事業承継・引継ぎ補助金とは?申請方法やスケジュールをまとめました。
事業承継・引継ぎ補助金はスケジュールを把握して計画的に取り組もう
事業承継・引継ぎ補助金は、経営資源を活用して次世代に引き継ぐことを目標にした補助事業です。
事業承継や引継ぎに際して補助金を受けたいと考える場合には、事業の内容が「経営革新」「専門家活用」「廃業・再チャレンジ」の3つから、どの類型に該当するのか確認してください。
また、事業承継・引継ぎ補助金はスケジュールが決まっています。申請方法も確認して余裕をもって取り組みましょう。
申請に必要な「gBizID(ジービズアイディー)」は登録までに時間がかかるので早めに申請するようにおすすめします。
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この記事の目次
事業承継・引継ぎ補助金ってなに?
多くの中堅企業、中小企業が抱えているのが、事業承継の悩みです。オーナーや社長から誰を後継者にして事業を引き継ぐのかを、経営課題としている企業は多いでしょう。
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継をきっかけに新しい取り組みをスタートする中小企業や、事業再編・事業統合に伴って経営資源の引継ぎを進める中小企業を支援する制度です。
具体的には、費用負担の軽減して承継後の積極的な投資を促進するために、中小企業者の事業承継・経営資源引継ぎに要する費用を、一部補助しています。
事業承継・引継ぎ補助金の申請期間
事業承継・引継ぎ補助金の申請期間は以下のようになっています。
ただし、10次公募は専門家活用枠のみでの実施ですのでご注意ください。
申請受付期間 | 交付決定日 | |
10次募集 | 2024年7月1日(月)~7月31日(火)17:00 | 2024年8月末~9月初頭(予定) |
事業のスケジュールについては、公式ホームページで逐次更新されます。利用する予定がある場合には、小まめにチェックしてください。
補助金の上限額
補助金の上限額は以下のようになっています。
事業承継・引継ぎ補助金は、その内容によって「経営革新」・「専門家活用」・「廃業・再チャレンジ」の3つの枠に分けられています。どちらに該当するのか確認しておきましょう。
補助上限 | 補助率 | |
経営革新枠 | 600~800万円(上乗せ額:150万円) | 2/3または1/2 |
専門家活用枠 | 600万円(上乗せ額:150万円) | 2/3または1/2 |
廃業・再チャレンジ枠 | +150万円以内 | 2/3または1/2 |
補助対象者の条件
経営革新と専門家活用では、補助対象になる条件や支援対象者が違います。それぞれどのように違うのかをまとめました。
経営革新枠
経営革新枠の支援対象は、事業承継や経営資源を引き継いだ創業を含むM&Aをきっかけにして、経営革新などにチャレンジする中小企業や小規模事業者です。
支援対象には、個人事業主も含みます。経営革新はさらに、創業支援類型・経営者交代類型・M&A類型の3種類に分類され、該当するものを選びます。
例えば、新しい商品の開発やサービスを作りたい、新しいターゲット層の開拓を目指す、新ジャンルのビジネスをスタートするといった事業者にもおすすめです。
専門家活用枠
専門家活用枠は、M&Aによって経営資源を誰からか引き継いだ、もしくは引き継ぐ予定がある、中小企業や小規模事業者が対象です。
こちらも個人事業主も含めて対象としています。
専門家活用はM&Aの予定がある、M&Aへの取り組みを進めている事業者におすすめしたいコースです。
専門家活用は、買い手支援型と売り手支援型の2種類があるので、どちらのコースに該当するかチェックしてから申し込みましょう。
廃業・再チャレンジ枠
廃業・再チャレンジ枠は、M&Aによって事業譲渡ができず、新たなチャレンジをするために、既存事業を廃業する中小企業者等の株主や個人事業主が対象です。
新たなチャレンジとして地域の新たな需要の創造や雇用の創出などに取り組む場合、廃業のための経費の一部を補助します。
事業承継・引継ぎ補助金の申請の流れ
事業承継・引継ぎ補助金の特徴のひとつが、補助金の電子申請システム「jGrants(ジェイグランツ)」を利用する点です。
jGrantsは経済産業省が運営するシステムで、利用するには、gBizIDプライムのアカウントが必要です。
まずは、事業承継・引継ぎ補助金を申請する時の流れを紹介します。同じ事業承継・引継ぎ補助金であっても類型によって必要な書類やフォーマットが違います。
詳しい内容は、WEBサイトのそれぞれの申請方法について確認するようにしてください。
補助対象事業の確認
事業承継・引継ぎ補助金を利用する場合は、まず補助対象の事業に該当するかどうかを確認してください。公式のWEBサイトでは公募要領も公開しています。
