理解していることを暗示しています。したがって、小規模事業者の9割以上で家族経営が行われていると考えられます。

家族経営のメリット4つ

では、家族経営のメリットとデメリットを考えましょう。まず、メリットからです。

後任者を長期的に育成できる

家族経営の場合、事業主の仕事を家族に補佐してもらうことで、自然に後任者を育成することになります。しかも、早期に始められることから、長期間にわたる教育を行うことができます。候補となる人材が家族内にいるので、経営陣の交代も円滑に進みます。しかも、事業承継時には大幅な若返りが実現します。それを示すのが「2017年版 小規模企業白書」の第2-2-7図です。

上記のグラフが示す通り、親族内承継をすると、経営者の年齢が「21~30歳低下」するという回答が過半数を占めています。多くの場合、親から子へと事業承継するので、一世代若返ることになります。一方、親族外承継で最も多い回答は「0~10歳低下」、つまり経営者に近い年齢の後任者を選んでいるというものです。このような場合、事業承継をしても経営陣の若返りにはつながらないでしょう。このことは、常に後任者を探していなければならないことも示しており、後任者を長期的に育成できる家族経営のメリットを際立たせています

経営陣が互いを信用できる

会社と家族が一心同体なので、互いを信用できます。また、経営者は強い責任感を持って意思決定を行います。特に経営危機の時には、支え合う意識が働きます。小規模事業者は経営が安定しない時期を経験することがあるので、家族が支えてくれると心強いことでしょう。

長期的な展望を持つことができる

家族経営の会社は、自分だけではなく、後の世代まで事業を受け継ぐことを目指します。所有と経営が分離している大企業は、短期的な儲けを重視する株主の圧力により、近視眼的な経営をしてしまうことが問題になることがあります。しかし、所有と経営が一致している家族経営なら、会社の長期存続を目的とした経営を貫くことができます。

社会的な人脈を大切にする

取引先や地域との関係を重視し、地元に根付いた経営を行うケースが多いため、会社をビジネスとして割り切るのではなく、愛着を持って経営する傾向があります。

家族経営のデメリット4つ

次に、家族経営のデメリットを考えましょう。メリットの裏返しとなっているものもあります。

有能な人材が不足する

誰が経営者になるかが、血縁関係で決まります。逆に言えば、有能な人が経営者になるとは限りません。また、従業員の立場になると、努力しても重要な役職を与えられないためモチベーションが下がります。これが足かせとなり、事業の拡大が阻害される可能性があります。

争いが発生する

家族が緊密に結びついている間は非常に強固な関係になるのですが、家族内で対立が生じ、いわゆる「お家騒動」に発展してしまうこともあります。こうなると、会社のイメージが下がったり、経営が滞ってしまったりすることがあります。

お金の私物化

生活費や遊興費を会社の経費にするなど、経営者が会社のお金を私物化してしまうと、問題が生じます。一族の利益を優先すると、従業員にしわ寄せがきます。

人材の私物化

家族経営の会社では、人事も家族で決めることがあります。その結果、気に入った者に重要な役職を与え、気に入らない者を追いやる、ということが生じるかもしれません。結果的に「イエスマン」が残ってしまうと、社内に重大な問題が生じても表面化しにくくなります。また、社風が硬直化し、改革を起こす力が生まれないということも考えられます。

家族経営を成功させるには

メリットを生かしデメリットに対処するには、どんなことができるでしょうか。

経営手腕を磨く

創業者が経営について学び続けることは大切です。また、後任者となる家族が共に経営を見守り、経験を積めるようにしなければなりません。一族の教育を早期に始めるなら、事業承継の段階になって慌てずに済みます。家族内に若く有能な人材が育っていれば、親族外の経営者を探す必要はないでしょう。

役割分担を明確にする

家族の各人がどのような役割を担うか、明確にしましょう。そうすれば、仮に家族内で対立が起きたとしても、経営に及ぼす影響を最小限にとどめることができます。役割分担の大切さは、事業承継で何が問題になるかを調査した「2017年版 小規模企業白書」のコラム2-2-1②図からも分かります。

上記のグラフによれば、小規模事業者の承継時に問題になるものの上位に「取引先との関係維持」「技術・ノウハウの引継ぎ」が挙がっています。これらは、それぞれ担当者を決めて取り組む必要があるので、社内体制の整備が不可欠です。家族内で対立が生じたとしても、各人が任された職責を果たすことに専念するなら、経営そのものが停滞してしまうことは避けられるでしょう

家族経営の成功事例3選

最後に、家族経営を成功に導いた3つの会社について概観します。

株式会社 ユニクロ

柳井正会長は学校卒業後、入社した会社を1年もたたず辞め、実家の小郡商事を手伝うことになりました。小郡商事は、父親が創業した会社でした。柳井会長は1984年に父親から経営を承継します。後にユニクロのブランドを生みました。創業者の2代目社長が世界的な企業に拡大させた事例です。会長の2人の息子も取締役に就任しており、家族経営が継続していく見込みです。

株式会社 門間箪笥店

150年続く会社です。現在の門間一泰社長は7代目となります。門間社長は、母親からの事業承継を時間をかけて行いました。勤務していた会社を退職して門間箪笥店の専務として入社し、5年かけて全ての実権を移管しました。時間をかけて取り組んだ結果、取引先や従業員からも自然に受け入れられました。門間社長は会社の変革にも果敢にチャレンジし、商品を増やして家具全般を扱うようになり、海外にも展開しています。

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株式会社 鎌倉新書

当初は仏教書の出版を目的として創業した会社でした。清水佑孝CEOは、父親から家業を承継しましたが、その時点では多額の負債があり倒産寸前とも思われたようです。清水CEOは改革に乗り出します。出版だけではなく、供養・終活専門企業としてサービスを運営し、お客様センターやポータルサイトを通じた相談・情報提供を行うなど、業態転換を成功させます。現在は東証一部上場企業に成長しました。

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まとめ

家族経営には利点がある一方、独特の難しさもあります。後任者の教育を早い段階でスタートさせることにより、後継者候補となる有能な人材を確保することができます。成功事例では、承継後に社長が大きな変革を行っており、会社が業態転換して事業が拡大していきました。

日本は100年以上継続している企業が3万社以上と世界一多く、その9割が家族経営とされています。メリットを生かし、デメリットを把握して適切に対処すれば、次世代に事業を引き継いでいくことができるはずです。

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(編集:創業手帳編集部)

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