【行政書士監修】2026年新設の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?申請要件・補助額

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が誕生!基本要件や補助金額、スケジュール、申請の流れなど解説

2026年6月29日に新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の公募要領(第1回)が公開されました。 従来の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下、ものづくり補助金)」および「中小企業新事業進出補助金(以下、新事業進出補助金)」が新しい本補助金に統合、一本化された形です。

そこで今回は、新設された新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の概要について、申請要件や旧制度からの変更点、スケジュールなど、網羅的にわかりやすく解説します。新製品・新サービス開発、新事業への進出、輸出体制の強化に向けた施策に補助金の活用を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。

監修者:長野 利雄(ながの としお) プラネット行政書士事務所 代表(中小企業診断士・行政書士)
25年間、大手IT企業で法人営業・企画に従事し、製造業向けにIoT・DX導入を推進。2022年にプラネット行政書士事務所を開業。補助金事務局での審査経験を持つ中小企業診断士・行政書士として、中小企業へビジネス経験を活かした事業計画策定・補助金申請・採用定着を支援。静岡県伊東市を拠点に全国対応。

この記事の目次

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは、中小企業等の新製品・新サービス開発や新事業進出、海外進出などの取り組みに最大9,000万円を支援する制度です。中小企業等の規模拡大および付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげることが目的とされています。

具体的には、 3つの申請枠で以下のような取り組みが支援されます。

①革新的新製品・サービス枠:革新的な新製品・新サービスの開発
②新事業進出枠:既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出
③グローバル枠:海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制の強化

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、従来の「ものづくり補助金」および「新事業進出補助金」が統合、一本化された形です。各補助金の申請枠と内容がぞれぞれおおむね踏襲されています。

中小企業庁によると、本補助金の新設(統合)の主な理由は、「売上拡大」と「新市場への進出」の強力な後押し、「賃上げ」の原資創出(経済の好循環)です。付加価値向上を通じた生産性向上と成長に向けて、既存事業の延長にある設備投資にとどまらず、積極的な新市場・海外市場への進出を図ってほしいという政策的な意図が読み取れます。

旧制度からの変更点

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、統合前の「ものづくり補助金」および「新事業進出補助金」の設計をおおむね踏襲していますが、一部変更点もあります。

旧制度からの主な変更点は、以下の通りです。

・グローバル枠の補助額が一律3,000万円(4,000万円)→従業員数に応じた2,500万〜7,000万円(9,000万円)に ※()は特例適用時
・グローバル枠の補助率(中小企業)が1/2→2/3に引き上げ
・革新的新製品・サービス枠に地域別最低賃金引上げ特例を新たに適用
・中東情勢の緊迫化による影響が審査項目に追加

グローバル枠の補助上限額および補助率が引き上げられており、とくに従業員数の多い中小企業者はより便利に活用できるようになります。

また中東情勢の緊迫化による原油由来製品・資材の供給途絶や高騰、それに伴う事業の中止などの影響等が審査項目に加えられたことも注目ポイントです。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請枠と補助額・補助率、補助対象経費

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請枠および補助額・補助率、補助対象経費は以下の通りです。基本的には旧「ものづくり補助金」「新事業進出補助金」の申請枠ですが、とくにものづくり補助金部分には変更点もあるのでご注目ください。

革新的新製品・サービス枠

革新的新製品・サービス枠は、革新的な新製品・新サービス開発の取組を支援する申請枠です。顧客等に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして新製品・新サービスを開発する取り組みが対象となります。

既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図る事業、新製品・新サービスの開発を伴わないものは、補助対象になりません。また同業の中小企業者等において既に相当程度普及している新製品・新サービスの開発も該当しません。

補助上限額
(補助下限額 100 万円)
従業員数 1~5 人:750 万円( 850 万円)
従業員数 6~20 人:1,000 万円(1,250 万円)
従業員数 21~50 人:1,500 万円(2,500 万円)
従業員数 51 人以上:2,500 万円(3,500 万円)
補助率 中小企業者:1/2(2/3)
小規模企業・小規模事業者、再生事業者:2/3
補助対象経費 機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費

※ 賃上げ特例の適用による補助上限額の引上げを受ける場合、括弧内の補助上限額を適用
※ 地域別最低賃金引上げ特例の適用による補助率の引上げを受ける場合、括弧内の補助率を適用

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)」1.2版

先述の通り、革新的新製品・サービス枠に地域別最低賃金引上げ特例が適用されるのは、ものづくり補助金からの変更点です。

新事業進出枠

新事業進出枠とは、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する申請枠です。以下2つの条件をいずれも満たす新事業進出が補助対象となります。

