manebi 田島 智也|オンライン社員教育プラットフォーム「playse.」で自分らしく輝ける人を増やす
変化の激しい時代を乗り越えるために必要な「リスキリング」を推進する
「働き方改革」や「コロナ禍」などの外的要因により、大きな変化への対応が求められる現代では、どの年代の人材でも「リスキリング(※1)」しなければなりません。
このリスキリングを推進できるオンライン社員教育プラットフォーム「playse.」を運営しているのがmanebiの田島さんです。
そこで今回の対談では、田島さんがmanebiを創業された背景や今提供されているサービス、さらにはそのサービスが社会に与えるインパクトについて、創業手帳の大久保が聞きました。
※1 リスキリング・・・新しい働き方やDX化の導入、ビジネスモデルの変化などに対応するために、新しい知識やスキルを習得すること
株式会社manebi 代表取締役執行役員CEO
日本大学生産工学部卒業。12歳の時、父が他界し家業が倒産。その後母の背中を見て育ち、親への恩返しの想いと就活中に出会った経営者への志に触れ23歳で起業。2010年1月クリエイティブ企業を共同創業、共同代表に就任。2013年8月株式会社manebiを創業、代表取締役CEOに就任。2016年にスタートした派遣業界特化のキャリア形成支援プラットフォーム 「派遣のミカタ」は業界で日本No.1のシェアを持ち、パッションリーダーズアワード2016準大賞を受賞。ダイヤモンド社「ザ・ファーストカンパニー2017」の30社に選出。日経BP社「続 日本のベストベンチャー15社」に選出。目標は一人ひとりが自己実現するために、個人のキャリア形成に寄与するエコシステムを構築し、世界一のHeart Tech Companyになる事。
創業手帳 株式会社 代表取締役
大手ITベンチャー役員で、多くの起業家を見た中で「創業後に困ることが共通している」ことに気づき会社のガイドブック「創業手帳」を考案。現:創業手帳を創業。ユニークなビジネスモデルを成功させた。印刷版は累計250万部、月間のWEB訪問数は起業分野では日本一の100万人を超え、“起業コンシェルジェ“創業手帳アプリの開発や起業無料相談や、内閣府会社設立ワンストップ検討会の常任委員や大学での授業も行っている。毎日創業Tシャツの人としても話題に。 創業手帳 代表取締役 大久保幸世のプロフィールはこちら
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この記事の目次
保険代理店を退職しクリエイティブ制作事業で一度目の起業に挑戦
大久保:起業までの流れを教えていただけますでしょうか?
田島:新卒で入社したのは保険代理店でした。その会社では多くの学びがあったのですが、入社して8ヶ月くらいたった時期に、会社の先輩2人と一緒に独立し、1社目となるクリエイティブ制作をする企業を共同創業しました。
その後、約3年半ほど運営したのち、2社目となる株式会社manebiを創業しました。起業歴はもう約12年半になりますね。
大久保:なぜ保険代理店に入社したのでしょうか?
田島:将来的に「起業する」ことを視野に入れていたので、起業に役立つ経験が積めそうだと思い、保険代理店に入社しました。
具体的には、経営者の方々と直接お話ができることや、税務や保険、投資などのお金回りのことについて広く学べることに魅力を感じました。
大久保:当時を振り返って「もっとこうしておけばよかった」という反省点はありますか?
田島:当時は起業する分野を決めていませんでしたが、今はIT周りの事業を行っているため、今思えばIT企業に入社していた方が今の業務に直結する経験ができたとは思いますね。
大久保:起業されてからのお仕事の受注状況はいかがでしたか?
田島:最初は仕事がなく、食べることに必死な状況でしたが、徐々に仕事が増えました。全て手探りで進め、やったことがない領域も受注してから勉強して対応することもありましたね。
大久保:特に専門家が周りにいない領域に関しては、自分で調べながら何とか対応する、ということはベンチャー界隈ではよくありますよね。
田島:起業してがむしゃらに頑張っていた頃のお客様の中に、今でも仲良くしていただいている方がいまして。最近では、仕事を紹介していただいたり、私1人では行けないような格式の高い場所に招待していただいたりと、ステージが変わった今でも交流があるのは大変ありがたいです。
大久保:ただのお客さんではなく、プラスアルファの関係値になっていると、お互いに成長しあえる良い仕事仲間になりますよね。
田島:お客様だけでなく、出会った人とのフィーリングや縁を大事にしています。
そこから大事な関係値になることが多く、一つ一つの仕事や出会いを無下にしてはいけないと常に意識しています。
manebiの創業初期は受託開発で運転資金を捻出
大久保:1社目に起業した会社ではどのようなことをされていましたか?
