省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の違いを徹底解説!
補助金の違いを理解し、自社に合うものを活用しよう

中小企業の設備投資を支援する補助金には、目的や対象となる取り組みに応じて様々な制度があります。
中でも「省力化投資補助金」と「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、いずれも設備導入に使える一方で、補助金の目的や想定される事業内容は異なっています。
補助金を選ぶ際は、単に「設備投資をしたい」という理由だけで選ぶのではなく、何のために投資するのか、どのような事業を実現したいのかを整理した上で、自社に適した制度を選ぶことが大切です。
本記事では、2つの補助金の特徴と違いを解説しつつ、それぞれがどのような企業に向いているのかも解説します。
この記事の目次
【一覧表】省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の違い

まずは省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の違いを表にまとめました。一覧で違いを確認したい人は、ぜひチェックしてみてください。
| 比較項目 | 省力化投資補助金 | 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 |
| 目的 | 人手不足の解消や業務プロセスの省力化を支援し、賃上げにつなげる | 革新的な製品・サービスの開発、新市場・新事業への進出、海外市場開拓など成長投資を支援し、賃上げにつなげる |
| 対象経費 | 一般型:機械装置やシステム構築費(必須)、技術導入費、外注費、専門家経費、運搬費、知的財産権等経費、クラウドサービス利用費など カタログ注文型:カタログ登録製品の購入費と関連経費 |
機械装置やシステム構築費、技術導入費、外注費、専門家経費、原材料費、広告宣伝・販売促進費、運搬費、知的財産権等経費、クラウドサービス利用費など (グローバル枠は建物費も対象) |
| 補助率 | 一般型:2分の1~3分の2 カタログ注文型:2分の1以下 |
中小企業者:2分の1(3分の2) 小規模企業・小規模事業者、再生事業者:3分の2 |
| 補助上限額 | 一般型:最大8,000万円(賃上げ要件の達成で1億円まで引き上げ) カタログ注文型:最大1,000万円(賃上げ要件の達成で1,500万円まで引き上げ) |
従業員数1~5人:750万円(850万円) 6~20人:1,000万円(1,250万円) 21~50人:1,500万円(2,500万円) 51人以上:2,500万円(3,000万円) ※賃上げ特例の適用で括弧内の上限額に引き上げ |
| 賃上げ要件 | 補助事業終了後3~5年の事業計画期間の中で、1人あたり給与支給総額基準値に加え、年平均成長率+2.5%(合計年平均成長率+6.0%)以上増加させ、さらに事業場内最低水準要件の事業場内最低賃金基準値に加え、+20円以上(合計+50円以上)増加させる | 補助事業終了後3~5年の事業計画期間に、1人あたり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加する見込みの事業計画を策定し、達成すること |
| 向いている企業 | 人手不足を解消したい企業や、既存業務の効率化・DX推進を実施したい企業 | 新製品の開発や新規事業・新市場への進出、海外市場の開拓を検討している企業 |
省力化投資補助金とは?

省力化投資補助金とは、経済産業省の2023年度補正予算から創設された補助金制度です。
正式名称は「中小企業省力化投資補助金」であり、主に中小企業を対象に、人手不足問題の解消につながる設備投資などを支援する補助金制度になります。
省力化投資補助金にはカタログ注文型と一般型の2つの枠組みがあり、それぞれ対象経費や補助率、補助上限などが異なるため注意が必要です。
カタログ注文型・一般型の違い
カタログ注文型と一般型には様々な違いがありますが、中でも大きな違いとして挙げられるのは、導入する設備・システムの自由度です。
カタログ注文型の場合、事務局が省力化効果を認めた省力化製品をカタログの中から、自社に必要な製品を選んで導入します。
事前に登録された製品・販売事業者の中から選ぶことになるため、一般型より申請手続きを進めやすい傾向にあります。
一方、一般型は自社の業務内容や現場の課題に合わせて、設備導入・システム構築を行った際の費用を補助してもらえるタイプです。
カタログ注文型とは違い、複数の設備・システムを組み合わせたり、ハードウェアとソフトウェアを一体的に導入したりするなど、より柔軟な省力化投資に対応できます。
活用するメリット
省力化投資補助金を活用するメリットには、人手不足への対応と設備投資の負担軽減を同時に進められる点が挙げられます。
設備やシステムを導入することで、これまで従業員が行っていた定型作業や負担の大きい作業の自動化につながり、少ない人数でも業務を回しやすくなります。
定型作業などを自動化させることで、従業員はより付加価値の高い業務に配置でき、生産性の向上にもつながるでしょう。
また、カタログ注文型であれば、登録された販売事業者から申請サポートを受けることができ、一般型なら自社の業務フローや設備環境に合わせて比較的自由度の高い投資が行えます。
デメリット・注意点
省力化投資補助金を活用する際に注意したいのが、省力化効果を数値で示すことです。
例えば、実績報告の際に設備を導入したことで従業員の負担はどれくらい軽減したのか、労働時間や人員の削減効果はどれくらいあったのかなどを、数値で示さなくてはなりません。
また、省力化投資補助金は主に人手不足の解消や業務効率化を目的とする設備の導入を支援する制度であり、それ以外の設備は対象外となってしまいます。
特に工場や店舗の新設、改修費などを含む建物費は対象外となるため、注意してください。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、中小企業などが実施する革新的な新製品・新サービスの開発や新市場・高付加価値事業への進出、海外市場への開拓に向けた国内の輸出体制強化などを支援する制度です。