WEBサイトと公募要領の内容から、補助対象事業及び自身の交付申請類型について理解を深めてから、どのような事業が補助対象になるかを検討します。
gBizIDプライムアカウントの発行
補助申請を決めたらまず、gBizIDプライムのアカウントを取得します。gBizIDプライムの申請と発行には 2~3週間が必要となる場合があるので計画的に行ってください。
すでにgBizIDプライムを取得している場合、jGrantsを利用して電子申請による交付申請に進みます。
gBizIDプライムもjGrantsも、利用するのに費用はかかりません。補助金を申請するか検討中の段階でも、早めにgBizIDプライムを申請しておくようおすすめします。
経営革新の場合は、認定経営革新等支援機関に相談しておきましょう。認定経営革新等支援機関は検索して探せます。
経営診断ツールなども使って、認定経営革新等支援機関と事業計画の内容について相談、その後に確認書を受領してください。
gBizIDプライムのアカウント登録に必要なのは、以下のものです。
-
- 法務局が発行した印鑑証明書または地方公共団体が発行した印鑑登録証明書の原本
- 法人代表者印または個人事業主の実印を押印した申請書
- 法人代表者自身または個人事業主自身のメールアドレス
- 法人代表者自身または個人事業主自身」のSMSが受信できる電話番号
(発行日より3カ月以内のもの)
メールアドレスとSMS受信用電話番号は、今後のアカウント認証にも利用するため、間違えないように注意してください。
アカウントを取得するには、「gBizID」のホームページから「gBizIDプライム作成」のボタンをクリック、申請書を作成してダウンロードできます。
申請書と印鑑証明書を「GビズID運用センター」に送付して、申請が承認されるとメールが送られてくるので、リンク先から手続きを行いましょう。
gBizIDから交付申請・交付決定通知
gBizIDを取得したらgGrantsを利用して電子申請によって交付申請に進みます。必要書類を揃えて書類を提出しましょう。
審査の結果は、中小企業庁や事務局のホームページにおいて交付決定者の公表されるほか、交付申請の採否結果の通知が jGrants上で行われます。
補助対象事業実施・実績報告
交付決定通知を受けたら、いよいよ補助対象事業を実施します。実施してから所定の手続きで実績報告を行ってください。
交付決定を受けた補助対象事業でも、補助事業期間外に契約・支払いなどをした場合や相見積もりを取らなかった場合には補助対象経費として認められないので注意が必要です。
ただし、事業承継・引継ぎ補助金は申請時に事前着手の届出を申請し、事務局の承認を受けると、事務局が認めた日を補助対象事業の補助事業開始日にできます。
つまり、申請時点でも事前着手できる制度です。うまく活用して、事業承継をスムーズに進めましょう。
補助金交付
実績報告を受けて補助金が交付されます。
補助金の交付については、補助対象事業の完了後、原則として、15日以内に実績報告書等を提出して、実施した事業内容の検査と経費内容などの確認、補助金の額を事務局にて確定した後に、精算払いです。
経営革新の場合は、事業化状況報告と収益状況報告も実施しなければいけません。
事業の進捗状況確認のために、実地検査がある可能性もあるので、適切な経営を心掛けてください。
事業承継・引継ぎ補助金 経営革新枠の概要
事業承継・引継ぎ補助金の「経営革新」枠は、その類型によってさらに3つに分けられています。それぞれどのように違うのか確認しておきましょう。
【Ⅰ型】創業支援類型
【Ⅰ型】創業支援類型は、廃業を予定している人から、有機的一体として機能する経営資源を引き継いで創業した中小企業や小規模事業者が対象です。
有機的一体としての経営資源とは、人や工場、店舗などの資産のほか、販路や顧客を指します。経営資源を事業譲渡や株式譲渡で引き継いで創業した場合に対象となります。
例えば、不動産賃貸を営んでいて後継者不足から廃業を予定している場合、不動産や従業員を引き継いで新しく不動産賃貸を営む場合は、事業承継として補助の対象です。
一方で、売りに出されている投資用のマンションを購入して不動産賃貸を営んだとしても、有機的一体として機能する経営資源とは認められないので、事業承継にはなりません。
【Ⅰ型】創業支援類型に該当するのは以下の2つの要件を満たした場合です。
2.創業にあたり、廃業予定の者などから、株式譲渡や事業譲渡等により、経営資源を引き継ぐ
【Ⅱ型】経営者交代類型
【Ⅱ型】経営者交代型は事業承継(事業再生を伴うものを含む)を行う中小企業者などで次の2つの要件をすべて満たす者です。
2.一定以上の経営経験または同業務の実務経験がある、もしくは創業・承継に関する研修等を受講する
また、【Ⅱ型】経営者交代型の補助対象になるには、代表者が交代した期間や、承継者の経営経験、新事業展開など要件か生産性向上要件も満たさなければいけません。