田島:1社目の会社では、ブランディング戦略の実施やランディングページ・販促物等の制作を受注して請け負っていました。
大久保:自分が持つ「スキルを売る」仕事は、大きなお金を生まないものの、売りやすい上に次に繋がりやすかったのではないでしょうか?
田島:2社目の起業であるmanebiでも、最初の3年間は事業の立ち上げをしつつ、運転資金を確保するために受託開発を行っていました。
「企業から受託した案件を限られた時間の中で成果物として納品すること」や「どのくらい粗利を取るべきかという金銭感覚」そして「法人との契約で気を付けるべきこと」これらの受託開発を行う上での注意点は、1社目の起業経験の中で学びました。
大久保:苦労した経験は起業家を強くしますよね。
田島:本当にやりたい事業で売上が立たずに受託開発で耐え凌いだ経験を生かして、ピンチを切り抜ける判断ができるようになりました。
何かあっても、生きていけるという絶対的自信になり、サバイバル力がついた瞬間でしたね。
派遣業界に特化したeラーニングシステム「派遣のミカタ」の創業秘話
大久保:事業が伸び始めたのは、どのポイントからでしょうか?
田島:受託開発しかしていない状況から抜け出したいと思い、エンジェル投資家である恩師のもとへ相談に行ったところ、私のスキルは「派遣業界」で役に立つとアドバイスをいただきました。
恩師が経営するグループ企業に派遣会社があり、その場にその社長を呼んでいただき、3人で今後の派遣業界に関する話と、必要な教育システムについてアイディアを出し合いました。
アイディアベースで企画書に起こしたのが、派遣業界に特化したeラーニングシステム「派遣のミカタ」という事業で、企画書段階で営業活動をしてみたところ、初動で20社くらいに購入いただけました。今では、1200社ほどご契約をいただいている状況です。
大久保:PMF(※2)の状態を作ることが重要と言われますが、とにかく受注を取れるというのが一番強いですね。
田島:企画書段階から提案していたため、プロダクトの要望も吸い上げて対応していた上に、販売価格も市場のニーズに合わせられました。
大久保:プロダクトが出来上がっていない状態で営業をしに行くのは、無謀だと考えられるかもしれませんが、結果的には早く製品を作り上げられたという結果に繋がっていますね。
田島:アメリカのスタートアップでは、同じように提案資料だけで営業をすることもあるので、私も最短でニーズに応える開発ができたという点では、良い進め方だったと感じました。
大久保:派遣のミカタの勝因はどういったところにありますか?
田島:本来は次の時代のメインストリームになるような包括的な分野をカバーできるサービスを作りたいのですが、今回は派遣業界に特化させることで「選択と集中」という手段を取りました。そうすることで、メインストリームにはならなくても、ニッチな分野では勝てるということがわかりました。
そのため、この成功事例を横展開するために、現在は警備業界にも展開する予定です。
※2 PMF(プロダクトマーケットフィット)・・・商品やサービス(Product)がマーケット(Market)のニーズに合っている・受け入れられている状態
変化の激しい現代を生き抜くには「リスキリング」が必要不可欠
大久保:manebiでは事業を通して「リスキリング(※2)」を重視しているように感じますが、どのようにお考えでしょうか?
田島:「リスキリング」はスキルアップの中にあるものと認識しています。
能力アップという意味でも間違いありませんが、経営戦略、事業戦略、人事戦略に紐づいて、計画的にやっていくという意味合いが強いと考えています。
つまり、中長期的な戦略上で必要になるスキルを先んじて習得していく考え方です。
大久保:海外ではリスキリングへの注目が高まっていますが、日本でももっとリスキリングに力を入れていくべきですね。
田島:リスキリングと同時に人材の流動性を上げることは、日本政府としても力を入れていこうとしています。
アメリカでは、会社に依存せず自分でスキルを身につけて、常に自分自身をアップデートすることがビジネスパーソンの間では当たり前になっています。
日本がアメリカと全く同じようにはできないとしても、日本にローカライズした形で人材の流動性の向上を仕掛けていかなければいけないと考えています。
大久保:リスキリングを広めるために具体的に行っている取り組みはありますか?