設備投資などに必要な経費を補助し、生産性の向上や企業規模の拡大などから、賃上げにつなげることを目的としています。
3つの補助対象事業枠
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金には、事業の目的に応じて以下の3つの補助対象事業枠から選ぶことができます。
革新的新製品・サービス枠
革新的な新製品や新サービスの開発が補助対象となる枠組みです。
あくまで新製品・新サービスが対象となるため、既存製品やサービスの改善・向上を図る事業は対象外となります。
ここでいう「新商品・新サービスの開発」とは、顧客などに新しい価値を提供するために、自社の技術力やノウハウを活かして、新製品・新サービスを開発することです。
そのため、単に機械装置やシステムを導入するだけで、新製品・新サービスの開発をともなっていない場合は、補助対象に当てはまらないので注意してください。
新事業進出枠
既存事業と異なる市場や高付加価値事業への進出を支援する枠組みです。
新たに製造・提供する商品またはサービスが自社にとって新規性を有し、これまで進出していなかった市場に進出していることが主な補助対象となります。
この「新規性」とは、世間一般的な新規性(日本初・世界初)ではなく、自社にとっての新規性を指すものです。
グローバル枠
海外市場への開拓に向け、国内の輸出体制を強化させる取り組みを支援する枠組みです。
これまで輸出していなかった企業が、海外向け製品の生産設備を導入する際などに活用できます。
なお、自社にとって新たな海外市場であることが補助対象であり、取引先主導の事業だと自発的な取り組みとはいえないため、補助対象から外れてしまいます。
活用するメリット
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のメリットには、新しい事業に挑戦する際の設備投資などの負担を軽減できる点が挙げられます。
新製品の開発や新市場への進出では、まとまった費用が発生するケースが多いです。
補助金を活用することで、投資にかかる自己負担を抑えつつ、新たな事業の立ち上げを進められます。
また、補助金の申請にあたって事業計画を策定することになりますが、その際に新規事業の目的やターゲット、収益性、投資効果などを整理できる点もメリットです。
単に「新しい設備が欲しい」という考えではなく、その設備を使ってどのような製品・サービスを提供し、どのように売上や付加価値を高めるのかまで検討するきっかけになります。
デメリット・注意点
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のデメリットや注意点として、3~5年の事業計画で取り組む要件が多い点が挙げられます。
| 要件 | 概要 |
| 付加価値額要件 | 付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定する |
| 賃上げ要件 | 1人あたり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させる |
| 事業場内最賃水準要件 | 毎年事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上高い水準にする |
| ワークライフバランス要件 | 次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定して「両立支援のひろば」で公表する |
| 子育て等に関する職場環境整備に向けた取組要件 | 「子育て等に関する環境整備」に向けた取り組みを実施する |
| 金融機関要件 | 補助事業の実施にともなって金融機関から資金提供を受ける場合、資金提供元の金融機関から事業計画のチェックを受けている |
なお、賃上げ要件と事業場内最賃水準要件に関しては、目標を達成できなかった場合、補助金を返還しなくてはいけないので注意が必要です。
自社に合う補助金か判断するポイント
省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のどちらが自社に合っているか、判断するために以下のポイントを押さえておきましょう。
やりたいこと・投資したい内容で決める
まずは、補助金を活用して「何をしたいのか」を明確にしてください。
例えば、「人手不足を解消するために自動化設備を導入したい」という場合は、省力化投資補助金が適しています。
また、「新しい製品・サービスを開発したい」「これまでとは異なる市場に参入したい」「海外市場への展開に向けて設備を導入したい」という場合は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が候補になるでしょう。
補助対象経費から逆算するよりも、まずは投資によって実現したい事業の姿を明確にすることが重要です。
必要な投資額・補助上限額で決める
補助金を選ぶ際は、予定している設備投資などにいくら必要かを計算した上で、各制度の補助率・補助上限額と照らし合わせて判断することも可能です。
補助上限額が大きい制度でも、自社の投資規模が小さければメリットを十分に活かせない場合があります。
逆に、大規模な設備導入やシステム開発を予定している場合、補助上限額の低い制度だと必要な投資をカバーできない可能性があります。
比較的小規模な省力化設備の導入なのか、新事業への大規模な設備投資なのかによっても、適した制度は異なるでしょう。
なお、補助上限額は必ず受け取れる金額ではありません。実際の補助額は対象経費や補助率、申請内容などで決まります。
「最大○○万円」という上限だけで判断せず、実際に導入を予定している設備・システムなどが補助対象となるか確認し、自己負担額も含めて資金計画を立てることが重要です。
公募方式・スケジュールで決める