①事業で新たに製造又は提供する製品、商品もしくはサービスが、事業を行う中小企業等にとって、新規性を有するもの、
②事業で新たに製造等する製品等の属する市場が、事業を行う中小企業等にとって、新たな市場であるもの

なお、新規性を有すると認められるのは、公募開始日(第1回は2026年6月29日)以降に初めて取り組むものに限られます。また新規性とは、事業者にとっての新しさであり、世の中における新規性(日本初や世界初など)は求められません。

新たな市場とは、事業者にとって既存事業では対象となっていなかったニーズ・属性(法人/個人、業種、行動、特性等)を持つ顧客層を対象とする市場のことです。

補助上限額
(補助下限額 750 万円)
従業員数1~20 人:2,500 万円(3,000 万円)
従業員数 21~50 人:4,000 万円(5,000 万円)
従業員数 51~100 人:5,500 万円(7,000 万円)
従業員数 101 人以上:7,000 万円(9,000 万円)
補助率 中小企業者(小規模企業・小規模事業者、再生事業者含む):1/2(2/3)
補助対象経費 機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費

※ 賃上げ特例の適用による補助上限額の引上げを受ける場合、括弧内の補助上限額を適用
※ 地域別最低賃金引上げ特例の適用による補助率の引上げを受ける場合、括弧内の補助率を適用

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.2版」

グローバル枠

グローバル枠とは、海外市場の開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化の取組を支援する申請枠です。以下2つの条件をいずれも満たすものが補助対象となります。

①事業を行う中小企業等が、自社の製品等を活用し、自発的に新たな海外販路を開拓するうえで必要となる国内製造等拠点の強化に取り組むもの
②事業により製造等する製品等の属する市場が、事業を行う中小企業等にとって、新たな海外市場であるもの

新たな海外市場とは、既存事業では対象となっていなかった国・地域の市場のことです。取引先主導の事業は自発的とは言えず、補助対象とはなりません。

補助上限額
(補助下限額 750 万円)
従業員数1~20 人:2,500 万円(3,000 万円)
従業員数 21~50 人:4,000 万円(5,000 万円)
従業員数 51~100 人:5,500 万円(7,000 万円)
従業員数 101 人以上:7,000 万円(9,000 万円)
補助率 中小企業者(小規模企業・小規模事業 者、再生事業者含む):2/3
補助対象経費 機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、原材料費、広告宣伝・販売促進費、海外旅費、通訳・翻訳費

※ 賃上げ特例の適用による補助上限額の引上げを受ける場合、括弧内の補助上限額を適用

出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.2版」

先述の通り、ものづくり補助金では一律3,000万円(4,000万円)だった補助上限額は、従業員数に応じた2,500万〜7,000万円(9,000万円)に変更されています。加えて、ものづくり補助金では中小企業の補助率は1/2でしたが、2/3に引き上げられました。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の補助対象者

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の補助対象者は、日本国内に本社及び補助事業実施場所を有する以下6つの事業者です。

(1)中小企業者
(2)小規模企業者・小規模事業者
(3)特定事業者の一部
(4)特定非営利活動法人
(5)農事組合法人
(6)対象リース会社

それぞれの要件など、詳細は公募要領にてご確認ください。

補助対象外となる事業者

補助対象外となる主な事業者は以下の通りです。

・本補助金の申請締切日を起点にして16か月以内に事業再構築補助金、新事業進出補助金、ものづくり補助金、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金に採択された事業者(採択を辞退した事業者を除く)
・応募申請時点で従業員数が0名の事業者
・新規設立・創業後1年に満たない事業者(ただし新事業進出枠に限る)
・みなし大企業
・過去補助金不正・未返還事業者
・政治団体・宗教法人

従業員のいない事業者は補助対象外となるのでご注意ください。また新事業進出枠については、創業まもない事業者は対象とならず、申請には最低1期分の決算書の提出が必要です。

その他、補助対象外となる事業者の詳細については公募要領をご確認ください。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の基本要件

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の要件は、以下(1)〜(6)の要件を満たす3〜5年の事業計画に取り組むことです。

(1) 付加価値額要件 補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること
(2) 賃上げ要件
【目標値未達の場合、補助金返還義務あり】
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること
(3) 事業場内最賃水準要件
【未達の場合、補助金返還義務あり】
補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、毎年、事業場内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること
(4) ワークライフバランス要件 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること
(5) 子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組み要件 「子育て等に関する職場環境整備」に向けた取り組みを行うこと
(6) 金融機関要件 補助事業の実施にあたって金融機関から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関から事業計画の確認を受けていること
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.2版」

