あなたが持ってる広報のイメージ、間違ってるかも・・・。創業期にやるべき3つの広報術とは?

ベンチャー企業の広報PRの専門家・野澤氏に聞いてみた

(2017/06/30更新)

何かと忙しい創業期。目先のことにとらわれて、後回しにされがちなのが広報です。ですが、実は創業期に広報をきちんと行うことで、事業を軌道に乗せるための「ヒト・モノ・カネ」が集まりやすくなること、ご存知でしょうか?
そこで今回は、創業期から広報を行う重要性について、「【小さな会社】逆襲のPR広報術」の著者であり、起業時の広報PRに詳しいベンチャー広報 野澤直人氏にお話を伺いました。

野澤 直人(のざわ なおひと)
1971 年生まれ。明治大学卒業後、中小企業向け経営情報サービス会社に入社。
20代後半で出版社に転職しニュービジネス情報誌の編集責任者としてベンチャー経営者500人以上の取材を経験。
その後、当時無名だった海外留学関連のベンチャー企業で広報部門をゼロから立ち上げ、半年間で日経新聞本誌朝刊をはじめ43件のメディア露出を実現。
同社在籍中の8年間で朝日新聞、週刊ダイヤモンド、ワールドビジネスサテライトをはじめ毎年100~140件のマスコミ露出を通じてブランディングに貢献した。
PR会社勤務を経て、ベンチャー広報を設立し現在に至る。

広報によるブランド力UPは創業期だからこそ重要!

ーなぜ、創業期に広報PRを行うと良いのですか?

野澤:メディア露出で会社が注目されれば、顧客はもちろん、働きたい人、出資したい人、パートナー企業などなど、会社経営に必要な「人、モノ、カネ」のすべてを集めやすくなるからです。

特に「顧客」に焦点を当てると、これまで創業期の社長の重要な仕事は、売上を伸ばしていくことだけだとされていました。当然、そのためには社長にカリスマ的な営業力が求められます。

しかし、そんな営業の神さまのような社長が、そうそういるわけがありません。創業したばかりで信用も何もないベンチャー企業にとっては、営業だけで売上を伸ばしていくことは至難の業です。

だからこそ、広報PRが重要になるのです。広報PRによってブランド力を高めることができれば、売上はあとからついてきます。

ーブランド力が高まれば、売上にとどまらず様々な波及効果がありそうですね。

その通りです。極端に言うと、創業期の社長がやるべき仕事は2つだけです。
ひとつは売上を伸ばすこと。そしてもうひとつは、広報PRによってブランドをつくることです。

これらはどちらも重要ですが、まずは広報PRによるブランドづくりから取り組むことを私はお勧めします。やり方によっては、驚くほどの低コストで、売上や資金調達、人材採用などさまざまな経営課題が解決できます。

ー広報PRは単なるマーケティング手段ではなく、経営戦略として捉えたほうが正しそうですね。
野澤さんはベンチャー企業の広報時代、43件ものメディア露出を実現していらっしゃいますが、それによる会社への反響はいかがでしたか?

野澤:営業、マーケティング、採用、業務提携、資金調達など、様々な面で効果がありました。結果的に、2億円の年商がわずか5年で10倍の20億円になりました。

また、私は2012年から数年間、クラウドソーシングのL社の広報PRをお手伝いしました。当時、小規模な会社で売上もほとんどありませんでしたが、広報PRをテコに会社が急成長し、現在では日本を代表するクラウドソーシングの会社になっています。

こんなに違う!大企業と創業期の広報

ー広報PRというと、プレスリリースの一斉配信など、大企業が行っているような方法が思い浮かびますが、大企業と創業期で、広報PR活動に違いはありますか?