補助対象となるかどうかは、事業承継・引継ぎ補助金のWEBサイトで確認しましょう。
【Ⅲ型】M&A類型
【Ⅲ型】M&A型は、事業再編・事業統合などを行う中小企業者で下の2つの要件をすべて満たした場合に補助の対象となります。
2.一定以上の経営経験または同業務の実務経験がある、もしくは創業・承継に関する研修等を受講する
【Ⅲ型】M&A型についても、事業再編、事業統合の時期や承継者の経営経験、新事業展開など要件か生産性向上要件を満たさなければ対象になりません。
経営革新コースは、どれも補助率が補助対象経費の1/2もしくは2/3以内で補助下限が100万円です。
補助上限は、どれも600万円か800万円以内です。
廃業にかかる費用として150万円の上乗せも可能ですが、それぞれ認められる費用が違うので注意してください。
事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用枠の概要
事業承継・引継ぎ補助金の「専門家活用枠」は「【Ⅰ型】買い手支援型」と「【Ⅱ型】売り手交代型」の2種類があります。
それぞれ補助上限額も違うので、どちらに該当するのか確認しておきましょう。
【Ⅰ型】買い手支援型
買い手支援型は、事業再編・事業統合などに伴って経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業者などが該当します。
以下の2つの要件を満たさなければ対象になりません。
2.事業再編・事業統合などに伴い経営資源を譲り受けてから、地域の雇用をはじめとして、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれる
【Ⅱ型】売り手支援型
売り手支援型は、事業再編・事業統合などに伴って自社が有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業者などが該当します。
満たさなければいけないのは、以下の1件の要件です。
【Ⅰ型】買い手支援型は、補助率は補助対象経費の2/3以内、【Ⅱ型】売り手支援型の、補助率は補助対象経費の1/2または2/3以内※1で、補助下限が50万円、補助上限は600万円以内です。
どちらも上乗せがあり、補助上限が+150万円です。
※1:【Ⅱ型】売り手支援類型で、以下の条件に該当する場合は、補助率が1/2以内から2/3以内に引き上げ
・一定の比較期間における営業利益率が、物価高等の影響により低下している場合
・直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の場合
ただし、補助事業期間内に経営資源の引継ぎができなかった場合(補助対象事業において、クロージングしなかった場合)は、補助上限額は300万円以内になりますので、きちんとスケジュールを立てて、引継ぎが達成できるように注意しましょう。
事業承継・引継ぎ補助金 廃業・再チャレンジ枠の概要
事業承継・引継ぎ補助金の「廃業・再チャレンジ枠」は、再チャレンジ申請(単独申請)と併用申請の場合で要件が異なります。
それぞれ補助率が異なってきますので、必ず確認しておきましょう。
再チャレンジ申請(単独申請)
再チャレンジ申請(単独申請)は、M&Aで事業を譲り渡せなかった事業者による廃業・再チャレンジが該当します。
また、一定期間内にM&A(事業の譲り渡し)に着手していることが条件になります。2020年以降から交付申請期日の間に、売り手としてM&Aに着手、6か月以上取り組んでいることが条件としてあげられます。
併用申請
併用申請は、事業承継に伴う廃業、事業の譲り渡し・譲り受けに伴う廃業が該当します。
また、経営革新枠、専門家活用枠(買い手支援類型)、専門家活用枠(売り手支援類型)とのいずれかとの申請が可能です。
事業承継やM&Aによる事業の再編・統合に伴う一部廃業も対象となりますので、該当する方はぜひ活用しましょう。
まとめ・事業承継・引継ぎ補助金の申請方法などを確認して準備しよう!
日本の経営者が高齢化している状況への対応として、事業承継、引継ぎ推進策として事業承継・引継ぎ補助金が提供されています。
経営資源がなくなったり散逸したりすることは、生産性や創業、雇用の推進の観点からも好ましくありません。
事業承継・引継ぎ補助金は事業の引継ぎを考える事業者にとっては心強いサポートです。経営革新と専門家活用の2つがありますが、同時に申請することはできません。
中小企業や小規模事業者をサポートする補助金や支援はいろいろな種類があります。
国が提供しているサポート以外に、地方自治体や金融機関で提供している制度もあるので、調べてみてください。
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(編集:創業手帳編集部)