上記の通り、成長率や賃上げ、賃金水準をはじめ、複数の要件を満たす必要があります。最大9,000万円と言う手厚い支援が受けられる分、要件のハードルは決して低くありません。とはいえ、自社の成長と従業員の待遇改善を本気で目指す企業にとっては、要件を満たすための社内整備も含めて絶好のチャンスとなるでしょう。

基本要件の詳細については、公募要領等をご確認ください。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の特例措置と加点項目

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、 以下のような特例措置と加点項目が設けられています。該当する場合はより有利に採択が受けられる可能性があるので要注目です。

特例措置要件【補助額・補助率引き上げ】

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、賃上げおよび賃金水準に関連した2つの特例措置が用意されています。要件を満たすことで補助額や補助率が引き上げられるので、賃上げ・最低賃金対応を並行して行うのもおすすめです。

内容 要件
賃上げ特例要件
【要件未達の場合、補助金返還義務あり】
補助上限額を100万〜2,000万円引き上げ 補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、以下の要件をいずれも満たすこと
(1)上記記載の「賃上げ要件」の一人当たり給与支給総額基準値に加え、更に年
平均成長率+2.5%(合計で年平均成長率+6.0%)以上増加させること
(2)上記記載の「 事業場内最賃水準要件」の事業場内最低賃金基準値に加え、
更に+20円(合計で+50円)以上増加させること
地域別最低賃金引上げ特例要件 補助率を1/2→2/3に引き上げ 2024年10月から2025年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~
2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上あること。
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.2版」

なお、最低賃金対応については、特例措置に加えて下記の加点項目も用意されています。

加点項目【審査で考慮】

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の加点項目は、以下の通りです。申請締切日時点で要件を満たすことで、審査で一定程度の加点が実施されます。

① パートナーシップ構築宣言加点 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにおいて、令和8年1月1日に更新されたひな形を利用して宣言を公表している事業者
② くるみん加点 次世代法に基づく認定(トライくるみん、くるみん又はプラチナくるみんのいずれかの認定)を受けた事業者
③ えるぼし加点 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号)」に基づく認定(えるぼし1~3段階又はプラチナえるぼしのいずれかの認定)を受けている事業者
④ 健康経営優良法人加点 健康経営優良法人2026に認定されている事業者
⑤ 再生事業者加点 中小企業活性化協議会等から支援を受けており、以下のいずれかに該当している事業者
⚫ 再生計画等を「策定中」の者
⚫ 再生計画等を「策定済」かつ申請締切日から遡って3年以内に再生計画等が成立等した者
⑥ 経営革新計画加点 申請締切日時点で有効な「経営革新計画」の承認を取得している事業者
⑦ 事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画加点 申請締切日時点で有効な「(連携)事業継続力強化計画」を取得している事業者
⑧ DX認定加点 申請締切日時点で有効な「DX認定」を取得している事業者
⑨ J-Startup、J-Startup 地域版加点 「J-Startup」、「J-Startup 地域版」に選定された事業者
⑩ 新規輸出1万者支援プログラム加点(グローバル枠のみ対象) 「新規輸出1万者支援プログラムポータルサイト」において登録が完了している事業者
⑪ 日本の食輸出1万者支援プログラム加点(グローバル枠のみ対象) 「日本の食輸出1万者支援プログラムポータルサイト」において登録が完了している事業者
⑫ 研究開発費・試験研究費計上に係る加点 申請締切の前期までに、会計上の研究開発費または税務上の試験研究費を定められた書類において計上し、研究開発を推進している事業者
⑬ 技術情報管理認証制度加点 技術情報管理認証制度の認証を取得している事業者
⑭ 成長加速マッチングサービス加点 成長加速マッチングサービスにおいて会員登録を行い、挑戦課題を登録している事業者
⑮ アトツギ甲子園加点 アトツギ甲子園のピッチ大会に出場した事業者
⑯ 地域別最低賃金引上げに係る加点 2024年10月から2025年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上ある事業者
⑰ 事業場内最低賃金引上げに係る加点 2025年7月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、「全国目安で示された額(63円以上)」の賃上げをした事業者
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.2版」

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請にあたっての注意点

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請にあたっては以下の点にご注意ください。

採択=満額交付とは限らない

採択後の交付申請の段階で厳格な精査が行われ、事務局により減額又は全額が対象外となる場合もあります。減額又は全額対象外とされるのは、 例えば、「既存事業に活用される経費である」「直接必要な経費ではない」などと判断された場合です。