野澤実は大企業と創業期の企業では、広報の考え方から正反対です。

大企業の広報担当者にとって、もっとも重要とされている仕事は、「潤沢な資金を活用してマスコミからたくさん取材されること」……ではありません。

むしろ、「マスコミに自社について報道させないこと」が重要視されます。

自社でトラブルが発生した際に、ネガティブな報道の回数を最小限に抑え込む。また、謝罪の記者会見をうまく取り仕切り、速やかに人々の関心を別の話題に逸らす。ネット上の炎上が大きくならないように、上手に鎮火させる、などなど。

これに対して、創業期に求められる広報PRは、まったく逆です。「1件でも多く取材・報道を獲得する」ことが求められます。
トラブルや不祥事が起きたときの危機管理広報のスキルやノウハウは、不要とまでは言いませんが、あまり求められません。「そんなことより、とにかくマスコミで自社の情報を露出させたい!」と起業時の経営者なら、そう思うはずです。

ー創業期に大企業の広報PRを真似ても、上手くいかないということですね。

そうですね。マスコミは、大企業が発表するネタには高いニュースバリューがあると判断します。そのためプレスリリースを一斉配信するだけで大量の取材依頼が殺到することも珍しくありません。
そんなとき、マスコミ関係者との関係を損なわないようにしながら、うまく取材依頼を断る。言い換えると「自社の意図した情報以外はマスコミに報道させず、望まない取材依頼はうまく断る」これが、大企業における広報PRです。

創業期に求められる広報PRは、「とにかく一件でも多くの取材・報道を獲得する」ことですから、プレスリリースの一斉配信など、大企業のやり方を真似るだけではなかなかうまくいかないケースが多いですね。

起業家のための3つの広報術

1.マスコミ報道の連鎖を意図的に起こす

ーここからは具体的に、「創業期に求められる広報PR」の方法について伺えればと思います。野澤さんは著書にて、テレビなどのメディアに取り上げてもらうには「マスコミ報道の連鎖」を起こす、とおっしゃっていましたが、「マスコミ報道の連鎖」とはどのようなものですか?

野澤:上の図を見てください。
三角形の上から順に、露出した場合の影響力が高く、かつ、報道を獲得する難易度が高い順にメディアのカテゴリーが並んでいます。最上位がテレビで、次いで全国紙、雑誌と続き、その下にウェブ媒体や業界紙・専門誌などが位置します。

よく、テレビなど、三角形の上位メディアばかりにアプローチする方を見受けますが、この方法はあまり得策とは言えません。なぜなら、テレビの情報番組というのは、ウェブニュースや新聞、雑誌などで数多く報道され、世のなかですでに具体的な現象となっている事柄を、あと追いで報道するメディアだからです。

こうした仕組みを知ったうえで、「マスコミ報道の連鎖」を戦略的、かつ意図的に起こすことが、創業期の広報PRで大きな成果を出すための「必勝法」なのです。

ーでは「報道の連鎖」を起こすためには、具体的にどのように行動すれば良いでしょうか?

野澤これまでマスコミに露出した実績がほとんどない中小・ベンチャー企業が広報PRを行うのなら、まず重視すべきは「質より量」です。
影響力の大小を問わず、数多くの媒体でまずは報道されることで、結果的に全国紙やテレビ番組での大きな露出につながります。

ー露出量を増やすためにも、まずはWebや地方紙、業界紙など、比較的取材されやすいメディアへのアプローチを重視する、ということですね。

野澤:そうですね。特に、図の頂点に位置するテレビのキー局での報道を獲得したいときには、急がば回れで先にテレビ以外の媒体に自社の情報を掲載することが、絶対に必要となります。最初からいきなりテレビでの取材を獲得できるケースは、ほとんどありませんね。

2.最適な担当記者の電話番号を知ろう

ーアプローチすべきメディアが分かったところで、メディアへの効率的なアプローチ方法を伺えればと思います。そもそも記者は、どの様に記事ネタを探しているのですか?

野澤:プレスリリースを見たり他の媒体の報道も参考にしますが、基本的には人的ネットワーク(記者の人脈)による口コミ情報から記事ネタを探します。そうでないと、特ダネや独自報道は実現できないからです。

記者一人の担当範囲(業種、ジャンルなど)はどのくらいでしょうか?