補助金は、制度によって公募時期や申請方法、受付期間などが異なります。そのため、「投資したい時期に申請できるか」という視点も必要です。
例えば、省力化投資補助金の一般型は2026年8月18日~10月中旬(予定)まで第8回公募を受け付けています。
また、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は2026年6月29日~10月30日18時までです。
一方、省力化投資補助金のカタログ注文型は随時申請を受け付けており、公募回を待たずに申請できるのが特徴です。
ただし、カタログ注文型の場合は補助対象として登録された製品の中から選ぶ必要があるため、すでに導入したい設備が決まっている場合は、カタログに入っているか確認する必要があります。
【ケース別】省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の選び方

企業によって補助金を活用するケースは異なるものです。ここでは、活用ケース別に、補助金の選び方について解説します。
人手不足を解消する設備を導入したい
人手不足の解消や業務効率化を目的とする設備投資は、基本的に省力化投資補助金が候補になります。
特に清掃ロボットや自動券売機、配膳ロボットなど、既製の省力化製品を導入したい場合は、カタログ注文型がおすすめです。
「カタログに希望する製品がない」「自社の業務に合わせてオーダーメイドの製品・システムを取り入れたい」という場合は、一般型が候補となります。
省力化投資補助金を活用する場合、まずどの業務を省力化させたいか明確にすることが大切です。
新しい製品・サービスを開発したい
新たに製品・サービスを開発したい場合は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の「革新的新製品・サービス枠」が候補になります。
新製品の試作・開発や、新しいサービスを提供するのに必要な設備・システムなどに投資する際は、革新的新製品・サービス枠が想定されます。
新製品・新サービスでも、社内の業務効率化が目的の省力化投資だと、投資の目的そのものが異なってしまうので注意が必要です。
あくまで顧客に提供するための製品・サービスを新たに生み出す際に選べる補助枠と考えてください。
また、単なる設備更新ではなく、革新性のある新製品・サービスの開発に関連する取組みであることが重要です。
既存事業とは異なる新事業を始めたい
既存事業とは異なる市場・事業への進出を考えている場合は、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の「新事業進出枠」が適しています。
例えば、既存事業で培った技術やノウハウを活かし、新たな顧客層や市場に向けて事業進出を行いたい場合は、候補となります。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金なら、機械装置だけでなく建物費など幅広い経費が対象になる可能性もあるでしょう。
既存事業の拡大・設備更新ではなく、あくまで新しい市場や高付加価値事業への進出を目指す必要があります。
企業として新たな事業領域に進出するかを判断軸に、新事業進出枠が適しているか検討してみてください。
海外市場への進出を考えている
海外市場の開拓や海外展開を目的とする場合、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の「グローバル枠」が候補になります。例えば、海外市場や販路を開拓するために必要な設備や、輸出体制を整えるための設備、通訳・翻訳に活用できるシステムなど、グローバルな事業展開を目的とした取組みが対象となります。
国内の業務を省力化するための設備投資とは、目的が大きく異なるため注意が必要です。
また、海外展開に関係していれば何でもいいというわけではありません。
例えば、事業計画書を作成する際、事業の顧客層が既存事業と比べて、国・地域単位で異なることを示す必要があります。
海外展開に関連する事業でも、対象となる事業類型や要件などもよく確認した上で申請することが大切です。
省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金に関する質問
最後に、省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金に関する質問と、その回答を紹介します。
2つの補助金両方に申請することは可能?
省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、いずれも国の補助金と補助対象経費が重複する事業の場合、補助対象外になることを公表しています。
そのため、2つの補助金両方に申請しても採択されない可能性が高く、万が一採択されたとしても、後から重複していることが発覚すれば採択・交付決定が取り消されるので注意が必要です。
すぐ申請したい場合、どちらを選ぶべき?
すぐ申請したい場合は、省力化投資補助金のカタログ注文型がおすすめです。
カタログ注文型は公募期間を問わず随時申請を受け付けており、また販売事業者からのサポートも受けながら申請できるため、スムーズに手続きを進められます。
まとめ・自社の状況に合った補助金制度を選択しよう
省力化投資補助金と新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、対象となる取組みや投資目的が異なります。
人手不足の解消や業務の自動化・効率化を進めたい場合は省力化投資補助金、新製品・新サービスの開発や新市場への進出を目指す場合は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金が適しています。
投資内容や必要額、公募スケジュールなどを比較し、自社の事業計画に合った制度を選んでください。
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(編集:創業手帳編集部)
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