またルールの不備により、減額又は全額が補助対象外となることもあります。契約(発注)先1件当たりの見積額の合計が税抜50万円以上になる場合は、3者以上の同一条件による「相見積もり」が必須など、詳細なルールを遵守することにもご注意ください。

財産の使用・処分は制限される

本補助金を活用して取得した設備等は、補助事業専用で使用しなければなりません。補助事業で取得した財産を、既存事業や補助金の交付目的に反して使用した場合、補助金の返還が必要となるのでご注意ください。

悪質な支援業者に注意

事業計画の検討やブラッシュアップにあたって外部支援者の支援を受ける場合は、 提供するサービスの内容とかい離した高額な成功報酬を請求する、経費の水増しを提案するなどの不適切な行為を行う悪徳業者にご注意ください。こちらは中小企業庁のチラシ、公募要領などでも注意喚起されています。

なお、事業計画は必ず申請者自身で作成しなければならず、申請者以外が作成したことが発覚した場合は不採択・採択取消・交付決定取消になります。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のスケジュール

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(第1回公募)のスケジュールは以下の通りです。
※2026年7月17日にスケジュールが変更(延長)されています。

公募開始 2026年6月29日(月)
申請受付 2026年9月30日(水)
申請締切 2026年10月30日(金)18:00まで(厳守)
採択発表 2027年1月頃(予定)
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.2版」

本補助金の申請は、電子申請システムでのみ受け付けます。交付決定日より前に購入や契約(発注を含む)等した経費は補助対象にはならないのでご注意ください。

なお、中小企業庁によると、申請に必要な「GビズIDプライムアカウント」の発行にはオンライン申請では最短で即日、書類申請では最大1か月程度、「一般事業主行動計画の公表手続き」には1〜2週間程度を要します。余裕のあるスケジュール管理をお心がけください。

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の主な申請の流れ

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を申請する場合の主な流れは、以下の通りです。

1. GビズIDの取得
2. 必要書類の準備
3. 事業計画書の策定
4. 電子申請
5. 採択発表
6. 交付申請
7. 交付決定
8. 補助事業の実施
9. 実績報告
10. 補助金の請求・交付

申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必須です。取得には時間がかかる場合もあるので、未取得の場合はすみやかに手続きを行なってください。GビズIDプライムアカウントの申請は、書類を郵送する書面申請のほか、オンライン申請も可能です。

また申請時には、電子申請システムに事業計画の内容を入力する必要があります。入力は申請者自身が内容を理解、確認の上、自ら実施しなければなりません。申請者自身による申請と認められないと不採択となるのでご注意ください。

申請にあたって必要な書類

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請にあたっての主な必要書類は以下の通りです。

必須書類 ① 決算書
② 従業員数を示す書類
③ 収益事業を行っていることを説明する書類
金融機関から資金提供を受けて補助事業を実施する場合のみ ④ 金融機関による確認書
リース会社と共同申請する場合のみ ⑤ リース料軽減計算書
⑥ リース取引に係る宣誓書
再生事業者加点を希望する事業者のみ ⑦ 再生事業者であることを証明する書類
地域別最低賃金引上げに係る特例の適用又は加点を希望する事業者のみ ⑧ 地域別最低賃金引上げに係る要件を確認する書類
事業場内最低賃金引上げに係る加点を希望する事業者のみ ⑨ 事業場内最低賃金引上げに係る要件を確認する書類
経営革新計画加点を希望する事業者のみ ⑩ 経営革新計画承認書の写し
研究開発費・試験研究費計上に係る加点を希望する事業者のみ ⑪ 研究開発費・試験研究費計上を確認する書類
出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)1.2版」

添付書類の詳細は、公募要領等でご確認ください。

主な審査項目

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の主な書面審査項目は以下の通りです。

・補助対象事業としての適格性
・経営戦略との整合性
・事業の実現可能性
・新規事業の新市場性・高付加価値性(新事業進出枠に限る)
・公的補助の必要性
・政策面(関税や中東情勢の変化による影響等)
・大規模な賃上げ計画の妥当性(賃上げ特例の適用を希望する事業者に限る)

上述の通り、本補助金の審査項目には中東情勢の緊迫化による影響等(政策面)も明記されています。原油由来製品・資材の供給途絶や高騰、それに伴う事業の中止などの影響を受け、今後より市場の成長や生産性の向上が見込まれる分野への進出に取り組む場合は、とくに活用をご検討ください。