野澤:全国紙や地方紙、産業紙、業界紙など、媒体によって様々なので一概に言えません。
例えば、産業紙の代表である日経新聞だと、かなり細かく担当が分かれています。金融機関のカテゴリーであれば、銀行、証券会社、保険会社とそれぞれ担当記者がいるというイメージです。

ー効率的に取材に繋げるためには、自分の会社に関連するジャンルを扱っている記者を見つけ、直接コンタクトをとることが有効、ということですね。どうやって担当記者を見つければいいでしょうか?

野澤:代表番号から地道に攻略して、それぞれの番号を特定していくのもひとつの手法ですが、実は、もっと効率的な方法があります。情報を買うのです。

どこの企業でもそうですが、「代表電話の受付の担当者は、不審な電話は取り次がないように」と教育されています。そのため、この受付を突破するのがなかなか難しいです。
一方、担当直通の電話番号ならば、本人ががその場にいさえすればほぼ100%取り次いでくれます。

実はこの直通の電話番号。一般には公開されていませんが、新聞・雑誌の編集部や、テレビ局の制作部のリストはネット上で販売されています。
多少コストがかかりますが、地道に攻略していくよりはるかに効率的でしょう。
「メディアリスト」などのキーワードでネット検索すれば、いくつかの販売サイトを見つけられるはずです。

3.PDCAサイクルをしっかり回す

ー3つ目のポイントは「PDCAサイクル」をしっかり回す、ということですが、これはどういうことでしょうか?

野澤:以前、グループウェアを扱っているある会社の広報部で、コンサルティングをする機会がありました。約1か月間努力を重ねたのですが、残念ながらその期間中には、その企業の広報担当者は1件も取材を獲得できませんでした。
広報PRでは、最終的に取材するかどうかを決めるのはマスコミ側ですから、正しいやり方をしても結果が出ないことは当然ありえます。ここが、広報PR活動の難しいところです。

ですが、今回の活動のなかで、グループウェアに興味を持ちそうな記者や編集者の氏名と連絡先を、新たに取得できました。

さらに、それらの記者・編集者とは全員、少なくとも直接電話で話しているため「なぜ、今回のプレスリリースでは記事にならないのか?」というダメな理由と「どんな内容なら、記事になる可能性があるのか?」という改善のヒントも、直接教えてもらえたのです。

ー担当記者の特定・プレスリリース改善のヒントという収穫は、その先の広報PR活動に効果的に活用できますね!

野澤:その通りです!当然ながら、この会社はグループウェアに関するプレスリリースを今後も出し続けていくわけですから、このメディアリストや改善のヒントは、今後の同社の広報PR活動における大きな財産になります。

1か月という短期間では成果を出せませんでしたが、遠からず取材を獲得し、報道の連鎖までつなげられる可能性も十分あるはずです。
この会社での事例を振り返り、広報PRにおけるPDCAサイクルをまとめると、次のようになります。

PDCAサイクル
  • Plan(計画)
    広報PRのネタを考えてプレスリリースを作成し、アプローチ先を選定
  • Do(実行)
    電話や訪問でマスコミ関係者と直接接触する
  • Check(評価)
    マスコミ関係者から、PRネタについての率直な意見を聞く
  • Act(改善)
    その意見をもとに、今後のPRネタを再検討する

正しい方法で広報PR活動を行い、このPDCAサイクルを回し続ければ、改善を重ねることで一歩一歩前進し、近い将来、必ず結果(=取材、マスコミ露出)につながります。

一方、メールやファックスで一方的にプレスリリースをばらまくだけでは、こういった知見は得られず、いくらやっても進歩がありません。
あなたもプレスリリースの無差別一斉配信は早く卒業して、広報PRにおけるPDCAサイクルの第一歩を踏み出していただきたいですね。

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多品種少量生産の時代には、広報PRが重要!
ところが、中小企業では専門の広報部門はなく、営業マンや総務などがPR業務を兼務しているケースがほとんど。専門的な知識やノウハウに欠けるケースが多いのが現状です。
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(取材協力:株式会社ベンチャー広報/野澤直人
(編集:創業手帳編集部)

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