田島:manebiでも、社内で一番年齢の高い役員がリスキリングにチャレンジしました。年長者がリスキリングを行う必要性や実体験から得たリスキリングのノウハウ等を広報から社内外に発信し、リスキリングの必要性を啓発しています。
本人に信念、強い願望があれば人はいつからでも変われます。これからの時代は働く年齢がどんどん伸びていくと思いますので、どの年代の方でも、変化に対応し進化し続けることが必要だと考えています。
大久保:その会社で長くいる人をリスキリングでバージョンアップさせ、さらに長くいてもらえるのが一番良さそうですね。
田島:変われない人は健全に転職して、客観視される環境に身を置くことで、メタ認知を得ることもおすすめしたいですね。
- ココ重要!リスキリングの重要性
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- ①:人材の流動性を高めるため
- ②:激しい変化に対応する必要があるため
- ③:健康寿命が伸びてるため
manebiが掲げる社内教育の理想系「ピア・ラーニングカルチャー」とは
大久保:汎用的な教材と「派遣のミカタ」のようなターゲットを絞った教材のメリットとデメリットを教えてください。
田島:業界特化の教材に関しては、企業としての義務、ガバナンスを強化する内容が非常に多いです。このようにパターンが決まった内容の研修や教育を施す場合は、「派遣のミカタ」のような業界課題特化型の教材が適しています。
一方で、能動的な自主自律型人材・自律分散型組織を目指していきたいというニーズで導入いただいているケースでは、manebiのもう一つの製品であるオンラインラーニングプラットフォーム「playse.(プレース)」が適していると思います。こちらは幅広い業界で、お客様のニーズに合わせて教育内容をカスタマイズできるのが特徴です。
「playse.」を導入していただいているお客様の目的としては、新人・管理職の早期活躍、エンゲージメント向上、採用力向上、理念浸透、最終的には生産性のUPやコストダウンに行きつきますね。
さらに深く学んだほうが良いという分野には、事前にビデオ教材でインプットをしてもらい、ワークショップを開催して、アウトプットの場を設けることが効果的です。
大久保:manebi社内ではどのような人材教育を行っていますか?
田島:manebi社内で導入しているのは「ピア・ラーニングカルチャー」というシステムです。manebiのラーニング事業の一旦のゴールは「ピア・ラーニングカルチャー」を熟成させることと定めています。
私は外部研修をいれるのは教育全体の2割で良いと考えています。残りの8割は社内の色々な社員が先生をして、それぞれの得意分野を他の社員に教える機会が自然に発生することを理想とします。
教えることが一番の学びになりますし、学ぶ人同士で絆が芽生え、組織としてのエンゲージメントも高まります。
大久保:時間がかかりそうですが、その分やりがいがありそうですね。
田島:何万人と従業員がいるところでも、3〜4年でピア・ラーニングカルチャーが形成されているので、良い事例を集めて、社会に普及させていきたいと考えています。
大久保:ワークショップ後のアンケート集計など、バックヤード機能も含まれているのでしょうか?
田島:誰がどのくらい学んだか、感想アンケート、いつなにがどのくらい実施されたか、どの研修コンテンツが人気なのか、様々な計測ができるようになっています。
大久保:手作業で集計しようとすると、人事部の方の負担になりますよね。
田島:人事部の方にとって使いやすいように設計されており、補足機能も拡充されています。
大久保:起業家に伝えたいことがあれば、お願いします。
田島:私はこれまで、走りながら学んできました。これがエンドレスで続くことが「起業」だと思っています。
社名である「manebi」は、「学ぶ+真似る」から取っています。すでに世の中には素晴らしい人や情報で溢れているので、常に走りながらインプットして、また全力で走るということを繰り返してほしいですね。
大久保の感想
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(取材協力:
株式会社manebi 代表取締役執行役員CEO 田島智也)
(編集: 創業手帳編集部)
役立つと思ったポイントは3つあります。
一つは受託でノウハウを身につけて、そこから大きな独自サービスに進化した点です。プラットフォーム的なビジネスは時間がかかるのでノウハウとスキル両方手に入れたこと。
2つ目は製品ができる前に複数の会社で受注を取って、プロダクトマーケットフィットを先にやってから製品を作り出していること。
3つ目は、市場の選び方で、ターゲットを徹底的に絞りつつ市場がしっかりある渋いテーマから初めて、徐々に市場を広げていることです。
節目で、人との対話の中で転換点を手探りで見つけていった姿勢も参考になりますね。今、重要なリスキリングの支援なので、今後の成長=日本のリスキリングの進展が楽しみですね。