【注意】こんな使い方はNG!補助対象外となる事業の具体例

本補助金は手厚い支援が受けられる一方で、「単なる設備投資」や「既存事業の延長」は補助対象外となります。

例えば、「ラーメン屋さんが、店舗の前に新たにラーメンの自動販売機を設置したい」といった内容単独では、要件に合致せずNG(対象外)となる可能性が高いです。

具体的にNGとなる可能性が高いケースとして、以下の3つにご注意ください。

① 単なる機械装置・システムの導入

商品の自動販売機や、市販のPOSレジ・注文タブレットなど、「単に機械装置やシステムを導入するだけで、新製品・サービスの開発を伴わないもの」は補助対象外となります。

② 既存市場への展開・メニュー追加

隣町への2号店の出店(単に商圏が異なるだけの場合)や、現在の店舗の常連客に向けた新しいメニューの追加(対象とする市場が同一で、単なるメニュー追加と考えられる場合)は補助対象外です。

また単純な製造量・提供量の増大なども対象外と規定されています。

③ 実質的な労働を伴わない事業・他社への丸投げ

本補助金は従業員の実質的な労働を通じた企業規模の拡大や賃上げを目的としています。そのため、コインランドリー経営や駐車場経営など、「実質的な労働を伴わない事業又は専ら資産運用的性格の強い事業」は対象外です。

また、事業実施の大半を他社に外注・委託し、自社は企画だけを行うような事業も認められません。

せっかく申請書類を作成しても、事業内容がこれらの「補助対象外事業」に該当してしまうと採択されません。自社の計画が単なる設備投資になっていないか、新たな価値や市場を生み出すものになっているか、事業計画を立てる際は公募要領の対象外要件を必ず確認しましょう。

プラネット行政書士事務所 代表(中小企業診断士・行政書士)長野 利雄のポイント3つ

私はこれまで100件以上の公的補助金の審査に携わり、現在はその経験を生かして申請支援を行っています。ここでは、審査する側の視点から、本補助金の申請前に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

①賃上げ目標は「努力目標」ではなく、原則として達成が求められる

本補助金では、1人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上とする目標値を、申請者自身が設定します。目標を達成できなかった場合は、一定の例外を除き、未達成率に応じて補助金の返還が求められます。

基準値ぎりぎりの3.5%では、賃上げ目標の高さという点で評価の上積みを得にくい一方、無理に高い目標を設定すれば、未達時の返還が将来の資金繰りを圧迫する可能性があります。

そのため、賃上げ目標だけを先に決めるのではなく、補助事業がどれだけ付加価値を生み、そのうちどの程度を賃上げの原資に回せるのかを検討し、根拠のある計画として示すことが重要です。これにより、審査での説得力と事業実施後の安全性を両立しやすくなります。

②採択後の減額を見据え、対象経費を申請前に精査する

本補助金には補助下限額が設定されています。革新的新製品・サービス枠は100万円、新事業進出枠とグローバル枠は750万円であり、決して低い金額ではありません。

注意すべきは、申請時にクリアしていても安心できないことです。採択後の交付申請では経費の中身が精査され、対象外経費と判断されれば交付決定額が減額されます。その結果、補助下限額を下回ると要件不備で採択取消となります。

各経費が補助対象経費に該当するか、汎用性が高く目的外使用になり得るものが含まれていないかなど、申請前に慎重に精査する必要があります。

③「新規事業」であるだけでは不十分。新市場性または高付加価値性を示す

新事業進出枠では、新たに製造・提供する製品やサービスが自社にとって新規性を有し、かつ対象とする顧客層が既存事業と異なることが求められます。ただし、これは補助対象となるための前提条件にすぎません。

審査で重要となるのが、「新市場性」または「高付加価値性」を具体的に示せるかどうかです。

新市場性を訴求する場合は、性能・価格帯・業態・顧客層などの要素を除いたジャンル・分野について、社会における普及度や認知度が低いことを、統計などの客観的なデータで裏付ける必要があります。

焼肉店やサウナのように一般的な認知度が高いジャンルでは、新市場性を訴求することが難しいため、高付加価値性を軸に事業計画を組み立てる選択肢があります。同じジャンルの一般的な付加価値や相場価格を調査したうえで、それを上回る価値や価格を示し、なぜ自社にそれを実現できるのかを、自社の強みと結び付けて説明することがポイントです。

まとめ

新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、新製品・新サービスの開発や新市場・ 高付加価値事業への進出、輸出体制強化の取組に最大9,000万円が補助されるダイナミックな補助金制度です。成長率や賃上げ、最低賃金などの要件は比較的厳しいですが、要件を満たすための事業計画の策定や社内整備も含めて、経営改善のチャンスとなります。

中東情勢の影響を受けている事業者の方をはじめ、後より市場の成長や生産性の向上が見込まれる分野への進出などを目指す方は、ぜひ本補助金の活用をご検討ください。